原田多加司
原田 多加司(はらだ たかし、1951年6月3日 - )は、日本の檜皮葺師(ひわだぶきし)、杮葺師(こけらぶきし)。
公益社団法人 全国社寺等屋根工事技術保存会(国連教育科学文化機関「ユネスコ」の無形文化遺産登録団体)の理事、常務理事、副会長などを歴任。伝統建築工匠の技と、木造建造物を受け継ぐための伝統技術の継承を指導しており、著作・講演等も多い。日本建築学会、日本民俗建築学会、建築修復学会会員。
経歴
[編集]滋賀県近江八幡市で檜皮葺師・杮葺師の9代目・原田年浩(はらだ としひろ)の長男として生まれる[1]。 大学卒業後、銀行員を経て、1982年(昭和57年)に「10代目・原田 真光(はらだ しんこう)」を襲名。 国宝・重要文化財・宮内庁関係等の指定建造物の保存修理を多数手掛ける。
原田の家系は、江戸時代中後期の明和8年(1777年)に創業をしており、多くの古社寺の棟札(むなふだ=工事の由緒・施工年月・建築主・工匠名・修理記録などを記して、棟木に打ち付ける札)などで確認できる。
一方で、明治後期から海外で建立された樺太(サハリン)や、関東州(中国)、台湾、朝鮮半島、南洋諸島などの外地の神社にも詳しく、建築家、建築史家、宮大工などと、現地をたびたび訪れて調査をしており、その詳細な報告なども公開している。
また、各方面の知識人、専門家などとの交わりも長く、是川銀蔵(相場師、慈善家)、池内紀(ドイツ文学者、元・東京大学教授)、鈴木嘉吉(建築史家、元・奈良国立文化財研究所所長)、西岡常一(宮大工)、西川幸治(京都大学名誉教授、元・滋賀県立大学学長)、安藤邦廣(筑波大学名誉教授)、村井淳志(原田の従弟で金沢大学教授)などとは縁が深く、共著などもある。
著作
[編集]著書
- 『近世屋根職の研究』(文化財匠会)1996
- 『檜皮葺と杮葺』(学芸出版社)1999 ISBN 4-7615-2222-4
- 『匠の技』(文化財匠会)2000
- 『檜皮葺 職人せんとや生まれけん』(理工学社)2002 ISBN 4-8445-3032-1
- 『屋根 檜皮葺と杮葺(ものと人間の文化史 112)』(法政大学出版局)2003 (のちに電子書籍も) ISBN 4-588-21121-8
- 『海外神社』(文化財匠会)2004
- 『屋根の日本史ー職人が案内する古建築の魅力(中公新書 1777)』(中央公論新社)2004(のちに電子書籍も)ISBN 4-12-101777-3
- 『古建築修復に生きるー屋根職人の世界(歴史文化ライブラリー 186)』(吉川弘文館)2005(のちに電子書籍も)ISBN 4-642-05586-X
- 『職人暮らし(ちくま新書 562)』(筑摩書房)2005 (のちに電子書籍も) ISBN 4-480-06259-9
- 『今を生きるー職人の夢と現実』(彰国社)2009 ISBN 4-458-01265-7
- 『The Japanese Temples and Shrines』-National Organization for Skills Preservation of Roofing Construction-(Warner Publishing) 2012
共編著・分担執筆
- 『日本の伝統美と技を守る人々』(文化庁月報・ぎょうせい)1996
- 『国宝への旅』(NHK出版)1998 (のちに電子書籍も) ISBN 4-14-084030-7
- 『檜皮葺・杮葺』(公益財団法人 文化財建造物保存技術協会)1998
- 『近代神社景観』(中央公論美術出版)1999
- 『地域文化財の保存修復-現状・課題・これから-』(奈良国立文化財研究所) 2000
- 『近江八幡市の歴史 第1巻・街道と街なみ』(近江八幡市)2004
- 『働くとはどういうことか』(日本弘道館)2006
- 『屋根の見方と見せ方』(不動産流通研究所)2006
