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国王手許金会計長官

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イギリスの旗 イギリス
国王手許金会計長官
Keeper of the Privy Purse
担当機関国王手許金会計官事務局
所在地ウェストミンスター
任命国王チャールズ3世(君主個人の裁量による)
任期国王陛下の仰せのままに
創設1526年
初代ヘンリー・ノリス英語版
俸給年額 172,021 GBP[1](2002年)

国王手許金会計長官英語: Keeper of the Privy Purse)は、イギリスの宮廷職。英国君主の私的な財産支出や慈善団体への寄付を管理する。長官を長としてバッキンガム宮殿内に国王手許金会計官事務局を置く。古くは王と親しい間柄の人物が長官に任命されるケースが多かった。

概要

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ジョージ4世戴冠式に際して正装した初代ブルームフィールド男爵。会計長官としての財布を手に持つ。

国王手許金会計長官は王室の財産管理に関して、国王付会計官(Treasurer to the King / Queen)とともに責任を負う[2]。会計官は英国君主による慈善団体への寄付及び加入、チャペル・ロイヤルの助成金管理も行う[2]。長たる会計長官を筆頭に会計官等のスタッフから成り、一つの部署をバッキンガム宮殿内に構成している[3]

その国王手許金会計官事務局はバッキンガム宮殿内の宮廷内郵便によって宮内長官事務局英語版国王秘書官事務局英語版などの各部署と連絡を取り合う仕組みとなっている[4]

英国の歴史英語版』では「大抵は王のお気に入りである会計長官」と触れられているが[5]、それゆえ初期の会計長官の中にはヘンリー・ノリス英語版のように処刑された事例もあった[6]。国王チャールズ2世ジェームズ2世、女王アンからジョージ2世の時代においては、会計長官は勅許状に基づいて宮内長官英語版の指名で任命された[5]。ただしジョージ3世の代には公文書上に任命記録がないことから、口伝えの非公式な任命へと変化したとされる[5]。またジョージ3世は寵臣第3代ビュート伯爵ジョン・ステュアート首相を退いた後も、会計長官として宮廷に留任させることで引き続き国政に関与させており[7]、悪しき前例を残している。その後、放蕩家の摂政ジョージの代に官報掲示による公式任命が再度復活して現在に至っている[5]

会計長官の管理する王室費の額もまた時代とともに変化してきた。17世紀から19世紀にかけては2万~6万ポンドであったが、外遊を好んだエドワード7世の代に11万ポンドへと増額されている[3]

現在の国王手許金会計長官はサー・マイケル・スティーブンス英語版(1958-)が務めている[8]

一覧

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国王手許金会計長官の歴代長官一覧
写真 在任中の爵位

氏名

(生没年)

在任期間 国王

(在位)

出典
ヘンリー・ノリス英語版

(1536年没)

1526 - 1536 ヘンリー8世

(1509–1547)

[6]
アンソニー・デニー英語版

(1501-1549)

1536年頃 [9]
ピーター・オズボーン英語版

(1521-1592)

1551-1552 エドワード6世

(1547–1553)

[10]
ジョン・タムワース

(生没年不詳)

1559‐1569 エリザベス1世

(1558–1603)

ヘンリー・セクフォード 1569-1603
初代準男爵英語版

サー・リチャード・モリニュー英語版

(1560-1622)

1607-? ジェームズ1世

(1603–1625)

初代ダンバー伯爵英語版

ジョージ・ヒューム英語版

(1556-1611)

1610-1611
初代アナンデイル伯爵

ジョン・マレー英語版

(?-1640)

1611-1616
初代モリニュー子爵英語版

リチャード・モリニュー英語版

(1594-1636)

1616?–1636 チャールズ1世

(1625–1649)

初代アンクラム伯爵

ロバート・カー英語版

(1578-1654)

1636?–1639 [11]
初代アーリントン伯爵

ヘンリー・ベネット

(1618-1685)

1661–1662 チャールズ2世

(1660–1685)

[5]
初代ファルマス伯爵英語版

チャールズ・バークリー英語版

(1630-1665)

1662-1665
バティスト・メイ英語版

(1628–1698)

1665–1685
ジェームズ・グレアム英語版

(1649–1730)

1685–1689 ジェームズ2世

(1685–1688)

