座間9人殺害事件

座間市複数バラバラ死体遺棄事件
場所	日本・神奈川県座間市緑ケ丘6丁目のアパート一室
日付	2017年10月31日（発覚）
死亡者	若い男女9人？
容疑	男S（事件当時27歳、職業不詳）
対処	警視庁が逮捕
管轄	警視庁高尾警察署

座間9人連続殺人事件（ざまくにん れんぞくさつじんじけん）は、2017年（平成29年）10月31日に発覚した、神奈川県座間市緑ケ丘6丁目の、当時27歳の男Sが住むアパート室内で、若い女性8人、男性1人の、計9人とみられる複数人の遺体が見つかった、死体遺棄事件である。

事件の概要

複数遺体が発見された容疑者のアパート

2017年10月21日、東京都八王子市在住の被害者女性（当時23歳）が、午後6時半頃、自宅で職場の職員と面会したのを最後に、突然行方不明になった。行方不明になる前、女性は「自殺を一緒にしてくれる人を探している」「一緒に死んでくれる方いましたらDM（ダイレクトメッセージ）ください」と、Twitterに書き込んでおり、自殺サイトを通じ、Sと1度連絡を取っていた。

同月23日午前、女性は「死ぬ決心がついた」と、Twitterでやりとりしていた人物に対し、DMで連絡した上で、午後になってこの人物と駅で合流した。同日、JR東日本八王子駅・小田急小田原線相武台前駅で、それぞれ防犯カメラに、この女性が、後にSと判明した男と、ともに映っていた。

捜査

翌24日、女性の兄は、インターネット上で知り合った人物が妹と一緒にいるとみて、Twitterなどに妹のアカウントでログインし、交流していた相手を調べた。その結果、「首吊り士」というハンドルネームのアカウントが、交流していた相手として浮上したため、Twitterにて、妹が失踪したことを打ち明け、情報提供を呼びかけた。これに対し、ある女性利用者が「そのハンドルネームの人を知っています」と返信した。このため、この女性利用者の協力を得て、このハンドルネームの人物を誘い出すように依頼するとともに、「妹と連絡がとれない」として、警視庁高尾警察署に捜索願を届け出た。女性利用者は、兄の依頼に応じ、同月30日午後、Sを神奈川県内の駅に呼び出した。捜査員が駅に張り込んでいたところ、Sが現れたため、捜査員はそのまま2人を尾行し、アパート2階のS宅に入った直後、ドアをノックし、S宅に入った。行方不明になった被害者女性が持っていた白いバッグが室内にあったため、捜査員が被害者女性の行方をSに尋ねると、Sは「クーラーボックスの中」と、アパート室内の玄関に置かれたクーラーボックスを、指差しながら答えたという。警視庁は、Sを任意で事情聴取するとともに、夕方、Sの部屋を家宅捜索した。そのクーラーボックスの中身を調べたところ、2人分の切断された人の頭部が、砂をかぶせられた状態で発見された。

警視庁捜査一課は、31日付で高尾署に捜査本部を設置し、捜査本部がさらに家宅捜索を進めたところ、アパートの室内で、クーラーボックス・工具用の収納容器計8つが発見され、その中身を調べたところ、うち6個から、新たに計7人分の頭部が見つかり、合計9人分の切断された頭部の遺体、腕・脚とみられる、約240個の、大量の骨が発見された。頭部の特徴から、遺体は女性8人、男性1人とみられる。すべてのボックスには、ネコのトイレ用の砂のようなものが入れられていたが、これについて捜査本部は、遺体の臭いを隠し、事件の発覚を免れる目的だったとみている。これを受け、警視庁捜査一課は同日、同年8月22日頃から10月30日頃までの間に、氏名・年齢・性別不明の遺体を損壊し、その一部を自宅のクーラーボックスに入れ、ネコのトイレ用の砂のようなものをかぶせて隠し、遺棄したとして、死体遺棄容疑でSを逮捕した。

