永井恒司
永井 恒司 | |
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2009年の永井 | |
生誕 |
1933年6月10日(91歳) 日本、群馬県 |
居住 | 日本 |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 薬学、製剤学 |
研究機関 |
東京大学 星薬科大学 |
出身校 | 東京大学 |
博士課程 指導教員 | 野上寿 |
主な業績 | ドラッグデリバリーシステムの開発 |
主な受賞歴 | ヘスト・マドセンメダル受賞(1986年) |
プロジェクト:人物伝 |
永井 恒司(ながい つねじ、1933年6月10日 - )は、日本の薬学者。薬剤師。星薬科大学元学長。薬学博士(東京大学、1961年)。
生物学的利用能の解明と制御に関する研究、薬物送達システム(Drug delivery system)の研究(固形剤の溶解速度論、薬物移行、薬剤学的薬物相互作用、添加物の製剤物性、シクロデキストリン、粘着付着性、経皮吸収、製剤設計、薬物代謝、薬物動態学、臨床治験)を行った。
来歴
[編集]1933年(昭和8年)6月10日、群馬県勢多郡赤城村敷島に生まれる。
薬学を志すようになった経緯を以下のように述懐している。
私は、姉が医者であり、親戚にも医者が多かったことから、医者になることを勧められ、当初は自分もそのつもりでいた。ところが、医者の仕事を近くで観察しているうちに、病気を直接に直しているのは、医者ではなく薬である。と思うようになった。いとも簡単にそのような考えに切り変わったのは、私が群馬県の赤城山の麓の村に生まれて育ったことと無縁ではない。村にはたくさんのお宮やお堂があって、そこでよく遊んだことや、縁日のことなども記憶に残っている。それらの中で薬師さま(薬師堂)はあっても医師さま(?)はない。人々は薬師如来にすがって良い薬を求めているのである。奈良にも薬師寺はあるが医師寺というのはない。こうして、私は生まれ育った環境から、薬学が貴い学問であることに気付き、それを専攻するようになった。 — 「薬師さま・永井家・父と私」[1] より抜粋
学歴
[編集]- 1946年 群馬県勢多郡敷島村立敷島南小学校尋常科卒業
- 1952年 群馬県立渋川高等学校卒業[2]
- 1956年 東京大学医学部薬学科卒業
- 1961年 東京大学大学院博士課程修了学位論文提出:薬学博士
- 1965年 米国コロンビア大学留学(1965-1966)
- 1966年 米国ミシガン大学留学(1966-1967)
- 1966年 米国ニューヨーク市立 Evening Street Elementary School卒業
免許登録
[編集]薬剤師登録(1956年9月24日) 衛生検査技師登録(1962年6月11日)
職歴
[編集]- 1961年 東京大学薬学部助手(製剤学1961年-1971年)
- 1971年 星薬科大学教授(薬剤学1971年-1999年)
- 1965年 東邦大学薬学部兼任講師(1965年:6ヶ月間)
- 1977年 東北大学薬学部兼任講師(1977年:3年間)
- 1980年 長崎大学薬学部兼任講師(1980年:1年間)
- 1981年 千葉大学薬学部・大学院薬学研究科兼任講師(1981年:1年間)
- 1981年 日本政府開発援助によるビルマ製薬研究開発センター(DCPT)プロジェクト国内委員長(1981年-1987年)[3][4][5]
- 1983年 シクロデキストリン学会 初代会長(1983年:3年間)[6]
- 1984年 公益社団法人日本薬剤学会 初代会長(1985年-1987年)[7] [8]
- 1994年 公益財団法人永井記念薬学国際交流財団理事長(1994年-現在)[9]
- 1994年 日本DDS学会理事長(1994年-1997年)[10]
- 1994年 第1回日仏DDSシンポジウム組織委員長(1994年12月7日)
- 1996年 国際CRS学会会長(1996年-1997年)[11]
- 1997年 アジア薬剤師会連盟薬科大学(FAPA-CP)初代学長(1997年-2011年)[12] [13]
- 1997年 日伊DDSシンポジウム組織委員長(1997年6月20日)
- 2001年 星薬科大学学長就任(2001年-2004年任期途中解任)
- 2002年 日本薬学図書館協議会会長(2002年-2016年)[14]
- 2007年 NPO法人ジェネリック医薬品協議会理事長(2007年-2015年)[15]
- 2007年 アジア薬科学連合(AFPS)初代会長(2007年-2009)[16]
業績
[編集]生物学的利用能の解明と制御ならびに薬物送達システムの開発。
固形剤の溶出速度論、 薬物移行、薬物相互作用、添加物の製剤物性、経粘膜・経皮吸収、製剤設計論、薬物代謝・薬動学、臨床治験に至るまで多岐にわたる。
印刷物
[編集]原著論文:576編(直近No.576: Int. J. Pharm., 300, 38-47 (2005)).
