図案シリーズ
図案シリーズ(ずあんシリーズ)とは、マルマンが販売するスケッチブックのブランド名。図案スケッチブックとも呼ばれる。
概要
[編集]マルマンが1958年に販売を開始した[1][2]。年に200万冊以上売れる看板商品であり、幼稚園や学校をはじめ、プロの画家にまで幅広く愛用されている[3]。近年ではテレビにおいて出演者に指示を伝えるカンペとして使われることも増えている[4]。
表紙の深緑と黄色のデザインは図案の「図」をモチーフにしたといわれている[5][注釈 1]。
沿革
[編集]発売まで
[編集]1920年当時、紙は高級品で、スケッチブックはヨーロッパからの高級な輸入品のみだった。その状況を鑑みた井口興一が「子どもたちが夢を描ける手軽に買える国産のスケッチブックを作りたい」と考え丸万商店(現在のマルマン)を創業、学習用スケッチブックの製造販売を開始した[7][8]。マルマンのスケッチブックはやがて関東や東北を中心に中学校に納品されるようになった[9]。
その後第二次世界大戦により一時は事業を中断したものの、終戦から2年後の1947年に会社が再開、さらに2年後の1949年にスケッチブックの製造及び学校への納入も再開した[10]。
1958年、ドイツから金属リングで綴じるスパイラル製本機を日本で初めて導入し、図案シリーズの量産を開始した[7][11]。
1958年の発売以来ほぼ変わっていない表紙のデザインはグラフィックデザイナーの奈良部恵三が青山学院大学在学中にマルマンに持ち込んだものであり、その斬新なデザインを気に入った当時の社長が採用した[12][13][14]。
販売開始から現在まで
[編集]1960年代の高度経済成長に伴ってマルマン製品の売り上げは大きく伸び[15]、なかでも図案シリーズの人気は「奇跡」と呼ばれるほどだった[16]。
1974年には宮崎県日南市での製造が開始され、現在では9割以上の製品が日南で製造されている[17]。
昭和後期にはディテールに若干手を加え、表紙の濃い緑の色のトーンがやや暗めになる、綴じ方がスパイラルリングからツインリングになるなどの、細かな変更が行われた[18]。
2008年7月には量産開始50周年を記念して図案シリーズのブランドマークの作成や[19]、1958年当時の仕様を再現した「図案シリーズ・復刻版」の発売などが行われた[20]。また、同年にはグッドデザイン・ロングデザイン賞を受賞した[21]。
2012年7月には東京ビッグサイトで行われた「国際 文具・紙製品展 ISOT」に、親子で遊ぶために工夫が凝らされたスケッチブック「図案スケッチブック One Day」を展示した[22]。この製品は同年にキッズデザイン賞を受賞している[23]。
2018年には量産開始60周年を記念し、特設サイト「ZUAN LIFE!」の開設や、図案シリーズの模様があしらわれたトートバッグやクリアファイル、スマートフォンケース、ふせんなどの発売、スーパーカブ(ホンダ)や東京タワー、uni(三菱鉛筆)とのコラボレーションなどが行われた[24][25][26][27][28]。
2020年にはマルマン創業100周年を記念し、図案シリーズ柄のカレンダーやポチ袋、ミニバインダーなどを発売した[29][30][31]。また、マルマンの創立日である9月21日を「スケッチブックの日」と制定した[32]。
同年4月16日には宝島社から図案シリーズ柄のポーチが付録となったムック 「ZUAN LOVE! 『図案スケッチブック』がある毎日。」が[33][34]、翌年の2021年9月28日には図案シリーズ柄のカードケースが付録となった「ZUAN LOVE!『図案スケッチブック』カードケースBOOK」がそれぞれ発売された[35][36]。
受賞歴
[編集]製品
[編集]図案スケッチブック
[編集]1958年から発売されているオーソドックスなスケッチブック。A3・A4・B4・B5・B6の5種類のサイズがある[37]。使用されている画用紙の表面には「シボ」と呼ばれる凹凸が施されており、さまざまな画材に対応する独特な書き味を生んでいる[11][14]。
図案スケッチブックは他社にOEM商品として提供されており、漫画やアニメなどとコラボレーションした商品が発売されている[38]。
図案スケッチブック One Day
[編集]2011年9月より発売されているスケッチブック[39]。あらかじめあるテーマに沿ったイラストが描かれており、子供向けの製品となっている[40]。2012年にキッズデザイン賞を受賞した[23]。
図案スケッチパッド
[編集]現在でも発売されているスケッチパッド。A4・B4・B5・ハガキの4種類のサイズがある[41]。用紙が一枚ずつ剥がせるようになっている[42]。
