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「エホバの証人」の版間の差分

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エホバの証人(エホバのしょうにん、Jehovah's Witnesses)は、米国で興った宗教団体でしばしばキリスト教系の新興宗教とされる。原典では、王国行間逐語訳聖書、日本語訳では、現在新世界訳聖書を最も適した翻訳とし、ニカイア・コンスタンティノポリス信条使徒信条三位一体が聖書の教理と矛盾していると信じている。(しかし、時に理解しづらい表現がある場合などは、ジェームズ王欽定訳アメリカ標準訳など他の翻訳聖書、またカトリック百科事典等も参考にすることがある。)いわゆるブルックリンの本部の「統治体」や日本支部で和訳された印刷物は絶対であり、信者は教理問答(カテキズム)の徹底した訓練を受け、ほぼ全世界で活動している。

ファイル:Watchtower-brooklyn.jpg
ブルックリンにある世界本部

エホバの証人はいくつかの会衆と呼ばれる単位ごとに法人団体を形成している。また、印刷施設やその他不動産を所有し運営する目的で必要に応じてその国の法律に基づいた法人団体を取得している[1]。また、米国に所在する世界本部は法人登記名 Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania. という法人を設立して管理運営している施設内に置かれている。エホバの証人の支部事務所を設けても必要の無い場合はそのような法人格を取得しない場合もある[2]

