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慢性腎不全

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
慢性腎不全
概要
診療科 腎臓学
分類および外部参照情報
ICD-10 N18
ICD-9-CM 585 403
DiseasesDB 11288
MedlinePlus 000471
eMedicine med/374
Patient UK 慢性腎不全
MeSH D007676

慢性腎不全(まんせいじんふぜん、: Chronic renal failure)は、慢性に生じた腎不全。糸球体や尿細管が冒されることで生じるが、原因はさまざまである。

解説

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自覚症状がないまま、数カ月から数十年かけて腎機能の低下が進み、失われた機能が回復する見込みはほとんどない[1]

統計

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  • 慢性糸球体腎炎が一番で50%、糖尿病性腎症が二番で15%。
  • 透析導入まで至った症例では、糖尿病性腎症38%、慢性糸球体腎炎32%、腎硬化症7.6%。

疫学

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便秘があると慢性腎臓病や末期腎不全になりやすいとの報告がある[2]

原因

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病態

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病期は第1期〜第4期に分けられる。

第1期(腎予備能減少期)
GFR(糸球体濾過値)が正常〜50%の間に減少した時期であるが、生体の恒常性はほぼ正常に維持されており、無症状である。
第2期(代償性腎不全期)
GFRが、50〜30%に低下し尿濃縮機能の低下、軽度の高窒素血症、軽度の貧血を認める。
第3期(腎不全期、非代償期)
GFRが30〜5%に低下し、高窒素血症(高アンモニア血症)、等張尿、夜間尿、代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、高P血症、低ナトリウム血症などが認められる(糸球体濾過量が30ml/分以下に低下した状態が続くものを言う)。
第4期(尿毒症期、末期腎不全)
GFRが5%以下となり、多彩な症状(尿毒症症状)が出現し、放置すれば死に至る。

臨床像

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  • 第1期(腎予備能減少期)から見られるもの
  • 第2期(代償性腎不全期)から見られるもの
  • 第3期(腎不全期、非代償期)から見られるもの
    • 腎性貧血
      腎性貧血は、腎不全が原因で起こる貧血
      • 病態
      腎臓は赤血球を作るホルモンであるエリスロポエチンを作っているので、慢性腎不全ではエリスロポエチンが不足して正球性正色素性貧血になる。
    • 高リン酸血症 : 糸球体濾過量の低下による。
    • 低カルシウム血症
      高リン酸血症に反応した二次性の高副甲状腺ホルモン血症による事と、腎臓でのビタミンDの活性化障害による低ビタミンD血症による事との、二つの理由による。第3期から発症する。
  • 第4期(尿毒症期、末期腎不全)から見られるもの
    • 浮腫
    • 尿毒症
      尿毒症は、尿毒素による症候
      • 症状
        • 呼吸困難
          尿毒素は不揮発性酸性物質なので、代謝性アシドーシスを来たす。ホメオスタシスはアシデミアを回避するために呼吸を用いて代償しようとするために、呼吸が激しくなる。
        • 腎性貧血
          エリスロポエチンの産生低下による正球性正色素性貧血を来たす。
        • 肺水腫
          水分の排泄障害から体液の増加を来たし、循環血漿量の増加から鬱血性心不全を来たし、心不全から肺水腫に至る。心障害から至る肺障害を心性肺と言う。
        • 中枢症状
          尿毒素による神経障害から、意識障害、頭痛、等を来たす。
    • 線維性骨炎
      線維性骨炎は、副甲状腺ホルモン(以下PTH)が過剰になることで骨が粗鬆化する病気。
      • 病態
        腎不全ではリン酸の排泄が停滞して高リン酸血症となる。血中に溢れたリン酸は血清カルシウム(以下Ca)を抱き込んで析出して組織に沈着するので、低Ca血症を起こす。また血中Ca濃度を高めるホルモンであるビタミンDは腎臓で活性化されるので、腎不全ではビタミンD不足にもなる。高リン酸血症とビタミンD不足の両方の原因によって慢性の強力な低Ca血症が続く。すると血中Ca濃度を高めるホルモンであるPTHが常に出続けて高PTH血症となる。PTHは骨からCaを血中へ吸収することによって血中Ca濃度を高めようとするので、骨からCaが吸収されすぎて骨がスカスカになる。
      • 検査
        • X線写真
          X線写真では骨嚢胞こつのうほう)が見られる。これは、PTHによってCaが吸収された結果骨に嚢胞状の空洞ができた所見。

治療

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  • 慢性腎不全の治療には
    • 保存療法
    • 食事療法 - 管理栄養士などの専門家の食事指導を受けて食事療法を実践する。
  • 水分摂取
    • 乏尿がない場合 - 水分摂取制限はしない。これは、腎不全による等張尿によって脱水傾向があるため。
    • 乏尿がある場合 - 水分摂取は、「前日の尿量 + 0.5l」とする。これは、浮腫による肺水腫心不全を抑えるため。
  • 蛋白質 - 低蛋白質の食事にする。これは、尿毒素の原料になる蛋白質を控えるため。
  • 炭水化物 - エネルギー不足による蛋白質分解を避けるために、高カロリーの食事にする。
  • 塩分(塩化ナトリウム)- 高血圧がある場合には塩分摂取量を7g/日以下とする。ただし、腎不全における高血圧とは、通常の140/90よりも厳格な130/85mmHgとする。これは、高血圧が腎臓にある糸球体に負荷をかけてより一層腎不全を悪化させるため。
  • 化学療法
    • ACE阻害薬アンギオテンシンII受容体拮抗薬 - 糸球体血圧を下げて腎不全の進行を抑えるために用いる。ただし、糸球体血圧を下げ過ぎると、逆に糸球体血流量が低下して腎前性腎不全になるので、クレアチニンが2.0mg/dl以上のときは慎重に投与する。肝排泄性のテモカプリルやテルミサルタンの使用を考慮する。また、カリウムの上昇にも留意し、利尿剤の併用を行う。
  • 感染症対策
    • 感染症に対してアミノグリコシド系抗生物質を用いる時は、用量に注意する。
  • 慢性腎不全の治療法

治療に役立つメモ

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腎性貧血はエリスロポエチン投与で改善することが多いが、エリスロポエチンの反応性が低下した場合は以下のようなことが考えられる。

  • 慢性疾患(感染症、悪性腫瘍)の貧血
  • 鉄欠乏性貧血
  • 副甲状腺機能亢進症
  • アルミニウム中毒

予後

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いったん慢性腎不全に陥ると回復は不可能となり、人工透析などの治療を受けないと尿毒症となる。

出典

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  1. ^ 腎臓病とは 全国腎臓病協議会
  2. ^ 腎不全予防のターゲットは便秘 日経メディカルオンライン 記事:2017年7月31日

外部リンク

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