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参政権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

参政権(さんせいけん、: Franchise/Suffrage)とは、国民政治に参加する権利の総称である。

参政権の類型

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国民が政治に参加する制度には、直接的なものと間接的なものに分けられる[1]。前者の例としては公職就任のほか国民発案(イニシアティブ)や国民表決(レファレンダム)、後者の例では選挙国民解職(国民罷免、リコール)などの制度がある[2][3]

直接的参政方法

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  • 公職就任
公職に国民が自ら就任することである[1]公務員に就任する権利を公務就任権という。特に、選挙によって議員その他の公職に就く権利については被選挙権を参照。
外国人については公務員への就任資格が制限されていることがあり、特に被選挙権については否認されていることがある[4]
  • 国民発案(イニシアティブ)
一定数の有権者によって憲法改正案や法律案を提出できるとする制度である[5]。発案が成立した場合、国民投票に入る制度と議会の審議に入る制度に大別される[3]
  • 国民表決(レファレンダム)
国家意思を決定するために実施される投票に参加する方法である[1]直接民主制の理念に基づいた国政の決定の方法である[6]

間接的参政方法

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  • 選挙
選挙は多数人が公職者を選定する行為である[7]。詳細については選挙権を参照。
  • 国民解職(国民罷免、リコール)
選挙人が法定数の賛同者により公職にある者の罷免(解職)を請求し、その請求により罷免の可否を一般選挙人の投票で決する制度である[3][8]

請願権

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従来、請願権は請願の受理を求める権利であるとの理解から国務請求権(受益権、いわゆる請求権)に分類されてきたが、現代の請願は民意を直接に議会や政府に伝えるという意味が重要視されており参政権的機能をも有するものと理解されている[9]。請願権を参政権に分類する学説もあるが、請願権は国家意思の決定に参与する権利ではない事から典型的参政権とは異なる補充的参政権として捉えられることがある[10]

日本における参政権

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選挙権

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日本国憲法第15条「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」と規定する[7]

公務就任権

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明治憲法は「日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得」(第19条)と定め、公務就任資格の平等について定めていた[11]

日本国民の公務員への就任について、日本国憲法にはこれについての直接の規定がないが、日本国憲法第14条の「政治的関係」において差別されないに内包され保障されている[11]。また特に国会議員の被選挙権については日本国憲法第44条で「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない」と定められている[11]

外国人の公務就任権について最高裁は「日本の国籍を有しない者は、憲法上、国又は地方公共団体の公務員に就任する権利を保障されているということはできない。」とし、地方公務員については「公権力を行使することなく、また、公の意思の形成に参画する蓋然性が少なく、地方公共団体の行う統治作用にかかわる程度の弱い管理職」であれば我が国に在住する外国人を任用することも国民主権の原理に反するものではないとする(最大判平成17年1月26日民集59巻1号128頁)[12]

なお、公務就任権のうち選挙によって議員その他の公職に就く権利(被選挙権)については、日本の選挙を参照。

国民発案・国民表決・国民罷免

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  • 国民発案(イニシアティブ)
国民発案(イニシアティブ)の制度は、日本では国政レベルでは採用されていない[11]。地方レベルでは、地方自治法で、普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の50分の1以上の者の連署をもって、その代表者から、普通地方公共団体の長に対し、条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃の請求をすることができると定められている(地方自治法74条)。
  • 国民表決(レファレンダム)
日本国憲法は代表民主制に立ちつつ、憲法改正案に対する国民投票(日本国憲法第96条)と地方自治特別法の住民投票(日本国憲法第95条)で国民表決(レファレンダム)の制度を採用する[6]
  • 国民罷免(リコール)
国民罷免(リコール)の制度は、日本では国政レベルでは採用されていない[8]。地方レベルでは地方自治法で地方公共団体の長・議会・議員の解散・解職の請求が定められている(地方自治法76条以下)[8]
なお、日本には最高裁判所裁判官国民審査の制度があるが、国民の請求を受けて実施されるものではなく一定の時期に行われるものであるため、典型的な国民罷免の制度とは区別される[8]

国別の選挙権・被選挙権

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現行法による各国の選挙権被選挙権の比較

選挙権年齢 選挙権資格 被選挙権年齢 被選挙権資格
日本の旗 日本 18歳

日本国籍保持者

衆議院議員市町村長:25歳
参議院議員都道府県知事:30歳
都道府県議会議員・市町村議会議員:25歳
日本の被選挙権は公示日や告示日ではなく、投票日時点の年齢

日本国籍保有者かつ供託金を払える者

中華民国の旗 中華民国台湾 :20歳
  • 総統副総統:40歳
  • 中央民意代表(立法委員):23歳
  • 地方行政首長
    • 直轄市長:35歳
    • 県市長:30歳
    • 郷鎮市長:26歳
    • 村里長:23歳
  • 地方民意代表
    • 直轄市及び県市議員・郷鎮市民代表:23歳
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 18歳 選挙人登録を行った米国民