教義

特徴的な教義は以下のようなものである。

  • 神は愛である。(ヨハネ第一4:8)
  • 聖書は神の言葉で、真理である。(テモテ第二3:16,17)
  • 聖書を時代によらず、言語により分類するため、旧約聖書をヘブライ語聖書、新約聖書をギリシャ語聖書と呼ぶ。
  • 原語のヘブライ語聖書(旧約聖書)本文中、神の名前として登場する四文字語יהוהを エホバと翻訳して用いている。(詩篇83:18,文語訳、新世界訳)
  • イエス・キリストは神の独り子であり、神より下位にあり、来たるべき王国の王である。(マタイ3:17;ヨハネ8:42;18:36)箴言8章の擬人化された「知恵」であり、み使いの頭ミカエルでもある。(ダニエル10:12;テサロニケ第一4:16;ユダ9)
  • ヘブライ語聖書(旧約聖書)なしにギリシャ語聖書(新約聖書)は理解できないと考えている。(ヘブライ語聖書にメシア到来の預言が記述されているため)(マタイ5:17-19;ルカ24:44)
  • 輸血をはじめとする、血を取り入れることの拒否。代替治療として無輸血治療を求める(使徒15:20,29)
  • 参政権兵役の拒否(中立な立場を求める)。(ヨハネ15:19)
  • 格闘技国旗敬礼、国歌斉唱、聖書に反する年中行事の拒否。一例を挙げると柔道剣道は拒否の対象(神戸高専剣道実技拒否事件など訴訟騒ぎもあったものの、しばしばレポート提出という手段で収める場合も多かったと言われる。)
  • サタンという霊者によって、誰が宇宙主権を有するかという問題や、人間は神に対して忠誠を抱いているかという問題が提起されている。(ヨブ1:9-11)
  • 1914年のキリストの臨在(目に見えない再臨)。(マタイ24:1-14など)
  • 古代ユダ王国は、ユダヤ人バビロン捕囚から帰還した紀元前537年の70年前の、紀元前607年に滅んだとし(歴代第二36:21で捕囚帰還者エズラが捕囚後の荒廃を70年と断言しているため)、1914年を算定する基準となる年としている。(現在の考古学では当時の歴史資料、商業・施政文書、天文学日誌などから、古代ユダ王国の滅亡は紀元前587年~紀元前586年であることが、大半の研究者の一致した見解となっており、教団の主張とは20年の隔たりがある)
  • 「終わりの日」が1914年に始まり、ハルマゲドン(神が起こされる戦争)は間近である。(テモテ第二3:1-5;啓示16:16)
    • 1995年まで、「終わりの日」の始まった1914年から文字通り一「世代」のうちにハルマゲドンが来ると解釈されてきた。(マタイ24:34)しかし、その年の11月1日号の「ものみの塔」誌の中で、他の聖書の言葉(マタイ11:16)と比較して、これが文字通りの意味ではなく「キリストの言葉を退けた人々」のことを指して「世代」と呼んでいる、と説明し、教義の解釈を変更した。
  • ハルマゲドン後に地球が楽園(パラダイス)に回復し、死者(神に忠実だった者と聖書を知る機会がなかった者)が復活する。
  • ハルマゲドンを生きて通過する者をエホバが選び、選ばれた者は地上の楽園で永遠の命を与えられる。
  • 指導者は目に見えないキリストであり、1世紀以降に聖書に忠実だった者のうち、神に選ばれた14万4000人の者が、ハルマゲドン後、キリストと共に人類を支配する。(マタイ23:10;啓示5:9,10;14:1,4)
  • 人類は6000年前に作られたとされ(地球はそれ以前に作られていた)、創造論を信じ、進化論は否定する。(創世記1:26-28;マタイ19:4)
  • 人間の老化現象はアダム善悪の知識の木の実を食べてしまったことにより始まったとされている。(創世記3:1-24)
  • すべての信者は使徒たちに倣って戸別訪問や街路、電話での宣教奉仕を行う。(マタイ28章19,20節)
  • 聖書の道徳上の教えを守る。結婚外の性交渉禁止など。信者側は家庭崩壊および性病等を未然に防ぐともしている。(コリント第一6:9,10;マタイ19:3-6)
  • いかなる人物にも宗教上の称号を用いない。(マタイ23:8-12)
  • 支部事務所によって任命された、会衆を統括する人物は「年長者(長老)」と呼ばれる。彼らは「監督」とも呼ばれ、会衆の成員の世話を行うが、他の宗教団体のようにそれにより収益を受けるわけではないし、その役職名で呼び合ってはならない。
  • 教義に反しない限り、人間の法にはすべて従う。(ローマ13:1-7)
  • 聖書研究を行なっている研究生で、神権宣教学校に入校したい者は研究司会者にその旨を伝え、会衆の長老とその資格について話し合う。資格にかなっている者は神権宣教学校の生徒となる。神権宣教学校の生徒には月に1~2回、「割り当て」と呼ばれる聖書通読や公演、実演が割り当てられる。神権宣教学校の生徒で、伝道者になりたい者は、研究司会者にその旨を伝え、エホバの証人が守るべき聖書の教えが書かれた『エホバのご意思を行なうための組織』という本に基づき、3人の長老とその資格にかなっているか話し合う。資格にかなっている者はバプテスマを受けていない伝道者となり、『エホバのご意思を行なうための組織』という本が与えられる。バプテスマを受けていない伝道者で、バプテスマを受けるには、研究司会者・会衆の主宰監督とその本の付録の「バプテスマを受けるための質問」を討議して、書かれている内容に賛同していることを示さなければならない。そして神への献身の象徴として水の浸礼(バプテスマ)を受ける。バプテスマは普通、年に3回開かれる大会で受ける。バプテスマを受けることにより、正式なエホバの証人となり、男性は「兄弟」、女性は「姉妹」と呼ばれる。
  • 『エホバのご意思を行なうための組織』という本に書かれている聖書の基準に反した者は、会衆の長老たちから聖書的な矯正を受ける。(テサロニケ第二3:6,14,15)それに従わない場合、「排斥」という脱会処分を受ける。また自分の意思で故意に聖書の規準を破り脱会する者を「断絶」と言う。排斥・断絶した人とは口も聞いてはいけない。(コリント第一5:11-13)ただし、それが家族の一員の場合は通常の日常会話は可能。排斥・断絶された人が、悔い改めの明確な証拠を示し、一定期間にわたって聖書の基準に反する歩みを避け、エホバの証人と交わりたいと考えている場合、長老たちと討議し、資格にかなっていればエホバの証人として「復帰」することができる。
  • 三位一体の否定。地獄煉獄の否定、死後のの否定。(神はエホバ、聖霊はエホバの活動力、キリストは神の初子としている)
  • 崇拝に十字架を使わない(キリストが処刑されたのは十字架ではなく杭であると主張)。(使徒5:30;ガラテア3:13)
  • 崇拝に偶像を使わない。(使徒15:20;コリント第一8:4;コリント第二6:16;ヨハネ第一5:21)
  • クリスマスを祝わない。キリストが生まれた時期に羊飼いが羊と共に屋外で野宿していたとギリシャ語聖書(新約聖書)に記述されており、12月に生まれたとは考えにくいと主張している(ルカ2:1-8)とはいえ、クリスマスに異教的起源があることはキリスト教僧職者の中では常識とされており、アメリカ合衆国においてはクリスマスを祝うことが禁じられたこともあった。
  • エホバの証人だけが真の宗教であり、初期クリスチャン(原始キリスト教)と同じ歩みをするよう努めている。特に、エホバの証人と他のキリスト教(キリスト教世界)を完全に区別する。後者は、キリスト教がローマの国教になった後、ローマの様々な哲学が混合され変化していったものだとしている。
  • 黙示録大いなるバビロンはキリスト教世界とする。三位一体の否定など既成教会の教理との根本的な違いから、東方正教会、カトリック教会、プロテスタント系諸教会からは異端的教派と扱われている。

