安中貨物
安中貨物(あんなかかもつ)は、群馬県安中市にある東邦亜鉛が、日本貨物鉄道(JR貨物)に委託し運行している貨物列車の通称である。信越本線の安中駅から、高崎線、常磐線などを経由して福島臨海鉄道の小名浜駅までを結ぶ。 積荷は鉱石で、正式にも鉱石輸送列車などとして表記されている。[要出典]
概要
[編集]福島臨海鉄道の小名浜駅(小名浜製錬所、福島県いわき市・福島臨海鉄道宮下駅)と信越本線の安中駅(安中製錬所、群馬県安中市)の間を走っている貨物列車。非鉄金属分野の大手企業「東邦亜鉛」がJR貨物に委託して走らせているが、この会社は亜鉛や鉛の製錬を中心に、電子部品の製造などの業務を行っている。小名浜製錬所と安中製錬所の2工場間で鉱石等をやりとりするための貨物列車が本列車である。なお、この安中製錬所は東洋一の亜鉛工場と言われている。[要出典]
列車名は当初より「東邦号」と称されていたが定着せず、鉄道ファンの間では「安中号」、後に「安中貨物」と通称されるようになった[1]。
歴史
[編集]安中貨物は昭和55年度の貨物時刻表にすでに掲載されている。 安中製錬所操業開始が昭和12年、小名浜製錬所操業開始が昭和38年なので、鉄道輸送は昭和40年代からである。
1963年の小名浜製錬所操業開始後は宮下駅 - 安中駅間で亜鉛焼鉱の輸送を開始し、当初は無蓋車(トラ)にカバーを掛けて運用されたが、1969年には東邦亜鉛所有の私有貨車として亜鉛焼鉱専用のタンク車タキ15600形を20両新造投入し、1列車あたり16両編成での亜鉛焼鉱輸送が開始された[2]。当初の運行経路は水戸線・両毛線経由であった[2]。
1981年からは小名浜製錬所で亜鉛精鉱の3分の2を焙焼し、残り3分の1を亜鉛精鉱のまま安中製錬所へ輸送して焙焼する体制が取られることになり、国鉄所有のトキ25000形による亜鉛精鉱輸送が開始された[3]。
1990年代末にこの鉱石輸送もコンテナ輸送やトラックへの切り替えなどが検討されたが、輸送量やコストを考慮した上で最終的には無蓋貨車、タンク貨車での輸送形態が続けられることになった。1999年には国鉄からJR貨物に継承されたトキ25000形の置き換えとして東邦亜鉛所有の私有貨車であるトキ25000形12両を新製投入した[3]。2001年に両毛線の貨物列車が廃止されたため、往路の安中行きが田端操駅経由、復路の宮下行きが武蔵野線経由に変更された[3]。
2010年からはタキ15600形の老朽置き換え用としてタキ1200形が20両新造され、2013年春に全面置き換えが完了した[3]。2011年3月11日に発生した東日本大震災では小名浜製錬所が被災したが、津波の被害は免れ、5月30日に安中貨物の運転が再開されている[3]。しかし夏季には電力不足による計画停電の影響で安中製錬所が2ヶ月ほど操業を停止し、この間は安中貨物も運休していた[3]。
2015年1月には小名浜駅が宮下駅寄りに約0.6 km移転して宮下駅が廃止され、東邦亜鉛専用線との接続駅が小名浜駅に変更された[3]。同年3月のダイヤ改正では往復とも武蔵野線経由での運転に変更された[3]。2016年に最高速度が75 km/hから95 km/hへ引き上げられた[3]。
東邦亜鉛は2021年11月8日に焙焼工程を小名浜製錬所に集約した上で安中製錬所の焙焼炉を休止し[4][5]、他の主要設備についても2025年3月末までの稼働停止を予定している[6]。
使用車両
[編集]機関車
[編集]EH500形電気機関車(愛称:eco-power 金太郎) ・(仙台総合鉄道部所属機のみ)
2024年現在、関東地区で運用される交直両用電気機関車が本系列のみであるため、EH500形が使用される。 かつて当列車を含めた常磐線交流区間の貨物列車運行がJR東日本に委託されていた時期があり、寝台特急「北斗星」・「カシオペア」用のEF510形500番台と共通運用が組まれ牽引していたが、2015年の北斗星廃止によりJR東日本がEF510形の一部をJR貨物に売却した際、委託を終了し以降はEH500形のみで運用されるようになった。[要出典]
