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東トルキスタンイスラム運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
東トルキスタンイスラム運動
東突厥斯坦伊斯蘭運動
حركة شرق تركستان الإسلامية
東トルキスタン独立運動
アフガニスタン紛争 (2001年-2021年)
シリア内戦に参加

上:東トルキスタン・イスラム運動の旗
下:シリア支部の旗
活動期間 1997年 - 現在
活動目的 ウイグル族の民族自決
イスラーム原理主義
構成団体 ウイグル
指導者 ハッサン・マフスーム中国語版英語版 
アブドゥカディル・ヤプチャン中国語版逮捕
本部 シリアの旗 シリア イドリブ県(最大拠点)
パキスタンの旗 パキスタン
活動地域 シリアの旗 シリア
関連勢力 アルカーイダの旗 アルカーイダ
ターリバーン
パキスタン・ターリバーン運動
タハリール・アル=シャーム
アフガニスタンの旗 アフガニスタン
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国(疑惑)[1][2]
敵対勢力 中華人民共和国の旗 中国
ロシアの旗 ロシア
パキスタンの旗 パキスタン[3][4]
シリアの旗 シリア(アサド政権)
ヒズボラ[5]
イランの旗 イラン
イスラム革命防衛隊[5]
アフガニスタン・イスラム共和国の旗 アフガニスタン[6]
カザフスタンの旗 カザフスタン
キルギスの旗 キルギス
タジキスタンの旗 タジキスタン
ウズベキスタンの旗 ウズベキスタン[7]
トルコの旗 トルコ
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東トルキスタン・イスラム運動(ひがしトルキスタン・イスラムうんどう、Eastern Turkistan Islamic Movement、略称ETIM)は、中華人民共和国からの東トルキスタン新疆ウイグル自治区)の分離独立を主張するイスラーム過激派組織である。

概要

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1997年アブドゥカディル・ヤプチャン中国語版とともにハッサン・マフスーム中国語版英語版が創設した政党「トルキスタン・イスラム党」(TIP)が中国に母体とされる。この主張がアメリカに否定されている[8]。TIPは2008年5月21日イスラム主義者のフォーラムである「Al-Ikhlas」で、党報道部発行として党の綱領を掲載した。それによると、「党はアッラーのためジハードを推進する集団であり、異教徒共産主義中国共産党から、ムスリム東トルキスタンを解放することを目的とする。イスラム世界全てのムスリムムジャヒデンと協力し、イスラムカリフを回復し全世界にシャリーアを施行する」とされている。

綱領の中の行動目標や行動指針には、ジハード敢行の為のムスリムトルキスタン人青年への訓練実施や、ジハードの対象として軍人、役人、政治家、経済人の如何を問わない、東トルキスタンでは中国人移住者こそが非合法である、と定めている[9]。同じイスラム教を信仰する回族イフワーン派ムスリム同胞団と同じ名前だが、別の集団)に対しても中国政府に従順であるとして敵対している[10][11]

2002年9月11日国際連合によって「テロ組織」と認定された[12]。中国政府は2003年12月にTIPをETIMとしてテロ組織に指定した[13]欧州連合[14]、キルギス[15]カザフスタン[16]ロシア[17]アラブ首長国連邦[18][19]イギリス[20][21]アメリカ合衆国2020年に指定解除)[22]パキスタン[23]などもテロ組織に指定した。

近年の動向

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2003年10月2日、ハッサン・マフスームがパキスタン領内のアフガニスタン国境近くでアルカーイダ掃討作戦中のパキスタン軍によって殺害された[24]

2005年7月、トルコでの集会で北京オリンピック上海国際博覧会の阻止を表明。同年9月、天山獅子隊が戦闘宣言を発する。

2007年1月5日、中国公安当局がETIMの訓練キャンプを攻撃。18名を殺害し17名を拘束と発表(同月8日)。

2008年7月21日雲南省昆明市内で複数のバスを爆破し、乗客2人が死亡した「テロ事件」(昆明バス爆破事件)の実行犯であるTIPと名乗る組織はETIMと同一の組織であると見られており[25][26]日本外務省もETIMの別名であるとしている。

