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無線技術士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
無線技術士
略称 一技、二技
実施国 日本の旗 日本
資格種類 国家資格
分野 電気通信
認定団体郵政省(現総務省
根拠法令 電波法
特記事項 みなし規定により書換えは不要
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ウィキポータル ウィキポータル 資格
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無線技術士(むせんぎじゅつし)は、かつてあった無線従事者の一種で無線局の技術操作に従事する者。陸上無線技術士の前身である。

概要

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1950年(昭和25年)の電波法制定時に、国際電気通信連合条約に基づかない国内専用の資格[注釈 1]として制定された。通信操作の規定はなかった[注釈 2]

1957年に制定された技術士法は技術士の資格について名称独占としているが、無線技術士の資格は法律により名称が定められた資格であることから、その例外とされる。船舶航空機の運航に関連する無線設備であっても、航空従事者または船舶局無線従事者証明・海技士の免許を要しないものは、操作が可能である。

1989年(平成元年)11月の電波法改正により、資格が海上、航空、陸上と利用分野別と再編[1]の際に陸上無線技術士と改称され、陸上に本局を置かなければ海上での運用ができないと、翌1990年(平成2年)5月にこの改正法令が施行された。本項目で扱うのは主にこの時点までとする。

無線電信法

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無線技術士の前身は、1940年(昭和15年)制定の逓信省令電気通信技術者検定規則[2]による電気通信技術者である。

電信法無線電信法においては、電気通信は政府が管掌するものとされ、官設無線を操作するのは官員(国家公務員に相当)であり特に資格は要しなかった[注釈 3]。なお無線電信法第2条で法人や個人による私設無線の開設を例外的に認め、その操作には私設無線電信通信従事者[注釈 4]の資格が要求された。

その後の第一次世界大戦関東大震災による財政逼迫で、国際通信の運営を国際電気通信株式会社にまかせ、また1924年(大正13年)から社団法人日本放送協会(現NHK)がラジオ放送を始めた。両者の設備を運用する技術者は任用時に逓信省の認定を個々に受けていたが、戦時体制下に国家資格として創設されたのが電気通信技術者である。いわば政府に代って電気通信を管理するための資格である。

現行の無線従事者とは異なり無線通信士検定規則に基づく無線通信士とは別個の資格であり、電気通信事業法下における電気通信主任技術者の原型ともいえる。

できごと
1940年
(昭和15年)
3月 電気通信技術者検定規則に
  • 電気通信技術者第一級
  • 電気通信技術者第二級
  • 電気通信技術者第三級(無線)[注釈 5]
  • 電気通信技術者第三級(有線)[注釈 6]

の4種が制定[注釈 7]された。資格は終身有効であった。また、無線通信士第一級は電気通信技術者第三級(無線)とみなされた。

国際電気通信株式会社に対して配置が要求された[3]

12月 社団法人日本放送協会に対して配置が要求された[3]

また無線電信法第2条第5項の実験用私設無線電信無線電話施設(戦後になり私設無線電信電話実験局とも通称[注釈 8]された。現代の実験試験局実用化試験局アマチュア局をあわせたものに相当する。)の操作には、それまで「無線通信士資格検定規則」第1条により無線通信士第三級以上の資格が求められていた[注釈 9]。ところがこの年の12月より突然、無線通信士第二級以上又は電気通信技術者第三級(無線)以上を要求される事態となったが、まもなく太平洋戦争の開戦で実験用私設無線電信無線電話施設の運用が禁じられたため、結局のところ『無線通信士資格検定規則』第1条、および『私設無線電信無線電話規則』第36条の規則改正はなされないまま終戦後まで放置された。

1941年
(昭和16年)
太平洋戦争開戦
  • 以後、人員・物資が窮迫するに伴い受験年齢制限の撤廃、実務経験の範囲拡大などの戦時特例が行われた。
1946年
(昭和21年)
戦時特例が廃止された。
1947年
(昭和22年)
試験が実施されなかった。
  • 以後、廃止時まで実施されなかった。これ以降の取得は実務経験や学校卒業等による。
1949年
(昭和24年)
電気通信技術者の制度が廃止された。[4]