初代ポートランド伯爵

ウィリアム・ベンティンク

(1649-1709)

1689-1700 ウィリアム3世

(1689–1702)

キャスパー・フレデリック・ヘニング

(?–1742)

1700-1702
マールバラ公爵夫人

サラ・ジェニングス

(1660-1744)

1702-1711 アン

(1702–1714)

マサム男爵夫人

アビゲイル・マサム

(1670-1734)

1711-1714
キャスパー・フレデリック・ヘニング

(?–1742)

1714-1727 ジョージ1世

(1714–1727)

オーガスタス・シューツ

(1689-1757)

1727–1757 ジョージ2世

(1727–1760)

エドワード・フィンチ英語版

(1697-1771)

1757-1760
第3代ビュート伯爵

ジョン・ステュアート

(1713-1792)

1760–1763 ジョージ3世

(1760–1820)

ウィリアム・ブレトン

(?–1773[12])

1763–1773
第5代カーディガン伯爵

ジェームズ・ブルーデネル英語版

(1725-1811)

1773-1811
初代準男爵

サー・ジョン・マクマホン

1812-1817
初代ブルームフィールド男爵

ベンジャミン・ブルームフィールド

(1768-1846)

1817-1822
ジョージ4世

(1820–1830)

初代準男爵英語版

サー・ウィリアム・ナイトン英語版

(1776-1836)

1822-1830
初代準男爵

サー・ヘンリー・フェルトリー英語版

(1777-1852)

1830-1846 ウィリアム4世

(1830–1837)

ヴィクトリア

(1837–1901)

ジョージ・エドワード・アンソン

(1812-1849)

1847-1849 [13]
サー・チャールズ・ボーモント・フィップス英語版

(1801-1866)

1849-1866 [14]
サー・チャールズ・グレイ英語版

(1804-1870)

※ビダルフ卿とともに共同就任。

1866-1867 [15]
サー・トマス・ミドルトン・ビダルフ英語版

(1809-1878)

※グレイ卿とともに共同就任。

1866-1878
サー・ヘンリー・ポンソンビー英語版

(1825-1895)

1878‐1895 [16]
サー・フリートウッド・エドワーズ英語版

(1842-1910)

1895‐1901 [17]
サー・ダイトン・プロビン英語版

(1833-1924)

1901-1910 エドワード7世

(1901–1910)

[18]
サー・ウィリアム・キャリントン英語版

(1845-1914)

1910-1914 ジョージ5世

(1910–1936)

[19][20]
初代シソンビー男爵英語版

フレデリック・ポンソンビー英語版

(1867-1935)

1914-1935 [21]
初代ウィグラム男爵英語版

クライブ・ウィグラム英語版

(1873-1960)

1935-1936 [22]
サー・ウリック・アレクサンダー英語版

(1889-1973)

1936-1952 ジョージ6世

(1936–1952)

[23][24]
第2代トライオン男爵

チャールズ・トライオン英語版

(1906-1976)

1952-1971 エリザベス2世

(1952-2022)

[25]
サー・レニー・モウズレー英語版

(1915-1988)

1971-1981 [26]
サー・ピーター・マイルズ英語版

(1924-2013)

1981-1987 [27]
サー・シェイン・ブルウィット英語版

(1935-)

1988-1996 [28]
サー・マイケル・ピート英語版

(1949-)

1996-2002 [29]
サー・アラン・レイド英語版

(1947-)

2002-2017 [30]
サー・マイケル・スティーブンス英語版(1958-) 2018- [31]
チャールズ3世

(2022-)

脚注

[編集]