2011年7月30日から31日にかけてカシュガル市で発生した連続殺傷事件(2011年カシュガル連続殺傷事件中国語版英語版)について、中国治安当局は犯人グループをETIMのキャンプで訓練を受けたイスラム教過激派集団であると断定しており、同年8月末頃にTIPを名乗る組織も自ら犯行声明を出している[27]

2012年8月24日、指導者のアブドゥッシャクール・アッ=トゥルキスターニー英語版CIA無人機にパキスタンで殺害された[28]

2013年10月28日天安門前に自動車が侵入し、群集を巻き込んだ後炎上して、男性観光客1人を含む5人が死亡、日本人を含む38人が重軽傷を負う事件が発生した[29]。中国当局は車内で死亡した3人のほか容疑者ウイグル族5人を拘束した[30]。中国当局は、ETIMがこの事件を「聖戦」と評価し、今後も新たな標的として、人民大会堂を含む中国国内の複数の地点で襲撃活動を行うとする声明を出した事や、過去の類似の事件への同組織の関与から、この事件がETIMの指示があったと判断し、摘発を強化すると発表した[31][32]

2014年1月、グアンタナモ統合タスクフォース英語版(JTF-GTMO)がETIMに訓練されていたと主張してグアンタナモ湾収容キャンプに収容されてきた22人のウイグル人の最後の1人が「敵性戦闘員」指定を解除され、スロバキアに移送された[33][34][35]

2014年7月に中国最大の清真寺モスク)であるエイティガール寺院で起きたイマームジュメ・タヒール英語版師殺害事件を支持した[36]

2014年12月、環球時報はETIMに加盟しているイスラム過激思想を持つ中国出身のウイグル人約300人が、過激派組織ISILに参加していると報じた[37][38]。ETIMはシリア内戦に反政府勢力として参加し、タハリール・アル=シャームなどと共闘しているとされる[39][40]

2017年1月、ETIMシリア支部の司令官であるアブ・オマール・アル=トゥルキスターニー英語版が米軍の無人機によってシリアで殺害されたことを環球時報は歓迎した[41]

2020年10月6日、米国は2004年当時のジョージ・W・ブッシュ政権が行ったETIMのテロ組織指定を解除した。マイク・ポンペオ国務長官は「ETIMが存続している確証がない」と述べ[42]、「約10年来活動が不明な組織の存在を理由として中国共産党が新疆での弾圧を正当化している」として解除した[43]