単行本(分担執筆を含む):108編(直近No.108:公益社団法人日本薬剤学会創立30周年記念出版、p. 4-8(2015)).
総説・解説:246編(直近No.246:一般社団法人 日本女性薬剤師会テキスト、p.116-120(2012)).
その他の一般論文・コメント及び記事(取材記事を含む):313編(直近No.313:薬剤学(生命とくすり)、Vol.75, No.5, p. 306(2015).
Drug delivery(薬物送達)関係論文引用頻度世界第4位(1975~1997年間についてのISI出版のデータ:永井らの論文287編が総計1,636回引用された:世界6,000,000化学者を対象とし、500回以上引用された者10,800人の中から)
特許(終了)・実用化新医薬品
[編集]特許(終了):64件(国内56件; 国際8件) 実用化新医薬品3品目:「アフタッチ®」[17];「リノコート®」;「サルコート®」.
受賞・受章歴
[編集]- 1966年 米国ニューヨーク市立 Evening Street Elementary School(「Highest Examination's Score Award受章」1966年6月14日)
- 1969年 内藤記念科学振興財団第1回内藤記念科学奨励金(「薬効に関する薬剤の物理化学的性質の研究」1969年11月29日)
- 1972年 日本薬学会奨励賞並びに鈴木賞(「固形薬剤の溶解性に関する速度論的研究」1972年4月5日)
- 1982年 日本薬学会製剤セミナー委員会製剤技術賞(「粘着付着性製剤の開発」1982年7月23日)
- 1984年 全国発明表彰発明賞受賞 (「アフタッチ®」 1984年6月6日)[18]
- 1986年 国際薬剤師・薬学連合(FIP)においてヘスト・マドセンメダル(「金メダル学術賞 受賞」(日本人初) フィンランド国ヘルシンキ 1986年9月1日)[19] [20] [21]
- 1986年 米国ニュージャージー州ラトガース大学Distinguished Lectureship(第1回 1986年10月29日)
- 1987年 中国 北京大学名誉教授(1987年4月30日)[22]
- 1988年 日本薬学会 学術賞 受賞 (「放出制御型薬物送達システムに関する研究」1988年4月4日)[23]
- 1988年 星薬科大学第一回大谷賞受賞(1988年5月17日)
- 1990年 中国、中国薬科大学名誉教授(1990年4月29日)[24]
- 1992年 フランス国リオン市長CITY MEDAL(「薬学業績に対して」 リオン 1992年9月14日)
- 1992年 米国薬学会フェロー(AAPS Fellow)受賞(テキサス州サンアントニオ市 1992年11月15日)[25]
- 1993年 ニュージーランド国オタゴ大学1993年 William Evans Fellowship(ダニーデン市 1993年9月24日)
- 1996年 トルコ国立Hacettepe大学名誉博士(The Doctor Honoris Causa)(アンカラ市 1996年9月10日)[26]
- 1997年 シクロデキストリン学会賞(「シクロデキストリンの医薬への応用」1997年11月6日)[27]
- 1998年 オランダ国ライデン大学LACDR (Leiden/Amsterdam Center for Drug Research)名誉教授(1998年9月5日)
- 1998年 中国薬学会名誉会員(1998年6月10日)[28][29][30]
- 1999年 紫綬褒章受章(1999年4月29日)[31][32]
