「ワイルドハント」の版間の差分
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'''ワイルドハント'''({{lang-en|Wild Hunt}}、{{Lang-de|Wild Jagd{{efn|猛々しい[[狩猟|狩り]]の意}}, Wildes Heer{{efn|猛々しい[[軍]]の意}}}}、{{Lang-fr|Chasse sauvage}})は、[[ヨーロッパ]]の大部分の地域に、古くから伝わる[[伝承]]である。 |
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'''ワイルドハント'''(Wild Hunt)は、[[ヨーロッパ]]の大部分の地域に、古くから伝わる[[伝承]]である。いずれの地域においても、想像上の[[猟師]]の一団が、狩猟道具を携え、馬や[[猟犬]]と共に、空や大地を大挙して移動して行くものであると言われている<ref name=ab>Schön, Ebbe. (2004). Asa-Tors hammare, Gudar och jättar i tro och tradition (Fält & Hässler, Värnamo). ISBN 91-89660-41-2 pp. 201-205.</ref> 。 |
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いずれの地域においても、[[伝説|伝説上]]の[[猟師]]の[[集団|一団]]が、[[狩猟]]道具を携え、[[ウマ|馬]]や[[猟犬]]と共に、[[空]]や[[地上|大地]]を大挙して[[移動]]していくものであるといわれている{{Sfn|Schön|2008}}。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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[[ファイル:La caza salvaje de Odín, por Peter Nicolai Arbo.jpg|thumb|300px|『ワイルドハント』[[ペーテル・ニコライ・アルボ]]作]] |
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猟師たちは死者あるいは[[妖精]](民話の中で、死と関連する妖精)であり |
[[狩猟|猟師]]たちは[[死生観|死者]]あるいは[[妖精]]([[民話]]の中で、死と関連する妖精)であり{{sfn|Chambers|Chambers|1973}}、猟師の[[頭領]]は[[亡霊]]、[[多神教]]の[[神]]、あるいは[[精霊]](男女を問わない)、または歴史上や伝説上の人物であると言われる。例を挙げれば、[[テオドリック (東ゴート王)|東ゴート王テオドリック]]、[[ヴァルデマー4世 (デンマーク王)|デンマーク王ヴァルデマー4世]]、[[ウェールズ]]で[[霊魂]]を[[冥界]]に導くとされる[[:en:Gwyn_ap_Nudd|グウィン・アプ・ニーズ]]、または[[北欧神話]]の神[[オーディン]]、また[[アーサー王]]のこともある{{Sfn|Schön|2008}}{{Sfn|Westwood|1985}}{{sfn|Briggs|1967||p=49}}。 |
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この狩猟団を目にすることは、[[戦争]]や[[疫病]]といった、大きな[[災難|災い]]を呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、[[死]]を免れなかった{{sfn|Chambers|Chambers|1973}}。他にも、狩猟団を[[妨害]]したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて[[死後の世界|冥土]]へ連れていかれたといわれる{{sfn|Briggs|1967|=233}}。また、彼らの仲間に加わる[[夢]]を見ると、魂が[[肉体]]から引き離されるとも信じられていた<ref>{{Cite book|洋書 |title=The Pagan Religions of the Ancient British Isles: Their Nature and Legacy |date=2010-11-01 |year=2010 |publisher=Wiley |page=307 |last=Hutton |author=Ronald Edmund Hutton |first=Ronald |isbn=978-0631189466 |language=English}}</ref>。 |
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==オーディンとの関連== |
==オーディンとの関連== |
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===ハロウィーンからユールの時期=== |
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[[File:Christmas throughout Christendom - Odin as the Wild Huntsman.png|right|thumb|250px|オーディンのワイルドハント]] |
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[[ファイル:Christmas throughout Christendom - Odin as the Wild Huntsman.png|right|thumb|250px|オーディンのワイルドハント ハーパーズ・ニュー・マンスリー・マガジン1873年1月号より]] |
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[[北欧神話]]ではオーディンの狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる。[[クリスマス]]の時期に主に現れるが、[[春分]]や[[秋分]]の頃にも出現する。これは、その季節に吹く[[暴風]]と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある<ref>山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい 世界の神話8』筑摩書房、1982年、53頁</ref>。<br/>また別の地域では、[[聖ニコラウス]]の日に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、[[麦わら]]の妖精シャープ、さまざまな精霊や、化け物の格好をした人々の行列が練り歩く。先頭は道案内の神の[[エケハルト]]で、大天使の[[ミヒャエル]]と共にサンクト・ニコラウスがやって来る。行列のさらに後ろからは、毛皮を着て、色とりどりの面をつけ、角を生やした鬼が続くと言われる<ref>芳賀日出男 『ヨーロッパ古層の異人たち 祝祭と信仰』 東京書籍、2003年、76-77頁。</ref>。 |
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[[北欧神話]]では[[オーディン]]の狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる{{sfn|山室静|1982|p=53}}。ワイルドハントが始まるのは[[10月31日]]で、翌年[[4月30日]]までは終わらないといわれた。この2つの日は特に大事である。10月31日、太陽は[[九つの世界]]へいき、精霊や妖怪がこの世を放浪するようになるからである<ref name="Norse">{{Cite web |title=Facts and Figures: The Norse Way |url=https://www.timelessmyths.com/norse/way/ |website=Timeless Myths |access-date=2023-03-04 |language=en-US}}</ref>。{{疑問点範囲|10月31日のサムハイン(サウィーン、[[ハロウィーン]])は魔女の新年であり、現世と霊界の壁がいちばん薄くなる時期でもある。北欧神話では、サムハインは10月31日の9日前の夜から始まり、10月31日の9日後の夜に終わるが、31日当日が、壁が薄くなるピークである<ref>[http://spiralmagick.com/Wheel/samhain.htm Samhain]</ref>。また北半球の大部分では、ハロウィーンと共に、冬の季節が始まり、かつて多くのヨーロッパの人々は、影が長くなって火をともすこの時期は家にこもった|date=2018年10月}}。[[狩猟月]]の先端が暗闇に浮かぶと、嵐が吹き荒れる時期となり、[[アンシーリーコート]]の時期でもあり、'''ワイルドハント'''は暗い日、10月31日から[[冬至]]の休閑期に集中する<ref name="search">{{Cite web |title=Irosf - Internet Review of Science Fiction |url=https://www.irosf.com/ |website=Irosf - Internet Review of Science Fiction |access-date=2023-03-04 |language=en-US}}</ref>。元々は、ユールと[[十二夜]]の間に、8本足の[[スレイプニル]]にまたがったオーディンが、魔物や精霊たちや遠吠えする[[イヌ|犬]]を従えて、やってくるとされていた。オーディンが、スレイプニルにまたがって天に駆け出すと、雷のような音が轟き、風が吹きはじめ、やがて耳をつんざくような音へと変わる。他の[[悪魔]]や精霊の馬の[[蹄]]の音も、この音に加わり、犬たちも同様に、やはり耳をつんざくような吠え声を上げる{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。かつての[[ゲルマン人|ゲルマン]]世界で、[[クリスマス]]前後の、[[燻し十二夜]]の頃は雪嵐が多く、その嵐にオーディンの到来を人々は重ね合わせた。また、この頃祖先の霊が帰ってくるという言い伝えがあり、今も、特に[[北欧]]ではこの習慣が守られていて、故人の好んだ料理を作って並べ(ユール・ボード)、馬の[[手綱]]を解いて、故人の霊が乗れるようにしておくという<ref name="ueda">{{Cite book|和書 |title=ヨーロッパの祭と伝承 |date=1999-04-10 |year=1999 |publisher=講談社 |pages=16-21 |author=植田重雄 |author-link=植田重雄 |series=講談社学術文庫 |isbn=978-4061593718}}</ref>。 |