図案メモノート・メモパッド
[編集]現在でも発売されているノートおよびノートパッド。メモノートはA6変型・A7、メモパッドはB7変型・A7と、それぞれ2種類のサイズがある[43]。
スケッチバインダー
[編集]2017年10月20日より発売されているバインダー。A4・B5・A5・ミニの4種類のサイズがある[44]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 高畑正幸 (2020)、p.89。
- ^ 「図案シリーズ」『デジタル大辞泉プラス』 。コトバンクより2023年2月17日閲覧。
- ^ “知られざる、100周年企業! ”非・選択と集中”の備品店「シモジマ」、 スケッチブック製造「マルマン」。 世紀をまたいで愛される秘密とは?”. note. がっちりマンデー!! (2020年5月16日). 2023年2月17日閲覧。
- ^ 大山繁樹 (2020)、p.59。
- ^ 金井かおる「「マルマンのスケッチブック」正式名とデザインの秘密 創業100年老舗のロングセラー商品」『まいどなニュース』神戸新聞社、2020年5月18日。2023年3月5日閲覧。
- ^ 大山繁樹 (2020)、p.58。
- ^ a b 磯山友幸 (2021)、p.46。
- ^ 綴木猛「スケッチブックでマルマンが「超定番」な理由」『東洋経済オンライン』東洋経済新報社、2018年10月3日。2023年3月10日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.84。
- ^ MdN (2018)、p.85。
- ^ a b 「コロナ禍でも売り切れ マルマン支えた文具のこだわり」『NIKKEI STYLE』日本経済新聞社・日経BP、2020年6月27日。2023年3月13日閲覧。
- ^ ジョルニ編集部 (2012)、p.37。
- ^ “マルマン 図案スケッチブックをデザインしたのは大学生だった!”. ナガサワ文具センター (2018年5月30日). 2023年3月5日閲覧。
- ^ a b 「描き味の秘密は「シボ」? マルマンのスケッチブック」『NIKKEI STYLE』日本経済新聞社・日経BP、2017年8月4日。2023年3月5日閲覧。
- ^ 町野幸「マルマン 創業家家紋が社名に」『毎日新聞』毎日新聞社、2020年5月17日、4面。2023年3月14日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.87。
- ^ 平島さおり「あのスケッチブック、ほとんどが宮崎産…番組制作現場や「つば九郎」も愛用」『読売新聞オンライン』読売新聞東京本社、2022年3月7日。2023年3月14日閲覧。
- ^ “図案シリーズスケッチブック ニッポン・ロングセラー考”. COMZINE. NTTコムウェア (2011年6月). 2023年3月14日閲覧。
- ^ 鷹木創「量産から50周年――スケッチブック「図案シリーズ」にブランドマーク マルマン」『ITmedia エンタープライズ』アイティメディア、2008年7月8日。2023年3月14日閲覧。
- ^ 「マルマンが懐かしの「図案シリーズ」を復刻、専用カバー「エクルミ」も」『ITmedia エンタープライズ』アイティメディア、2008年3月12日。2023年3月28日閲覧。
- ^ a b “スケッチブック[図案シリーズ]”. GOOD DESIGN AWARD. 日本デザイン振興会 (2008年). 2023年3月14日閲覧。
- ^ 阿部夏子「国際 文具・紙製品展 2012 マルマン、子供の感受性を育てる「親子で遊ぶスケッチブック」」『家電 Watch』インプレス、2012年7月4日。2023年3月15日閲覧。
- ^ a b c “図案スケッチブックONEDAYシリーズvol.2 「地球とあそぼう」”. キッズデザイン賞. キッズデザイン協議会 (2012年). 2023年3月15日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.102-106。
- ^ 「マルマンの「図案スケッチブック」が60周年!記念の限定アイテムやイベントなどを開催」『MdN Design Interactive』エムディエヌコーポレーション、2018年4月12日。2023年3月28日閲覧。
- ^ 古川耕「なんと還暦! スケッチブックの代名詞はいまだ現役のカッコよさ!」『GetNavi web』ワン・パブリッシング、2018年7月11日。2023年3月28日閲覧。