慣習

  • 毎日、新世界訳聖書を読んで研究することが勧められている。そのためにものみの塔協会から、「日ごとに聖書を調べる」という冊子や、「神権宣教学校の週ごとの聖書通読の予定」というものが備えられている。新世界訳聖書の通読が、他の出版物の通読より、優先事項だとされている。
  • 週に3回、集会を行い、神権宣教学校(聖書朗読、聖書から教えるための訓練)、奉仕会(宣教の訓練等)、群れごとの書籍研究、公開聖書講演会、ものみの塔研究が行われる。集会はすべて無料で信者でなくても入場できる。(新しい参加者は歓迎される。)寄付の強要はしない。王国会館での集会は祈りで始められる。群れの書籍研究は普通、信者の家で開かれるが、この場合、歌は割愛される。
  • 上記以外に年に1回地域大会、巡回大会、特別一日大会が催される。また1年に1度、ユダヤ暦のニサン14日に主の記念式を祝う。
  • 新世界訳聖書の通読後、毎回の集会の予習を行うことが勧められている。近年は家族で研究を行うことが強く勧められている。
  • 全てのエホバの証人は最低月に1回は宣教活動に参加することが求められている。ものみの塔協会は、宣教奉仕に週に1回は参加することを勧めている。近年、宣教奉仕ではなるべく新世界訳聖書から証言することが強く勧められている。
  • 一般の宗教的行事・伝統的行事を祝わないが、信者同士で「交わり」と称し、親睦を深めるためのレクリエーションや親睦会などを企画することがある。

起源と歴史

チャールズ・テイズ・ラッセル
ジョセフ・フランクリン・ラザフォード

1879年チャールズ・テイズ・ラッセル(Charles Taze Russell)によって出版された 「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者(Zion's Watch Tower and Herald of Christ's Presence)」が始まり。誌上でキリスト教の伝統的解釈、三位一体を否定する独自の聖書・キリスト教解釈を繰り広げ、「聖書研究」等の著書も相次いで出版し、聖書研究会を開催するに至る。聖書研究会の統率ならびに刊行物出版のための法人として「ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会」を1884年に設立、初代会長に就任する。

ラッセルの死後、ジョセフ・フランクリン・ラザフォードがものみの塔聖書冊子協会の2代会長に就任し、内部分裂や幹部の煽動罪による投獄などを経て、組織の再編成をした後、1931年に従来の「聖書研究者(Bible Students)」という名称を止め「エホバの証人 (Jehovah's Witnesses) 」(イザヤ43章10節に由来)という名称を採択した。布教活動、兵役の拒否や既成の教会への批判的立場、宇宙主権の論理などの教義はこの時代からのものである。

1942年ラザフォードの死後ネイサン・ホーマー・ノアがものみの塔聖書冊子協会の3代会長に就任する。輸血禁止、十字架、宗教的宝飾類禁止などの教義が新たに加わる。また「ものみの塔ギレアデ聖書学校」と称する宣教師を養成する学校を設立し、世界中に宣教師を送り込むことにより、信者数が増え組織が拡大する。しかし、「1975年アダム誕生から数えて人類生存の七千年期にあたり、ハルマゲドンが近いことを表す」という情報を「1975年がハルマゲドンの年だ」と解釈した人たちの多くが、その予測が外れたため、失意して教団を離れた。

1977年、ノアの死去に伴いフレデリック・ウイリアム・フランズがものみの塔聖書冊子協会の4代会長に就任。組織内の粛正に努めた。このとき、教義や教団組織の行動に対して批判的な者は、背教者(反キリスト)であるとして排斥(破門)処分を受けた。また、彼ので元統治体メンバーのレイモンド・フランズ(『良心の危機』の著者)さえも、排斥された。[3]

  • 日本においても1985年北海道札幌市広島会衆で多数の排斥者がでて、成員も教団の考え方に疑問を抱き多数に離脱していった。[4]
平均伝道者数, 1945年–2005年

1992年フランズの死去に伴いミルトン・ジョージ・ヘンシェルが5代会長に就任する。前会長の時代とは異なり、高等教育、学校でのスポーツ、個人的趣味の分野においての考え方が緩和され、各個人の意思を尊重する方針になった。また「終わりの日」の始まった1914年から文字通り一「世代」のうちにハルマゲドンが来るとの教義に変更が加えられた。

