文様群
表示
文様群(もんようぐん、英: wallpaper group)もしくは壁紙群(かべがみぐん)は、パターンの対称性に基づく、2次元内での繰り返しパターンに関する数学的な分類である。このようなパターンは、建築や美術で頻繁に使用され、そのパターンは17種に大別される。
歴史
[編集]1891年にエヴグラフ・フェドロフによって2次元空間内での繰り返しパターンが17種に大別されることの証明がなされ[1]、1924年ジョージ・ポリアによっても独立に証明された[2]。
卜部東介(1953–2011、当時茨城大学)が、2002年に 利根安見子、近藤誠造(京都府立大学)の協力の下、日本の伝統文様には17種類の文様群全てが含まれていることをインターネット上に発表した[3]。
導入
[編集]文様群は、対称性によるパターン分類であるため、色・形状・サイズが大きく違う場合でも、同じグループに分類される。
対称性
[編集]17種のパターンは対称性の組合せからなっている。
- 並進対称性:Translations
- 回転(60°、 90°、120°、180°):Rotations
- 鏡映(鏡像対称性):mirror isometries
- 映進(並進と鏡映の組合せ):Glide reflections
文様群の表記
[編集]結晶学記法
[編集]結晶は3次元空間の空間群で属するが、2次元の文様群を表記することは可能である。
- 基本胞(primitive cell)の場合P、中心胞 (centered cell) の場合はCが頭文字となる。
- 回転対称数:360°/n 回
- 鏡映:鏡映対称性が組み合わさった場合は、mirror isometriesからm、鏡映していない場合は1(もしくは省略)
- 映進:映進対称性が組み合わさった場合は、Glide reflectionsからg、映進していない場合は1(もしくは省略)
例
[編集]- p2 (p211): 基本胞、回転対称2、鏡映・映進無し
- c2mm: 中心胞、回転対称2、主軸と垂直の軸で鏡映
- p31m: 基本胞、回転対称3、鏡軸は60°の鏡映
オービフォルド記法
[編集]→詳細は「オービフォルド記法」を参照
17種の文様群
[編集]- 記号説明
- ひし形は 180° (= 360°/ 2) の回転中心
- 三角形は、120° (= 360°/3) の回転中心
- 正方形は、90° (= 360°/4) の回転中心
- 六角形は、60° (= 360°/6) の回転中心
- 太い線は鏡映軸
- 鏡映と並進を組み合わせた映進軸
- 黄色い領域は、基本パターンである。
p1群
[編集]P1群は、並進のみの連続パターンで、その他の回転などは含まない。
- オービフォルド記法:o
- 点群: C1
p2群
[編集]- オービフォルド記法:2222
- 点群: C2
pm群
[編集]- オービフォルド記法:**
- 点群: D1
pg群
[編集]- オービフォルド記法:××
- 点群: D1
cm群
[編集]- オービフォルド記法:*×
- 点群: D1
p2mm群
[編集]- オービフォルド記法:*2222
- 点群: D2
p2mg群
[編集]- オービフォルド記法:22*
- 点群:
p2gg群
[編集]- オービフォルド記法:22×
- 点群:
c2mm群
[編集]- オービフォルド記法:2*22
- 点群:
p4群
[編集]- オービフォルド記法:442
- 点群:
p4mm群
[編集]- オービフォルド記法:*442
- 点群:
p4mg群
[編集]- オービフォルド記法:4*2
- 点群:
p3群
[編集]- オービフォルド記法:333
- 点群:
p3m1群
[編集]- オービフォルド記法:*333
- 点群:
p31m群
[編集]- オービフォルド記法:3*3
- 点群:
p6群
[編集]- オービフォルド記法:632
- 点群:
p6mm群
[編集]- オービフォルド記法:*632
- 点群:
脚注
[編集]- ^ Fedorov, E.S. (1891). “Симметрія на плоскости [Simmetriya na ploskosti, Symmetry in the plane]” (ロシア語). Записки Императорского С.-Петербургского Минералогического Общества (Zapiski Imperatorskova Sankt-Petersburgskova Mineralogicheskova Obshchestva, Proceedings of the Imperial St. Petersburg Mineralogical Society). 2nd series 28: 345–390 .
- ^ George Pólya (1924) "Über die Analogie der Kristallsymmetrie in der Ebene," Zeitschrift für Kristallographie, vol. 60, pages 278–282.
- ^ “文様の17種への分類”. 卜部制作博物館展示室. 2024年11月7日閲覧。
さらなる学習用の図書
[編集]- 難波誠:「合同変換の幾何学」、現代数学社、ISBN 978-4-7687-0633-6 (2024年4月21日)。
- 河野俊丈:「結晶群」、共立講座 数学探検 7、ISBN 978-4320111806 (2015年6月25日)。
- 岩堀長慶:「復刻版 初学者のための合同変換群の話」、現代数学社、 ISBN 978-4768705322 (2020年4月23日)。
関連項目
[編集]- 平面充填
- タイル張り
- アインシュタイン・タイル(アインシュタイン問題) - 同じパターンを繰り返さないで平面を充填する数学的な問題。
- 群 (数学)
- 群論
- 点群
- 層群
- 空間群
- 結晶学
- マウリッツ・エッシャー
- ホラーヴァキュイ (芸術)(空間畏怖) - 古来から空白なく文様を充填させるのは、空虚感への恐怖からくるものだと美術史家が指摘している。名称は、哲学者アリストテレスのホラーヴァキュイ (物理学)から。