「紋章学」の版間の差分
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Balmung0731 (会話 | 投稿記録) 紋章 の 2008-02-05 05:30 (UTC) から一部転記(主執筆者: Yorozuya, 0null0, Punipico, Zorac, Kahusi ) |
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{{一部転記|紋章|date=2008年2月}} |
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[[Image:Hyghalmen Roll Late 1400s.jpg|thumb]] |
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'''紋章学'''(もんしょうがく)とは、中世ヨーロッパの貴族社会から用いられてきたあらゆる氏族・団体・地方の[[紋章]]の[[意匠]]や紋章記述を様々な共通点又は相違点から整理・分類することによって体系化し、そこからその紋章の意義や由来を研究する[[学問]]である。この学問によって[[貴族]]や[[王族]]などの支配階級の系図を明らかにしたうえで、各国の紋章の類似性などから[[ノルマン・コンクエスト]]をはじめとする他民族への侵略や[[大航海時代]]以降の[[植民地支配]]などを含めた国家間の歴史的なつながりなどを明らかにする、[[歴史学]]にも通じる[[学問]]である。大きなくくりでは[[文学]]に分類され、[[イギリス]]の[[オックスフォード大学]]などでは紋章学を修めると文学修士 (Master of Arts, MA) の学位が与えられる。 |
'''紋章学'''(もんしょうがく)とは、中世ヨーロッパの貴族社会から用いられてきたあらゆる氏族・団体・地方の[[紋章]]の[[意匠]]や紋章記述を様々な共通点又は相違点から整理・分類することによって体系化し、そこからその紋章の意義や由来を研究する[[学問]]である。この学問によって[[貴族]]や[[王族]]などの支配階級の系図を明らかにしたうえで、各国の紋章の類似性などから[[ノルマン・コンクエスト]]をはじめとする他民族への侵略や[[大航海時代]]以降の[[植民地支配]]などを含めた国家間の歴史的なつながりなどを明らかにする、[[歴史学]]にも通じる[[学問]]である。大きなくくりでは[[文学]]に分類され、[[イギリス]]の[[オックスフォード大学]]などでは紋章学を修めると文学修士 (Master of Arts, MA) の学位が与えられる。 |
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[[uk:Геральдика]] |
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[[zh:纹章学]] |
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== 紋章の構成要素 == |
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紋章は右図のようなシールド(Shield、[[盾]])、ヘルメット(Helm、[[兜]])、クレスト(Crest、兜飾り)、[[マント]](Mantling)、リース(Wreath)、サポーター(Supporter、盾持ち)、[[標語|モットー]](Motto、巻物)の構成要素からなり、中心となる盾のみのものを小紋章、それにヘルメットやクレストを加えたものを中紋章、全てが揃っているものを大紋章と呼ぶ(小紋章、中紋章併せて小紋章と呼ぶこともある)。この他、当人の身分によって騎士団章([[勲章]])や冠が加わることもある。 |
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これらの要素は中世の[[騎士]]をイメージしたものである。このため、戦場に出ない女性や聖職者の場合、盾型ではなく菱形の要素を使い、ヘルメット等も違った形式の帽子になるのがオーソドックスであったが、近代では騎士のイメージは形式のみになっており、男女同権の意識も高まったため、特に区別しないこともある。 |
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{{commonscat|Elements of Coat of arms|紋章の構成要素}} |
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== ペトラ・サンクタ == |
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[[Image:tinctures.svg|right|thumb|200px|色と紋様]] |
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紋章は戦場で遠くから識別できるように限定された8色(2つの金属色と6つの色)で表されるが、刻印のように色が付かない場合は、その代わりにペトラ・サンクタという色を紋様で表す規則が定められている。 |
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* 金:点 |
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* 銀:無 |
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* 青:横縞 |
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* 赤:縦縞 |
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* 紫:右上から左下への斜縞 |
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* 黒:格子縞 |
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* 緑:左上から右下への斜縞 |
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* 橙:横縞と右から左への縞 |
