李祖原
李祖原 | |
---|---|
生誕 |
1938年12月30日(86歳) 広東省 |
国籍 | 中華民国(台湾) |
出身校 |
国立成功大学、 プリンストン大学 |
職業 | 建築家 |
受賞 | 国家文芸奨 (2008) |
所属 | 李祖原建築師事務所 |
建築物 | 高雄85ビル、台北101など |
李祖原 | |
---|---|
職業: | 建築家、画家 |
籍貫地: | 中華民国(台湾) |
出生地: | 中華民国 広東省掲陽県 |
各種表記 | |
ラテン字: | Li Tsu yuan |
発音転記: | チュユァン・リー |
英語名: | Chu-Yuan Lee |
各種表記(本名) | |
繁体字: | 李祖原 |
簡体字: | 李祖原 |
拼音: | Lǐ Zǔyuán |
通用拼音: | Lǐ Zǔyuán |
ラテン字: | Li Tsu yuan |
注音符号: | ㄌㄧˇ ㄗㄨˇ ㄩㄢˊ |
台湾語: | Lí Chó͘-goân |
和名表記: | り そげん |
発音転記: | リー・ズーユェン |
英語名: | Chu-Yuan Lee |
李 祖原(リー・ズーユェン、り そげん、英語名:C.Y. Lee / Chu-Yuan Lee / チュユァン・リー、1938年12月30日 - )は中華民国広東省出身の建築家、画家。 中華文明伝統の特色を受け継いだ現代建築が特色で、現代建築では台北101や高雄85ビルなどの高さで台湾の上位を占める超高層ビル、宗教施設では中台禅寺などの代表作が知られているほか、画家として水墨画の作品も手がけている[1]。
人物
[編集]中華民国時代の中国広東省掲陽県で出生。 国立台湾師範大学附属高級中学を経て、国立成功大学建築学系(系は学部に相当。1961年卒業[2])、米国プリンストン大学建築学科(Princeton University School of Architecture)に進み1966年Master(修士号)[2]。
1970年、東海大学建築系助理教授に就任し同年にイオ・ミン・ペイの建築事務所で日本万国博覧会「中華民国館」の設計助手[2]。 これが李の建築家としての実務デビューとなった[3]。
1971年、米国フィラデルフィアのノーレン・スウィンバーン・アソシエイツ(Nolen-Swinburne & Associates)[2]、ボストン再開発公社(Boston Planning and Development Agency)およびロサンゼルスのウィリアム・ペレイラ(William Pereira)建築事務所などに所属。ペレイラの事務所に在籍したことで李はトランスアメリカ・ピラミッド(1972年完成)の案件に関わるという幸運を得た[3]。事務所ではペレイラに次ぐ地位まで上り詰めたが、内心では望郷の念が強くなっていった[3]。
1978年に台湾に戻ると、事務所を開設。華人の実業家鄭周敏が開発する環亞世界大楼の設計を担い、以後は台湾と中国で多くの代表作を世に送り出している。2003年から2006年まで友人の石山修武の要請で早稲田大学建築学科教授を務める[2]。2009年、李の建築事務所は悲情城市などの舞台となった九份老街の昇平戲院を新北市政府に寄贈した[4][5]。
禅宗を篤く信仰するようになったのは、禅七[注釈 1]と臨済宗法師の釈惟覚との縁によるもの[3]。李が中華と西洋の工法を組み合わせて2001年に南投県埔里鎮で完成させた中台禅寺はその影響を受けている[3]。
設計思想
[編集]軍人の子として生まれ、決して裕福な家庭ではなかったが、小学5年で美術に目覚めた。家系には美術の天分があったとしている[3]。師範大付属高でも自身は他の多くの生徒同様、美術教師を志していたが、クラスで建築家を目指していた1人の同級生に影響を受けてクラスでは美術教師にも建築系の指導、試験を求めるようになった[3]。
当時の台湾の大学で建築学部を設けていたのは成功大学だけだった。高校での美術指導が功を奏してか、同年に成功大学建築学部に合格した50名のうち、師大附属出身者は李を含めて5人を占めた[3]。
大学では1年生から4年生まで一つの大家庭のような校風で昼夜を問わず学内のアトリエでデッサンに明け暮れて、収穫が多かったという[3]。
青年時の李はスイスの建築家ル・コルビュジエ(1887-1965)を「建築作品は芸術家としての才気に溢れ、歴史を変えた一人であり、現代建築史の偉大な人物」と評し、自身の手本にしていた[3]。
台湾に帰国後も「中国文化を知らずして、中国人の建築を設計することはできない」として、『中華建築』の思考を深めていく[3]。中国の代表的思想家の牟宗三に入門し、儒学、仏学、老荘思想を学んで「最高の文化は宗教にほかならない」という境地に辿り着く[3]。
中華と西洋の文化をぶつけあった成果物として「東王漢宮」や「大安国宅」を生み出した[3]。李は「屋上部に中国古代建築の屋根を置いてみた」と語っている[3]。 宏国大楼(1989年)は李が「自己の中国建築意識を作品に反映できた」と初めて自認できるものとなった作品で、儒学に則った左右対称の外観と、天・地・人の三者の関係を物語る形状で、中国建築がもつ特色を「形式化」から「概念化」へ変えることを試みたという[3]。
一方で21世紀になってからは雑誌『EGG[注釈 2]』と国内の若手建築家が選定する『台湾で最も醜い建築物』に李の作品が数件ランクインするなど、世代の違いとはいえ不名誉な評価もある[7][8]。
栄典
[編集]- 行政院全国十大建築師奨(1991年[2])
- 同済大学名誉教授(1992年[2])
- 第1屆中華民国傑出建築師奨(1995年[9])
- 国立成功大学傑出校友(2006年[10])
