半クラウン銀貨

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半クラウン銀貨(はんクラウンぎんか、half crown)は、イギリスの旧通貨制度における、2シリング6ペンスに相当する銀貨の名称である。

仕様[編集]

直径32ミリメートル、重量14.1380グラム、銀純度92.5パーセントスターリングシルバー

歴史[編集]

オリバークロムウェルを描いた半クラウン銀貨。1656年と58年に発行

イギリスが現在のような十進法の通貨制度を取り入れる1971年まで、クラウン銀貨と共に流通していたこの銀貨は、1551年、エドワード6世の時代にクラウン銀貨と共に初めて発行された。クラウンという貨幣単位はそれ以前にも存在したが、その時代は金貨として発行された。1526年、ヘンリー8世の改鋳により登場したクラウン・オブ・ダブルローズ金貨が5シリングとされたのに端を発する。

発行当初のコインはクラウン銀貨同様にハンマーコインであり、現在のような本格的な鋳造コインとしては、1656年発行のオリバー・クロムウェルの肖像を描いたものが最初とされている。以後歴代の君主が刻まれ、1970年まで発行された。1920年にイギリス銀貨はその品位が.925から.500に引き下げられたため、ジョージ5世の1920年以降に発行されたものとジョージ6世の半クラウン銀貨はスターリングシルバーではない。また、1947年以降は白銅貨となった。

種類[編集]

ジョージ3世の半クラウン銀貨。1816年発行
ジョージ4世の半クラウン銀貨。1821年発行

先に述べたとおり、半クラウン銀貨の歴史は1551年に遡るが、英国が金本位制を採用した1816年以降に鋳造、発行された半クラウン硬貨には次の各種類がある。

ジョージ3世の肖像
  • 1816~1817年銘 表:大型胸像 裏:王冠、ガーター勲章、紋章を描いた盾
  • 1817~1820年銘 表:小型頭像 裏:王冠、ガーター勲章、紋章を描いた盾
ジョージ4世の肖像
  • 1820~1823年銘 表:月桂冠を戴く頭像 裏:王冠を戴く紋章を描いた盾、モチーフの植物
  • 1823~1824年銘 表:月桂冠を戴く頭像 裏:王冠、ガーター勲章、紋章を描いた盾
  • 1824~1829年銘 表:月桂冠の無い頭像 裏:王冠を戴く紋章を描いた盾
ウィリアム4世の肖像
  • 1831~1837年銘 表:月桂冠の無い頭像 裏:マントに包まれた紋章を描く盾
ヴィクトリア女王の肖像
  • 1839~1864年銘 表:ヤングヘッド 裏:花環と紋章を描いた盾
  • 1874~1887年銘 表:ヤングヘッド(図案変更) 裏:花環と紋章を描いた盾
  • 1887~1892年銘 表:ジュビリーヘッド 裏:王冠、ガーター勲章、紋章を描いた盾
  • 1893~1901年銘 表:オールドヘッド 裏:王冠、ガーター勲章、紋章を描いた盾
エドワード7世の肖像
  • 1902~1910年銘 表:月桂冠の無い頭像 裏:王冠を戴く紋章を描いた盾
ジョージ5世の肖像
  • 1910~1919年銘 裏:月桂冠の無い頭像 裏:王冠を戴く紋章を描いた盾
  • 1920~1927年銘 1910~1919年タイプと同様。但し厳密には3種類に分類できる。またこれ以後の銀貨は品位が.500に引き下げられた。
  • 1927~1936年銘 裏:月桂冠の無い頭像 裏:紋章を描いた盾
エドワード8世の肖像
エドワード8世の肖像のコインは流通用としては発行されなかった。
ジョージ6世の肖像
  • 1937~1946年銘 裏:月桂冠の無い頭像 裏:紋章を描いた盾
  • 1947~1948年銘 1937~1946年銘タイプと同様。白銅貨
  • 1949~1952年銘 1947~1948年銘タイプと同様。但し銘字より IND IMPが削除される。白銅貨
エリザベス2世女王の肖像(全て白銅貨)
  • 1953年銘 裏:月桂冠を戴く胸像 裏:王冠を戴く紋章を描いた盾
  • 1954~1970年銘 1953年銘タイプと同様。但し銘字より BRITT OMNが削除される。

英連邦の半クラウン銀貨[編集]

イギリス本国以外の英連邦や植民地でも、本国と同じ通貨制度を採用していた国では、半クラウン銀貨が発行されていた。

備考[編集]

クラウン銀貨の図案はセントジョージが竜を退治している図案が代表的な図案であったが、半クラウン銀貨においては、一貫して紋章を描いた盾の図案が採用されていた。

関連項目[編集]