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政府契約の支払遅延防止等に関する法律

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
政府契約の支払遅延防止等に関する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 支払遅延防止法
法令番号 昭和24年法律第256号
種類 行政手続法
効力 現行法
成立 1949年11月29日
公布 1949年12月12日
施行 1949年12月12日
所管大蔵省→)
財務省理財局
主な内容 政府契約の公正化および国の会計経理事務処理の能率化
関連法令 会計法予算決算及び会計令地方自治法など
条文リンク 政府契約の支払遅延防止等に関する法律 - e-Gov法令検索
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政府契約の支払遅延防止等に関する法律(せいふけいやくのしはらいちえんぼうしとうにかんするほうりつ、昭和24年12月12日法律第256号)は、政府契約の公正化を図るとともに、国の会計経理事務の能率化を促進し、もって国民経済の健全な運行に資することを目的に制定された日本法律である(1条)。単に支払遅延防止法と呼ばれることもある。

財務省理財局国庫課が所管し、総務省自治財政局調整課、防衛省大臣官房会計課をはじめ民間との契約を行うすべての省庁、独立行政法人などを拘束、連携して執行にあたる。

概要

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政府契約に基づき、国が現実に対価を支払うに当たっては、相手方の給付の確認、検査(会計法第29条の11)など、財政法規上の種々の拘束[1]を受ける。また、政府契約においては、永らく官庁が特権的地位を持ち、業者との間に対等な立場で物の注文、売買をするという観念に乏しく、官庁側の一方的都合による支払遅延は当然ないしやむを得ないものと考える風習が存在していた[2]

ことに大東亜戦争太平洋戦争第二次世界大戦終結直後においては、ハイパーインフレーション新円切替)も重なり国庫から民間への支払で軒並み遅延をきたし、ひいては国民経済の運行に相当の支障を与える情勢が顕著であったため、1949年(昭和24年)にこの法律が制定、施行された。

政府契約

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定義及び原則

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この法律において政府契約とは、国を当事者の一方とする契約で、国以外の者のなす工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入に対し国が対価の支払をなすべきものをいう(第2条)。国が締結する債権法上の契約のうち、国の支出の原因となるもののみが該当する。したがって、物件の売払契約など、国の収入の原因となる契約をも含む会計法上の契約(第29条)よりも狭い概念である。

政府契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない(第3条)。政府契約は国等が私人と対等な立場で締結するものである。したがって、政府契約はその効力その他基本的事項については民法商法その他の私法及びその基本原則(契約自由の原則信義誠実の原則など)の適用を受ける。本条は、そのことを確認するものである。

必要的記載事項

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政府契約の当事者は、その契約の締結に際しては、給付の内容、対価の額、給付の完了の時期その他必要な事項のほか、次に掲げる事項を書面[3]により明らかにしなければならない。

ただし、他の法令により契約書[4]の作成を省略することができるものについては、この限りでない(第4条)。

給付の完了の確認又は検査の時期

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国が相手方から給付を終了した旨の通知[5]を受けた日から工事については14日、その他の給付については10日以内の日としなければならない(第5条第1項)。[6][7]

給付の完了の確認又は検査の時期を書面により明らかにしないとき(例 第4条ただし書の規定により契約書の作成を省略するとき)は、相手方が給付を終了した旨の通知を受けた日から10日以内の日と見なされる(第10条)。

対価の支払の時期

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国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求[5]を受けた日から工事代金については40日、その他の給付に対する対価については30日以内の日としなければならない(約定期間、第6条第1項)[6]

対価の支払の時期を書面により明らかにしないとき(例 第4条ただし書の規定により契約書の作成を省略するとき)は、相手方が支払請求をした日から15日以内の日と見なされる(第10条)。

各当事者の債務の不履行の場合における遅延利息等

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国が支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額を書面により明らかにしないとき(例 第4条ただし書の規定により契約書の作成を省略するとき)は、第8条の計算の例に準じ同条第1項の財務大臣の決定する率をもって計算した金額と定めたものと見なされる(第10条)。