- 1999年 米国薬学会賞1999 AAPS Research Achievement Award in Pharmaceutics and Drug Delivery (1999年11月14日)[33]
- 2000年 FIP 2000年世界薬学会議Millennial Pharmaceutical Scientist Award (2000年 4月15日)[34][35]
- 2001年 英国ロンドン大学 Doctor of Science.honoris causa(名誉博士 ロンドン 2001年11月28日)
- 2006年 ミシガン大学同窓栄誉賞(2006年6月3日) [36]
- 2006年 国際コントロールドリリース学会レーナーホフマン賞受賞(2006年7月24日)[36]
- 2009年 日本薬剤学会名誉会長(2009年4月1日)[37]
- 2009年 熊本大学名誉フェロー受章 (2009年11月2日)[38]
- 2011年 国際薬剤師・薬学連合(FIP)名誉会員(2011年9月4日)[39]
- 2014年 国際薬剤師・薬学連合(FIP)Fellow Award 2014受賞(2014年8月31日) [40][41] [42]
- 2015年 公益社団法人日本薬剤学会第1回薬師メダル受賞(2015年5月20日) [43]
- 2015年 タイ国立Chulalongkorn大学名誉博士(「Honorary Doctoral Degree」2015年10月8日) [44]
- 2016年 日本薬学図書館協議会名誉会長(2016年6月10日) [45]
- 2018年 CRS T. Nagai Postdoctoral Research Achievement Award 2018(2018年7月23日) [46]
教育研究活動以外の社会貢献及び国際貢献
[編集]- 1968年 日本政府の諸委員または委員長を歴任(1968年-2016年)
- 1981年 日本政府のODA援助計画「ビルマ製薬研究開発センター(BDCPT)」委員長 (1981年-1987年、ビルマ国ラングーン市へ頻回派遣)
- 1984年 厚生省(現厚生労働省)発展途上国保険福祉開発企画推進事業医薬品部会長 (1984年-1986年、1985年にフィリピン国マニラ市へ派遣)
- 1985年 社団法人日本薬剤学会の設立初代会長 (1985年10月1日)
- 1986年 公益財団法人永井記念薬学国際交流財団設立理事長(1986年10月25日創立、当初は任意法人)
- 1986年 中国薬学会の国際薬学連合(FIP)への加盟の調整交渉 (1986年開始、1992年9月12日、正式加盟)
- 1993年 シクロデキストリン学会の設立初代会長 (1993年4月1日)
- 1997年 アジア薬剤師連盟薬科大学(FAPA-CP)の設立初代学長 (1997年10月14日)
- 2007年 特定非営利活動法人(NPO) ジェネリック医薬品協議会の設立初代会長 (2007年5月25日)
- 2007年 アジア薬科学連合(AFPS)の設立初代会長 (2007年10月26日)
- 2011年 日本の「医師の調剤不可」(完全分業)の推進活動 (続行中) 「医薬分業に関する提言」 [47]
脚注
[編集]- ^ 「薬師さま・永井家・父と私」、日本化学会 化学と工業 45巻7号 1992年
- ^ 「渋高新聞記事2005_03.01」、
- ^ 「ファルマシア」、「ビルマ国製薬研究開発センタープロジェクトに参加して」永井恒司・町田良治共著,ファルマシア, Vol. 20, No. 3, p. 251 (1984).