貨車
[編集]-
タキ1200形
-
トキ25000形
事故
[編集]2018年7月4日15時9分頃、武蔵野線越谷レイクタウン駅構内で、下り線に停車中の東京行き各駅停車の運転士が、通過する安中行き専貨5094列車(機関車1両+貨車18両)とのすれ違いの際に異常音を感知し、防護無線を発報した。停車した5094列車の運転士が確認したところ、後ろから2両目のトキ25000-6のテントカバーが外れ、各駅停車に接触しているのを発見した。この影響で武蔵野線は約4時間半に渡って運転見合わせとなった事故があった。また、翌日以降の安中行は無蓋車無しのタンク車のみの編成で運行されていた。事故を起こしたトキ25000-6は、当日中に最寄りの貨物駅である越谷貨物ターミナルへ移動され、側線に留置された。この事故による怪我人等は居なかったものの、この事故の影響で武蔵野線は南越谷~吉川美南の間で、約4時間近く運転見合わせとなり帰宅ラッシュ時間帯も、かなり影響を受けた。[要出典]
運行経路
[編集]安中 -【高崎線】- 大宮操車場 -【武蔵野線】- 北小金 -【常磐線】- 泉 -【福島臨海鉄道本線】- 小名浜
運行時刻
[編集]下記に記載される時刻は2024年3月16日時点のものである[7]。
5094レ - 5097レ 砂利鉱石(高速)
- 小名浜(泉)1141
- 日立 1230
- 水戸 1305 - 1308
- 土浦 1406
- 南流山 1449
- 越谷タ 1503
- 大宮操 1527 - 1536
- 大宮 1539
- 熊谷タ 1620
- 高崎操 1646 - 1648
- 安中 1707
5098レ - 5095レ 砂利鉱石返空(高速)
- 安中 2004
- 高崎操 2021 - 2045
- 熊谷タ 2119 - 2202
- 大宮 2242
- 大宮操 2247 - 2301
- 越谷タ 2322
- 南流山 2335
- 土浦 024 ㋵
- 水戸 105 - 517
- 日立 545
- 小名浜(泉)632
脚注
[編集]- ^ 『新しい貨物列車の世界』2021年、p.112
- ^ a b 『新しい貨物列車の世界』2021年、p.113
- ^ a b c d e f g h i 『新しい貨物列車の世界』2021年、p.114
- ^ “東邦亜鉛、製錬事業を再編 群馬で焙焼炉など休止”. 日本経済新聞. (2021年5月31日) 2024年12月19日閲覧。
- ^ “廃棄物処理施設の維持管理に関する情報”. 東邦亜鉛株式会社. 2024年12月19日閲覧。
- ^ “東邦亜鉛 安中製錬所の製錬設備停止へ”. 上毛新聞 2024年12月19日閲覧。
- ^ 田畑努 編『2024貨物時刻表』公益社団法人鉄道貨物協会、2024年3月16日、96,131,132,134頁。
参考文献・出典
[編集]- 『新しい貨物列車の世界』交通新聞社〈トラベルMOOK〉、2021年、112 - 115頁。
- 論文 - 小名浜・安中製錬所の亜鉛製錬〔東邦亜鉛(株)〕
- 小名浜・安中製錬所の亜鉛製錬〔東邦亜鉛(株)〕
- 「安中貨物」に関するブログ - 鉄道コム (tetsudo.com)
- The安中貨物 | ゆうづるのブログ (ameblo.jp)
- “東邦亜鉛、安中の焙焼炉休止 来春までに、雇用は維持”. 上毛新聞社
- 勝田車両センター 赤電撮影会(ツアー)(2022年1月15日) - 鉄道コム (tetsudo.com)
- “JR貨物、線路使用料「30年戦争」を終わらせる秘策”. 東洋経済オンライン
- ホリプロマネージャー南田裕介オフィシャルブログ #安中貨物
- 朝日新聞デジタル “武蔵野線一部で運転見合わせ 貨物列車と接触”