注釈

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出典

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  1. ^ BBC NEWS | UK | The Royal Accounts 2002”. news.bbc.co.uk. 2021年8月16日閲覧。
  2. ^ a b Michael Ray(revised by Emily Rodriguez & Gloria Lotha) (2019年7月31日). “Royal Household of the United Kingdom” (英語). Encyclopædia Britannica. 『Britannica, The Editors of Encyclopaedia』. 2021年8月16日閲覧。
  3. ^ a b Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Privy Purse" . Encyclopædia Britannica (英語). Vol. 22 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 373.
  4. ^ 君塚直隆『エリザベス女王 史上最長・最強のイギリス君主』中央公論新社〈中公新書〉、2020年2月、26頁。ISBN 978-4121025784 
  5. ^ a b c d e “Keeper of the Privy Purse 1660–1837”. Office-Holders in Modern Britain: Volume 11 (Revised), Court Officers, 1660-1837. London: University of London. (2006). http://www.british-history.ac.uk/report.aspx?compid=43763 
  6. ^ a b Ives, E. W. "Norris, Henry". Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/20271 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  7. ^ 『悪党たちの大英帝国』株式会社新潮社東京都新宿区〈新潮選書〉、2020年、141頁。ISBN 9784106038587 
  8. ^ "Stevens, Sir Michael (John)", Who's Who (online ed., Oxford University Press, December 2018). Retrieved 6 June 2019.
  9. ^ P. Sil, Narasingha. "Denny, Sir Anthony". Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/7506 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  10. ^ Elzinga, J. G. "Osborne, Peter". Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/20880 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  11. ^ Stevenson, David. "Ker, Robert, first earl of Ancram". Oxford Dictionary of National Biography (英語) (online ed.). Oxford University Press. doi:10.1093/ref:odnb/15457 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入。)
  12. ^ Cruickshanks, Eveline (1970). "BRETON, William (d.1773), of Burlington St., London, and Canon Leigh, Devon.". In Sedgwick, Romney (ed.). The House of Commons 1715-1754 (英語). The History of Parliament Trust. 2021年8月27日閲覧
  13. ^ "No. 20688". The London Gazette (英語). 1 January 1847. p. 6. 2021年8月22日閲覧
  14. ^ "No. 21033". The London Gazette (英語). 30 October 1849. p. 3243. 2021年8月22日閲覧
  15. ^ "No. 23246". The London Gazette (英語). 30 April 1867. p. 2525. 2021年8月22日閲覧
  16. ^ "No. 24632". The London Gazette (英語). 11 October 1878. p. 5513. 2021年8月22日閲覧
  17. ^ "No. 10674". The Edinburgh Gazette (英語). 14 May 1895. p. 835. 2021年8月22日閲覧
  18. ^ Sysonby, Baron (UK, 1935 - 2009)”. www.cracroftspeerage.co.uk. 2021年8月22日閲覧。
  19. ^ "No. 28383". The London Gazette (英語). 10 June 1910. p. 4073.
  20. ^ "No. 12258". The Edinburgh Gazette (英語). 10 June 1910. p. 621.
  21. ^ Sysonby, Baron (UK, 1935 - 2009)”. www.cracroftspeerage.co.uk. 2021年8月22日閲覧。
  22. ^ "No. 34220". The London Gazette (英語). 15 November 1935. p. 7224.
  23. ^ "No. 34306". The London Gazette (Supplement) (英語). 20 July 1936. p. 4663.
  24. ^ "No. 15301". The Edinburgh Gazette (英語). 20 July 1936. p. 623.
  25. ^ Tryon, Baron (UK, 1940)”. www.cracroftspeerage.co.uk. 2021年8月22日閲覧。
  26. ^ "Maudslay, Major Sir (James) Rennie". Who's Who & Who Was Who (英語). Vol. 1920–2021 (2019, December 01 ed.). A & C Black. 2021年8月22日閲覧 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入)
  27. ^ "Miles, Sir Peter (Tremayne)". Who's Who & Who Was Who (英語). Vol. 1920–2021 (2019, December 01 ed.). A & C Black. 2021年8月22日閲覧 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入)
  28. ^ "Blewitt, Major Sir Shane (Gabriel Basil)". Who's Who (英語). Vol. 1920–2021 (2019, December 01 ed.). A & C Black. 2021年8月22日閲覧 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入)
  29. ^ “Sir Michael Peat to step down”. The Daily Telegraph (London). (24 January 2011). https://www.telegraph.co.uk/news/uknews/theroyalfamily/8278436/Sir-Michael-Peat-to-step-down-as-advisor-to-Prince-of-Wales.html 
  30. ^ "Reid, Sir (Philip) Alan". Who's Who (英語). Vol. 1920–2021 (2019, December 01 ed.). A & C Black. 2021年8月22日閲覧 (要購読、またはイギリス公立図書館への会員加入)
  31. ^ Sir Alan Reid, the Queen's money man, to hand over Royal purse strings next year” (英語). HeraldScotland. 2021年8月22日閲覧。

関連項目

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