- 第12屆国家文芸奨 (2008年)[2]
- 中華民国不動産協進会(FIABCI)国土建設特別貢献奨(2010年)[11]
主な受章物件
[編集]- 環球商業大楼 - 1980台湾建築奨・佳作(建築師雑誌[12])
- 三商行企業大楼 - 1988台湾建築奨・銀牌[12]
- 塩寮海浜公園遊憩設施 - 1989台湾建築奨・銅牌[12]
- 宏国弁公大楼 - 1991台湾建築奨・佳作[12]
- 国立芸術学院(現・国立台北芸術大学)表演学院建築群 - 1993台湾建築奨・金牌奨[12]
- 遠企中心 - 1994台湾建築奨・銀牌および国際合作奨[12]
- 中央研究院中国文哲研究所 - 1996台湾建築奨・佳作[12]
- 中台禅寺 - 2002台湾建築奨[12]
- 台北101
- 2004年 - エンポリス・スカイスクレイパー賞第1位[13]
- 2005年 - 遠東建築奨・特別奨(遠東集団[14])
- 2006年 - 台湾建築奨[12]
- 2019年 - 「過去50年で最も影響力のある高層ビル50棟」(高層ビル・都市居住協議会(CTBUH)[15])
主な作品
[編集]台北王朝大酒店 | 宏国大楼 | 亜洲広場大楼 |
張榮發基金会 | 台北圓環 | 遠企中心大楼 |
遠東SOGO忠孝復興 | 台北転運站 | 遠雄金融中心 |
美河市 | 開南大学 | 台中金典酒店 |
清華大物理系 | 清華大人文系 | 中台禅寺 |
中正大学 | 台南中国城 | 長谷世貿大楼 |
高雄85ビル | 遠雄THE ONE |
台湾
[編集]- 1980年 - 大安国宅[16]
- 1983年 - 台北環亞大飯店(現・台北王朝大酒店)[16]
- 1986年 - 台北東王漢宮集合住宅[16]
- 1989年
- 1994年 - 遠企中心弁公大楼[16]
- 1995年
- 2002年 - 台北円環[7](2016年解体により現存せず)
- 2004年 - 台北101[7](台湾で最高の高さ)
- 2006年
- 2009年 - 台北転運站[20]
- 2013年 - 遠雄金融中心[16]
- (2021年予定) - ららぽーと台北南港[21]
- (建設中) - 彰化基督教医療財団法人田中基督教智慧園区(2022年完工予定)[27]
- 1992年 - 長谷世貿聯合国大楼[16](高雄で3番目の高さ)
- 1998年 - 高雄85ビル[16](高雄で最高、台湾で2番目の高さ)
- 2019年 - 遠雄THE ONE[31](高雄で2番目、台湾で4番目の高さ)
台湾国外
[編集]重慶環球金融中心 | 天津郵電網管中心 | 光明大厦 | 盤古大観 |
法門寺合十舍利塔 | シーメンス中国総部 | 上海万博台湾館 |
- 1998年
- 2001年 - 瀋陽方圓大廈[34](遼寧省瀋陽市、2012年CNNとガーディアンの「最も醜いビル」に選ばれた[35][36])
- 2006年 - 光明大厦(上海市)[37]
- 2007年 - 盤古大観(北京市)[38]
- 2008年 - シーメンス中国総部大楼(北京市)[39]
- 2009年 - 法門寺合十舍利塔(陝西省宝鶏市扶風県法門鎮)[40]
- 2010年 - 上海万博台湾館[16](上海市。会期後は台湾・新竹市に移設)
- 2013年 - 重慶環球金融中心(重慶市、大原建築設計諮詢との共同[41])
- 2020年 - 中国建築科技館(湖北省武漢市)
脚注
[編集]註釈
[編集]出典
[編集]- ^ 台灣50現代水墨系列二 李祖原”. yamnews/新生報 (2014年4月19日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ a b c d e f g h 國家文藝獎 / 第十二屆 李祖原 / C. Y. Lee”. 財團法人國家文化藝術基金會. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 大器‧再創非人建築 作品具標竿性的李祖原”. 人間福報. 2019年11月10日閲覧。 夏玲 (2008年9月13日). “
- ^ “九份昇平戲院 重現古早風華”. Watchinese 看雜誌 2017年8月9日閲覧。
- ^ “昇平戯院”. 黄金博物館(新北市政府) (2016年10月3日). 2019年11月10日閲覧。
- ^ “三つの教育体系”. 中台禅寺. 2019年11月15日閲覧。
- ^ a b c d 【辜成允之死究責】建築大師李祖原 101等著名地標出自他手”. 鏡週刊 (2017年6月27日). 2019年11月15日閲覧。 “
- ^ a b 台灣最醜建築物 建成圓環奪榜首”. 中華電視公司 (2007年3月24日). 2019年11月15日閲覧。 “
- ^ 中華民國傑出建築師獎得獎名單”. 内政部営建署 (2019年8月29日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 恭喜51級畢業系友陳邁-榮獲101年度「成功大學校友傑”. 成大建築文教基金会 (2013年1月). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 2006-2018國家卓越建設獎歷年得獎名單.pdf”. 中華民国不動産協進会. p. 16 (2018年7月18日). 2019年10月26日閲覧。 “