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{{Main|ユール}} |
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{{Quote|冬の風が吹いて、ユールの火がともされる頃は、家の中にいるべきだ。 |
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暗闇の小道からも、野生の[[ヒース]]からも閉ざされていて安全だ。 |
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== 関連作品(音楽) == |
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ユールの夜にあてどもなくうろつく者は、樹上からのさらさらと言う音を耳にする。 |
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それは風の音だろう、でも他の木はしんとしている。 |
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でもその次に、犬の吠える声を聞こえる、軍団の首領が舞い降りてくる。 |
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目から火を吹く黒い猟犬、黒い馬のいななき。|クエルドルフ・ハーゲン・グンダルソン|マウンテン・サンダー|{{harv|Towrie|2005}}}} |
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ユールの間中、ワイルドハントの動きも最高潮に達し、死者がワイルドハントの一員となって現世をうろつく。リーダーであるオーディン、その後に、黒くて吠え続ける犬を連れて、狩りの[[角笛]]を吹きならす死んだ英雄たちが続く<ref name="wicca">[http://www.isisbooks.com/IngridYule.asp Wicca|Yule|Winter Soltice|Wild Hunt |Odin Yule Log|Ingrid Jeffries|ISIS Books and Gifts]</ref>。オーディンの8本足の馬、スレイプニルのために、古代のゲルマンやノルマンの子供たちは、冬至の前の夜にブーツを暖炉のそばに置き、スレイプニルのために[[干し草]]と[[砂糖]]を入れ、オーディンはその見返りとして、子供たちに贈り物を置いていったという。現代では、スレイプニルは8頭の[[トナカイ]]となり、灰色の髭のオーディンは、[[キリスト教]]化により、[[ミラのニコラオス|聖ニコラウス]]、そして親切な[[サンタクロース]]となったのである<ref>{{Cite web |title=Norse Holidays and Festivals |url=http://www.wizardrealm.com/norse/holidays.html |website=www.wizardrealm.com |access-date=2023-03-04}}</ref>。ブーツ以外に[[靴下]]を置き、やはり中に、スレイプニルの食物や干し草を入れておくと、やはり、オーディンから、子供たちへの[[キャンディ]]がその中に入っているといわれる{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。もし、戸外でワイルドハントに出逢った人は、心の純粋さと、このワイルドハントに象徴されるような恐ろしい光景に敬意を払えるか、一種の[[度胸]]試しがなされ、さらに[[ユーモア]]のセンスが試される。もしそれに合格すれば、その人は靴を[[金|黄金]]で一杯にするか、食べ物と飲み物をもらって帰ることができる。しかし不運なことに合格しなかった場合、その人は、恐怖に満ちた夜の旅へ、生涯連れまわされることになる<ref name="wicca"/>。ワイルドハントに命を奪われ、魂が、その後何年もこの軍団と共に空を駆け巡った者は、邪悪な者や嘘つきといわれるが、ユールの時期に、祖霊へのご馳走を怠ったからだとも広く伝えられる{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。かつては、死が間近な病人の場合、狩りに加われるように、部屋の窓が開けてあった<ref name="hyakka">{{Cite book|和書 |title=図説 妖精百科事典 |date=2004-03-01 |year=2004 |publisher=東洋書林 |pages=601-603 |author=アンナ・フランクリン |author-link=アンナ・フランクリン |translator=井辻朱美 |author2=ポール・メイスン |author3=ヘレン・フィールド |isbn=978-4887216365}}</ref>。サンタクロースがワイルドハントに由来するというこれらの説は、ヘレーン・アデリーン・ガーバーらによって唱えられたものだが、史料による確認はなされていない。また、サンタクロース伝説の元になった[[ミラのニコラオス]]の逸話は、ワイルドハントとはほど遠いものである{{要出典|date=2023年7月}}。 |
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[[ファイル:Valkyrie by Arbo.jpg|thumb|left|150px|ワルキューレ アルボ作]] |
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===その他の時期=== |
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北欧では、[[夏至]]の前夜にもみられることがある。空で犬をけしかける声がして、地域によっては[[ケルヌンノス]]に率いられている。夏至の夜はヨーロッパでは妖精の夜、魔女の夜でもある。[[リアノン・ライアル]]の著述には、『ウエスト・カントリー・ウィッカ』の中で、儀式を伴う[[魔女の集会]]は、イングランド西部で何世紀も続いているとある<ref>[http://www.widdershins.org/vol2iss2/l9604.htm A Midsummer Night’s Lore]</ref>。ワイルドハントは、[[春分]]や[[秋分]]の頃にも出現する。これは、その季節の[[暴風]]と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある{{sfn|山室静|1982|p=53}}。また、オーディンがもたらす風が、翌年の[[豊作|豊穣]]を約束するともいわれた<ref name="ueda"/>。 |
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===「オーディンの軍団」本来の姿=== |
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時が経つに連れ、オーディンの群れは[[魔物]]化していき、多くの精霊や妖怪、悪事を働いた者や非業の死を遂げた者をも引き連れた軍団へと変化していった。ワイルドハントに出逢ったら、通り過ぎるのを待つか、三つの[[十字架]]を前に並べるともいわれる。この三つの[[十字架]]には、キリスト教の影響が窺える。これは日本の[[百鬼夜行]]にも通ずるものがある。かつては[[物忌]]の象徴であったものが、いつの間にか恐ろしい物の怪の集団となっていったのである<ref name="ueda"/>。また別の地域では、[[聖ニコラウス]]の日に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、[[麦わら]]の妖精シャープ、さまざまな[[精霊]]や、[[お化け|化け物]]の格好をした人々の行列が練り歩く。先頭は道案内の神の[[エケハルト]]で、大天使の[[ミカエル|ミヒャエル]]と共にサンクト・ニコラウスがやってくる。行列のさらに後ろからは、毛皮を着て、色とりどりの面をつけ、角を生やした鬼が続くと言われる<ref>芳賀日出男 『ヨーロッパ古層の異人たち 祝祭と信仰』 東京書籍、2003年、76-77頁。</ref>。オーディンが引き連れているのは、[[ワルキューレ]]という説もある<ref name="Norse" />。 |
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==ヨーロッパ各地での伝承== |
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===イングランドとウェールズ=== |
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{{Quote|多くの人々が、大勢の猟師たちが狩りをしているのを、目または耳にしていた。彼らは黒く、巨大で醜く、黒い[[馬]]または雄の[[ヤギ]]に乗っていた。彼らの連れていた犬は漆黒で、皿のような耳をしていて、恐ろしかった。[[ピーターバラ]]のディアパークの、正のその空に見えた。その町からスタンフォードまで、森づたいに、その光景が見えていた。その夜[[修道士]]たちは、彼らが[[笛]]を吹いているのを耳にした。|著者不明|アングロサクソン年代記|a b Garmonsway, G.N., The Anglo-Saxon Chronicle, Dent, Dutton, 1972 & 1975, p. 258.}}[[ファイル:Wistmans 2.JPG|thumb|right|200px|デボンのウィストマンウッドの森]] |
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[[ファイル:Sir Francis Drake by Jodocus Hondius.jpg|thumb|right|120px|サー・フランシス・ドレイク]] |