- ^ 「ビルマの「たて琴」母校に、」、上毛新聞、2014年8月15日
- ^ 「渋川高校同窓会」、ビルマの「たて琴」母校に寄贈 永井恒司さん 「たて琴」はこのプロジェクトの記念にビルマ国から贈られた:こがねのとび(群馬県立渋川高等学校同窓会たより)、新3号(平成26年9月, p.1-1 (2014))」
- ^ 「シクロデキストリン学会歴代会長」、
- ^ 「日本薬剤学会歴代会長」、
- ^ 「PHARM TECH JAPAN」「日本薬剤学会の設立まで - 現在までの経過と今後の予定 - : 永井恒司著、」、PHARM TECH JAPAN, Vol. 1, No. 10, p. 1058 (1985)
- ^ 「公益財団法人永井記念薬学国際交流財団」、
- ^ 「日本DDS学会」、
- ^ 「公益社団法人日本薬剤学会」、「永井恒司教授のコントロールドリリーズソサイエティ(CRS)副会長(次期会長)就任について:杉山雄一著」生命とくすり(日本薬剤学会会報),Vol. 11, No. 1, p. 8-9 (1995)」
- ^ 「1997年上毛新聞記事」、
- ^ 「 永井恒司教授アジア薬剤師会連盟薬科大学(FAPA-CP)初代学長に就任:(高山幸三著)」星薬科大学学報,No. 47,p.9, Nov. 30, 1997
- ^ 「日本薬学図書館協議会」、
- ^ 「NPO法人ジェネリック医薬品協議会」、
- ^ 「永井恒司先生の恒友会記事」、
- ^ 「製剤開発とその非科学的背景 」、帝國製薬
- ^ 「全国発明表彰」、発明賞 徐放性製剤の発明、1984年6月6日
- ^ 「国際薬剤師・薬学連合(FIP)」、1986年9月1日
- ^ 「CiNii(NII学術情報ナビゲータ)」、永井恒司教授 国際薬学会賞 HOEST-MADSEN MEDAL 1986 受賞決定
- ^ 「永井記念薬学国際交流財団の紹介」、公益財団法人 永井記念薬学国際交流財団創立、1986年
- ^ 受章時は北京医科大学。2000年に同大学と北京大学は合併し、北京大学となる
- ^ 「CiNii(NII学術情報ナビゲータ)」、日本薬学会 日本薬学会会誌、Vol.24 No.4(1988)
- ^ 「中国薬科大学」、
- ^ 「米国薬学会」、
- ^ 「永井恒司教授Hacettepe大学名誉博士を受章:高山幸三著、」、星薬科大学学報,No. 45, p.4,Nov. 30, 1996
- ^ 「歴代受賞者一覧」、シクロデキストリン学会
- ^ 葯学家永井恒司教授:蔡預著,中国葯学雑誌,Vol.33, No.8, p.499-500 (1998)
- ^ 中国葯学会の国際薬学連合(FIP)加盟と本学理事室:永井恒司著、星薬科大学学報,No. 37, Nov. 14, 1992.
- ^ Conference on Challenges for Drug Delivery and Pharmaceutical Technology in honor of Prof. Tsuneji Nagai's 65th birthday, Tokyo, Jun. 9-11, 1998 (Waseda University):(記事)CYCLODEXTRIN NEWS, Vol. 12, No. 5, p. 79-80, May 1998.
- ^ 「CiNii(NII学術情報ナビゲータ)」、永井恒司先生紫綬褒章受章:高山幸三著、ファルマシア, Vol. 35, No. 9, p. 951-951 (1999)
- ^ 受章理由:多年薬剤学・製剤学の研究に努めて優れた業績を挙げ学術の進歩に寄与し事績まことに著明である
- ^ 「永井恒司先生の恒友会記事」、
- ^ AAPS Awards Ceremony Honors Scientific Accomplishment:(記事), AAPS NEWSMAGAZINE, Vol.3, No.1, p. 13 (January 2000).
- ^ 橋田充著、ファルマシア, Vol. 36, No. 4, p. 318-318 (2000)
- ^ a b 「CiNii(NII学術情報ナビゲータ)」、永井恒司先生,ミシガン大学同窓栄誉賞並びにCRSレイナーホフマン賞を受賞、ファルマシア 42(10), 1033, 2006-10-01
- ^ 「公益社団法人日本薬剤学会」
- ^ 「永井恒司先生の恒友会記事」、
- ^ Congratulation 永井恒司先生FIP名誉会員の推挙を祝う:原島秀吉著、ファルマシア、Vol. 47, No.8, p.709-709(2011).
- ^ 「CiNii(NII学術情報ナビゲータ)」、日本薬剤学会 20 March 2014
- ^ 「永井恒司先生の恒友会記事」、
- ^ 永井恒司先生Fellow賞を受賞(FIPの記事):MIL, vol.62.p10-10,2015 Winter
- ^ 「日本薬剤学会30周年 薬師メダル」、
- ^ 「日本薬剤学会記事」、
- ^ 「日本薬学図書館協議会平成28年度総会(2016年6月10日、東京)」、
- ^ 「CRS(Controlled Release Society)」、
- ^ 永井恒司著、薬剤学、Vol. 71, No.3, p.134-135 (2011)