電波法

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1950年(昭和25年) 電波法が制定され、官公庁・民間を問わず無線局の操作には原則として無線従事者を要することとされた。 また、無線電信法と異なり電波法の条文中に資格名称が盛り込まれた。

できごと
1950年
(昭和25年)
無線技術士の種別は次のとおりとされた。
  • 第一級無線技術士(電気通信技術者第一級および電気通信技術者第二級が相当)
  • 第二級無線技術士(電気通信技術者第三級(無線)が相当)
    • 第二級無線技術士の操作範囲は第一級無線通信士(現 第一級総合無線通信士)の操作範囲に概ね含まれた。
    • 従前の資格保有者は電波法施行後1年以内に免許証の交付を受けなければ失効するものとされた。
    • 免許証の有効期間は5年であった。
    • 操作範囲は電波法に規定されており、アマチュア無線局の操作については定められていなかった。
    • 電波法施行後の一年間は無線局の技術操作に資格は要しないこととされた。
  • 国家試験には一次試験と二次試験があり、一次試験は2月、6月、10月に、二次試験の日時は合格者にその都度通知するものとされた。
    • 第一級無線技術士の一次試験には「一般常識」として口述試験があった。
    • その他の一次・二次試験は筆記試験とされた。
    • 他資格の所持者に対する免除が規定された。
1958年
(昭和33年)
政令無線従事者操作範囲令が制定され、操作範囲はこれによることとされた。
  • 第二級無線技術士の操作範囲は全て第一級無線通信士の操作範囲に含まれた。
  • アマチュア無線局の操作もできることとされ、電話級アマチュア無線技士の操作範囲を含むものとされた。

11月5日現在に有効な免許証は終身有効とされた。

国家試験は従前の一次試験が予備試験と、二次試験が学科試験とされた。

  • 予備試験は6月、12月に、学科試験は7月、1月に実施するものとされた。
  • 第二級無線技術士の予備試験に「一般常識」として口述試験が追加された。

認定校卒業者に対し国家試験の科目免除が認められた。

1964年
(昭和39年)
学科試験が本試験とされた。
1971年
(昭和46年)
予備試験から一般常識(口述試験)が削除された。
1972年
(昭和47年)
沖縄返還に伴い、沖縄の無線技術士は、各々本土の資格とみなされた。
  • 第一級無線技術士 → 第一級無線技術士
  • 第二級無線技術士 → 第二級無線技術士

旧第三級無線技術士は3年間の業務経歴があれば第二級無線技術士の予備試験が免除されることとなった。

1986年
(昭和61年)
第一級無線技術士が認定講習課程で取得できることとなった。
1989年
(平成元年)
無線従事者資格が海上、航空、陸上及びこれらの総合と分野別に再編されることとなり、従前の種別は次のようにみなされることとなった。
  • 第一級無線技術士 → 第一級陸上無線技術士
  • 第二級無線技術士 → 第二級陸上無線技術士

無線従事者の操作の範囲等を定める政令が制定され、操作範囲はこれによることとされた。

1990年
(平成2年)
改正電波法令が施行され、種別は前年に制定されたものによることとなった。

これ以後は、陸上無線技術士を参照。

取得者数

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資格再編直前の平成元年度末現在のものを掲げる。

種別 取得者数(人)
第一級無線技術士 19,745
第二級無線技術士 24,938
44,683
資格別無線従事者数の推移[5]による。

国家試験の科目免除

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他資格の所持者に対する免除について、無線従事者規則の資格再編前の最終改正[6]によるものを示す。

現有資格 受験資格 免除科目

















































特殊無線技士









































































第一級無線通信士
第二級無線通信士
第一級無線技術士
第二級無線技術士

資格再編後は、陸上無線技術士のアマチュア無線技士に対する科目免除は規定されていない。[7]