捜査関係者によると、Sは「浴室で遺体を解体し、ネコのトイレ用の砂をかけたことで逮捕されましたが、これは私が殺害した遺体を、証拠隠滅の意味でかけたことに間違いありません」と容疑を認めた。その上で、Sは捜査本部の取り調べに対し、「他にも同じことをやった」とも説明し、また頭部と骨以外の肉・内臓について「ごみとして捨てた」と供述した。また、Sは「今年8月下旬、アパートに引っ越してきてから9人全員を殺害した」と供述し、自宅アパートで見つかった9人の遺体については「（殺害が）ばれると思って（外に）捨てられなかった」と供述した。その上で、殺害の動機についてSは「金を奪う目的もあり、数人から金を取った。多くて50万円取った」、「（被害届の出ていた）女性を襲い、乱暴して殺した」と供述したが、捜査本部は、若い女性ばかりを狙った理由を詳しく調べる。

家宅捜索の結果、浴室から、遺体の損壊に使ったとみられるのこぎりが発見され、Sは取り調べに対し「浴室で遺体を切断した」とも供述している。9人の遺体は、いずれも頭部の損傷は少なかったのに対し、首から下の胴体・腕・脚は、刃物を使ったとみられる痕が残るなど、損傷が激しく、2017年10月31日時点で性別は判別できず、腐敗も進行している。このため、捜査本部はDNA型鑑定などで、遺体の身元確認を急ぐとともに、猟奇的・計画的な、連続殺人・死体遺棄事件の可能性も視野に、殺人容疑でもSを追及するとともに、9人が死亡した経緯・犯行の動機などについても詳しく調べる。

取り調べに対し、Sは遺体の身元について「10代後半4人、20歳くらい4人、20代後半1人」と、殺害時期については、「8月に1人、9月に4人、10月に4人」と、それぞれ供述したが、時期・年齢については「覚えていない」とも供述した。捜査本部が遺体を司法解剖した結果、2体は死後1週間 - 2週間、7体は死後1カ月 - 数カ月経過しているとみられ。、9人の死因は断定できなかったが、一部の遺体の首は、前部の骨が折れていたほか、窒息した場合などに生じる出血点が確認された。Sは、取り調べに対し「気絶させるために首を絞め、殺害した」という供述をしたが、それと遺体の状況が一致することから捜査本部は、Sが殺害に関与したことを裏付ける、重要な所見の一つとみて解析を進めている。

捜査本部は家宅捜索の結果、Sの室内から、血の付いた包丁2本・錐・料理ばさみ・ロープ・結束バンドを押収した。このうち、ロープ・バンドや、遺体を保管していたクーラーボックスについて、Sは「事前に購入した」という趣旨の供述をした。捜査本部は、Sが被害者の拘束・遺体の処理方法を、いずれも事前に検討するなど、計画的な犯行だった可能性もあるとみて、購入場所・時期などの裏付けを急ぐ。

逮捕後の捜査で、部屋に置いてあった冷蔵庫の内部から、血液反応が検出された。これについて、Sは「1人目・2人目は、遺体の損壊に3日かかり、冷蔵庫に入れたが、3人目以降は1日で解体できるようになったため、入れていない」と供述したことから、捜査本部は、女性らを次々と殺害し、遺体を解体していた一方で、殺害後に切断した遺体を、腐敗を遅らせるため、一時的に保管していたとみて調べている。また、捜査関係者によればSは、最初に殺害したというカップルと一度会ったことがあった。その後、まず女性だけ呼び出して殺害したが、男性から女性の所在を尋ねられたため、「このままだと疑われると思い、部屋に誘って隙を見て殺した」という。捜査本部は、被害者のうち男性1人とみられる遺体は、この交際相手だったとみて、身元確認を急いでいる。捜査本部は11月1日、Sを東京地方検察庁立川支部に送検した。