脚注

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  1. ^ Huang Yu-hsiang; Chang An-hsiang. “変化するアフガニスタン、アメリカ合衆国秘密裏に ETIM を支援し、中国を脅かしている”. Yazhou Zhoukan. https://tw.news.yahoo.com/%E8%80%BF%E7%88%BD%E6%9A%97%E6%89%B9%E7%BE%8E%E5%9C%8B-%E8%A2%92%E8%AD%B7%E6%9D%B1%E4%BC%8A%E9%81%8B-201000239.html 2022年9月8日閲覧。 
  2. ^ Chang Kuo-wei. %97%E6%89%B9%E7%BE%8E%E5%9C%8B-%E8%A2%92%E8%AD%B7%E6%9D%B1%E4%BC%8A%E9%81% 8B-201000239.html “Geng Shuang が米国の ETIM 支援を批判”. 中国時報 (Yahoo ニュース). https://tw.news.yahoo.com/%E8%80%BF%E7%88%BD%E6%9A %97%E6%89%B9%E7%BE%8E%E5%9C%8B-%E8%A2%92%E8%AD%B7%E6%9D%B1%E4%BC%8A%E9%81% 8B-201000239.html 2022年9月8日閲覧。 
  3. ^ http://tribune.com.pk/story/791954/zarb-e-azb-army-says-90-of-north-waziristan-cleared/
  4. ^ http://tribune.com.pk/story/722202/army-launches-operation-in-north-waziristan/
  5. ^ a b Syrian rebels pour men and missiles into frontlines”. The Fiscal Times. 17 October 2015閲覧。
  6. ^ http://afghanistan24h.appspot.com/mps-question-ansf-effectiveness-amid-growing-threats.html
  7. ^ “Kyrgyzstan says kills 11 Uighur militants near Chinese border”. Reuters. (Fri Jan 24, 2014 11:05am EST). http://www.reuters.com/article/2014/01/24/us-kyrgyzstan-uighurs-idUSBREA0N16J20140124 
  8. ^ Writer, Tom O'Connor Senior (2021年9月21日). “Islamic Terrorists or Chinese Dissidents? U.S. Grapples with Uyghur Dilemma” (英語). Newsweek. 2023年12月30日閲覧。
  9. ^ 東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)イスラム党中国にジハードの宣戦布告 MEMRI 中東報道研究機関 (2008年6月3日) 2021年8月23日閲覧。
  10. ^ Zenn, Jacob (March 17, 2011). “Jihad in China? Marketing the Turkistan Islamic Party”. Terrorism Monitor (The Jamestown Foundation) 9 (11). https://jamestown.org/program/jihad-in-china-marketing-the-turkistan-islamic-party/ 2019年7月9日閲覧。. 
  11. ^ Zenn, Jacob (February 2013). Terrorism and Islamic Radicalization in Central Asia A Compendium of Recent Jamestown Analysis. p. 57. http://www.jamestown.org/uploads/media/Jamestown_articles_-_Terrorism_in_Central_Asia_February_2013.pdf 2019年7月9日閲覧。. 
  12. ^ Designation of the Eastern Turkistan Islamic Movement Under UNSC Resolutions 1267 and 1390”. アメリカ合衆国国務省 (September 11, 2002). 2019年7月4日閲覧。
  13. ^ 公安調査庁『国際テロリズム要覧』(要約版)「東トルキスタン・イスラム運動」 2014年3月2日閲覧
  14. ^ Consolidated TEXT: 32002R0881 — EN — 10.10.2015”. eur-lex.europa.eu. 25 August 2016閲覧。
  15. ^ Tom Lansford (24 March 2015). Political Handbook of the World 2015. SAGE Publications. pp. 818–. ISBN 978-1-4833-7158-0. https://books.google.com/books?id=PdWTBwAAQBAJ&pg=PA818&dq=list+uzbekistan+organizations+turkestan&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwillomIypPMAhXFMj4KHcwdDcs4ChDoAQg7MAY#v=onepage&q=list%20uzbekistan%20organizations%20turkestan&f=false 
  16. ^ Mariya Y. Omelicheva (13 September 2010). Counterterrorism Policies in Central Asia. Routledge. pp. 131–. ISBN 978-1-136-92372-2. https://books.google.com/books?id=ycYtCgAAQBAJ&pg=PA131&dq=kazakhstan+designated+organizations+islamic+party&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwimoorrxpPMAhWikIMKHbqeC3sQ6AEIHTAA#v=onepage&q=kazakhstan%20designated%20organizations%20islamic%20party&f=false American Foreign Policy Council (30 January 2014). The World Almanac of Islamism: 2014. Rowman & Littlefield Publishers. pp. 673–. ISBN 978-1-4422-3144-3. https://books.google.com/books?id=9fQ3AwAAQBAJ&pg=PA673&dq=kazakhstan+designated+organizations+islamic+party&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwimoorrxpPMAhWikIMKHbqeC3sQ6AEIKTAC#v=onepage&q=kazakhstan%20designated%20organizations%20islamic%20party&f=false J. Todd Reed; Diana Raschke (2010). The ETIM: China's Islamic Militants and the Global Terrorist Threat. ABC-CLIO. pp. 206–. ISBN 