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曳船58号型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曳船58号型
曳船72号(YT-72)
曳船72号(YT-72)
基本情報
艦種 260トン型曳船
就役期間 1978年 - 現在
同型艦 37隻(2022年1月時点)
前級 曳船53号型
次級 最新
要目
排水量 262t
全長 28.4m
31m(YT-95以降)
最大幅 8.6m
深さ 3.5m
3.6m(YT-95以降)
吃水 2.5m
2.3m(YT-95以降)
主機 新潟鉄工6L25BXディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 1800馬力
2600馬力(YT-95以降)
速力 11ノット
乗員 7名
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曳船58号型「えいせん58ごうがた」(英語: YT-58 class Yard Tag boat)は、海上自衛隊の第1種支援船であり海自最大の曳船。公称船型は260トン型曳船。海上自衛隊内では「えい船」と表記される。

概要

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港務隊及び基地隊等に配備されており、艦艇の出入港支援や非自走支援船等の曳航を行う。押し船としての機能を持たせるため船首は平らで、支援相手艦の艦橋や甲板を見やすいよう、操舵室上部に傾斜をつけたガラス窓を装備している。

船体周囲にはタイヤなどの防舷物(フェンダー)が、また改設計型には防舷帯も備え付けられており、支援相手艦艇にゴムの跡を付けない様、もやい索や幕をそれらの上に垂らしている。 ちなみに用いられているタイヤはP-3C哨戒機で使われなくなった廃品、ゴム部保護用のもやい索は艦艇で係留に使われ使用寿命を迎えたものを再利用している。 操縦性能を高めるため、2軸の全旋回式プロペラを持つ。静止推力が最も必要とされているため、性能要求には速力が入っていない。

鋼製で、消火設備も備えており、放水銃1~2丁と泡沫原液タンク1基を持つほか、火災船に近づいた際の焼損や船体温度上昇を防ぐための自衛散水装置を備え、消防船としても使用可能である。

また、ひゅうが型護衛艦やいずも型護衛艦では船体から飛行甲板が張り出しており、直接の出入港支援をする際にマストが接触してしまうため、ひゅうが型就役以後に建造された本船はマストが起倒もしくは伸縮できるようになっており、それ以前に建造されたものについても順次改装された。

基地以外での自衛艦艇の出入港支援や災害派遣、転籍による回航等の長期間の航海を想定して、船内には士官室(船長室)を含め、船員の居住区が存在している。実際に2011年3月26日から、福島第一原発事故に対する災害派遣が横須賀港務隊所属の曳船によって行われた。

船員は7名であり、船長を筆頭に甲板長、機関長とその補佐に就く科員で構成される。他の支援船と同様に、場合によってはこれら乗員で他の支援船を掛け持ちする。船長には各地港務隊に所属する3等海曹以上の者が割り当てられ、いずれも自衛艦の乗員経験者、かつ船体規模により要求される海技資格保有者が就く。

YT-95以降多くの改設計がされており、全般に共通する仕様として出力が1,800馬力から2,600馬力に向上し、それに伴い速力や推力も向上した。加えて操舵室後部にあった煙突を無くし、船尾左右舷に排気孔を設けた他、船内構造においても大きく設計変更されている。その他、順次小変更が加えられており細かい部分の艤装が異なる。YT-99で2桁の番号を使い切ったため、以後は01から順次再付与されている。

運用

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主要任務である艦艇の出入港において、DD・DE・DDGといったクラスの排水量の艦艇では基本的に2隻の支援を必要とし、10,000トンを超える艦艇には更にもう1隻が管制支援を担う場合がある。いずも型護衛艦の出入港支援に至っては3隻の直接支援が必要であり、状況により管制支援を行う場合はさらに1隻を必要としている。

