東原和成
東原 和成 | |
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生誕 |
1966年 日本 東京都 |
居住 | 日本 |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 生物有機化学、生物化学、神経科学、化学受容 |
研究機関 | 東京大学 |
出身校 |
東京大学農学部 ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校化学科博士課程 |
主な業績 | 匂いやフェロモンを感知する嗅覚の分子メカニズム |
影響を 受けた人物 |
森謙治 ロバート・レフコウィッツ |
主な受賞歴 |
Kunio Yamazaki Distinguished Lectureship Award(2017年) Frank Allison Linville's RH Wright Award in Olfactory Research(2006年) |
プロジェクト:人物伝 |
東原 和成(とうはら かずしげ、1966年 - )は、日本の生命科学者。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授。専門は嗅覚などの生物の化学受容の分子メカニズム。
概要
[編集]かつては俳優を志していたと言われる[1]。高校や大学ではテニスに打ち込んだ[2][3]。
大学の卒業研究で有機化学の論文[4]を出版した後に渡米し、昆虫の幼若ホルモンの研究で博士号を取得した[5]。その後、博士研究員として、のちにノーベル化学賞を受賞するレフコウィッツ研究室でGタンパク質共役受容体 (GPCR) の研究に従事した[6]。日本に帰国後、嗅覚受容体の機能解析に成功し[7]、その後片岡宏誌と共に東京大学の柏キャンパスに研究室を立ち上げ[8]、匂いやフェロモンの受容機構に関する研究を、マウス、魚、昆虫、植物[9][10]といった幅広い生物種を対象に行った。教授昇進後には弥生キャンパスに移動し、ERATO[11]や特別推進研究[12]等の大型公的予算を獲得しながらヒトも対象に含めた研究を遂行している。
主な研究業績としては、哺乳類の嗅覚受容体の機能解析[7][13]、涙に性フェロモンが含まれることの発見[14][15][16]、昆虫の嗅覚受容体が哺乳類のようなGPCR型ではなくイオンチャネル型の活性を持つことの発見[17][18]などが挙げられる。
日本の教育[19]や研究[20]についての提言も学術誌に発表した。2023年1月からは生物科学学会連合の代表を務め、科研費倍増の署名活動などを行った[21]。
共書として「ワインの香り」(虹有社)、編書として「化学受容の科学」(化学同人)、「Pheromone Signalinng: Methods and Protocols」(Springer) などがある。
略歴
[編集]- 1985年 麻布高等学校卒業[2]
- 1985年 東京大学理科一類入学
- 1989年 東京大学農学部農芸化学科卒業(森謙治研究室)
- 1993年 ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校化学科博士課程修了(Glenn Prestwich研究室、Ph.D. in biological chemistry)
- 1993年 デューク大学医学部博士研究員(ロバート・レフコウィッツ研究室)
- 1995年 東京大学医学部脳研究施設生化学部門助手
- 1998年 神戸大学バイオシグナル研究センター助手
- 1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻助教授
- 2009年 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授[11]
- 2012-2018年 科学技術振興機構 (JST) ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクト研究総括兼任
受賞歴
[編集]- 2006年 Frank Allison Linville's RH Wright Award in Olfactory Research
- 2008年 塚原仲晃記念賞
- 2009年 日本学士院学術奨励賞
- 2015年 井上学術賞
- 2017年 Kunio Yamazaki Distinguished Lectureship Award
脚注
[編集]- ^ 岡勇輝 (2019). “私のメンター 東原和成―化学感覚の真理を嗅ぎ分ける探究者”. 実験医学 Vol.37 No.4. ISBN 978-4-7581-2517-8 .
- ^ a b “2014 年度 麻布高校PTA主催 文化講演会 『麻布的研究者への道』“においとフェロモンのメカニズム“”. 2019年5月7日閲覧。
- ^ “おもしろ研究室”. web.archive.org. 東京大学TLO (2008年2月19日). 2024年8月3日閲覧。
- ^ Kitahara, Takeshi; Touhara, Kazushige; Watanabe, Hidenori; Mori, Kenji (1989). “Stereocontrolled synthesis of both the enantiomers of phaseic acid and its methyl ester, a pivotal metabolite of abscisic acid” (英語). Tetrahedron 45 (20): 6387–6400. doi:10.1016/S0040-4020(01)89516-8 .
