婦人の肖像 (クリムト)
イタリア語: Ritratto di signora 英語: Portrait of a Lady | |
作者 | グスタフ・クリムト |
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製作年 | 1916年 - 1917年 |
種類 | 油彩、カンヴァス |
寸法 | 60 cm × 55 cm (24 in × 22 in) |
所蔵 | リッチ・オッディ近代美術館、ピアチェンツァ |
『婦人の肖像』(ふじんのしょうぞう、伊: Ritratto di signora, 英: Portrait of a Lady)は、オーストリアの画家グスタフ・クリムトが1916年から1917年にかけて描いた絵画である[1][2][3]。
概要
[編集]クリムトの晩年の作品である[4]。イタリア北部の都市ピアチェンツァに所在するリッチ・オッディ近代美術館に所蔵されている[1][5][6]。
縦 60 センチメートル、横 55 センチメートルの大きさをもつ[3][6]。カンヴァスに油彩で描かれている[7][8]。本作は、表現主義に分類されるもので、1人の若い女性の上半身が描かれている[9][10]。女性の髪の色は黒色であり、頬は赤色である[9][11]。女性は、左の肩越しに視線を向けている[12]。背景は、エメラルドグリーンで塗られている[9]
1925年、ジュゼッペ・リッチ・オッディが本作を買収する[13]。1912年にドイツのドレスデンで展示され、同じ年に所在がわからなくなっていた『若い婦人の肖像』という絵画の上から本作が描かれていることが、1996年4月頃に美術学生によって発見され、美術界で「2つのクリムト」として知られることになった[14][15][4][11][12][3]。『若い婦人の肖像』は、本作とは異なり、女性が帽子とスカーフを身につけている[16]。
盗難
[編集]1997年2月22日、リッチ・オッディ近代美術館が改修工事に伴って閉館されていた際に、本作の所在が不明になる[17][18][1]。作品の金色のフレームと紐が美術館の屋根の上で発見されたことから、夜の間に何者かが美術館の天窓から鉤のような器具を取り付けた紐を垂らし、本作を吊り上げて盗み去ったか、もしくは何者かが天窓から美術館の中に侵入して本作を盗み去った可能性があると考えられていた[17][19][16][11][5]。
同年4月1日、イタリアとフランスの国境に位置するヴェンティミーリアにおいて、政治家ベッティーノ・クラクシ宛ての小包を国境警備隊が回収し検査したところ、クリムトによると思われる作品が入れられていた。しかし、それは巧妙に作られた贋作であることが判明した[19][12][20]。
2019年12月10日、庭師がリッチ・オッディ近代美術館の外壁表面を覆うツタを取り除いていたところ、金属製の小さなドアを発見し、その中のスペースから本作が発見された[17][21][11]。作品は黒いビニール製のごみ袋に入れられており、無傷であった[19][22][23][10][24]。2020年1月17日、発見された作品が、クリムトによって描かれた本物であることが明らかにされた[5][1]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “壁から発見された絵画、盗まれたクリムトの作品と確認 伊美術館”. AFPBB News. (2020年1月18日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Italian police think stolen Klimt masterpiece found hidden behind ivy”. ロイター. (2019年12月11日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “RITRATTO DI SIGNORA DI GUSTAV KLIMT”. リッチ・オッディ近代美術館. 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b “Portrait of a Lady: Stolen Klimt mystery 'solved' by gardener in Italy”. BBCニュース. (2019年12月11日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “美術館の隠し扉の中から発見、クリムトの絵画は本物と鑑定”. 読売新聞. (2020年1月18日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b 『グスタフ・クリムトの世界』 2018, p. 185.
- ^ “Gustav Klimt theft case reopens in Italy 17 years on”. ガーディアン. (2014年3月16日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Experts Confirm the Authenticity of the Stolen Klimt Painting Found Hidden in a Museum’s Wall”. artnet News. (2020年1月20日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “Painting found in Italy wall is stolen Klimt”. France 24. (2020年1月17日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b “盗難のクリムトの絵発見 美術館の外壁から―伊”. 時事ドットコムニュース. (2020年1月18日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c d “美術館の隠れた扉から絵画発見、23年前に消えたクリムト作品か”. CNN. (2019年12月14日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “The mystery of the stolen Klimt”. BBCニュース. (2016年12月8日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Portrait of a Lady: Painting found in wall confirmed as stolen Klimt”. BBCニュース. (2020年1月17日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “23年ぶりクリムト名画発見 イタリアの美術館に隠し扉”. 日本経済新聞. (2020年1月18日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Klimt art thieves confess to stealing then returning painting”. ガーディアン. (2020年1月21日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b “Confessed Thief in 1997 Gustav Klimt Heist Claims Canvas Will Soon Be Returned”. artnet News. (2016年12月9日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “23年ぶりクリムト名画発見 70億、伊美術館の隠し扉に”. 産経新聞. (2020年1月18日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Il Klimt è autentico”. リッチ・オッディ近代美術館. 2020年3月6日閲覧。
- ^ a b c “1997年に盗まれたクリムトの絵画、美術館の隠し扉から発見か”. ロイター. (2019年12月13日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “Klimt Painting Found in Museum’s Wall Is Authentic, Experts Say”. ニューヨーク・タイムズ. (2020年1月17日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ 笹子美奈子 (2019年12月12日). “盗まれたクリムトの絵画か、23年ぶりに同じ美術館で発見”. 読売新聞 2020年3月6日閲覧。
- ^ 坂本鉄男 (2020年2月4日). “【イタリア便り】消えたクリムト 23年後の発見”. 産経新聞 2020年3月6日閲覧。
- ^ “22年間行方不明のクリムトの作品 美術館の隠し扉で発見”. スプートニク日本ニュース. (2019年12月13日) 2020年3月6日閲覧。
- ^ “消えたクリムトの絵、22年ぶり発見 壁の中から偶然に”. 朝日新聞. (2019年12月14日) 2020年3月6日閲覧。
参考文献
[編集]- 海野弘『グスタフ・クリムトの世界 女たちの黄金迷宮』パイインターナショナル、2018年7月。ISBN 978-4-7562-5041-4。
外部リンク
[編集]- ウィキメディア・コモンズには、婦人の肖像 (クリムト)に関するカテゴリがあります。