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その他にファー(furs、[[毛皮]])という紋様が定められている。これは元々は毛皮に使う動物を表していたとされるが抽象化が進んでいるため、模様から元の動物を判断することは難しい。 |
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== シールド(盾) == |
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シールドの基本的なデザインとして右図の様な色の塗分けと幾何学模様がある。これに動物、植物、[[十字架]]などの具象図形が組み合わされることもある。また、紋章が受け継がれるうちに、他の家の継承に伴いその紋章を中に組み込むようになり、領域を半分や四分割して各紋章を配置することが行われた(マーシャリング)。 |
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== 具象図形 == |
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=== 動物 === |
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* [[獅子]]:勇壮さを求められるであろう紋章において獅子の絵柄は好まれる象徴のひとつであり、古くから用いられているものである。著名な紋章のひとつであるイギリス王室の紋章においては一貫して獅子が用いられている。 |
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* [[鷲]]:好んで用いられる象徴のひとつである。[[ローマ皇帝]]の象徴であり、その系譜を受け継ぐとする[[東ローマ帝国|東ローマ皇帝]]、[[神聖ローマ皇帝]]、[[ハプスブルク家]]、[[ナポレオン・ボナパルト|ナポレオン]]の他、系統は違うが[[アメリカ合衆国]]の国章などにも使用されている。 |
2008年2月5日 (火) 12:54時点における版
紋章学(もんしょうがく)とは、中世ヨーロッパの貴族社会から用いられてきたあらゆる氏族・団体・地方の紋章の意匠や紋章記述を様々な共通点又は相違点から整理・分類することによって体系化し、そこからその紋章の意義や由来を研究する学問である。この学問によって貴族や王族などの支配階級の系図を明らかにしたうえで、各国の紋章の類似性などからノルマン・コンクエストをはじめとする他民族への侵略や大航海時代以降の植民地支配などを含めた国家間の歴史的なつながりなどを明らかにする、歴史学にも通じる学問である。大きなくくりでは文学に分類され、イギリスのオックスフォード大学などでは紋章学を修めると文学修士 (Master of Arts, MA) の学位が与えられる。
紋章は個人を特定するものであると同時に、その個人が属する家系を示すものである。紋章を体系化することによって、その紋章、その家系、その個人にまつわる歴史を知ることができる。また、その土地を支配していた権力者の紋章の全部、又は一部が現在の州、郡、市などの地方の紋章にも取り入れられていることから、その地方の歴史的な成り立ちの一端や地域独特の共通点から紋章学的ローカルルールを知ることもできる。特定のクラブ、軍隊、大学などがその出自や歴史、パトロンなどを反映させた紋章を持つ場合もあるが、これらもすべて紋章学に基づく体系に沿って作られている。現代でもイギリス(イングランド、スコットランド)及びカナダでは紋章院を置いており、管轄地域の紋章の管理や新たな紋章の授与を行っている。
紋章の各種形状 |
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参考文献
- 森護『ヨーロッパの紋章―紋章学入門』(河出書房新社、1996年) ISBN 978-4309222943
- 森護『ヨーロッパの紋章・日本の紋章』(河出書房新社、1996年) ISBN 978-4309222929
- 森護『英国紋章物語』(河出書房新社、1996年) ISBN 978-4309222936
- 森護『紋章学辞典』(大修館書店、1998年) ISBN 978-4469012590
関連項目
外部リンク
紋章の構成要素
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紋章の構成要素シールド領域サポータークレストリースマントヘルメット台座具象図形モットー
- 画像ファイル(環境により文字がずれることもあります)
紋章は右図のようなシールド(Shield、盾)、ヘルメット(Helm、兜)、クレスト(Crest、兜飾り)、マント(Mantling)、リース(Wreath)、サポーター(Supporter、盾持ち)、モットー(Motto、巻物)の構成要素からなり、中心となる盾のみのものを小紋章、それにヘルメットやクレストを加えたものを中紋章、全てが揃っているものを大紋章と呼ぶ(小紋章、中紋章併せて小紋章と呼ぶこともある)。この他、当人の身分によって騎士団章(勲章)や冠が加わることもある。
これらの要素は中世の騎士をイメージしたものである。このため、戦場に出ない女性や聖職者の場合、盾型ではなく菱形の要素を使い、ヘルメット等も違った形式の帽子になるのがオーソドックスであったが、近代では騎士のイメージは形式のみになっており、男女同権の意識も高まったため、特に区別しないこともある。
ペトラ・サンクタ
紋章は戦場で遠くから識別できるように限定された8色(2つの金属色と6つの色)で表されるが、刻印のように色が付かない場合は、その代わりにペトラ・サンクタという色を紋様で表す規則が定められている。
- 金:点
- 銀:無
- 青:横縞
- 赤:縦縞
- 紫:右上から左下への斜縞
- 黒:格子縞
- 緑:左上から右下への斜縞
- 橙:横縞と右から左への縞
その他にファー(furs、毛皮)という紋様が定められている。これは元々は毛皮に使う動物を表していたとされるが抽象化が進んでいるため、模様から元の動物を判断することは難しい。
シールド(盾)
シールドの基本的なデザインとして右図の様な色の塗分けと幾何学模様がある。これに動物、植物、十字架などの具象図形が組み合わされることもある。また、紋章が受け継がれるうちに、他の家の継承に伴いその紋章を中に組み込むようになり、領域を半分や四分割して各紋章を配置することが行われた(マーシャリング)。