6日までの取り調べで、殺害方法についてSは「（アパートにあった）ロフトの手すりにロープを掛け、被害者の首に巻いて首つりの状態にして殺害した」と供述した。

被疑者

逮捕されたSは、座間市内の実家で家族と一緒に暮らし、父親の仕事の手伝いなどをしていたが、東京都豊島区東池袋に引っ越し、少なくとも2017年初め頃まで、新宿・歌舞伎町の職業紹介会社で働いていた。しかし、その内容は捜査関係者曰く「風俗嬢やキャバクラ嬢、AV女優などのスカウト会社」で、SはTwitterで、関係者から「要注意スカウト」として、顔写真・氏名を公開されていた。また、その会社は、ホームページで「10日間で40万 - 200万円完全保証」など、高給をうたっていたが、前年（2016年）9月、茨城県神栖市内の、売春をさせていたデリバリーヘルス（デリヘル）に対し、女性を斡旋したとして、茨城県警察に摘発された。女性の紹介名目で、約380万円の報酬を受け取っていたというS本人も、2017年2月、職業安定法違反容疑で、デリヘルの経営者の男とともに、茨城県警に逮捕された。Sは同年5月、水戸地方裁判所土浦支部で、懲役1年2か月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

その後、いったん実家に戻ったSは、同年8月22日、実家から直線距離で約2.5km離れた、小田急小田原線相武台前駅から、南西約600mに位置する現場アパートに、父親名義で部屋を借りて引っ越したという。当時無職だったSは、アパートの関係者に対し、賃貸契約をする際「すぐに入居したい」と言い、慌ただしく手続きを進めていたという。小田急線の線路に面した現場アパートは、アメリカ陸軍基地・キャンプ座間付近の住宅街に位置し、築30年の木造2階建て、13.5㎡の、ロフト付きワンルームで、家賃は月1万9000円、管理費込み月2万2000円だという。近隣住民によれば、Sが現場アパートに引っ越してきた直後から、Sの部屋からは異臭が漂っていた。

Twitterで、Sは複数のアカウントを保有しており、そのうち「首吊り士」を名乗ったアカウントでは、自殺志願者に方法などを助言するような投稿や、「死にたい」と投稿したアカウントに対して個別にメッセージを送るなどしていた。その言動からは、積極的に自殺志願者たちと連絡を取り合っていた様子がうかがえた。事件発覚2か月前の9月に開設された、「首吊り士」のアカウントは、プロフィール欄に「首吊りの知識を広めたい。本当につらい方の力になりたい」などと記載されていたほか、「自殺する前に友人、家族、SNSに『これから死にます』など、連絡を入れるのはNG」など、周囲への連絡を禁じるような投稿もしていた。『産経新聞』の取材に対し、2017年11月2日に応じた、千葉県内の女性は、Twitterで知り合ったSから「全財産をくれたら殺してあげる」と持ちかけられたという。

事件現場となったSの部屋はワンルームで、ロフトに寝具があったほかは、家具などは少なかった。リビングや玄関には、切断した頭部や大量の骨などが入った、クーラーボックス・収納箱が、その一部を重ねた状態で並べてあり、生活感はほとんどなかったという。このことから捜査本部は、Sは女性らを誘い込んで殺害し、遺体を遺棄する目的で、現場の部屋を借りた疑いがあるとみて調べている。

影響

事件後多くの海外メディアが報道した。

韓国では、『KBSテレビ』・『京郷新聞』が「猟奇殺人」、「アパートの一室で何が」と報道した。アメリカでは、『ニューヨーク・タイムズ』は「連続殺人犯か」と報道し、『AP通信』は相模原障害者施設殺傷事件などを引き合いに出し、「日本は世界有数の治安が保たれた国だが最近、注目を集める事件が起きている」と報道した。

脚注

出典

報道出典

以下の出典で、記事名に被疑者の実名が使われている場合、その箇所をイニシャル「S」で表記する。

関連項目

• バラバラ殺人
• シリアルキラー（連続殺人）
• 自殺サイト殺人事件

関連項目

• 小平事件
• 大久保清
• 自殺サイト殺人事件
• バラバラ殺人
• シリアルキラー（連続殺人）