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捜査介入部 (フランス国家警察)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
捜査介入部隊から転送)
BRI-PPのエンブレム

捜査介入部フランス語: Brigade de recherche et d'intervention, BRI[1]は、フランス国家警察犯罪捜査部局[2]強盗誘拐人質立てこもり事件など凶悪犯罪の捜査と現行犯逮捕を旨としており、ギャング対策部隊Brigade antigang)のニックネームで知られている。日本語では探索出動班とも訳される[3][4]。また、特に元祖にあたるパリ警視庁のBRI(BRI Préfecture de Paris, BRI-PP)は対テロ作戦も担当しており、その場合、他部署から抽出した要員も加わった特殊部隊であるコマンド対策部隊Brigade anticommando, BRI-BAC)が編成される[5][注 1]

歴史

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1960年代初頭、パリ市内では武装強盗や誘拐など重犯罪の増加が問題となっていたが、これに対しては、事件から出発して実行者を辿っていくという従来の捜査手法では対応困難であった。このことから、1964年9月22日パリ地域圏司法警察局パリDRPJ; 警視庁の刑事警察部門)刑事部長マックス・フェルネ上級警視正は、これらの凶悪犯が犯罪を発起した瞬間に現行犯で逮捕するという全く新しいコンセプトのもと、独自の機動性を与えた専従人員として、フランソワ・ル・ムエル警視正の指揮下に捜査介入班(Section de Recherche et d'Intervention)を創設した[3]1967年には30名規模に増強したうえで刑事部から独立し、これと同格の捜査介入部(Brigade de recherche et d'intervention)に格上げされて、パリDRPJの主要内部部局の一つとなった。この施策は非常に画期的だったため、BRIはギャング対策部隊(Brigade antigang)のニックネームで知られるようになり、国家警察の内部部局である犯罪対策中央部(OCRB; 2006年に組織犯罪対策中央部(OCLCO)に改編)や、その他の司法警察(PJ; 刑事警察部門)の地方支分部局でも、これに範をとった組織が設置されるようになった[5][8]

また1972年10月1日、警視庁はコマンド対策部隊(BRI-BAC: Brigade anticommando)の制度を発足させた。これは、人質事件やテロなどの重大事案発生時に、BRI-PPを基幹として、警視庁の他の部署から抽出した要員を加えたタスクフォースとして人質救出作戦対テロ作戦部隊を集成するというものであり、同年に西ドイツで発生したミュンヘンオリンピック事件や、1969年にジロンド県セスタで発生した人質事件、そして1971年のビュッフェボンタン事件といったフランス国内の人質事件の教訓を踏まえた施策であった。これにより、BRI-PPは特殊部隊としての性格を具備するようになった[8]。なおこれは、公共安全中央局DCSP)の介入部隊(GIPN)、更には国家憲兵隊治安介入部隊(GIGN)よりも先行しており、西ドイツ国境警備隊GSG-9よりも5日遅いだけで、フランスとしては初、欧州全体としても極めて先駆的な試みであった[3]

編制

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訓練展示を行うBRI-PPの隊員たち
 
BRI-PPの装甲車

組織

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現在では、元祖にあたるパリ警視庁の隊(BRI Préfecture de Paris, BRI-PP)のほか、国家警察の内部部局としては組織犯罪対策中央部(OCLCO)に国家犯罪捜査介入部(BRI criminelle nationale, BRIN)が、大規模経済犯罪対策中央部(OCRGDF)に経済犯罪捜査介入部(BRIFN)が設けられている。また地方支分部局においても、マルセイユリヨンリールなど13個広域地域圏司法警察局(DIPJ)に設置されており、これらはOCLCOの出先機関としての性格もある[9]

BRI-BACは、上記の通りBRI-PPを基幹として編成されており、80名規模とされていた。BRI以外の人員としては、警察学校の教官や技術・兵站局の爆発物処理班警察犬チームが招請されており、また1998年以降は公秩序・交通局(DOPC)の介入部隊(BI)も加わった。2019年現在、隊員数は約300名で、交渉チームや警察犬2チーム、6人の戦術衛生員が含まれている[2]。BRIを含めてこれらの要員は、定期的に行われる集合訓練を除いて普段はそれぞれの本来業務に従事しているが、BRI-BACの編成が下令されると、事件の性質に応じて適宜チームを編成し、出動することになる。必要に応じてパリ圏外への派遣も行われており、この場合はヴィラクブレー空軍基地からフランス空軍の政府連絡航空群(GLAM; 1995年解隊)の航空機によって移動することになっていたが、編成下令から航空機離陸までの所要時間は1時間とされていた。なお警察無線のコードでは、BRI-BACは「トパーズ」と称されていた[3]