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ワイルドハントは、時を経るに従って、オーディン以外の神や、民話の[[ヒーロー|英雄]]が狩猟団の頭領となっていく。それは[[アーサー王]]であったり、[[ダートムア]]の民間伝承では、[[フランシス・ドレイク|サー・フランシス・ドレイク]]であったりする。[[サマセット]]の[[キャドバリー城]]近くの古い道はキング・アーサー・レインと呼ばれており、19世紀の時点でも、風の強い冬の夜は、アーサー王が犬を連れてそこを疾駆するという話が信じられていた{{Sfn|Westwood|1985}}。英国のある場所では、この狩猟団は、宗教上の[[大罪]]を犯した者や、[[受洗]]していない者を追いかける[[地獄]]の猟犬であると言われている。[[デボン]]では、イェス(ヒース)またはウィシュトハウンドと呼ばれ、[[コーンウォール]]ではダンドーと犬たち、またはデビルとダンディードッグと呼ばれる。[[ウェールズ]]ではクンアンゥン(地獄の猟犬)、サマセットではガブリエル・ラチェッツまたはレチェッツ(犬)、デボンでは特に、[[ウィストマンウッド]]で見られ{{Sfn|Westwood|1985|p=32}}。、ウィストハウンドという名もある<ref name="search"/>。このガブリエル・ラチェッツ(ラチェットは犬のこと)、またはガブリエルハウンズとは、古い表現で「死体」を意味する。セブンホイッスラーズ(夜の間中飛び回る七羽の[[鳥]]、恐らくは死んだ[[鉱夫]]や[[漁師]]の霊)と似通ったものがある。このセブンホイッスラーズの鳴き声は[[天災]]の前兆とされた{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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古代ヨーロッパでは、犬は[[守護神]]であり、亡霊を食らうものだった。これは[[狼]]も同様だった。「肉が骨と切り離されるまでは、魂は来世で自由になれない」と信じられており、犬たちは肉体を食らってその人を自由にするとされた。[[サウスウォーウィックシャー]]では、キリスト教が伝わる前の冬至の祭りでワイルドハントと共に見られた、お化けのような猟犬の一団は、ナイトハウンズやヘルハウンズ(正確には「ノルマンの女神のヘルハウンズ」)と呼ばれた。シャックまたはショックとも呼ばれたこれは、古代英語の悪魔(スクッカ)が[[起源]]と思われる。北欧神話の[[ベルセルク|バーサーカー]]と狼は、いずれも死を表し、古代英語での狼(ウルヴズ)は、放浪者や犯罪者のような「社会的に死んだ者」と同義であり、彼らがワイルドハントの一因となっている理由とされる{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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ワイルドハントの後に、[[暖炉]]のそばに小さな黒い犬がいたら、見つけた人が、その後1年世話をし、労わらなければならない。きちんと世話をしないと、悲惨な結末が待ち受けている。また、夜に黒い犬を見るのは、間近な死の前兆とされた{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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[[イングランド]]で主にワイルドハントの首領と考えられるのは、イングランド オーディン<ref>{{Cite book|洋書 |title=Haunted England: A Survey of English Ghost Lore |publisher=Kessinger Publishing |page=5 |last=Christina |first=Hole |author=Christina Hole |isbn=978-0713465877}}</ref>、オーディンの一形態であるヘルラ<ref>{{Cite web |title=Harlequin {{!}} Encyclopedia.com |url=https://www.encyclopedia.com/literature-and-arts/performing-arts/theater/harlequin#X-Harlequi |website=www.encyclopedia.com |access-date=2023-03-04}}</ref><ref>http://cernunnos.tribe.net/thread/d71e3e69-b694-4f44-ab28-5eeb0e6e9a90<nowiki/>{{リンク切れ|date=2022年1月}}</ref>サクソンの富豪でノルマンに盾突いた[[エドリック]]{{sfn|Briggs|1967|p=436}}、[[アーサー王]]、サー・フランシス・ドレーク、[[ダラム]]地方では[[イエス・キリスト|イェス]]またはウィッシュハウンドなどである{{Sfn|Schön|2008}}{{Sfn|Westwood|1985}}。ヘルラ(ハーン)は頭に[[シカ|雄鹿]]の[[頭蓋骨]]と[[角]]を飾り、体中から[[燐光]]を放って、冬の真夜中[[ウィンザー (イングランド)|ウィンザー]]の森に現れる精霊で、不吉の前兆とされる。[[ウィリアム・シェイクスピア]]の『[[ウィンザーの陽気な女房たち]]』には、このヘルラが登場する<ref>{{Cite book|和書 |title=妖精学大全 |date=2008/7/28 |publisher=東京書籍 |page=78 |author=井村君江 |author-link=井村君江 |isbn=978-4487791934}}</ref>。ヘルラに関しての、[[12世紀]]の[[ウォルター・マップ]]の次のような文章もある。 |
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{{Quote|ヘルラ王の一族は、[[ヘンリー2世 (イングランド王)|ヘンリー2世]]の治世の最初の年に、ウェールズとヘレフォードの境界地方で目撃された。 |
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昼間のことで、我々と同じように馬車に乗って、馬に荷物を載せ、馬の荷鞍に荷籠、[[鷹]]に猟犬、そして男女が集まっていた。 |
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この一行を最初に見た者は、国を挙げて彼らを敵に回し[[ラッパ]]を吹いて、叫びをあげた。 |
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なぜなら彼らは、話しかけるための言葉をひねり出せない。 |
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武器を突きつけ、彼らに答えさせようとしたが、彼らは宙に浮かんですぐさま消えてしまった。 |
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|クエルドルフ・ハーゲン・グンダルソン|マウンテン・サンダー|{{harv|Towrie|2005}}}} |
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[[ウェールズ]]では、グウィン・アプ・ニーズのほかに、[[マリュティノス]](マチルダ・オブ・ザ・ナイトまたはナイト・マリュト)の伝承もある。マリュティノスは、かつては不信心な貴婦人で、[[狩り]]が大好きで、「[[天国]]に狩りがないのなら、行かない方がいいわ」と口にしてしまったため、死後はその望み通りになり、暴れ馬に乗って、[[アラウン]]と共に、泣きわめくような声を上げながら、[[クリスマス]]や[[大晦日]]に、[[アヌンウン]]の[[イヌ|犬]]の亡霊を走らせるという<ref>{{Cite book|洋書 |title=Folk-lore and folk-stories of Wales |year=1909 |publisher=E. Stock |author=Edwin Sidney Hartland |author-link=Edwin Sidney Hartland |others=Marie Trevelyan |location=London |oclc=21935727}}</ref>。この犬は、ガブリエル・ラチェッツと同じ犬ともいわれる{{Sfn|Towrie|2005}}。 |
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グウィン・アプ・ノーズはウェールズの[[ヨーロッパの五月祭|五月祭]](カランマイ)に現れる<ref name="Norse" />。 |
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===ドイツ=== |
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[[ファイル:Perchten4.jpg|thumb|right|150px|ペルヒタ]] |
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時に、狩猟団が[[ドラゴン]]や[[悪魔]]を連れているという話がある。猟師たちは馬、または馬車に乗っている場合が多く、何頭かの犬を引き連れている。特に若い女性は、罪があろうとなかろうと、彼らの獲物となる。この話の多くは、ワイルドハントに出くわして難を逃れた人々によるもので、もし彼らの道を塞ぐようなことをすれば罰せられ、もし彼らの手助けをすれば、金や黄金、あるいは、かなり高い確率で、死者や死んだ動物の脚が与えられる。この人間や動物たちは、[[呪い|呪われ]]て逃れられなかった者たちである。 |
