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固定局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

固定局(こていきょく)は、無線局の種別の一つである。

定義

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総務省令電波法施行規則第4条第1項第1号に「固定業務を行う無線局」と定義している。 この固定業務とは、第3条第1項第1号に「一定の固定地点の間の無線通信業務(陸上移動中継局との間のものを除く。) 」と定義している。

概要

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定義を敷衍してみるとおり、単に陸上に固定された無線局のことではなく、通信の相手方も固定された無線局のみである無線局のことである。 但し、固定された無線局であっても陸上移動中継局との通信はできない。 この為、移動体との通信は陸上では基地局を、船舶無線航空無線では海岸局航空局あるいは携帯基地局を介して接続されることとなる。

移動業務に携わる無線局ではないので、陸上にあっても陸上局ではない。

主に利用されているのは、マイクロ波(3GHz~30GHz)による固定マイクロ通信として、数km~数十km離れた固定地点間の通信を担う。 具体的には、電話回線の中継、テレビジョン基幹放送の中継、地方公共団体間のネットワーク構築等である。 電気通信事業者などでは同一の無線設備で固定局と基地局との二重免許を取得することもある。 局舎も基地局などと、地上基幹放送送信所中継局では地上基幹放送局と併設されることもある。 また、同報系防災行政無線にも用いられる。 役所から屋外拡声器に至るまで、固定地点間の通信を担う。 [1]

免許

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外国籍の者に免許は原則として与えられないことは電波法第5条第1項に定められているが、例外として第2項に

  • 第5号 特定の固定地点間の無線通信を行う無線局(実験等無線局アマチュア無線局、大使館、公使館又は領事館の公用に供するもの及び電気通信業務を行うことを目的とするものを除く。)
  • 第6号 大使館、公使館又は領事館の公用に供する無線局(特定の固定地点間の無線通信を行うものに限る。)であつて、その国内において日本国政府又はその代表者が同種の無線局を開設することを認める国の政府又はその代表者の開設するもの)
  • 第8号 電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局

があり、外国人や外国の会社・団体でも固定局を開設できる。

引用の促音の表記は原文ママ

種別コードFX。 有効期間は免許の日から5年。但し、当初に限り有効期限は5年以内の一定の11月30日となる。(沿革を参照)

ほとんどの場合、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則により認証された適合表示無線設備を使用することとなるので簡易な免許手続の規定が適用され、予備免許落成検査が省略されて免許される。

  • 特定無線設備が制度化される以前は、無線機器型式検定規則による検定に合格した「検定合格機器」によるものが、簡易な免許手続の対象とされていた。
用途

局数の推移に見るとおり、防災行政用、水防水利道路用、電気通信業務用が多数を占める。

旧技術基準の機器の使用

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無線設備規則スプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [2] により、旧技術基準に基づく無線設備が条件なしで免許されるのは「平成29年11月30日」まで [3]、 使用は「平成34年11月30日」まで [4] とされた。

対象となるのは、

  • 「平成17年11月30日」[5]までに製造された機器、型式検定に合格した検定合格機器[6]または認証された適合表示無線設備[7]
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに製造された機器[8]、型式検定に合格した検定合格機器[9]または認証された適合表示無線設備[10]

である。

新規免許は2017年(平成29年)12月1日以降はできないが、使用期限はコロナ禍により[11]「当分の間」延期[12]された。

なお、検定合格機器は設置が継続される限り検定合格の効力は有効[13]とされるので、新たに使用期限が設定されても設置し続ける限り使用可能で再免許も可能。

詳細は無線局#旧技術基準の機器の使用を参照。

運用

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無線局運用規則第4章 固定業務、陸上移動業務及び携帯移動業務の無線局、簡易無線局並びに非常局の運用による。

操作

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固定局は、政令電波法施行令第3条第2項第6号に規定する陸上の無線局であり、最低でも第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理(常駐するという意味ではない。)を要するのが原則である。

地上基幹放送局と地上基幹放送試験局の無線設備を制御する放送事業用固定局では、空中線電力2kWを超えるテレビジョン基幹放送の制御用であれば第一級陸上無線技術士による、それ以外は第二級陸上無線技術士以上による管理を要する。 但し受信障害対策中継放送局及びコミュニティ放送局無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものを制御するものであれば、第三級総合無線通信士以上又は第二級陸上特殊無線技士以上で足りる。

