コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

大石又七

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大石 又七(おおいし またしち、1934年1月23日[1] - 2021年3月7日)は、反核運動家。元漁船乗組員。

経歴

[編集]

静岡県榛原郡吉田村(現吉田町)生まれ[2]1948年、吉田村立南中学校を2年で中退し、漁師となった[2]第五福竜丸の甲板員・冷凍士として出航中の1954年3月1日マーシャル諸島ビキニ環礁での核実験ブラボー実験)で放射性降下物(いわゆる死の灰)を浴び被爆した(ビキニ事件)[3][4]脱毛水疱などの症状が出て、1年2か月間入院生活を送った[4]被爆者への無理解や偏見に耐えきれず、1955年東京都内に移住、2010年末までクリーニング店を営んだ[5]

差別や偏見が家族に及ぶことを恐れ、被爆について長年沈黙を貫いていたが、仲間の乗組員らががんなどで相次いで死去する中、1983年都内の中学生にビキニ事件について初めて話した[5]。これ以降、被爆体験を語り、核廃絶を訴える活動をすすめた。2002年、マーシャル諸島を訪問し、第五福竜丸乗組員の現況を語った[2]2010年5月、ニューヨーク国際連合本部ビルで開かれた2010年核拡散防止条約再検討会議英語版に参加し核廃絶を訴えた[2][6]。築地にマグロ塚を作る会主宰、財団法人第五福竜丸平和協会評議員[3]

放射線や内部被曝の危険性を訴え続け、「ビキニ事件と福島第一原子力発電所事故は、内部被曝を引き起こすという意味で本質的には全く同じ」と述べた[5]。また、ビキニ事件と日本原子力発電導入の関係や、ビキニ事件被爆補償の問題点について発言した[7]

2021年3月7日午前、誤嚥性肺炎のため死去[4][8][9][10]。87歳没。

著作

[編集]
  • 大石又七著、工藤敏樹編『死の灰を背負って : 私の人生を変えた第五福竜丸』 新潮社 1991年
  • 大石又七お話、川崎昭一郎監修『第五福竜丸とともに : 被爆者から21世紀の君たちへ』新科学出版社 2001年3月
  • 『ビキニ事件の真実 : いのちの岐路で』みすず書房 2003年
  • 大石又七『これだけは伝えておきたいビキニ事件の表と裏 第五福竜丸・乗組員が語る』かもがわ出版、2007年7月20日。ISBN 9784780300956 
  • 『矛盾 : ビキニ事件、平和運動の原点』武蔵野書房 2011年
  • The day the sun rose in the west : Bikini, the Lucky Dragon, and I Author: Oishi Matashichi; Translator: Minear, Richard H. , University of Hawaiʻi Press, May 2011[11]

テレビ出演

[編集]

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ 筒井健雄 (2011年12月1日). “新しい科学412”. 新しい科学. 2021年3月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 被ばくの経験を語り継ぐ”. NHK 戦争証言アーカイブス. 日本放送協会 (2013年2月14日). 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  3. ^ a b 大石又七 2007.
  4. ^ a b c 「第五福竜丸」元乗組員 “死の灰”で被ばく 大石又七さん死去”. NHK NEWS WEB. 日本放送協会 (2021年3月21日). 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  5. ^ a b c 「ザ・特集:福島第1原発事故11カ月 『死の灰』の教訓、どこへ 大石又七さんに聞く」『毎日新聞』東京朝刊、2012年2月16日
  6. ^ ヒバクシャ '10夏 死の灰の脅威、今も――大石又七さん”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2010年8月1日). 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  7. ^ 被爆体験聞き書き行動第1回実行委員会「ビキニ事件~忘れられた被爆者~」元第五福竜丸乗組員 大石 又七さん 2002年09月28日 コーププラザ浦和
  8. ^ 第五福竜丸の大石又七さん死去”. this.kiji.is. 共同通信社 (2021年3月21日). 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  9. ^ 第五福竜丸の元乗組員・大石又七さん死去 87歳”. 朝日新聞DIGITAL. 朝日新聞 (2021年3月21日). 2021年3月21日閲覧。
  10. ^ 「第五福竜丸」大石さん死去 米の水爆実験で被ばく、87歳―反核活動に注力”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2021年3月21日). 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  11. ^ The Day the Sun Rose in the West: Bikini, the Lucky Dragon, and I ハワイ大学出版局
  12. ^ NHKスペシャル 又七の海 ~死の灰をあびた男の38年~”. NHK 戦争証言アーカイブス. 日本放送協会. 2021年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ2021年3月21日閲覧。
  13. ^ 【ETV特集】「大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話」
  14. ^ gooテレビ番組「ザ・スクープスペシャル」- 原発と原爆〜日本の原子力と米国の影〜
  15. ^ gooテレビ番組「テレメンタリー」- 2014 「第五福龍丸被ばく60年〜還れない島〜」 -
  16. ^ 白い灰の記憶〜大石又七が歩んだ道〜”. NHK (2021年7月24日). 2021年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月25日閲覧。

外部リンク

[編集]