装備

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活動史

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パリ警視庁のBRI(BRI-PP)は、1964年に捜査介入班として創設された直後から銀行強盗や押し込み強盗などを相次いで検挙し、その件数は1971年の時点で既に数百件に達していた。ジャック・メスリーヌの検挙(1973年)および脱走後の捕捉・射殺(1979年)は、メスリーヌの悪名もあって有名になった。またBRI-BACはパリ警視庁の部隊ではあったものの、実際にはパリ圏外であっても、GIPNでは対応困難な事案が発生した場合には、内務大臣の指令を受けて全国規模で展開していた。実際、初出動も、1973年8月17日にブレストで発生した人質事件であった[3]

1985年には、BRI-PP/BACの指揮官OBであるロベール・ブルッサール上級警視正の指導のもと、国家警察総局(DGPN)直属の特殊部隊として特別介入部隊(RAID)が創設されていたが[3]、2009年7月31日には国家警察介入総隊(FIPN)が設置されて、BRI-BACの作戦指揮はRAIDやGIPNと統合されることとなった[5]2015年1月9日ユダヤ食品店人質事件や同年11月13日バタクラン劇場占拠事件(パリ同時多発テロ事件)では、BRI-BACとRAIDが共同で突入を行っている[1]

登場作品

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脚注

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注釈

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  1. ^ なお国家警察には、同じくBACと略称される部隊として犯罪対策隊(Brigade anti-criminalité)もあるが、こちらは警察署などの外勤警察部門に所属し、日本の警察自動車警ら隊ないし機動捜査隊に相当するような警邏・初動捜査部隊である[6]。ただし2015年以降のテロの多発を受けて、こちらも対テロ作戦の初動対応を担当するように装備・訓練を強化している[7]

出典

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  1. ^ a b “「地獄」と化した劇場、パリ同時テロ・急行の警官が語る”. フランス通信社. (2015年11月20日). https://www.afpbb.com/articles/-/3067292 2016年1月5日閲覧。 
  2. ^ a b Neville 2019, pp. 113–122.
  3. ^ a b c d e f Broussard 2002.
  4. ^ “国際テロリストの生け捕りは考慮しない軍装備の「特殊警察」”. 週刊新潮. (2015年11月26日). http://www.dailyshincho.jp/article/2015/11260850/ 2016年1月5日閲覧。 
  5. ^ a b c Cécile De Sèze (2015年11月19日). “Attentats à Paris : RAID, GIGN, GIPN, BRI... Quels rôles ?” (フランス語). 2015年11月20日閲覧。
  6. ^ La Brigade Anti-Criminalité de la Police Nationale”. 2019年1月4日閲覧。
  7. ^ 浦中 2017.
  8. ^ a b パリ警視庁 (2015年6月23日). “La brigade de recherche et d'intervention” (フランス語). 2016年1月5日閲覧。
  9. ^ フランス国家警察 (2011年10月10日). “L’organisation et les structures de la direction centrale de la police judiciaire” (フランス語). 2016年1月12日閲覧。
  10. ^ a b c d e 櫻井 2024.

参考文献

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  • 浦中千佳央「危急事態法下のフランス:テロ対策の新展開」『産大法学』第50巻、1・2、京都産業大学法学会、197-220頁、2017年1月。 NAID 120006368832 
  • 櫻井朋成「EUROSATORY2024」『月刊アームズマガジン』、株式会社ホビージャパン、150-161頁、2024年9月。ASIN B0DBPK2N6Phttps://armsweb.jp/report/5477.html 
  • Broussard, Robert『人質交渉人―ブルッサール警視回想録』峰岸 久 (翻訳)、草思社、2002年。ISBN 978-4794211842 
  • Neville, Leigh『欧州対テロ部隊』床井 雅美 (監修), 茂木 作太郎 (翻訳)、並木書房、2019年。ISBN 978-4890633852 

関連項目

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