- ^ クラタマスミ「あのスケッチブックが60周年 マルマン「図案スケッチブック」トートバッグ発売」『ねとらぼ』アイティメディア、2018年8月28日。2023年3月28日閲覧。
- ^ 「中野のスケッチブックメーカーmaruman、「図案スケッチブック」60周年で記念サイト」『中野経済新聞』みんなの経済新聞ネットワーク、2018年6月25日。2023年3月28日閲覧。
- ^ 「マルマンの「図案スケッチ」があのデザインと紙で卓上カレンダーになった「図案スケッチカレンダー」レビュー」『GIGAZINE』OSA、2020年11月12日。2023年3月29日閲覧。
- ^ 「マルマンから創業100周年限定グッズが登場 レトロなラインアップが小さくなって復刻」『AXIS Web Magazine』アクシス、2020年9月23日。2023年3月29日閲覧。
- ^ 「スケッチブックのマルマンが100周年!記念グッズがかわいいぞ!」『&GP』徳間書店、2020年5月20日。2023年3月29日閲覧。
- ^ “スケッチブックの日”. 日本記念日協会. 2023年3月29日閲覧。
- ^ 緑里孝行「「図案スケッチブック」柄のポーチが付属! 書籍「ZUAN LOVE! 『図案スケッチブック』がある毎日。」発売」『GAME Watch』インプレス、2020年4月17日。2023年3月29日閲覧。
- ^ 沓澤真二「マルマンの「図案スケッチブック」がデザインそのままのポーチに 宝島社からムック付録で登場」『ねとらぼ』アイティメディア、2020年4月16日。2023年3月29日閲覧。
- ^ 緑里孝行「定番スケブがカードケースに。図案スケッチブックそのままのデザイン」『GAME Watch』インプレス、2021年9月21日。2023年3月29日閲覧。
- ^ 「【これ、付録です!】スケッチブックの図案が可愛いじゃばらカードケース」『BOOKウォッチ』ジェイ・キャスト、2021年9月26日。2023年3月30日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.116。
- ^ MdN (2018)、p.94。
- ^ 「マルマン「スケッチブック One Day」子供の自由な発想力を楽しく育む」『文マガ』ニチマ、2011年7月21日。2023年3月30日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.119。
- ^ MdN (2018)、p.120。
- ^ 「図案シリーズ スケッチパッド」『デジタル大辞泉プラス』 。コトバンクより2023年3月30日閲覧。
- ^ MdN (2018)、p.122-123。
- ^ 「【新製品】マルマンの定番スケッチブックがバインダーの表紙に」『文具のとびら』ステイショナー、2017年9月4日。2023年3月30日閲覧。
参考文献
[編集]書籍
[編集]- 『maruman公式 SketchBookのすべて-誰もが一度は使ったことがあるスケッチブック』エムディエヌコーポレーション、2018年6月21日。ISBN 978-4-8443-6761-1。 NCID BB27140453。OCLC 1050211249。
- ジョルニ編集部 編『いつまでも愛用したいステーショナリーBOOK』実業之日本社、2012年5月1日。ISBN 978-4-408-42049-3。 NCID BB10912438。OCLC 820757496。
- 高畑正幸『文房具語辞典-文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く』誠文堂新光社、2020年1月21日。ASIN B0834QGRW2。ISBN 978-4-416-51887-8。 NCID BB29692381。OCLC 1140706288。
雑誌
[編集]- 大山繁樹「共和 「オーバンド」 、シード 「レーダー」 、マルマン 「図案スケッチブック」 を分析 発売当初のデザインを生かし、新市場への浸透を目指す」『日経デザイン』第401号、日経BP、2020年11月、56-59頁、ISSN 09133429。
- 磯山友幸「創造をサポートし、60年 マルマンの「図案スケッチブック」」『Wedge』第387号、ウェッジ、2021年6月20日、44-46頁、NAID 40022626617。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 公式サイト
- 『図案シリーズ』 - コトバンク
- 『図案シリーズ スケッチパッド』 - コトバンク