978-0-313-36540-9. https://books.google.com/books?id=5I2b_hrJO8sC&pg=PA206&dq=kazakhstan+designated+organizations+islamic+party&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwimoorrxpPMAhWikIMKHbqeC3sQ6AEILzAD#v=onepage&q=kazakhstan%20designated%20organizations%20islamic%20party&f=false  Terrorism Documents of International and Local Control: Volumes 90 and 91. Oxford University Press. (29 July 2008). pp. 168–. ISBN 978-0-19-538101-6. https://books.google.com/books?id=K3LnCwAAQBAJ&pg=PA168&dq=kazakhstan+designated+organizations+islamic+party&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwimoorrxpPMAhWikIMKHbqeC3sQ6AEIPjAG#v=onepage&q=kazakhstan%20designated%20organizations%20islamic%20party&f=false 
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  21. ^ https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/538297/20160715-Proscription-website-update.pdf
  22. ^ "U.S.Department of State Terrorist Exclusion List" (Retrieved on 29 July 2014).
  23. ^ Three groups active in Xinjiang banned - Pakistan”. Dawn.Com (2013年10月24日). 2017年8月29日閲覧。
  24. ^ “Chinese militant 'shot dead'” (英語). BBC NEWS (英国放送協会). (2003年12月23日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/3343241.stm 2011年9月8日閲覧。 
  25. ^ The National Terror Alert: Terror Attacks Threatened During Beijing Olympics - Turkestan Islamic Party ‘ETIM’
  26. ^ GlobalVoice Online: Unheard of ‘Turkestan Islamic Party' claims recent bombings
  27. ^ “「中国へ復讐」…ウイグル独立派がテロ犯行声明”. 読売新聞. (2011年9月8日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110908-OYT1T00860.htm?from=main5 2011年9月8日閲覧。 
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  29. ^ 天安門前で車突入、5人死亡 故意の可能性-日本経済新聞2013年11月4日閲覧
  30. ^ ウイグル族5人を拘束=「テロ」断定、死亡3人は家族-天安門突入炎上事件・中国-時事通信2013年11月4日閲覧
  31. ^ 「東トルキスタン運動」が指示=天安門突入-国家指導部が初言及・中国-時事通信2013年11月4日閲覧
  32. ^ イスラム武装組織、「天安門広場の車突入は聖戦」 追加攻撃も予告 AFP通信 (2013年11月24日)2017年2月20日閲覧
  33. ^ Information paper: Uighur Detainee Population at JTF-GTMO”. United States Department of Defense. pp. 28–34 (30 October 2004). 2020年12月6日閲覧。
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  35. ^ Shannon Tiezzi (2014年1月3日). “US Releases Last Uyghur Chinese Prisoners From Guantanamo Bay”. The Diplomat. https://thediplomat.com/2014/01/u-s-releases-last-uyghur-chinese-prisoners-from-guantanamo-bay/ 2020年12月6日閲覧。 
  36. ^ Zenn, Jacob (10 October 2014). "An Overview of Chinese Fighters and Anti-Chinese Militant Groups in Syria and Iraq". China Brief. The Jamestown Foundation. 14 (19).
  37. ^ 竹内誠一郎 (2014年12月16日). “ウイグル族ら300人「イスラム国」に…中国紙”. 読売新聞. https://web.archive.org/web/20141217194956/http://www.yomiuri.co.jp/world/20141216-OYT1T50084.html 2014年12月17日閲覧。 
  38. ^ 阿部哲也 (2014年12月16日). “「イスラム国」戦闘員、中国から300人合流か”. 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H6O_W4A211C1FF1000/ 2014年12月17日閲覧。 
  39. ^ Weiss, Caleb (23 April 2015). “Turkistan Islamic Party in Syria involved in new Idlib offensive”. Long War Journal. http://www.longwarjournal.org/archives/2015/04/turkistan-islamic-party-in-syria-involved-in-new-idlib-offensive.php 
  40. ^ 中国取材班 (2016年1月3日). “チャイナセンセーション第1部一帯一路の行方/4(その1)「テロの道」へ懸念ウイグル人、シリアで訓練”. 毎日新聞. http://mainichi.jp/articles/20160103/ddm/001/030/114000c 2016年1月13日閲覧。 
  41. ^ Ai Jun (3 January 2017). "Strike on ETIM chief points to joint Sino-US anti-terror action". Global Times.
  42. ^ “米、中国が非難する東トルキスタン・イスラム運動のテロ組織認定解除”. AFPBB. (2020年11月7日). https://www.afpbb.com/articles/-/3314498 2020年12月6日閲覧。 
  43. ^ 平野聡 (2021年1月25日). “これぞ動かぬ証拠 ‶新疆ジェノサイド〟示した中国統計年鑑”. Wedge (ウェッジ). オリジナルの2021年1月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210128201453/https://wedge.ismedia.jp/articles/-/21994?page=4 

関連項目

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外部リンク

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