コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

文様群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文様群(もんようぐん、: wallpaper group)もしくは壁紙群(かべがみぐん)は、パターンの対称性に基づく、2次元内での繰り返しパターンに関する数学的な分類である。このようなパターンは、建築美術で頻繁に使用され、そのパターンは17種に大別される。

歴史

[編集]

1891年エヴグラフ・フェドロフによって2次元空間内での繰り返しパターンが17種に大別されることの証明がなされ[1]、1924年ジョージ・ポリアによっても独立に証明された[2]

卜部東介(1953–2011、当時茨城大学)が、2002年に 利根安見子、近藤誠造(京都府立大学)の協力の下、日本の伝統文様には17種類の文様群全てが含まれていることをインターネット上に発表した[3]

導入

[編集]

文様群は、対称性によるパターン分類であるため、色・形状・サイズが大きく違う場合でも、同じグループに分類される。

対称性

[編集]

17種のパターンは対称性の組合せからなっている。

  • 並進対称性:Translations
  • 回転(60°、 90°、120°、180°):Rotations
  • 鏡映(鏡像対称性):mirror isometries
  • 映進(並進と鏡映の組合せ):Glide reflections

文様群の表記

[編集]

結晶学記法

[編集]

結晶は3次元空間の空間群で属するが、2次元の文様群を表記することは可能である。

  • 基本胞(primitive cell)の場合P、中心胞 (centered cell) の場合はCが頭文字となる。
  • 回転対称数:360°/n
  • 鏡映:鏡映対称性が組み合わさった場合は、mirror isometriesからm、鏡映していない場合は1(もしくは省略)
  • 映進:映進対称性が組み合わさった場合は、Glide reflectionsからg、映進していない場合は1(もしくは省略)

[編集]
  • p2 (p211): 基本胞、回転対称2、鏡映・映進無し
  • c2mm: 中心胞、回転対称2、主軸と垂直の軸で鏡映
  • p31m: 基本胞、回転対称3、鏡軸は60°の鏡映

オービフォルド記法

[編集]

17種の文様群

[編集]
記号説明
  • ひし形は 180° (= 360°/ 2) の回転中心
  • 三角形は、120° (= 360°/3) の回転中心
  • 正方形は、90° (= 360°/4) の回転中心
  • 六角形は、60° (= 360°/6) の回転中心
  • 太い線は鏡映軸
  • 鏡映と並進を組み合わせた映進軸
  • 黄色い領域は、基本パターンである。

p1群

[編集]

P1群は、並進のみの連続パターンで、その他の回転などは含まない。

  • オービフォルド記法:o
  • 点群: C1
日本の伝統文様における代表例<雲立涌>

p1の例

p2群

[編集]
  • オービフォルド記法:2222
  • 点群: C2
日本の伝統文様における代表例<子持吉原>

p2の例

pm群

[編集]
  • オービフォルド記法:**
  • 点群: D1
日本の伝統文様における代表例<桐立涌>

pmの例

pg群

[編集]
  • オービフォルド記法:××
  • 点群: D1
日本の伝統文様における代表例<鎌輪ぬ>

pgの例

cm群

[編集]
  • オービフォルド記法:
  • 点群: D1
日本の伝統文様における代表例<青海波>

cmの例

p2mm群

[編集]
  • オービフォルド記法:*2222
  • 点群: D2
日本の伝統文様における代表例<両滝縞>

p2mmの例

p2mg群

[編集]
  • オービフォルド記法:22*
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<山路文>

p2mgの例

p2gg群

[編集]
  • オービフォルド記法:22×
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<紗綾形>

p2mgの例

c2mm群

[編集]
  • オービフォルド記法:2*22
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<松皮菱>

c2mmの例

p4群

[編集]
  • オービフォルド記法:442
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<角繋ぎ>

p4の例

p4mm群

[編集]
  • オービフォルド記法:*442
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<市松>

p4mmの例

p4mg群

[編集]
  • オービフォルド記法:4*2
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<五崩し>

p4mgの例

p3群

[編集]
  • オービフォルド記法:333
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<鶴亀甲>

p3の例

p3m1群

[編集]
  • オービフォルド記法:*333
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<毘沙門亀甲>

p3m1の例

p31m群

[編集]
  • オービフォルド記法:3*3
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<毘沙門亀甲2>

p6群

[編集]
  • オービフォルド記法:632
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<六つ手卍>

p6mm群

[編集]
  • オービフォルド記法:*632
  • 点群:
日本の伝統文様における代表例<麻の葉

脚注

[編集]
  1. ^ Fedorov, E.S. (1891). “Симметрія на плоскости [Simmetriya na ploskosti, Symmetry in the plane]” (ロシア語). Записки Императорского С.-Петербургского Минералогического Общества (Zapiski Imperatorskova Sankt-Petersburgskova Mineralogicheskova Obshchestva, Proceedings of the Imperial St. Petersburg Mineralogical Society). 2nd series 28: 345–390. https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=umn.31951t00080576a;view=1up;seq=357. 
  2. ^ George Pólya (1924) "Über die Analogie der Kristallsymmetrie in der Ebene," Zeitschrift für Kristallographie, vol. 60, pages 278–282.
  3. ^ 文様の17種への分類”. 卜部制作博物館展示室. 2024年11月7日閲覧。

さらなる学習用の図書

[編集]
  • 難波誠:「合同変換の幾何学」、現代数学社、ISBN 978-4-7687-0633-6 (2024年4月21日)。
  • 河野俊丈:「結晶群」、共立講座 数学探検 7、ISBN 978-4320111806 (2015年6月25日)。
  • 岩堀長慶:「復刻版 初学者のための合同変換群の話」、現代数学社、 ISBN 978-4768705322 (2020年4月23日)。

関連項目

[編集]