- ^ 東原和成『昆虫の成長・変態を制御するしくみ -幼若ホルモンの作用・代謝機構の研究はどこまで進んでいるか-』化学と生物, 32, 13-22, 日本農芸化学会、1994年 。
- ^ 東原和成 (2012). “膜受容体の存在の実証から結晶構造の解明まで”. 実験医学 Vol.30 No.19. ISBN 978-4-7581-0090-8 .
- ^ a b Touhara, K.; Sengoku, S.; Inaki, K.; Tsuboi, A.; Hirono, J.; Sato, T.; Sakano, H.; Haga, T. (1999-03-30). “Functional identification and reconstitution of an odorant receptor in single olfactory neurons” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 96 (7): 4040-4045. doi:10.1073/pnas.96.7.4040. ISSN 0027-8424. PMC 22416. PMID 10097159 .
- ^ “とことん論理的に考え、魂を注ぎこんだときにブレークスルーが生まれる”. Nature ダイジェスト (2005年12月). 2024年7月26日閲覧。
- ^ ビル・S・ハンソン、【訳】大沢章子 (2023年9月8日). “亜紀書房 - 匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚 第12章 植物は匂いがわかるのか”. www.akishobo.com. 2024年8月3日閲覧。
- ^ “I smell a winner: Linking plant olfactory stimuli to genetic regulation” (英語). www.asbmb.org. 2024年8月27日閲覧。
- ^ a b “科学技術振興機構報 第915号 研究領域の概要および研究総括の略歴”. www.jst.go.jp. 2019年5月7日閲覧。
- ^ “ヒトにおける嗅覚コミュニケーションの分子神経基盤 特別推進研究”. 国立情報学研究所. 2024年7月25日閲覧。
- ^ Kajiya, Kentaro; Inaki, Koichiro; Tanaka, Motonari; Haga, Tatsuya; Kataoka, Hiroshi; Touhara, Kazushige (2001-08-15). “Molecular Bases of Odor Discrimination: Reconstitution of Olfactory Receptors that Recognize Overlapping Sets of Odorants” (英語). The Journal of Neuroscience 21 (16): 6018–6025. doi:10.1523/JNEUROSCI.21-16-06018.2001. ISSN 0270-6474. PMC PMC6763140. PMID 11487625 .
- ^ “Kazushige Touhara” (英語). Nature 437 (7060): xiii–xiii. (2005-10). doi:10.1038/7060xiiia. ISSN 0028-0836 .
- ^ Kimoto, Hiroko; Haga, Sachiko; Sato, Koji; Touhara, Kazushige (2005-10). “Sex-specific peptides from exocrine glands stimulate mouse vomeronasal sensory neurons” (英語). Nature 437 (7060): 898–901. doi:10.1038/nature04033. ISSN 0028-0836 .
- ^ Haga, Sachiko; Hattori, Tatsuya; Sato, Toru; Sato, Koji; Matsuda, Soichiro; Kobayakawa, Reiko; Sakano, Hitoshi; Yoshihara, Yoshihiro et al. (2010-07). “The male mouse pheromone ESP1 enhances female sexual receptive behaviour through a specific vomeronasal receptor” (英語). Nature 466 (7302): 118-122. doi:10.1038/nature09142. ISSN 0028-0836 .
- ^ Nakagawa, Takao; Sakurai, Takeshi; Nishioka, Takaaki; Touhara, Kazushige (2005-03-11). “Insect sex-pheromone signals mediated by specific combinations of olfactory receptors”. Science (New York, N.Y.) 307 (5715): 1638–1642. doi:10.1126/science.1106267. ISSN 1095-9203. PMID 15692016 .
- ^ Sato, Koji; Pellegrino, Maurizio; Nakagawa, Takao; Nakagawa, Tatsuro; Vosshall, Leslie B.; Touhara, Kazushige (2008-04). “Insect olfactory receptors are heteromeric ligand-gated ion channels” (英語). Nature 452 (7190): 1002-1006. doi:10.1038/nature06850. ISSN 0028-0836 .
- ^ “サイエンスにおける私にとっての日本語”. 「蛋白質・核酸・酵素」2006年10月号50周年記念号. 2024年8月3日閲覧。
- ^ “巻頭言”. 日本味と匂学会誌 Vol.31 No.1 PP.1-2 2024 年 5 月. 2024年8月3日閲覧。
- ^ Ikarashi, Anna (2024-07-04). “Japan’s scientists demand more money for basic science” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-024-00942-8. ISSN 0028-0836 .
外部リンク
[編集]- 生物化学研究室 - 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻
- 匂いの研究を紹介した動画(2005年のScience channel)
- フェロモンの研究を紹介した動画(2005年のScience channel)