同型船一覧

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# 船名 造船所 起工 竣工 配属
退役船は除籍
YT-58 曳船58号 横浜ヨット 1978年 1978年10月31日 2015年4月13日
YT-63 曳船63号 1982年3月17日 1982年9月27日 2018年3月9日
YT-64 曳船64号 1983年3月1日 1983年9月20日 2016年2月12日
YT-65 曳船65号 1984年3月6日 1984年9月20日 2017年3月17日
YT-66 曳船66号 1985年3月20日 1985年9月20日 2018年3月9日
YT-67 曳船67号 1986年3月3日 1986年9月4日 2019年2月8日
YT-68 曳船68号 臼杵鉄工所 1987年3月3日 1987年9月9日 2020年12月22日
YT-69 曳船69号 1987年9月16日 2021年3月16日
YT-70 曳船70号 1988年4月8日 1988年9月2日 2021年12月14日[1]
YT-71 曳船71号 横浜ヨット 1989年2月16日 1989年7月28日 2022年10月26日[2]
YT-72 曳船72号 1990年4月25日 1990年7月28日 舞鶴港務隊
舞鶴基地
YT-73 曳船73号 1991年1月16日 1990年7月31日 呉港務隊
呉基地
YT-74 曳船74号 1991年2月14日 1990年9月30日 佐世保港務隊
佐世保基地
YT-78 曳船78号 1994年1月31日 1994年7月28日
YT-79 曳船79号 1994年9月29日 横須賀港務隊
横須賀基地
YT-81 曳船81号 1996年3月15日 1996年7月30日 大湊港務隊
大湊基地
YT-84 曳船84号 1998年 1998年10月20日 佐世保港務隊
(佐世保基地)
YT-86 曳船86号 渡辺造船所 1999年 2000年3月21日 呉港務隊
(呉基地)
YT-89 曳船89号 IHI造船化工機 2000年 2001年3月16日
YT-90 曳船90号 2001年 大湊港務隊
(大湊基地)
YT-92 曳船92号 長崎造船 2005年8月29日 2006年3月17日 沖縄基地隊港務科
沖縄基地
YT-94 曳船94号 2006年5月15日 2006年3月16日
YT-95 曳船95号 本瓦造船 2009年 2010年3月15日 横須賀港務隊
(横須賀基地)
YT-96 曳船96号 2009年 呉港務隊
(呉基地)
YT-97 曳船97号 2010年 2011年5月31日
YT-99 曳船99号 長崎造船 2011年 2012年3月19日 横須賀港務隊
(横須賀基地)
YT-01 曳船1号 本瓦造船 2012年9月5日 2013年1月31日 舞鶴港務隊
(舞鶴基地)
YT-02 曳船2号 2012年10月17日
YT-04 曳船4号 2015年 2015年12月11日 佐世保港務隊
(佐世保基地)
YT-05 曳船5号 2015年 2016年1月12日 舞鶴港務隊
(舞鶴基地)
YT-08 曳船8号 前畑造船 2016年 2017年3月10日 呉港務隊
(呉基地)
YT-10 曳船10号 栗之浦ドック 2017年 2018年3月23日 横須賀港務隊
(横須賀基地)
YT-11 曳船11号 2017年 大湊港務隊
(大湊基地)
YT-12 曳船12号 2018年 2019年2月28日 横須賀港務隊
(横須賀基地)
YT-13 曳船13号 京浜ドック 2019年 2020年12月22日 横須賀港務隊
(横須賀基地)
YT-14 曳船14号 2019年 2021年3月16日 佐世保港務隊
(佐世保基地)
YT-15 曳船15号 栗之浦ドック 2021年 2021年12月14日[1] 佐世保港務隊
(佐世保基地)
YT-16 曳船16号 2022年 2022年12月[3] 大湊港務隊
(大湊基地)
YT-17 曳船17号 2023年9月[4] 舞鶴港務隊
(舞鶴基地)[4]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ a b 海人社 2022, pp. 143–144.
  2. ^ 海上自衛隊大湊地方隊【公式】 [@JMSDF_orh] (2022年11月15日). "【YT71除籍行事】". X(旧Twitter)より2022年12月3日閲覧
  3. ^ 海上自衛隊大湊地方隊【公式】 [@JMSDF_orh] (2022年12月22日). "【YT16大湊初入港!】". X(旧Twitter)より2023年9月3日閲覧
  4. ^ a b 海人社 2023, pp. 158.

参考文献

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  • 月刊 世界の艦船 1979年1月号、1979年1月号増刊、1995年1月号、2001年6月号、2011年1月号、2021年7月号
  • 自衛隊装備カタログ 1981年版
  • MAMOR vol.85
  • And Ships Photo Gallery」曳船・YT58号260t型-2020年1月25日閲覧。
  • 海人社編集部(編)「海上自衛隊・海上保安庁 艦船の動向」『世界の艦船』第975号、海人社、2022年5月、143-144頁。 
  • 五老海聖太(編)「新造支援船が相次いで進水」『世界の艦船』第1003号、海人社、2023年10月、158頁。 

関連項目

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外部リンク

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