将校及び紳士に相応しくない行為
将校及び紳士に相応しくない行為(しょうこうおよびしんしにふさわしくないこうい、Conduct unbecoming an officer and a gentleman)、しばしば略して相応しくない行為(不品行行為、conduct unbecoming)とは、一部の国の軍法において定められている犯罪である。将校(士官)を対象とし、この中には士官候補生が含まれる場合もあり、軍人としては厳罰にあたる不名誉除隊に処される場合もある。
イギリスの事例
[編集]このフレーズは、18世紀から19世紀初頭にかけてイギリス軍の軍法会議において罪状として用いられたが、条文で特定の犯罪行為として定義されていたわけでもなかった[1]。例えば、1813年に軍法会議に掛けられたサー・ジェイ・イーマー大佐(Colonel Sir J Eamer)の事例では、「同連隊に所属するB・V・サイムズ大尉(Captain B V Symes)に対し、将校や紳士としてあるまじき、疚しく恥ずべき行為(scandalous, infamous manner)を働いたため」とされていた[2]。 その後、1860年8月10日に制定された英国海軍規律法で初めて成文化されたようであり[3]、そこには以下のように書かれていた。
第24条:この法律の適用を受けるすべての将校は、残虐な行為や不祥事、あるいは不正な行為の罪を犯した場合に、女王陛下の軍隊より不名誉除隊を受けるものとする。 また、この法律の適用を受けるすべての将校は、将校として品位に欠けるその他の行為の罪を犯した場合に、不名誉かは問わず女王陛下の軍隊より除隊されるものとする。
— William Loney RN - Background - The Naval Discipline Act, 1861
アメリカの事例
[編集]アメリカ軍においては、合衆国法典第10編中の米国軍法典(UCMJ)の懲罰規定第133条(10 U.S. Code §933 - Art.133)で定義されている。
構成要件として[4]、
- 被告人がある行為をした、またはしなかった(不作為)こと
- 特定状況下においてこれら行為または不作為が、将校及び紳士にふさわしくない行為であること
ここでいう将校(士官)とは、性別に関係なく、広く将校や士官候補生が含まれると解されており、そのためにより一般的な「ふさわしくない行為(conduct unbecoming)」という言葉が用いられている。紳士は、不誠実な行為、下品な態度、違法行為、不当な取引、非礼な言動、不正行為、残虐行為を避ける義務があるとされている[5]。
チェルミス・ロープウェイ切断事件では機体に搭載されていたビデオカメラのテープを破棄したことが、軍法会議ではの司法妨害とみなされ、将校及び紳士に相応しくない行為により、被告人が不名誉除隊となった。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ Buckley, Roger Norman (1998). The British Army in the West Indies: Society and the Military in the Revolutionary Age. University Press of Florida. p. 239. ISBN 0-8130-1604-5
- ^ E Samuel, An Historical Account of the British army: and of the Law Military William Clowes, London 1816 (p.650)
- ^ Rees, N. (1987). Why Do We Say ...?. ISBN 0-7137-1944-3
- ^ Article 133 of the punitive code of the UCMJ, local copy at Cornell University
- ^ Powers, Rod. “Article 133: Conduct unbecoming an officer and gentleman”. About.com. 2008年5月16日閲覧。
関連項目
[編集]- 軍旗の陰影 - 1975年の映画。原題が『conduct unbecoming』。