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この場合、その人は[[聖職者]]や[[魔術師]]に頼んでワイルドハントを撃退してもらうか、塩をねだって、脚を取り戻させるように仕向ける。ワイルドハントは塩を渡すことができないからである。多くの場合、狩猟団が通過する間、道の中央より右側にいた人は安全だと言われる<ref>{{Cite book |title=Waage - Zwerge |url=https://books.google.de/books?id=cqdVHI1lHGkC&pg=PA191&hl=ja |publisher=Walter de Gruyter |date=1974-02 |isbn=978-3-11-006597-8 |language=de |first=Eduard |last=Hoffmann-Krayer |first2=Hanns |last2=Bächtold-Stäubli}}</ref><ref>Neumann, Siegfried; Tietz, Karl-Ewald; Jahn, Ulrich (1999). Neumann, Siegfried; Tietz, Karl-Ewald. ed (in German). Volkssagen aus Pommern und Rügen. Bremen-Rostock: Edition Temmen. pp. 407, 29ff. ISBN 3-86108-733-2.</ref><ref>[[カール・ヨーゼフ・ジムロック|Simrock, Karl]] (2002 reprint of 1878 edition) (in German). Handbuch der deutschen Mythologie mit Einschluß der Nordischen. Elibron Classics. Adamant. pp. 191, 196ff. ISBN 1-4212-0428-2.</ref>。ドイツでは、[[ヴォーダン]](オーディン)、[[ベルヒトルト]]、[[ディートリッヒ・フォン・ベルン]]、[[ホルタ]]、[[ペルヒタ]]、[[ビルデヒャイト]]、[[ローデンシュタイン]]と[[ハンス・フォン・ハッケルベルク]]の従者(2人とも安息日を破った罪人)<ref>Ruben A. Koman, Dalfser Muggen Profiel, Bedum 2006.</ref>、{{要出典範囲|レイジングホストまたはフュリアスホスト、レッドベアード|date=2012年11月}}などが首領とされている。<!--レイジングホストRaging hostはWild huntの別名、もしくはモンスターの名前でレッドベアードも英語ですよね?どちらを参照されたのか記載頂ければ幸いです。--> |
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[[北欧神話|ザクセンの神話]]では、[[オーディン]]、またはヴォータンは、戦死した兵士を[[ワルハラ]]に連れていき、蘇らせてから[[エインヘリャル]]を編成した。毎日兵士たちは戦死し、夜に蘇って、酒宴を楽しんだ<ref name="Hlidskjalf" />。 |
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ザクセンには次のような伝説もある。ある王子が、少年を切り裂いた。少年は[[ヤナギ]]の皮をはいで笛を作った。王子は少年が木を傷つけたため、罰を与えたのである。王子は少年の腸をヤナギの周囲に巻き付けた。また、鹿を狩った[[農奴制|農奴]]にも残酷な刑を科した。 |
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王子は狩りの途中、カバノキに激突して死に、永遠に狩りをすることになった。この王子の集団は、[[十字路]]では転落し、また広い通りを避ける<ref name="hyakka" />。また、[[1123年]]、このザクセンの[[ヴォルムス]]の司教管区の住民たちは、毎晩のように、大勢の武装した騎士たちが隊列を組んで山から下りてきて、また山に引き返すのを目撃していた。 |
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彼らの前に十字架を押しやって、そのうちの一人に尋ねたところ、彼らは実は皆死んでいるのだと答えた。 |
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この騎士たちは、戦死した者の魂だったのである<ref name="Hlidskjalf" />。[[オーストリア]]の民族学者である[[アレクサンダー・スラヴィク]]は、ワイルドハントが「来訪する死者」「来訪する亡くなった隣人」への昔からの[[信仰]]を示唆する、と考えた<ref>{{Cite book|和書 |author=A・スラヴィク |title=日本文化の古層 |publisher=未来社 |pages= |page=50 |date=2015-06 |isbn=9784624200459 |origdate=1984-09 |others=ヨーゼフ・クライナー |translator=住谷一彦}}</ref>。 |
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ワイルドハントを率いるといわれる、[[ハンス・フォン・ハケルンベルク]](ハッケルベルク)という人物は1521年または1581年に没したといわれる。 |
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後世の民話では、ハケルンベルクは猪を殺したが、牙で脚を負傷し、毒が回って死んだ。彼は、死んでから天国へ行くことは望まない、代わりに狩りをさせてくれるように望んだ。 |
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彼の願いは聞き届けられ、あるいは呪われ、夜空で狩りをすることになった。この話のもう一つ別の形として、生前の罪の罰として軍団を率いるようになったというのもある。この話には、もっと昔のものではないかとも思われる。また、ハッケンベルクとは、単に、[[古ザクセン語|古代サクソン(ザクセン)語]]で、ボーダン(オーディン)のあだ名であるハコルベランドがなまったものだともいわれている{{Sfn|Towrie|2005}}。 |
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[[グリム兄弟]]は、「怒れる軍団」(ワイルドハント)は、オーディンの軍に起源があるとしている<ref name="lachasse">{{Cite web |title=La Chasse Sauvage – Les Portes du Sidh |url=http://www.le-sidh.org/wicca/autremonde-2/dieux-esprits-petit-peuple/la-chasse-sauvage/ |access-date=2023-03-04 |language=fr-FR}}</ref>。 |
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===フランス=== |
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[[1133年]]の[[ノルマンディー]]の[[聖職者]]、[[オルデリック・ヴィタリス]]によると、[[1091年]]の[[1月1日]]、亡霊たちからの伝言を依頼された聖職者の[[ボンヌヴァル・ウォルシュラン]]は、彼らを無視し、乗り手のいない馬を一頭盗もうとした。しかし赤く焼けた[[手綱]]と、盗みで彼を取り押さえた騎士の手で焼かれてしまう。ウォルシュランは兄弟のとりなしで難をのがれたが、死んでからは、ワイルドハントに加わったと言う{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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[[パリ]]近くの[[フォンテーヌブロー]]の森には、ル・グラン・ヴェヌール(大頭領)がいて、森の中を風が吹けば、ル・グラン・ヴェヌールが現れたといわれる<ref name="hyakka"/>。 |
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ドイツに近い[[アルザス]]の住人である[[ジャン・ガイレ・カイゼルベール]]は、[[1516年]]に、ワイルドハントについて次のように書いている。「神の決断が下される前に世を去ったものは、ワイルドハントの一員となる。彼らは、突き刺されたり、吊るされたり、水におぼれたりして死に至ったもので、神の決断が来るまで、死後もこの世に留まっているのである」 |
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フランスでは、ワイルドハントを率いるのは、必ずしもオーディンや、シャッセマカベイ、シャッセアルトゥ、そしてメスネデレキン(死の女神エル){{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}だけではなく、アルザスでは[[ホレのおばさん]]や[[ペルヒタ]]のこともある。また、ワイルドハントが、大人にならないうちに死んだ[[子供]]たちの集団である場合もある。これは子供だけが見ることができるが、これを見た子供たちに危害は加えられず、ワイルドハントの一員として引き込まれることもない。むしろ、この集団を率いるホレおばさんは、子供たちに贈り物(しばしば小さな食物)をくれ、これが、アルザスの[[クリスマスイブ]]に、子供たちにプレゼントをくれる、白いドレスの女性、[[クリストキント]]の発祥になったといわれている。(現代のサンタクロースとは別物である) |
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20世紀の始め、アルザスには、[[冬至]]の近くに、仮面を付けて幽霊や動物に扮し、できるだけ大きな音を立てて歩く祭があった。彼らは村中を歩き、特に、その年死者が出た家からは、なかなか離れようとしなかった。夜には、オーディンの戦場でよみがえった戦士に扮したダンサーによる[[饗宴]]があり、その時に祭の王が選ばれた<ref name="lachasse"/>。 |
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また、「提督の狩猟」という、クリスマスの時期の恐怖話(プレ)もある。[[フランス海軍]]提督で、サン=ジャン=ローヌ付近のフランソに領地を持つ[[シャルニ伯]]フィリップ・ド・シャボは、非回心の狩人と呼ばれ、[[1541年]]、領地に近いジュラの付近に[[オオカミ]]が沢山出るということで、クリスマスイブの[[礼拝]]をすっぽかして狩猟に行こうとするが、夫人に促され、教会に出かけた。しかし、[[ミサ]]のさなかに、伯爵領にオオカミが出たとの連絡が入り、そのまま、連絡に来た貴族と共に教会を出ていった。その後、教会の中に[[フクロウ]]が降りてきて[[ろうそく]]の火が消えたり、[[クモ]]が降りてきたりで、人々を不安に陥れる。その後、遠くで狩猟の音が聞こえる中を、夫人や子供たち、召使たちは城に戻るが、夜が明けて狩猟の音がやんでも、提督は2度と戻らなかった。その後、この地域では、イブのミサが始まるころ、狩猟の音が聞こえるという。このシャルニ伯フィリップ・ド・シャボはほぼ同時代に実在し、この話とは違った運命をたどる<ref>{{Cite book|和書 |title=フランス文化誌事典 祭り・暦・気象・ことわざ |date=1996-11-1 |publisher=原書房 |page=658 |author=ジョルジュ・ビドー ド・リール |isbn=978-4562028603 |translator=堀田郷弘、 野池恵子}}</ref>。([[:en:Philippe de Chabot]]) |