例外を規定する電波法施行規則第33条の無線従事者を要しない「簡易な操作」から固定局に係わるものを抜粋する。

検査

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  • 落成検査は、適合表示無線設備を用いたものであれば省略される。これ以外でも一部を除き登録検査等事業者等による点検が可能でこの結果に基づき一部省略される。
  • 定期検査は、電波法施行規則第41条の2の6第1号により次のものを除き行われる。周期は別表第5号第1号により5年。一部を除き登録検査等事業者等による検査が可能で、この結果に基づき検査が省略される。
    • 単一通信路のもの
    • 多重通信路のもののうち、下記以外のもの
      • RZSSB方式で142MHz~170MHz又は335.4~470MHzを使用するもの
      • 狭帯域デジタル通信方式で142MHz~170MHz、255MHz~275MHz又は335.4MHz~470MHzを使用するもの
      • 54MHz~70MHzを使用する市町村デジタル防災無線通信
  • 変更検査は、落成検査と同様である。

沿革

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1950年(昭和25年) 

  • 電波法施行規則[15]制定時に定義、固定業務が「一定の固定地点の間の無線通信業務 」と定義
    • 免許の有効期間は5年。但し当初の有効期限は電波法施行の日から2年6ヶ月後(昭和27年11月30日)まで
    • 同時に「航空固定局」が「航空固定業務を行う無線局」と、「航空固定業務」が「航空、航空の準備及び航空の安全に関する情報を送信するための固定業務」と定義
  • 電波法施行規則全部改正[16]時に、「放送中継局」が「放送中継業務を行う無線局」と、「放送中継業務」が「公衆に直接させることを目的とせず放送番組の中継及びこれに附帯する事務のための無線通信業務」と定義

1952年(昭和27年)- 12月1日に最初の再免許

  • 以後、5年毎の11月30日に満了するように免許される。

1958年(昭和33年)- 放送中継業務は固定業務に統合され、放送中継局は固定局とみなされることに[17]

1982年(昭和57年)- 固定業務の定義が現行のものに[18]

1983年(昭和58年)- 外国公館が固定局を開設できることに[19]

1993年(平成5年)

  • 電波利用料制度化、電波法別表第6第9項の「その他の局」が適用[20]
  • 電気通信業務用および公共業務用以外の固定局は無線業務日誌の備付けを要しないものに[21]

1996年(平成8年)- 携帯電話事業において基地局と固定局の二つの免許が必要であった無線局が陸上移動中継局として認められることに[22]

1998年(平成10年)

  • 外国籍の者が電気通信事業用固定局を開設できることに[23]
  • 1900MHz帯を使用して端末設備又は自営電気通信設備と接続する電気通信業務用固定局は特定無線局[24]

1999年(平成11年)- 航空固定業務は固定業務に統合され、航空固定局は固定局とみなされることに [25]

2002年(平成14年)- 1900MHz帯電気通信業務用固定局は端末設備と接続するものに限って特定無線局とするものに [26]

2008年(平成20年)- 端末設備と接続する1900MHz帯電気通信業務用固定局は特定無線局ではないものに [27]

2009年(平成21年)- 固定局は全て無線業務日誌の備付けが不要に [28]

2011年(平成23年)- 外国籍の者が電気通信業務用以外の固定局を開設できることに [29]

