擬顎
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擬顎(paragnath, paragnathae)とは、甲殻類の節足動物において、大顎と小顎の間に付属し、口器を構成する器官の1つである[1][2]。扁平で対になった柔らかい突起物で、目立たなく、往々にして細かな剛毛(setae)が生えている[1]。
古くは独自の体節に由来する付属肢(関節肢)とも解釈されていたが、発生学的証拠により、付属肢ではなく、大顎が由来する第3体節の腹板(sternum, sternite)のみから変化した構造体であることが判明した[2]。
甲殻類と同じ大顎類の六脚類と多足類は、擬顎に似たような構造をした下咽頭(hypopharynx)をもつ。これは擬顎に相同で、共に大顎類の共有派生形質を表した可能性が示唆される[2]。
擬顎の名称は文献によって異なる場合があり、例えば Pike 1947 では「下層板」(metastoma)、Wägele 1987 では(多足類・六脚類と統一して)「下咽頭」、Stachowitsch 1992 では「下唇」(labium)と呼ばれていた[3]。しかし甲殻類の擬顎は、少なくとも他の節足動物の下層板(ウミサソリで第7体節由来とされる[4])や下唇(六脚類で第5体節由来)とは明らかに別器官である[2]。
脚注
[編集]- ^ a b “Crustacea Glossary::Definitions”. research.nhm.org. 2022年3月8日閲覧。
- ^ a b c d Wolff, Carsten; Scholtz, Gerhard (2006-12-04). “Cell lineage analysis of the mandibular segment of the amphipod Orchestia cavimana reveals that the crustacean paragnaths are sternal outgrowths and not limbs”. Frontiers in Zoology 3: 19. doi:10.1186/1742-9994-3-19. ISSN 1742-9994. PMC 1702535. PMID 17144925 .
- ^ Alexander, C. G. (1988-11). “The Paragnaths of Some Intertidal Crustaceans” (英語). Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom 68 (4): 581–590. doi:10.1017/S0025315400028721. ISSN 1469-7769 .
- ^ Dunlop, Jason A.; Lamsdell, James C. (2016). “Segmentation and tagmosis in Chelicerata”. Arthropod Structure & Development 46 (3): 395. ISSN 1467-8039 .