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===オークニー諸島=== |
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[[ファイル:Papdale valley, east of Kirkwall, Orkney - geograph.org.uk - 129733.jpg|thumb|left|180px|オークニー諸島の中心都市カークウォール]] |
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オークニーにも、ワイルドハントの伝説が残っている。妖精や[[トロール]]が、時折り、夜中に白馬や[[雑草]]でできた馬<ref>[http://www.orkneyjar.com/folklore/trows/norwegianbride.htm Orkneyjar - The Trows and the Norwegian Bride]</ref>に乗り、空を飛ぶと言われる。盗んだ[[ウシ|雌牛]]に乗っているともいわれる。ヨーロッパ中で、ワイルドハントはいろんな時期に現れるが、ユールの時期が最も一般的だといわれる。この時期は、超自然的な存在が現世を訪れる時期で、特に死者の霊が家に帰るのを許される時期でもある。この考えが、ワイルドハントは死者の集まりということになり、オークニーでもそれが当てはまる。オークニーのトロールは元々は生霊、あるいは幽霊と考えられていた。そしてユールや、[[ハロウィン]]や[[大晦日]]に悪さをするのである{{Sfn|Towrie|2005}}。 |
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===スウェーデン=== |
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北欧では、オーディンのワイルドハントは、耳にはしても、めったに見られない。典型的なものとしては、オーディンの2頭の犬が、1頭は騒がしく、1頭は弱々しく吠えるということである。この吠える声は、誰にでも聞き分けられる。多くの地域では、この声が聞こえると、天候が変わると言われているが、戦争や社会不安の[[前兆]]の場合もある。幾つかの報告によると、静かな森で、犬が鼻を鳴らす音と吠える声だけが聞こえたという。 |
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スウェーデンでは、特に[[イェータランド]]にこの伝承が広まっている。ここは、古くからオーディン信仰があった地域でもある。民間伝承のオーディンは、神話で見せる姿とは違い、外部からの影響が大きいのは特筆すべきことである。キリスト教以前の時代から今に至るまで、オーディン信仰は、人びとの信心に強い影響を与えている。 |
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[[ファイル:Thor.jpg|thumb|right|黒ヤギが引くトールの馬車]] |
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ワイルドハントは、[[ゲルマン神話|古代ゲルマン信仰]]が発祥なのは明らかである。近年のオーディンの伝承が、オーディン自身と彼の神性とを結びつけようとしないのは、注目されるべきである。何世紀もにわたり、オーディンは[[エウヘメロス]]の説に基づいて、伝説の人物であり、[[悪魔]]のように恐ろしく、危険な存在とされてきたが、[[北欧神話]]の主神とのはっきりした関連付けは見られなかった。スウェーデン西部、また東部でも、オーディンは[[貴族]]であり[[王]]ですらあった。[[日曜日]]にも狩りをし、そのため、この世の終わりまで、超自然的なものを追い詰め、狩ることを運命づけられたのだと言い伝えられている。 |
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オーディンは、馬ではなく、やはり北欧神話に登場する[[トール]]が乗っているような馬車で駆け回っているともいわれている。オーディンが現れるという地域には、それぞれの伝説があるようで、[[オーランド諸島|オーランド]]のガルドローサでは、オーディンが、険しい岩山に馬を繋ぎ、馬が繋がれた綱を強く引っ張ったところ、岩山は粉々に砕け、そして馬も地上に落ちて、底なし沼ができたと言われる。[[スモーランド地方|スモーランド]]のある地域では、犬たちが疲れてくると、オーディンは大きな鳥たちを使って狩りをしたという話がある。その鳥は、[[スズメ]]の群れを変身させたものであるという。また、かつて通った道に家が建っていれば、その家は燃やされてしまう。またある伝説によれば、雄牛に[[くびき]]を付けている時は、オーディンは狩りをしないといい、オーディンが狩りをしているときは、地面に身を投げ出して、悪いことをされないようにするのが一番いいやり方だという。 |
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スモーランドのアルグールトでは、クリスマスに[[教会]]に行く時は、パンをひとかけらと金属を一片持っていくのが一番良いといわれ、もしつばの広い帽子を被った狩人{{Efn|オーディンを指していると考えられる。}}に出会った場合、自分の前に金属を投げる、しかし犬に最初に出会った場合は、その代わりにパンを投げるのがいいとされる{{Sfn|Schön|2008}}。 |
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===ノルウェー=== |
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[[ノルウェー]]ではオスコレイと呼ばれる。[[20世紀]]初頭まで、ノルウェーの若者は、[[冬至]]にワイルドハントの再演を行っていた。扮装した若者たちは、伝統行事を破壊する、大抵は[[ビール]]や[[穀物]]を盗む人々に罰を与えた。この若者たちに食べ物や飲み物を与えると、繁栄がもたらされると言われた{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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===その他=== |
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[[ファイル:Pergamonaltarhekate.jpg|thumb|right|150px|女神ヘカテー]] |
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[[カタルーニャ州]][[リポイ]]の[[貴族]]、[[アラナウ伯爵]]はその残忍さ、とりわけ[[神父]]への残忍さで知られ、その祟りとして、田舎を、火を吹く黒い「地獄の乗馬」に乗って、獰猛な地獄の猟犬と走り回ることになった。イタリアでは、[[ヘロディアス (女神)|ヘロディアス]]、のちの[[ストレゲリア]]の[[アラディア]]の伝承がある。イタリアの魔女を引き連れて、海で邪悪な水兵を狩る<ref name="search"/>。 |
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[[ギリシャ神話]]の[[ヘカテー]]は、月の出ない夜に、遠吠えをする不気味な犬の一団を連れて放浪する{{Sfn|Towrie|2005}}。ヘカテーも、元々はワイルドハントのリーダーと考えられており、他にもテュンリドル(妖婆[[ハッグ]]の乗り手たち)、ガンドライド(魔女の騎行)という名もあって、女性が率いるものであったともいわれる<ref name="hyakka"/>。 |
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[[デンマーク]]では、首領として[[ホルガー・ダンスク]]、[[ポーランド]]では[[ヤドヴィガ (ポーランド女王)|ヤドヴィガ女王]]、[[セルビア]]では[[マルコ王子]]の名が挙げられる{{sfn|Ed LeBouthillier|2008}}。 |
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[[中央ヨーロッパ]]では、ワイルドハントをよけるため、[[肉]]を沢山いれた木の容器を、家の正面の木の上に置く。 |
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また、[[マレー半島]]、[[イロコイ族]]にも似た伝説がある<ref name="hyakka"/>。 |
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==分類== |
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===頭領=== |
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* イタリア、[[ロンバルディア州]] - [[テオドリック (東ゴート王)|テオドリック]]、la Dona del Zöch<ref>Carlo Ginzburg, ''Storia Notturna – Una decifrazione del sabba'', Biblioteca Einaudi</ref> |
|||
* イングランド - オーディン<ref>Hole, Christina. ''Haunted England: A Survey of English Ghost Lore''. p.5. Kessinger Publishing, 1941.</ref>、[[:en:Herla|Herla]]<ref>''[[宮廷人の閑話]]'' 著: [[ウォルター・マップ]].</ref>、[[:en:Eadric the Wild|Eadric the Wild]]{{sfn|Briggs|1967|p=436|loc="Wild Hunt"}} |
|||
