コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

古チュルク語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
古代テュルク語から転送)
古チュルク語
𐱅𐰇𐰼𐰰 (Türük)
話される国 東突厥ウイグル可汗国イェニセイ・キルギズ天山ウイグル王国
地域 北アジア中央アジア
話者数
言語系統
表記体系 突厥文字ウイグル文字
言語コード
ISO 639-3
Linguist List otk 古チュルク語
テンプレートを表示

古チュルク語(こチュルクご)は、東古チュルク語(ひがしこチュルクご)、オルホン・チュルク語(オルホン・チュルクご)とも言い、チュルク語族の古い言語と考えられている。

7世紀13世紀にかけての東突厥ウイグル可汗国による碑文が発見されており、記録が残るものの中ではこれらはチュルク諸語で最古の例である。

これら古チュルク語の言語資料は、突厥文字ウイグル文字マニ文字ブラーフミー文字[注 1]で書かれた。

言語資料

[編集]

古チュルク語には、大きく分けて2種類の言語資料がある。

以下は、突厥文字による言語資料の実例:

  • : : : : : :
    • ÜZE: KÖK: TeŊRİ: aSRA: YaGıZ: YeR:
  • : : : : :
    • KILıNDUKDA: iKİN: aRA: KİŞİ: OGLI:
  • : : : : :
    • KILıNMıŞ: KİŞİ: OGLıNDA: ÜZE: eÇİM:
  • : : : : : :
    • aPAM: BUMıN: KaGaN: İSTeMİ: KaGaN: OLuRMıŞ:
  • : : : : :
    • OLuRıPaN: TÜRK: BODuNıŊ: İLİN: TÖRÜSİN:
  • : : : :
    • TUTA: BİRMiŞ: İTİ: BİRMiŞ:

[2]

  • (上に青い空、下に褐色の大地ができた時、人間はそれらの間に生まれた。人間たちの上でブミン・カガンイステミ・カガンは君主に就いた。彼らが君主に就くと、各地のチュルク人たちを治めるための国を整えた[注 3]

音韻

[編集]

古チュルク語は、以下のような9種類の母音を持つ[4]

母音
前舌母音 後舌母音
非円唇母音 円唇母音 非円唇母音 円唇母音
狭母音 i y ɯ u
広母音 e ø ɑ o

円唇母音は、最初の音節でのみ現れる。

子音は以下のような構成である[5]

唇音 歯音 後部歯茎音 軟口蓋音 口蓋垂音
鼻音 m n ɲ ŋ
破裂音 p b t d k g q ɢ
摩擦音 s z ʃ
たたき音 ɾ
接近音 ɫ l j

b, d, g, ɢ, l, p, ɾ, , zは、語頭に現れない。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ a b 松井太 (2009), p. 457, 「表1 イスラーム化以前の中央アジアにおける言語と文字」の列「古代トルコ語」によると、これらの文字で記された記録が残っている。
  2. ^ 一例としてウランゴム碑文はウイグル文字が併記された[1]
  3. ^ 中国語訳「当上方藍天、下方褐土初創之時,人類亦在二者之間生成。在衆人之上,我的祖先土門可汗与室点蜜可汗成為君主。他們成為君主之後,便組織和治理着突厥人的国家与体制。」[3]から。

出典

[編集]
  1. ^ ウランゴム碑文(ウイグル文字) < 大阪大学学術情報庫OUKA
  2. ^ Kültiğin Anıtı Metini 行番号「D1」より
  3. ^ 芮伝明 1998, 附録「闕特勤碑」.
  4. ^ Erdal (2004), p. 45.
  5. ^ Erdal (2004).

参考文献

[編集]
  • Noten zu den alttürkischen Inschriften der Mongolei und Sibiriens (1898)
  • Talat Tekin, A Grammar of Orkhon Turkic, Uralic and Altaic Series Vol. 69, Indiana University Publications, Mouton and Co. (1968). (review: Gerard Clauson, Bulletin of the School of Oriental and African Studies, University of London, 1969); RoutledgeCurzon (1997), ISBN 0-7007-0869-3.
  • M. Erdal, Old Turkic word formation: A functional approach to the lexicon, Turcologica, Harassowitz (1991), ISBN 3-447-03084-4.
  • L. Johanson, A History of Turkic, in: The Turkic Languages, eds. L. Johanson & E.A. Csato, Routledge, London (1998), ISBN 0-415-08200-5
  • M. Erdal, Old Turkic, in: The Turkic Languages, eds. L. Johanson & E.A. Csato, Routledge, London (1998), ISBN 978-99929-944-0-5
  • 芮传明 (1998). 古突厥碑铭研究 (illustrated ed.). 上海古籍出版社. ISBN 9787532524693 
  • Ö.D. Baatar, Old Turkic Script, Ulan-Baator (2008), ISBN 0-415-08200-5
  • 松井太「東洋文化講座・シリーズ「アジアの文字文化」講演録「文字文化からみた草原とオアシスの世界」(第68回東洋文化講座(2008年6月27日)」『東洋文化研究』第11号、学習院大学東洋文化研究所、2009年。hdl:10129/2290 
  • Erdal, Marcel (2004). A Grammar of Old Turkic, Handbook of Oriental Studies (illustrated ed.). Brill, Leiden. ISBN 9004102949. https://books.google.co.jp/books?id=l4yGbSQcrBoC&printsec=frontcover&source=gbs_ge_summary_r&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false 2015年5月閲覧。 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]