- ^ a b c d e f g h i 歷屆得獎”. 建築師雜誌. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ Emporis Skyscraper Award 2004”. EMPORIS GMBH. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 遠東建築設計獎十作品入圍 「台北101大樓」獲頒特別獎”. 自由時報 (2005年4月25日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ “建築のプロが選ぶ「最も影響力のある高層ビル」に台北101/台湾”. フォーカス台湾 (2019年10月31日). 2019年11月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 2016年李祖原會士”. 台湾建築学会 (2016年3月26日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 大亞百貨結束營業之後 「3年魔咒」上身的亞洲廣場大樓”. 遠見天下文化出版 (2019年10月22日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 新光傑仕堡豪宅 落腳板橋”. Taiwan News (2016年2月25日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 家樂福重慶店”. 李祖原建築士事務所. 2019年11月15日閲覧。 “
- ^ 台北交九轉運站”. 台湾大林組. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ “~台湾初の「ららぽーと」事業~ 「(仮称)三井ショッピングパーク ららぽーと台湾南港(なんこう)」着工へ 2021年開業予定”. 三井不動産 (2019年5月23日). 2019年11月10日閲覧。
- ^ 新北市三峽區 – 遠雄大學哈佛”. 遠雄建設. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 開南大學拍過“流星花園”李祖原設計”. 中国評論通訊社 (2014年2月18日). 2019年11月10日閲覧。 “
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- ^ 月眉育樂世界”. 李祖原建築師事務所. 2019年11月15日閲覧。 “
- ^ 彰化「田基」動土了”. 中国時報 (2018年5月22日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 汪洋中的一條船 縣府推繪本”. 自由時報 (2012年3月15日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 選填志願前走訪大學 體驗歐風、生態之美”. 聯合報 (2019年3月3日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 中國城鎮城之寶龍鳳壁 將完整保留”. 自由時報 (2016年2月24日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 高雄新地標 遠雄THE ONE大樓燈光秀宛如跨年倒數”. 聯合報 (2019年10月25日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 天津郵電網管中心”. 永峻工程顧問股份有限公司. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ Yuda International Trade Center”. skyscraperpage.com. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ Fangyuan Mansion”. emporis.com. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 瀋陽方圓大廈 再度入選全球最醜建築”. 大紀元 (2012年4月18日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ “「世界で最も醜い建造物」に専門家が反論、「注目を集めること自体が成功の証」―中国”. レコードチャイナ (2012年1月11日). 2019年11月10日閲覧。
- ^ Guangming Building”. emporis.com. 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 中国十大丑陋建筑 北京盘古大观居首”. 大紀元 (2011年3月11日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 西门子中国新总部大楼在京落成”. 北京周報 (2008年9月24日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 法门寺:探秘神奇地宫 开启千年宝藏”. 新浪新聞 (2010年5月6日). 2019年11月10日閲覧。 “
- ^ 重慶環球金融中心”. 建築師雑誌. 2019年11月10日閲覧。 “
関連項目
[編集]- 王重平(C. P. Wang) – 建築事務所の共同創設者
外部リンク
[編集]- 李祖原建築師事務所
- 李祖原聯合建築師事務所 (@c.y.lee.partners) - Instagram
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