2003年にヘンシェルが死去後、統治体の成員でないドン・A・アダムズが会長に就任し、今に至る。

主な財源は信者や、文書を受け取った人の自発的な寄付による(寄付の強請や、商品などの販売が行われることはない)。信徒数は650万人ほどである。

日本での活動

日本では、1926年頃に活動を開始した。灯台社として明石順三を中心に活動するが1939年6月21日に一斉検挙、結社禁止に追い込まれ事実上壊滅した。その後明石は1947年に戦時中の教団の行動を批判[5]して脱会。1949年に米国本部から宣教者が多数送り込まれる形で再組織化が進み、バプテスマを受けた国内信者数は21万人超にまで成長した(キリスト教系の団体ではカトリックに次いで第2位と公称)。

社会的側面

輸血の拒否や、格闘技の拒否の主張に関する最高裁判例や、宗教を理由とする養育権に関する裁判などが知られている。医療面においても、エホバの証人が裁判で争ったケース(インフォームドチョイス、インフォームド・コンセントなど)があり、無輸血治療に大きな影響を与えている。

  • 宗教的行事(近親者の葬儀でお経や焼香を上げることなども含む)・伝統的行事(初詣正月クリスマス七夕年賀状、墓参りなど)、一部の歌(校歌、国歌など歌詞に神以外を賛美する内容が含まれているもの)婚前交渉及び姦淫、淫行オナニー、過度の飲酒、タバコ、排斥・断絶者(脱会者)との付き合い、輸血選挙乾杯、格闘技の授業などを禁止している。このことは、ケビン・コスナー主演のアメリカ映画「パーフェクト・ワールド」でも揶揄されているが、作中にあるように、死んだら地獄に行くという教義を偽りとしている。
  • あまりに熱心な信心のため非信者の親兄弟、親族との断絶、夫婦仲の崩壊や離婚されるケースや[6]、いやがる子供との不和をもたらすケースもある。
  • 特に宗教を理由として、非信者の家族から離婚請求訴訟を起こされることがある。(信者側は原則離婚を認めていない)[6]
  • 伝道活動(布教)に専念するため、仕事は週3~4日程度とパート生活を選ぶ信者も多い。
  • 大学進学就職については、各個人の意思を尊重しているが積極的には勧めてはいない。
  • エホバの証人が言う奉仕やボランティアとは、布教によって世の人(信者でない人々)の命を救うと彼らが信じている無償活動のことである、通常教団としての公式活動として世間一般の奉仕活動(募金活動や公共施設の清掃など)を行うことはない。
  • 上記のような厳しい教義ゆえに社会生活上問題となることがあり、日本においても「カルト」や「セクト」とみなす人々もいる。
  • 仲間の信者のことを互いに兄弟、姉妹と呼び合い、信者以外の人は未信者または「世の人」と呼称しあわれんでいる。
  • NHKにようこそ!』で「中原岬」の叔母の宗教(主体はエホバの証人だが、脱会すると100万円取られるようなところなどは他の宗教を参考にしているようである)として揶揄されている。作中にあるように漫画喫茶で働くことを禁ずるような教えは存在しないが、それがエホバの証人としてふさわしいかどうかは個々が聖書の教えに基づき判断し決定する。
  • フランスにおいては、同国の法律の関係で問題点が生じやすいため、国の監視対象となっている。
    • ウール県において労働法違反で調査された。
    • 医療行為の制限については信者個人が自由意志でしている場合は合法だが、教団による強制が見られた場合強制解散の対象として取り扱われている。
    • 1995年11月から1999年1月にわたって行なわれた税務調査の結果、宗教団体『エホバの証人』は強制課税手続きならびに1996年および1997年の申告税額に関して22,920,382ユーロの修正に加えて罰金および延滞金利として22,418,464ユーロの更正通知を受けた。告発対象となった会計処理は、同団体が信者たちから寄付として集めたものであった。フランスでは宗教団体への課税は免除されているので、教団側はこの措置が不当であるとして、2005年に欧州人権裁判所に提訴した。

脚注

  1. ^ 日本の支部事務所を設置している施設の管理運営法人としてものみの塔聖書冊子協会 を設立し利用している
  2. ^ なお、英国ではInternational Bible Students Association(国際聖書研究者協会)という法人名も用いている
  3. ^ JWIC・レイモンド・フランズ-エホバの証人最高指導者の人生の軌跡とその信仰
  4. ^ STOPOVERメーリングリスト・金沢文庫-北海道・広島会衆事件簿
  5. ^ ものみの塔日本支部の基本財産
  6. ^ a b 新宗教を理由とする離婚請求訴訟について

関連項目

外部リンク