富雄丸山古墳
富雄丸山古墳 | |
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墳丘全景 | |
所在地 | 奈良県奈良市丸山1丁目 |
位置 | 北緯34度39分59.35秒 東経135度45分7.68秒 / 北緯34.6664861度 東経135.7521333度座標: 北緯34度39分59.35秒 東経135度45分7.68秒 / 北緯34.6664861度 東経135.7521333度 |
形状 | 円墳 |
規模 | 直径109m |
埋葬施設 | 粘土槨(内部に割竹形木棺) |
出土品 | 副葬品多数・埴輪片 |
築造時期 | 4世紀後半 |
史跡 | なし |
有形文化財 | 出土品(国の重要文化財) |
特記事項 | 円墳としては全国第1位の規模 |
地図 |
富雄丸山古墳(とみおまるやまこふん)は、奈良県奈良市丸山にある古墳。形状は円墳。史跡指定はされていない。出土品は国の重要文化財に指定されている。
円墳としては全国で最大規模の古墳で、4世紀後半(古墳時代前期後半)頃の築造と推定される。
概要
[編集]奈良盆地北部、奈良市街地から西方の富雄川右岸に築造された大型円墳である[1]。明治期に盗掘を受けたのち、1972年(昭和47年)の団地造成の際に発掘調査が実施されたほか[1]、2017年度(平成29年度)から奈良市教育委員会により史跡整備に向けた調査が実施されている。
墳形は円形で、直径109メートルを測り、円墳としては全国で最大規模になる[2][注 1][注 2]。墳丘は3段築成。墳丘外表では葺石・埴輪片が検出されているほか[1]、墳丘北東側には造出を有する[3]。墳丘中央の埋葬施設は粘土槨で、内部には割竹形木棺(推定長6.9メートル弱)が据えられたと見られる[1]。出土品には、伝出土品として石製品・鍬形石・合子・管玉・銅製品など(京都国立博物館所蔵)や、同じく伝出土品として三角縁神獣鏡3面(天理大学附属天理参考館所蔵)が知られるほか、発掘調査出土品として武器類・鉄製品類・巴形銅器・形象埴輪がある[1]。なお、発掘調査出土品のうち鍬形石片は、京都国立博物館所蔵の鍬形石と一致することが認められている[1]。築造時期は古墳時代前期後半の4世紀後半頃と推定される[3]。
京都国立博物館所蔵の伝出土品は1957年(昭和32年)に国の重要文化財に指定されている[4]。なお、北東側には小古墳の丸山2号墳・丸山3号墳の築造も認められており、丸山古墳と合わせて現状保存されている[3]。
また、史跡整備調査のうち、国史跡指定を目指すため2018年度(平成30年度)より発掘調査が行われた。2022年(令和4年)10月、墳丘と同じく3段築成の造出から粘土槨の埋葬施設が新たに見つかった。粘土槨は全長約6.4メートル、幅約1.2メートル。内部に木棺が確認され翌月から発掘を開始、2023年(令和5年)1月にその成果が公表された。木棺を覆った粘土層から過去最大の蛇行剣、その下層から今までに例を見ない盾形銅鏡が出土し、「古墳時代の工芸の最高傑作」との評価も受ける大きな発見となった[5][6][7][8][9][10]。
歴史
[編集]- 明治期、盗掘により副葬品多数の出土。
- 1957年(昭和32年)2月19日、伝出土品が国の重要文化財に指定[4]。
- 1972年(昭和47年)、墳丘測量調査および墳頂部埋葬施設の発掘調査(奈良県立橿原考古学研究所)[3]。
- 1982年(昭和57年)、墳丘一部の追加調査[3]。
- 2017年(平成29年)度、航空3次元測量調査(奈良市教育委員会文化財課埋蔵文化財調査センター)[3]。
- 2018年(平成30年)度以降、発掘調査(奈良市教育委員会文化財課埋蔵文化財調査センター)[2]。
- 2023年(令和5年)1月25日、奈良市教育委員会と奈良県立橿原考古学研究所は、2m37cmの国内最大の蛇行剣と、過去に類例の無い鼉龍文盾形銅鏡(だりゅうもんたてがたどうきょう)が発見されたと発表した[11][12][7][8][9][10]。
文化財
[編集]重要文化財(国指定)
[編集]- 大和富雄丸山古墳出土品 一括(考古資料) - 明細は以下。京都国立博物館保管。1957年(昭和32年)2月19日指定[4]。
- 斧頭形石製品 9箇
- 刀子形石製品 6箇
- 鑿形石製品 1箇
- 鑓鉋形石製品 1箇
- 鍬形石 2箇
- 琴柱形石製品 12箇
- 碧玉合子 2合
- 碧玉管玉 17箇
- 有鉤釧形銅製品 1箇
- 銅板 2枚
その他
[編集]- 三角縁神獣鏡 3面 - 国の重要美術品。伝富雄丸山古墳出土、天理大学附属天理参考館保管。
- 三角縁画文帯五神四獣鏡
- 三角縁吾作銘四神四獣鏡
- 三角縁画像文帯盤龍鏡
なお、弥勒寺(奈良市中町)の伝世品である三角縁吾作銘二神二獣鏡(奈良市指定有形文化財)を富雄丸山古墳出土品とする説があったが、上記出土品とは明らかに時期が異なるため、現在では否定の向きが強い[13]。
-
三角縁吾作銘四神四獣鏡(国の重要美術品)
天理大学附属天理参考館展示。 -
三角縁画像文帯盤龍鏡(国の重要美術品)
天理大学附属天理参考館展示。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f 富雄丸山古墳(平凡社) 1981.