連邦下院議員:25歳
連邦上院議員:30歳
大統領:35歳

大統領被選挙権資格者は、生まれながらの米国民[13]で14年以上国内に居住している者

フランスの旗 フランス 18歳 23歳
イギリスの旗 イギリス 18歳 英国内に在住する英連邦市民 18歳 英連邦市民
スペインの旗 スペイン 18歳 18歳
イタリアの旗 イタリア 18歳 25歳
オランダの旗 オランダ 18歳 18歳
 デンマーク 18歳 18歳
ベルギーの旗 ベルギー 18歳 義務投票制 21歳
 ノルウェー 18歳 18歳
アルバニアの旗 アルバニア 18歳 18歳
中華人民共和国の旗 中国 18歳 中華人民共和国国籍保持者[注釈 1][注釈 2] 18歳 中華人民共和国国籍保持者
大韓民国の旗 韓国 19歳[注釈 3] 25歳
モーリシャスの旗 モーリシャス 18歳 18歳
ドイツの旗 ドイツ 18歳 18歳
ユーゴスラビアの旗 ユーゴスラビア連邦共和国 18歳 18歳
トルコの旗 トルコ 18歳 30歳
ポルトガルの旗 ポルトガル 18歳 18歳
 ベトナム 18歳 21歳
オーストラリアの旗 オーストラリア 18歳 義務投票制 18歳
ニュージーランドの旗 ニュージーランド 18歳 18歳
朝鮮民主主義人民共和国の旗 北朝鮮 17歳 17歳
ブラジルの旗 ブラジル 16歳 義務投票制 21歳
 キューバ 16歳 18歳
レバノンの旗 レバノン 21歳 25歳
イランの旗 イラン 15歳 26歳以上75歳以下 イスラム法学者による事前審査を経た者

脚注

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注釈

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  1. ^ 「中华人民共和国全国人民代表大会和地方各级人民代表大会选举法」第1章第3条の規定により、選挙権および被選挙権を有するのは「中国公民」と規定。ただし、法律で政治権利が剥奪されている者を除く[14]
  2. ^ 「中华人民共和国国籍法」第3条の規定では、中国は多重国籍は認めておらず、国籍保持者を「中国公民」としている[15]
  3. ^ 韓国は、選挙権を取得出来る年齢を20歳から18歳に引き下げるにあたり、段階的措置として、2005年6月に19歳に引き下げている[16]

出典

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  1. ^ a b c 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、155頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  2. ^ 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、155-162頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  3. ^ a b c 「国民投票制度」に関する基礎的資料”. 衆議院憲法調査会事務局. 2020年6月7日閲覧。
  4. ^ 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、89頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  5. ^ 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、155-156頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  6. ^ a b 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、157頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  7. ^ a b 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、158頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  8. ^ a b c d 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、162頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  9. ^ 樋口陽一、佐藤幸治、中村睦男、浦部法穂『注解法律学全集(1)憲法I』青林書院、1997年、353頁。ISBN 4-417-00936-8 
  10. ^ 樋口陽一、佐藤幸治、中村睦男、浦部法穂『注解法律学全集(1)憲法I』青林書院、1997年、354頁。ISBN 4-417-00936-8 
  11. ^ a b c d 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、156頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  12. ^ 小嶋和司、立石眞『有斐閣双書(9)憲法概観 第7版』有斐閣、2011年、78頁。ISBN 978-4-641-11278-0 
  13. ^ Natural-born citizen
  14. ^ 中华人民共和国全国人民代表大会和地方各级人民代表大会选举法”. 中華人民共和国中央人民政府 (2010年3月14日). 2017年10月19日閲覧。 “2010年3月14日改正版(→国立国会図書館による当該法規の日本語解説)”
  15. ^ 中华人民共和国国籍法”. 中華人民共和国中央人民政府 (2005年5月25日). 2017年10月19日閲覧。
  16. ^ 佐藤令、大月晶代、落美都里、澤村典子『主要国の各種法定年齢 選挙権年齢・成人年齢引下げの経緯を中心に』(PDF)国立国会図書館調査及び立法考査局〈基本情報シリーズ(2)〉、2008年12月。ISBN 978-4-87582-676-7http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/document/2008/200806.pdf2017年10月19日閲覧 

関連項目

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外部リンク

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