受胎告知 (レーニ)
フランス語: L'Annonciation 英語: The Annunciation | |
作者 | グイド・レーニ |
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製作年 | 1629年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 319 cm × 221 cm (126 in × 87 in) |
所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『受胎告知』(じゅたいこくち、仏: L'Annonciation、英: The Annunciation)は、17世紀イタリアのバロック期の巨匠グイド・レーニがキャンバス上に油彩で制作した絵画である。フランス王妃マリー・ド・メディシスの依頼で、おそらく1629年の初めに描かれ、フランスにもたらされたレーニの最初の大作である[1][2]。現在、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[3]。レーニはまた、1621年にファーノのサン・ピエトロ・イン・ヴァッレ教会 (San Pietro in Valle) のために本作ほど完成度の高くない同主題作を描いており、現在、ファーノ美術館に所蔵されている[4]。
作品
[編集]『新約聖書』中の「ルカによる福音書」 (1章26-38) によれば、ナザレのマリアの前に大天使ガブリエルが現れて、「おめでとう。恵まれた方。あなたは神の恵みにより、男の子を産みます。その子をイエスと名付けなさい」と告げる[5]。マリアは大工のヨセフと結婚していたが、性的関係を持っていなかった。そのため、このお告げに戸惑ったが、聖霊の力で子が宿ったことを知ると、「お言葉どおり、この身になりますように」と答え、その事実を受け入れた。この主題が絵画に表される時は通常、純潔を示すユリの花、聖霊の化身であるハト、聖母マリアの書見台などが描かれる[5]。
本作『受胎告知』を委嘱したことをきっかけに、マリー・ド・メディシスはベルナルディーノ・スパーダ枢機卿を通してレーニに伝言をし、レーニをパリに呼び、リュクサンブール宮殿の第2画廊を装飾する絵画 (元来、ピーテル・パウル・ルーベンスに委嘱された) を制作させようと試みた。しかし、この試みは失敗に終わった。本作は、豪華な大理石と金箔を施された額縁に収められ、パリのフォブール・サン=ジャックのカルメル会修道院の高祭壇に設置されたが、1684年以前に同修道院教会の聖歌隊席に移された。
本作は1665年にジャン・ロレンツォ・ベルニーニに称賛され、「見ることのできる最も美しいものの1つで、それだけでパリの半分の価値がある」と呼んだ[6]。17世紀半ばまでに作品は、ローラン・ド・ラ・イール、フィリップ・ド・シャンパーニュ、ジャック・ステラ、ウスタシュ・ル・シュウールといった同時代の画家たちに多大な影響を与えた。(全員が「アティシズム (Atticism)」といわれた当時のフランスの古典主義様式の先導者[7]) 。作品はまた、クロード・マラングル (Claude Malingre, 1640年)[8]、シモン (Symonds, 1649年)、ジェルマン・ブリス (Germain Brice, 1684)[9]といった美術史家や芸術批評家に称賛された。
フランス革命の際、本作は没収され、1792年9月にレ・プティ=ゾガスタン (Les Petits-Augustins) の倉庫に置かれた。同年12月には、共和国中央美術館 (後のルーヴル美術館) の最初の中核となるコレクションに加えられた。何点かの複製が現存し、そのうちの1点はナポレオン3世によりバラリュック=レ=バンに運ばれ、現在、同地の聖母被昇天教会 (Notre-Dame-de-l'Assomption) に展示されている[10]。別の複製がパリのサン=ジェルマン=ロクセロワ教会に所蔵されている。
脚注
[編集]- ^ Base Joconde
- ^ ISBN 2-85056-710-8. Marie de Médicis, un gouvernement par les arts, Exposition au château de Blois, 29 novembre 2003 au 28 mars 2004. Catalogue de l'exposition
- ^ “L'Annonciation”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年12月11日閲覧。
- ^ Le tableau sur le site marchewoldwide.org Archived 10 June 2006 at the Wayback Machine.
- ^ a b 大島力 2013年、104-105頁。
- ^ “L' Annonciation” (7 September 1625). 7 September 2024閲覧。
- ^ Paola Bassini Pacht. catalogue de l'exposition à Blois (see note 3)
- ^ Claude Malingre, Antiquités de la ville de Paris, in-folio, 1640
- ^ Germain Brice, Description nouvelle de ce qu’il y a de plus remarquable dans la ville de Paris, Paris, 1684, 2 vol. en 1
- ^ Enty on the site of the church of ND-de-l'Asomption sur le site de Balaruc-les-Bains.
参考文献
[編集]- 大島力『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13223-2
- Jacques Thuillier, Histoire de l'art, éd. Flammarion, 2002.
- Alain Mérot, « L’atticisme parisien : réflexions sur un style » in Éloge de la clarté. Un courant artistique au temps de Mazarin 1640-1660, Éditions de la Réunion des Musées Nationaux, 1998.
- Stéphane Loire, Musée du Louvre : école italienne, XVIIe siecle, I. Bologne (Réunion des musées nationaux), 1996, p. 273-277.
- Stephen Pepper, Guido Reni, Oxford, 1984.