現有資格 受験資格 免除科目











































































































































第一級総合無線通信士
第二級総合無線通信士
第一級海上無線通信士
第一級陸上無線技術士
第二級陸上無線技術士

この他、琉球政府の旧第三級無線技術士は3年間の業務経歴があれば第二級無線技術士の予備試験が免除されていたが、資格再編後は第二級陸上無線技術士に対し同条件で予備試験が免除[8]されることとなった。

経過措置

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無線技術士は、免許証の書換えは必要としない[9]

改正電波法令の施行日以降でも国家試験合格の日から3ヶ月以内に免許申請したものであれば、無線技術士として免許された[10]

第二級無線技術士は、1993年(平成5年)4月まで第一級無線技術士の指揮の下、第一級無線技術士の操作範囲の操作ができた[11]

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本以外での類似資格としては、たとえば米国における1982年までの第一級および第二級無線電話通信士免許 (First- and Second-Class Radiotelephone Operator Licenses) が挙げられる。 これは船舶や航空機における(大電力の)無線電話運用の資格であると同時に、第一級はテレビジョンも含めた放送局における必置資格であり、第二級は陸上無線設備の建設や保守に携わる人が所持していた。 無線工学の試験範囲も電気の基礎理論から多方面の無線設備に亘っていた( レベルは日本の第二級無線通信士程度 )。
    − 現在では保守や修理に国家資格を要する陸上局海岸局航空局程度であるが、後継の en:General radiotelephone operator license はこれらの操作が行なえる。 技術中心の現行国家資格には、GMDSS船舶局の整備や修理を行なうための GMDSS Radio Maintainer's License [1] が存在し、船上保守を行う通信士が併有している。 参照 Who Needs A Commercial Operator License? Radio Maintenance and Repair ( FCC Commercial Radio Operator License Program)
    なお放送技術者の団体である Society of Broadcast Engineers(SBE)が、各職種で検定試験のようなものを実施しており、これの合格が放送事業者の雇用条件となる場合もある。
  2. ^ 陸上に開設した無線局は通信操作に資格を必要としない場合が多い(電波法施行規則第33条(簡易な操作)第4号(1) - e-Gov法令検索)。この規定は電波法施行規則制定時から存在する。
  3. ^ ただし逓信官吏練習所などで必要な講習を受けていた。
  4. ^ のちの無線通信士
  5. ^ 無線通信に限定された資格はこれのみである。
  6. ^ 通信ケーブル関連や放送スタジオなどにも有資格者の配置を要した。
  7. ^ 第三級の場合、有線と無線とを併せ単一資格としての所有もできた。
  8. ^ 無線電信法には「無線局」、「実験局」等の文言は無かった。
  9. ^ 同時に『私設無線電信無線電話規則』第36条で、実験用私設無線電信無線電話の操作については、地方逓信局長の権限で資格取得を免除できる旨、規定されていたため、戦前のアマチュア無線家はこの第36条に基づき地方逓信局で技能認定を受けていた。

出典

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  1. ^ 無線従事者制度の改革 平成2年版通信白書 第1章平成元年通信の現況 第4節通信政策の動向 5電波利用の促進(4)(総務省情報通信統計データベース )
  2. ^ 昭和15年3月30日逓信省令第13号 電気通信技術者検定規則(電気通信主任技術者総合情報)
  3. ^ a b 昭和15年 電気通信技術者資格時代 無線従事者資格の操作範囲の歴史 無線技術士編(無線従事者資格の謎)
  4. ^ 昭和24年電気通信省令第4号
  5. ^ 無線従事者数 平成2年版通信白書 資料6-26 資格別無線従事者数の推移(3)(総務省情報通信統計データベース )
  6. ^ 昭和61年郵政省令第30号による無線従事者規則改正
  7. ^ 平成2年郵政省令第18号による無線従事者規則全部改正
  8. ^ 平成2年郵政省令第24号による沖縄の復帰に伴う郵政省関係法令の適用の特別措置等に関する省令改正
  9. ^ 平成元年法律第67号による電波法改正附則第2条第1項
  10. ^ 同上附則第2条第2項
  11. ^ 無線従事者の操作の範囲等を定める政令附則第4項

関連項目

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