局数の推移
年度 総数 防災行政用 水防水利道路用 電気通信業務用 出典
平成11年度末 78,840 31,982 17,933 5,044 地域・局種別無線局数[30] 平成11年度第4四半期末
平成12年度末 83,251 34,088 19,411 5,772 平成12年度第4四半期末
平成13年度末 86,485 35,452 20,433 6,682 用途別無線局数[31] H13 用途・業務・免許人・局種別
平成14年度末 88,481 36,374 20,797 7,632 H14 用途・局種別無線局数
平成15年度末 91,823 37,781 21,216 8,917 H15 用途・局種別無線局数
平成16年度末 94,337 38,543 21,506 10,120 H16 用途・局種別無線局数
平成17年度末 99,031 39,697 21,775 14,562 H17 用途・局種別無線局数
平成18年度末 102,732 40,651 22,130 16,908 H18 用途・局種別無線局数
平成19年度末 103,346 40,815 22,264 17,710 H19 用途・局種別無線局数
平成20年度末 104,983 42,452 23,130 17,243 H20 用途・局種別無線局数
平成21年度末 105,566 43,083 23,242 17,218 H21 用途・局種別無線局数
平成22年度末 105,446 43,250 23,382 16,990 H22 用途・局種別無線局数
平成23年度末 104,481 42,987 23,405 16,753 H23 用途・局種別無線局数
平成24年度末 104,032 44,678 23,264 14,668 H24 用途・局種別無線局数
平成25年度末 105,400 46,465 23,167 14,418 H25 用途・局種別無線局数
平成26年度末 104,752 47,778 23,137 13,432 H26 用途・局種別無線局数
平成27年度末 104,547 49,182 23,062 12,399 H27 用途・局種別無線局数
平成28年度末 101,484 50,614 22,969 10,961 H28 用途・局種別無線局数
平成29年度末 105,566 43,083 23,242 17,218 H29 用途・局種別無線局数
平成30年度末 99,178 51,271 22,734 8,820 H30 用途・局種別無線局数
令和元年度末 98,723 53,013 22,591 7,371 R01 用途・局種別無線局数
令和2年度末 99,402 53,771 22,448 7,019 R02 用途・局種別無線局数
令和3年度末 96,689 52,012 22,278 6,772 R03 用途・局種別無線局数
令和4年度末 93,943 50,444 21,646 6,612 R04 用途・局種別無線局数
令和5年度末 93,440 50,412 21,638 6,496 R05 用途・局種別無線局数
注 平成14年度から平成16年度にかけて特定無線局として免許されたものがあり開設局数が計上されている。

その他

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電波法令上の定義とは別に移動しない無線局を固定局と呼ぶことがある。例として、

脚注

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  1. ^ 固定局局数(総務省情報通信統計データベース - 通信白書 - 平成14年版 第2章 情報通信の現況 第5節 情報通信ネットワーク 2.無線局(3)(総務省情報通信統計データベース)(2009年10月26日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  2. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  3. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
  4. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  5. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  6. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第1項
  7. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第1項
  8. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項
  9. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第2項
  10. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
  11. ^ 無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集 -新スプリアス規格への移行期限の延長-(総務省報道資料 令和3年3月26日)(2021年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  12. ^ 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正
  13. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第4条第1項ただし書き
  14. ^ 平成2年郵政省告示第240号 電波法施行規則第33条の規定に基づく無線従事者の資格を要しない簡易な操作(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  15. ^ 昭和25年電波監理委員会規則第3号
  16. ^ 昭和25年電波監理委員会規則第14号
  17. ^ 昭和33年郵政省令第26号による電波法施行規則改正
  18. ^ 昭和57年郵政省令第34号による電波法施行規則改正
  19. ^ 昭和57年法律第59号による電波法改正の施行
  20. ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
  21. ^ 平成5年郵政省告示第217号による昭和35年郵政省告示第1017号改正
  22. ^ 無線局の業務分類についての免許の適用範囲の弾力化(総務省情報通信統計データベース - 通信白書 - 平成9年版 第2章第3節1.(3)規制緩和の推進 エ.(イ))(2009年10月25日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  23. ^ 平成9年法律第100号による電波法改正の施行
  24. ^ 平成10年郵政省令第75号による電波法施行規則改正
  25. ^ 平成10年郵政省令第105号による電波法施行規則改正の施行
  26. ^ 平成14年総務省令第96号による電波法施行規則改正
  27. ^ 平成20年総務省令第82号による電波法施行規則改正
  28. ^ 平成21年総務省告示第321号による昭和35年郵政省告示第1017号改正
  29. ^ 平成22年法律第65号による電波法改正の施行
  30. ^ 地域・局種別無線局数(総務省情報通信統計データベース - 分野別データ - 平成12年度以前のデータ)(2004年12月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  31. ^ 用途別無線局数(総務省情報通信統計データベース - 分野別データ - 電波・無線)
  32. ^ 無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準 第6条の2第2号
  33. ^ Q&A 09.「移動局」と「固定局」にはどのような違いがある?(特定ラジオマイク運用調整機構)

関連項目

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外部リンク

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