* ドイツ - オーディン、Berchtold、テオドリック、[[ホレのおばさん]](ホルダ)、[[ペルヒタ]]、 Wildes Gjait、[[:en:Hanns von Hackelberg|Hanns von Hackelberg]]とRodensteinの従者<ref>{{Cite web |title=DPG Media Privacy Gate |url=https://myprivacy.dpgmedia.nl/consent?siteKey=Dl16ymCePojG0NiW&callbackUrl=https%3A%2F%2Fwww.destentor.nl%2Fprivacy-gate%2Faccept-tcf2%3FredirectUri%3D%252Fvechtdal%252Farticle234121.ece |website=myprivacy.dpgmedia.nl |access-date=2023-03-04}}</ref>, [[テュルスト]] |
|||
* フランス、[[ブルターニュ]]地方 - [[アーサー王]]{{sfn|Briggs|1967|p=51}},[[ヘリワード・ザ・ウェイク]] |
|||
* フランス - アーサー王、[[:en:Herne the Hunter|Herne the Hunter]],[[:en:Guthlac of Crowland|Guthlac of Crowland]] |
|||
* スペイン、[[カタルーニャ州]] - アルナウ伯爵(el comte Arnau) |
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;その他の地域の例 |
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* [[ヴァルデマー4世 (デンマーク王)|ヴァルデマー4世]] |
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* [[カインとアベル|カイン]] |
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* [[ガブリエル]] |
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* [[ヘロデ・アンティパス]] |
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* [[:en:Gwyn ap Nudd|Gwyn ap Nudd]] |
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* [[クネヒト・ループレヒト]] |
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===メンバー=== |
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* 輝く馬車、燃える馬車 |
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* 首のない騎士 |
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* 空を飛ぶ兵士・騎士・騎馬・馬車 |
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* 人外(悪魔、ドラゴン、天使、幽霊、精霊、豚、犬…) |
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===類似の例=== |
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;[[:en:Cŵn Annwn|Cŵn Annwn]] |
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: [[ウェールズ]]の神話。異界アンヌンの王アラウンのワイルドハント |
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;[[:en:Mallt-y-Nos|Mallt-y-Nos]] |
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: {{ill2|クロウン|en|Crone}}が「天国に狩りがなければ、行きたくない!」と言った結果、異界アンヌンの王アラウンと共に永遠に狩りを強制されている。 |
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;シュヌグーダ(la chenegouda) |
|||
: [[スイス]]の[[ヴァレー州]]に伝わる集団幻聴。各村で話が異なり。「冬の夜暴れる悪意のある騒々しい悪霊の集団」「鈴、鎖、鎌、シャベル、大きな叫び声などの混じったもの」などがある<ref>{{Cite journal|和書|author=加太宏邦 |title=口碑のヴァレー地方 |journal=商学論究 |ISSN=02872552 |publisher=関西学院大学商学部商学論究編集委員会 |year=1991 |month=apr |volume=39 |issue=1 |pages=39-57 |naid=120000993992 |doi=10.15002/00003071 |url=https://doi.org/10.15002/00003071}}<</ref>。 |
|||
;ムオーデル([[綴り字]]不明、英語・ドイツ語資料確認できず) |
|||
:日本の書籍で、以下のように紹介された<ref name="mizuki">[[水木しげる]] 世界の妖怪百物語 出版社:小学館クリエイティブ 出版年月2017.7 ISBN 9784778035266 p120</ref>。 |
|||
:「ドイツ<ref name="mizuki"/>、(別資料では[[オーストラリア]]<ref>{{Cite book|和書 |title=幻想世界 幻獣事典 |date=2011-10-01 |publisher=笠倉出版社 |author=幻想世界を歩む会 |editor=スタジオエクレア |isbn=978-4773085761}}</ref>)に伝わる伝説の幽霊の軍勢である。夜になると、四辻を地面から数10cm浮かんで飛んでいく軍勢の姿が見えるという。この時、物凄い叫び声や吼え声、浮かんでいるのにもかかわらず[[轍]]の響きまで聞こえる。ムオーデルの先頭では、白馬に乗った男が角笛を吹きながら「そこを退け、そこを退け、退かぬ者は危ないぞ!!」と警告を発する。軍勢は、徒歩や騎馬だけでなく、炎の馬車や黒い馬車に乗って現れる。 |
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:年寄りの言い伝えには、ムオーデルの軍勢に出会った場合は、近くにある十字架にしがみつき、目を閉じていることと伝えられる。そうすれば軍勢は何もしないで通り過ぎる。また、近くに十字架がない場合、両足を閉じ、両腕で十字架の形を作り寝ることとされている。」 |
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:オーディン( Woden )を読み間違えたか変形させて( '''M'''ode'''r''' とか)としているのだろうが、ドイツ語や英語などの資料では発見できず。 |
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== 文化 == |
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;音楽作品 |
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*[[カール・マリア・フォン・ウェーバー]] 『[[魔弾の射手]]』 |
*[[カール・マリア・フォン・ウェーバー]] 『[[魔弾の射手]]』 |
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*[[フランツ・リスト]] 『[[超絶技巧練習曲]]』(別名がWilde Jagd、ドイツ語でワイルドハント) |
*[[フランツ・リスト]] 『[[超絶技巧練習曲]]』(別名がWilde Jagd、ドイツ語でワイルドハント) |
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*[[アーノルト・シェーンベルク]] 『[[グレの歌]]』 |
*[[アーノルト・シェーンベルク]] 『[[グレの歌]]』 |
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*[[スタン・ジョーンズ]] 『[[ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ]]』 |
*[[スタン・ジョーンズ (ミュージシャン)|スタン・ジョーンズ]] 『[[ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ]]』 |
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*[[ジム・モリソン]]『[[ライダーズ・オン・ザ・ストーム]]』 |
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*[[セリオン (バンド)|セリオン]] Vovin |
*[[セリオン (バンド)|セリオン]] Vovin |
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*Aes Dana |
*Aes Dana Las Chasse Sauvage(フランス語でワイルドハント) |
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*[[トーレスト・マン・オン・アース]] 『ワイルドハント |
*[[トーレスト・マン・オン・アース]] 『ワイルドハント (The Wild Hunt)』日本でのデビューアルバム |
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*Omnia |
*Omnia Crone of War |
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*Heidevolk ([[バイキングメタル]]バンド) Walhalla Wacht |
*Heidevolk ([[バイキングメタル]]バンド) Walhalla Wacht |
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*Steve Von Till, ''If I should Fall to the Field'' ([[ニューロシス (バンド)|ニューロシス]]のメンバーの2ndソロアルバム) |