- ^ a b 富雄丸山古墳範囲確認発掘調査事業に係る発掘調査の成果発表について (PDF) (2019年1月16日報道発表資料、リンクは奈良市ホームページ)。
- ^ a b c d e f 富雄丸山古墳の墳丘測量調査成果について 〜国内最大の円墳の可能性〜 (PDF) (2017年11月15日報道発表資料、リンクは奈良市ホームページ)。
- ^ a b c 大和富雄丸山古墳出土品 - 国指定文化財等データベース(文化庁)
- ^ “奈良・富雄丸山古墳で国内最大の蛇行剣出土、類例ない盾形銅鏡も”. 産経ニュース. 2023年1月25日閲覧。
- ^ “類例なく「国宝級」発見 「盾形銅鏡」出土 奈良の富雄丸山古墳”. 毎日新聞. 2023年1月26日閲覧。
- ^ a b 【速報動画】国内最古で最大の蛇行剣を初公開!富雄丸山古墳から日本最大の蛇行剣・前例のない銅鏡が出⼟!
- ^ a b 国宝級発見が一挙に2つ 精緻な文様の「盾形銅鏡」・最大級2.37mの「蛇行剣」ともに日本最大の円形古墳「富雄丸山古墳」から見つかる【関西テレビ・報道ランナー】
- ^ a b 富雄丸山古墳発掘調査 国内最大の鉄剣と前例のない盾形銅鏡が出土
- ^ a b 奈良しみんだより 令和5年3月号(テキスト版) 2 - 5ページ
- ^ “奈良・富雄丸山古墳で国内最大の蛇行剣出土、類例ない盾形銅鏡も”. 産経ニュース. 2023年1月25日閲覧。
- ^ “類例なく「国宝級」発見 「盾形銅鏡」出土 奈良の富雄丸山古墳”. 毎日新聞. 2023年1月26日閲覧。
- ^ 鐘方正樹「弥勒寺蔵三角縁吾作銘二神二獣鏡について」『奈良市埋蔵文化財調査年報 平成21(2009)年度』奈良市教育委員会、2012、pp.147 – 152(参照:全国遺跡報告総覧(奈良文化財研究所サイト)
参考文献
[編集](記事執筆に使用した文献)
- 史跡説明板(奈良市教育委員会文化財課設置)
- 地方自治体発行
- 事典類
- 「富雄丸山古墳」『日本歴史地名大系 30 奈良県の地名』平凡社、1981年。ISBN 4582490301。
- 大塚初重「丸山古墳 > 富雄丸山古墳」『日本古墳大辞典』東京堂出版、1989年。ISBN 4490102607。
関連文献
[編集](記事執筆に使用していない関連文献)
- 『富雄丸山古墳 -奈良市大和田町富雄丸山古墳群発掘調査報告-(奈良県文化財調査報告書 第19集)』奈良県教育委員会、1973年。
- 『富雄丸山古墳・西宮山古墳出土遺物 -京都国立博物館蔵-』京都国立博物館、1982年。
外部リンク
[編集]- 大和富雄丸山古墳出土品 - 国指定文化財等データベース(文化庁)