- 『近江八幡市の歴史 第2巻・匠と技』(近江八幡市)2006
- 『文化財建造物保存技術資料集・平成19年度』(文化財修理技術保存連盟) 2007
- 『職人にみる修練と努力』(金子書房)2007
- 『雨と生きる住まい』(LIXIL出版)2014 ISBN 978-4-86480-905-4
- 『日本文化事典』(丸善出版)2016 ISBN 978-4-621-08979-8
関連項目
[編集]講演・シンポジウムなど
・「伝統の木造建築を学ぶ公開講座」(文化財フォーラム事務局) 大阪市勤労会館
・「日本の文化財建築」(日本建築学会普及事業部) 東京都立大学国際交流会館
・「雨と生きる住まい」(INAXライブミュージアム企画委員会) LIXILライブミュージアム・愛知県常滑市
・「屋根よもやま話-社寺・城・民家」(京都新聞社) 京都新聞滋賀本社ホール
・「未指定の歴史的建造物の保存」(建築修復学会ならまち研究会) 奈良文化財研究所 ほか多数
連載
・「よし笛」京都新聞朝刊 2006.3~2008.4
・「現代のことば」京都新聞夕刊 2008.6~2013.12
・「匠の技」公益社団法人 日本教育会 2007.8~2012.6
・「屋根の見方と見せ方」不動産流通研究所 2006.1~2015.12
・「働くとはどういうことか」公益財団法人 日本弘道会 2012.4~2018.3 ほか多数
入試問題に採用
・京都府公立高等学校入学者選抜学力検査 国語(平成18年度)『屋根の日本史』(出典-以下同)、国語(平成25年度)『職人暮らし』の2回
・仏教大学(学校法人 浄土宗教育資団) 国語(平成19年度) 『技の国、匠の国』
・岩手県立大学 国語(平成19年度) 総合政策学部推薦小論文『職人暮らし』
・静岡理工科大学 国語(平成21年度) 『屋根の日本史』
・東洋大学 現代文(平成23年度) 『檜皮葺と柿葺』
・神戸芸術工科大学 国語(平成26年度)一般入試試験問題 『屋根の日本史』
・皇學館中学校 国語(平成28年度) 入学志願者学力試験A日程 『屋根の日本史』
・中部大学 国語(平成29年度) 『職人暮らし』
・台湾国立科技大学 歴史過程分野(2019) 『屋根の日本史』など
・芝浦工業大学 国語B日程(平成31年度) 『古建築修復に生きる』ほか多数
・東北芸術工科大学 令和4年国語(本学WEBサイトでも閲覧) 『職人暮らし』など
・同志社大学 2024年度日本史入学試験問題 『屋根の日本史』(中公新書)より
テレビ・ラジオ等出演
・NHK-FM「日曜喫茶室」準レギュラー
・NHK「おしゃべりクイズ-疑問の館」
・MBS毎日放送「ありがとう浜村淳です」
・KBS京都放送「はりきりフライデー」
・その他NHK・民放のニュースや特集番組にも多数出演
解説
注
[編集]- ^ 原田の家系は、江戸時代中期の明和8年(1771年)に創業しており、多加司で10代目となる
参考サイト
[編集]- 国立国会図書館「レファレンス 協同データベース」
- 宮内庁京都事務所「年報」
- 文化庁 文化遺産オンライン
- 独立行政法人 国立文化財機構・奈良文化財研究所「公式サイト」
- 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学研究系
- 京都大学フィールド科学教育研究センター
- 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション
- 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
- 九州大学大学院農学研究院 環境農学部門
- 公益財団法人 京都市埋蔵文化財研究所
- 林野庁 近畿中国森林管理局
- 兵庫県篠山市「厚さ3ミリ 気概込め 檜皮採取」
- 丹波図鑑・手仕事編「檜皮ぶき」
- 天皇陛下御即位記念「令和のお屋根替え」