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;ゲーム作品 |
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*[[ウィッチャー3 ワイルドハント]] ポーランドの小説を原作とするゲーム |
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=== ゲーム === |
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*Vampire: The Masquerade |
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*[[真・女神転生]] |
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*Witcher |
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*[[Fate/EXTRA]] |
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*[[異界戦記カオスフレア]] |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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*[[足洗邸の住人たち。]](中央七支柱第四軍の団長フレルティが「亡霊騎行」隊長、副隊長エリゴスと特攻隊長バシンが隊員という設定) |
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=== 注釈 === |
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{{notelist}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|2|refs= |
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<ref name="Hlidskjalf">{{Cite web |url=http://www.socalasatru.org/Dec08_00.html |title=The Wild Hunt |access-date=2011-10-04 |publisher=Eurofolk Asatru Community Association |author=Ed LeBouthillier |archive-url=https://web.archive.org/web/20111004153701/http://www.socalasatru.org/Dec08_00.html |website=Hlidskjalf |url-status=dead|url-status-date=2023-03-04 |archive-date=2011-10-04}}</ref> |
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}} |
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== |
== 文献 == |
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=== 参考文献 === |
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*[[オーディン]] |
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*{{Cite book|洋書 |title=Chambers's Encyclopaedia |year=1973 |publisher=[[チェンバース ハラップ社|W. & R. Chambers]] |last=Chambers |first=William |last2=Chambers |first2=Robert |edition=12 |language=[[イギリス英語|British English]] |location=[[ロンドン|London]], [[イギリス|the U.K.]] |url=https://www.nms.ac.uk/explore-our-collections/stories/science-and-technology/w-r-chambers-collection/ |access-date=2023-03-05 |quote=[Gabriel's Hounds]...portend death or calamity to the house over which they hang;the cry of the Seven Whistlers... a death omen |author-link=ウィリアム・チェンバース (出版業者) |author2-link=ロバート・チェンバース |others=more than 3000 |ref=harv}} |
|||
*[[ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ]] |
|||
*{{Cite book|洋書 |title=Asa-Tors hammare: gudar och jättar i tro och tradition |date=2008-10-01 |year=2008 |publisher=Hjalmarson & Högberg |pages=201-205 |last=Schön |first=Ebbe |ref=harv |location=[[ストックホルム|Stockholm]], [[スウェーデン|Sweden]] |isbn=978-9172240827}} |
|||
*[[みなぎ得一作品の登場人物]] |
|||
*{{Cite book|洋書 |title=Albion : A Guide to Legendary Britain |year=1985 |publisher=Grafton Books |page=8 |last=Westwood |first=Jennifer |ref=harv |isbn=978-0586084168 |ncid=BA29721165 |location=[[ロンドン|London]], [[イギリス|British]] |date=1985-08-15}} |
|||
*{{Cite book|洋書 |title=The Fairies in English Tradition and Literature |year=1967 |publisher=University of Chicago Press |author=Katharine Mary Briggs |last=Briggs |first=Katharine |isbn=978-0415286015 |ref=harv}} |
|||
*{{Cite book|和書 |title=北欧の神話 神々と巨人のたたかい |date=1982/9/1 |year=1982 |publisher=筑摩書房 |page=53 |isbn=978-4480329080 |author=山室静 |author-link=山室静 |volume=8 |series=世界の神話 |ref=harv}} |
|||
*{{Cite web |url=http://www.socalasatru.org/Dec08_00.html |title=The Wild Hunt |access-date=2011-10-04 |publisher=Eurofolk Asatru Community Association |author=Ed LeBouthillier |archive-url=https://web.archive.org/web/20111004153701/http://www.socalasatru.org/Dec08_00.html |website=Hlidskjalf |url-status=dead|url-status-date=2023-03-04 |archive-date=2011-10-04 |year=2008 |ref=harv}} |
|||
*{{Cite web |title=The Wild Hunt |url=http://www.orkneyjar.com/tradition/hunt.htm |website=www.orkneyjar.com |access-date=2023-03-11 |author=Sigurd Towrie |last=Towrie |first=Sigurd |date=2005-10-10 |language=en |archive-url=https://web.archive.org/web/20230214162522/http://www.orkneyjar.com/tradition/hunt.htm |archive-date=2023-02-14 |ref=harv |year=2005}} |
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=== 関連書籍 === |
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<!--この節には、記事の編集時に参考にしていないがさらなる理解に役立つ書籍等を記載して下さい。 |
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<references /> |
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書籍等の宣伝はご遠慮下さい--> |
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* [[フィリップ・ヴァルテール]]『中世の祝祭-伝説・神話・起源』原書房、2007年(第2版2012年)、第3章および補遺 |
|||
* Moricet, Marthe. "Récits et contes des veillées normandes". In: ''Cahier des Annales de Normandie'' n° 2, 1963. Récits et contes des veillées normandes. pp. 3–210 [177-194]. [DOI: [https://doi.org/10.3406/annor.1963.3587 Récits et contes des veillées normandes]<nowiki>]</nowiki> ; www.persee.fr/doc/annor_0570-1600_1963_hos_2_1 |
