成熟と喪失
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「成熟と喪失」(せいじゅくとそうしつ)は、江藤淳による日本の文芸評論である。
概要
[編集]1967年に発表され、のちに1993年に文庫化された。
文庫版の巻末にある「著者から読者へ 説明しにくい一つの感覚」によると、江藤がアメリカのプリンストン大学への留学から帰国して一年と三ヶ月経過した1966年夏から書き始められた。
副題に「"母"の崩壊」と付されている。戦後に発表された日本の文芸作品五つを題材に、そこで描かれる「母性」を中心に論じており、「「成熟」するとは、喪失感の中に湧いてくるこの「悪」を引き受けることである」と本文にある通り、母子密着の強い日本型文化の中では、「母の崩壊」なくして「成熟」はあり得ない、というテーゼが貫かれている。真の近代思想と日本社会の近代化の実相のずれを指摘した、戦後日本の文芸評論の中でも重要な地位を占めた著作と名高い。
批評の対象となっているのは、安岡章太郎「海辺の光景」、小島信夫「抱擁家族」、遠藤周作「沈黙」、吉行淳之介「星と月は天の穴」、庄野潤三「夕べの雲」などの「第三の新人」の作品である。文庫版の解説は上野千鶴子が担当している。
出典
[編集]- 『成熟と喪失: “母”の崩壊』 ISBN 9784061962439