燃え尽き症候群
燃え尽き症候群 | |
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概要 | |
診療科 | 心理学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | Z73.0 |
燃え尽き症候群(もえつきしょうこうぐん)、またはバーンアウト(英: burnout)は、対人関係などに由来する過剰且つ慢性的なストレス刺激を経た結果として生じる情緒的消耗感[2]。
主に、対人サービス従事者が一定の生き方や関心に対して献身的に努力したにもかかわらず、期待した結果が得られなかった場合により感じる徒労感や欲求不満[3]、および、努力の結果、目標[4]を達成したあとに生じる虚脱感[5]などを指す。
極度のストレスがかかる職種やスポーツ選手が、一定の期間に過度の緊張とストレスの下に置かれた場合に発生することが多いと言われている。
情緒的消耗感とは「仕事を通じて、精力的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」である[6]。
定義
[編集]ハーバート・フロイデンバーガー(Herbert J. Freudenberger)の定義によると、持続的な職業性ストレスに起因する衰弱状態により、意欲喪失と情緒荒廃、疾病に対する抵抗力の低下、対人関係の親密さ減弱、人生に対する慢性的不満と悲観、職務上能率低下と職務怠慢をもたらす症候群。
『精神障害の診断と統計マニュアル』における認識障害には記載されておらず[7]、『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)では、「Z73 生活管理困難に関連する問題」の「重要な枯渇の状態」(Z73.0)と認識されているが、「障害」とは見なされない[8]。
以下の3つの症状から定義される[9]。
- 情緒的消耗感
- 仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態。
- 脱人格化
- クライアントに対する無情で、非人間的な対応。
- 個人的達成感の低下
- ヒューマンサービスの職務に関わる有能感、達成感。(消耗及び喪失)
症状
[編集]徒労感や精神的苦痛から仕事や学校などの必要目的事項に対する意欲の減退や関心の低下、精神的苦痛が徐々に進行し[9]、朝起きられない、職場や学校、部活等に行きたくない、人間関係の破局、深刻な腹立ち、罪悪感や過度な不安による鬱症状、自業自得の原理に基づいた客観的矛盾に対する腹立ち及び恨みや憎しみを受ける負の連鎖などといった状態に陥り、突然の辞退、休暇、無関心、過度な消費による吐口の見出し、最終的には、現実からの逃避、深刻な鬱感、薬物やアルコール、ニコチン等の化学物質の過度な摂取による自我逃避、家庭生活の崩壊、対人関係の忌避、最悪の場合、自殺や犯罪、過労死や突然死などに終わるという。
歴史
[編集]この言葉は、1970年代半ば、アメリカで対人業務の精神衛生が注目されるようになり、1974年にアメリカの精神心理学者 ハーバート・フロイデンバーガーのケース分析の中で初めて使われた[10][9]。
社会心理学者クリスティーナ・マスラーク (Christina Maslach) によって「マスラーク・バーンアウト・インベントリー」(Maslach Burnout Inventory)という重症度判定基準が考案されている[12]。
日本では、1980年代中ごろより使われ始めた[13]。
病理研究
[編集]燃え尽き症候群に似ている患者らを対象とした研究において、糖質コルチコイドによる白血球からのIL-6放出抑制がうまく機能していないとする報告がある[14]。
脚注
[編集]- ^ 「ワーカホリックと心身の健康 (特集 職場のゆううつ : 心の健康をめぐって)」(PDF)『日本労働研究雑誌』第55巻第6号、2013年6月、47-58頁、NAID 40019693281。
- ^ a b 和田.小林(2005).
- ^ 徳重雅弘『学校ストレスとサポートシステム』文芸社、2005年5月。ISBN 9784835590165。
- ^ スポーツの全国選手権や世界選手権大会、オリンピックでの優勝など。個人種目の選手に特に多い
- ^ 横田匡俊「時代を映すスポーツ人物・考(9)実体なき "燃え尽き症候群"の担った役割:ガンバリズムとの共演:有森裕子選手を手懸かりとして」『体育の科学』第50巻第12号、杏林書院、2000年12月、993-996頁、ISSN 00398985、NAID 40002276416。 (要購読契約)
- ^ MBIマニュアル第3版
- ^ Ulrich Kraft, "Burned Out", Scientific American Mind, June/July 2006 p.28-33
- ^ ICD-10: International Classification of Diseases. Geneva: World Health Organization, 1994.
- ^ a b c 久保真人「バーンアウト (燃え尽き症候群)」(PDF)『日本労働研究雑誌』、労働政策研究・研修機構、2007年、54-64頁。
- ^ Freudenberger, Herbert J. (1974). “Staff Burn-Out”. Journal of Social issues 30 (1): 159-165. doi:10.1111/j.1540-4560.1974.tb00706.x .
- ^ Maslach, C (1976). Burn-out. Human Behavior, Job Stress and Burnout: Research, Theory, and Intervention Perspectives.
- ^ Maslach, C., Jackson, S.E, & Leiter, M.P. MBI: The Maslach Burnout Inventory: Manual. Palo Alto: Consulting Psychologists Press, 1996.
- ^ 植木清直「従業員定着のための条件づくり,3年目で燃え尽き症候群(バーンアウト シンドローム)が起きていないか」『歯科チーム医療委員会資料』1986年、NAID 10008146314。, 倉戸ヨシヤ「教師の燃え尽き症候群について」『鳴門教育大学研究紀要. 教育科学編』第1巻、鳴門教育大学、1986年、59-79頁、CRID 1573668926549620480、ISSN 13434403、NAID 110000494050。
- ^ PETRA H. et al. (July 2003). “Reduced Glucocorticoid Sensitivity of Monocyte Interleukin-6 Production in Male Industrial Employees who are Vitally Exhausted”. Psychosomatic Medicine 65 (4): 672-678. doi:10.1097/01.PSY.0000062529.39901.C7 .
参考文献
[編集]- 和田由紀子, 小林祐子「バーンアウト(燃え尽き症候群)と対人関係:緩和ケア病棟に勤務する看護師の情動的共感性と他者意識」『新潟青陵大学紀要』第5号、新潟青陵大学、2005年、67-75頁、doi:10.32147/00001137、ISSN 13461737、NAID 110007568923。