契約に関する紛争の解決方法

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この法律に具体的な定めはないが、第三者の斡旋により解決し、なるべく訴訟によることを避けるために、あらかじめ約定しておくべきであるという趣旨であるとされる[8]

支払遅延防止策

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支払遅延に対する遅延利息

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国が約定の支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、約定の支払時期到来の日の翌日から支払をする日までの日数に応じ、当該未支払金額に対し財務大臣が銀行の一般貸付利率を勘案して決定する率[9]を乗じて計算した金額[10]を下るものであってはならない。

ただし、その約定の支払時期までに支払をしないことが天災地変等やむを得ない事由に因る場合は、特に定めない限り、当該事由の継続する期間は、約定期間に算入せず、又は遅延利息を支払う日数に計算しないものとする(第8条)。

財務大臣の監督

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この法律の規定に基づき、財務大臣に政府契約の支払遅延防止のため必要な監査を行う権限が与えられている(第12条)。

懲戒処分

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国の会計事務を処理する職員が故意又は過失により国の支払を著しく遅延させたと認めるときは、その職員の任命権者は、その職員に対し懲戒処分をしなければならない(第13条第1項)。

また、会計検査院は、上記の懲戒すべき事案のうち、任命権者が処分していないものを発見したときは、その任命権者に当該職員の懲戒処分を要求しなければならない(第2項)[11]

その他

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行政手続オンライン化法の適用除外

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この法律の規定による手続については、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律第3条及び第4条の規定は適用しない(第11条の2)。

準用

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この法律(第12条及び第13条第2項を除く。)の規定は、地方公共団体のなす契約に準用される(第14条)。

脚注

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  1. ^ 昭和22年に制定・施行された政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律昭和22年12月12日法律第171号)[1]では、国、連合国軍又は特別調達庁のためになされた工事の完成、物の生産その他の役務の給付に関し、国に対して、自己又は他人が提供した物又は役務の費用として代金又は報酬の請求をしようとする者は、命令の定める書式により、支払請求内訳書を作成しなければならず(同法第1条)、これらの作成及び国による審査に相当の時間がかかり、支払遅延の元凶とされていた[2]。なお、同法は昭和25年に廃止されている(昭和25年5月20日法律第190号)。
  2. ^ 昭和24年11月15日衆議院本会議・岡野清豪政府支拂促進に関する特別委員会委員長発言(第6回国会衆議院会議録第9号)
  3. ^ 電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)のうち、財務省令で定めるものを含む。
  4. ^ 契約書の作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。
  5. ^ a b 通知が電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって財務省令で定めるものをいう。)により行われたときは、国の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に国に到達したものとみなす。
  6. ^ a b 契約の性質上この規定によることが著しく困難な特殊の内容を有するものについては、当事者の合意により特別の期間の定をすることができる。ただし、その期間は、この規定の最長期間に1.5を乗じた日数以内の日としなければならない。(第7条)
  7. ^ 文部科学大臣が教科用図書又は教科用特定図書の発行者との間で締結する教科用図書購入契約等に係る検査の時期については、本項の「10日以内の日」が「20日以内の日」と読み替えて適用される(義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第7条、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律第14条)。
  8. ^ 政府契約の支払遅延防止等に関する法律の運用方針(昭和25年4月7日理国第140号大蔵省理財局長通達)
  9. ^ 政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率を定める告示(昭和24年12月12日大蔵省告示第991号)改正 令和2年3月10日財務省告示第53号(令和2年4月1日適用)により、遅延利息の率は、年2.6%である。
    なお、令和3年4月1日以降は、政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率を定める告示(昭和24年12月12日大蔵省告示第991号)最終改正 令和3年3月9日財務省告示第49号(令和3年4月1日適用)により、年2.5%となる。
  10. ^ 計算した遅延利息の額が100円未満であるときは、遅延利息を支払うことを要せず、その額に100円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てるものとする(第8条第2項)。
  11. ^ 当該職員の任命権者に対し、その理由を明らかにした懲戒処分要求書を送付する方法が採られる(会計検査院懲戒処分要求及び検定規則第2条)。

参考文献

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杉村章三郎著『財政法<法律学全集10>』(有斐閣1959年