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教誨

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本の刑務所内の教誨室 日本の刑務所内の教誨室
日本の刑務所内の教誨室
日本の刑務所での集合教誨(仏教の僧侶)
刑務所で受刑者に祝福を与える、キリスト教系のプリズンチャプレン(欧米型・キリスト教系の教誨師)

教誨(きょうかい)とは、第1義には、教えさとすことをいう[1]同義語として教戒(きょうかい)があるが、こちらは、教え戒めることをいう[2]。両者の違いは「(意:知らない者を教えさとす)」[3]と「(意:いましめ。さとし)」[4]の違いである。また、これらから転じて第2義には、受刑者に対し、徳性(道徳をわきまえた正しい品性。道徳心。道義心[5])の育成を目的として教育することをいう[1]

受刑者に対して教誨・教戒を行う者は、教誨師教戒師(きょうかいし)という[6]。この日本語に近似の英語としては、矯正施設付きの "chaplain(チャプレン)" であるところの "prison chaplain(プリズンチャプレン)" がある[7]

日本の教誨師

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日本において、公的な教誨師は、1908年明治41年)3月28日施行された監獄法の第29条に基づいて新設された。その後、同法は90年近くの長きに亘って存続したが、最末期において、明治から平成に到る時の流れに伴う社会通念の大きな変化を反映させた改正を何度も検討されながら、全て廃案となってきた。それでもようやくにして、2006年(平成18年)5月24日に施行された「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」附則第15条により、旧態然とした監獄法は改正され、法律名称も「刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」(通称:受刑者処遇法)に改められた。ところが、未決拘禁者と死刑確定者(死刑囚)の処遇についての規定だけは現代化から置き去りにされ、旧法のままに続けられることとなった。このように法改正から取り残された未決拘禁者と死刑確定者の処遇は問題視され、早期に改正するべき案件であったため、第164回通常国会会期中の2006年(平成18年)6月2日における「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律」(通称:受刑者処遇法改正法)の成立、同年6月8日の公布、そして2007年(平成19年)6月1日の施行により、遅れ馳せながら改正された。未決拘禁者と死刑確定者についての規定は、このような経緯で新法に統合されることとなり、これをもって、全ての条項が旧法となった監獄法は廃止された。受刑者処遇法は、その後「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(通称:刑事収容施設法)に改題され、現在に到る。現在の教誨師は、刑事収容施設法の第68条を法的根拠としている[8]

矯正施設における教誨には「一般教誨」と「宗教教誨」がある。一般教誨の内容は、道徳倫理の講話などで、刑務官法務教官などが行う。宗教教誨の内容は、宗教的な講話や宗教行事で、各宗教団体に所属する宗教者僧侶神職牧師神父など)によって行われる。一般教誨は全ての受刑者に参加の義務があるが、宗教教誨は日本国憲法に定める信教の自由の観点から自由参加である。

教誨師の宗教別の割合は、多い方から順に、仏教キリスト教神道であり[9]、それ以外に、天理教金光教大本など新宗教諸派の教誨師もいる。

著名な教誨師

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情報の有無を原因として、内容は日本人ばかりになっているが、本来は時代と地域を問わず、全ての著名な教誨師が対象である。

  • 兼松一二 - 生年不明。1971年(昭和46年)より活動歴あり。牧師、教誨師(笠松刑務所の教誨師。中部教誨師会理事)。

フィクション

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演劇映画テレビドラマに代表される創作作品では、凶悪犯罪や冤罪被害にスポットを当てた作品に多いが、刑の執行を間近に控えて処刑室の前や処刑する場所に引き出された死刑囚の傍らに教誨師が現れ、死刑囚と言葉を交わし、仏教であれば読経キリスト教であれば祝福をもって死にゆく者を送る場面が、しばしば登場する。

2018年(平成30年)製の日本映画教誨師』は、死刑囚と対話する日本の教誨師を主人公としたドラマ映画で、大杉漣が老齢の教誨師を演じている。

脚注

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  1. ^ a b 教誨”. 小学館『デジタル大辞泉』、三省堂大辞林』第3版. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。表示した2つの出典のみをここでの典拠とする。
  2. ^ 教戒・教誡”. 『大辞林』第3版. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。
  3. ^ ”. 『デジタル大辞泉』. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。
  4. ^ ”. 『デジタル大辞泉』. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。
  5. ^ 徳性”. 『デジタル大辞泉』、『大辞林』第3版. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。
  6. ^ 教誨師”. 『デジタル大辞泉』、『大辞林』第3版. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。表示した2つの出典のみをここでの典拠とする。
  7. ^ 教誨師”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. コトバンク. 2018年7月11日閲覧。表示した1つの出典のみをここでの典拠とする。
  8. ^ 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 | e-Gov法令検索”. elaws.e-gov.go.jp. 2023年8月24日閲覧。
  9. ^ 法務省法務総合研究所 (1991年10月). “平成3年版 犯罪白書”. 第2編 第3章 第3節 3. 法務省. 2009年6月21日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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