|||
* Jean-Claude Schmitt, ''Ghosts in the Middle Ages: The Living and the Dead in Medieval Society'' (1998), {{ISBN2|0-226-73887-6}} and {{ISBN2|0-226-73888-4}} |
|||
* Carl Lindahl, John McNamara, John Lindow (eds.) ''Medieval Folklore: A Guide to Myths, Legends, Tales, Beliefs, and Customs'', Oxford University Press (2002), p. 432f. {{ISBN2|0-19-514772-3}} |
|||
* [[Otto Höfler]], ''Kultische Geheimbünde der Germanen'', Frankfurt (1934). |
|||
* Ruben A. Koman, 'Dalfser Muggen'. – Bedum: Profiel. – With a summary in English, (2006). |
|||
* Margherita Lecco, Il Motivo della Mesnie Hellequin nella Letteratura Medievale, Alessandria (Italy), Edizioni dell'Orso, 2001 |
|||
* HUTTON, RONALD. "THE HOSTS OF THE NIGHT." In: ''The Witch: A History of Fear, from Ancient Times to the Present''. NEW HAVEN; LONDON: Yale University Press, 2017. pp. 120–46. Accessed March 14, 2021. doi:10.2307/j.ctv1bzfpmr.11. |
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== |
== 関連項目 == |
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{{ウィキポータルリンク|神話伝承}} |
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*[http://www.geocities.co.jp/kyrkania/folktro/wildhunt.html 教会百物語 北欧のクリスマス(DARK-SIDE OF YULE-TIDE) ワイルド・ハントのはなし] |
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*[[百鬼夜行]] 日本の[[説話]] |
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*[[空飛ぶカヌー]] カナダのケベック州に伝わる民話 |
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*{{ill2|ナイトマーチャーズ|en|Nightmarchers}} - ハワイの幽霊の軍勢 |
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== 外部リンク == |
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{{Commons category|Wild Hunt}} |
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<!--個人サイトのためコメントアウト *{{Wayback|url=http://www.geocities.co.jp/kyrkania/folktro/wildhunt.html |title=教会百物語 北欧のクリスマス(DARK-SIDE OF YULE-TIDE) ワイルド・ハントのはなし |date=20150601123230}}--> |
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* {{Cite Americana|wstitle=Wild Hunt |short=x}} |
|||
* [http://www.orkneyjar.com/tradition/hunt.htm The Wild Hunt in Orcadian traditional legend at ''Orkneyjar''] |
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* {{cite journal|url=http://whitedragon.org.uk/articles/hunt.htm|first=Liam|last=Rogers|title=The Wild Hunt|issue=Samhain 1999|journal=White Dragon}} |
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* [http://www.pitt.edu/~dash/huntsman.html Legends of the Wild Hunt] by [[D. L. Ashliman]] |
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{{myth-stub}} |
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{{Normdaten}} |
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[[Category:北欧の伝承]] |
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[[Category:北欧神話]] |
[[Category:北欧神話]] |
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[[als:Wildes Heer]] |
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[[an:Cazataire maldito]] |
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[[da:Den vilde jagt]] |
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[[de:Wilde Jagd]] |
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[[en:Wild Hunt]] |
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[[es:Cacería salvaje]] |
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[[eu:Ehiztari beltza]] |
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[[fr:Chasse fantastique]] |
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[[fy:Wylde Jacht]] |
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[[gl:Cazaría salvaxe]] |
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[[it:Caccia selvaggia]] |
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[[lv:Mežonīgās medības]] |
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[[lt:Laukinė medžioklė]] |
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[[li:Wil Jach]] |
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[[nl:Wilde Jacht]] |
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[[no:Oskorei]] |
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[[nn:Oskoreia]] |
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[[pl:Dziki Łów]] |
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[[ru:Дикая охота]] |
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[[sv:Odens jakt]] |
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[[uk:Дике Полювання]] |
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[[wa:Såvaedjès tchesses]] |
2024年7月18日 (木) 07:59時点における最新版
ワイルドハント(英語: Wild Hunt、ドイツ語: Wild Jagd[注釈 1], Wildes Heer[注釈 2]、フランス語: Chasse sauvage)は、ヨーロッパの大部分の地域に、古くから伝わる伝承である。
いずれの地域においても、伝説上の猟師の一団が、狩猟道具を携え、馬や猟犬と共に、空や大地を大挙して移動していくものであるといわれている[1]。
概要
[編集]猟師たちは死者あるいは妖精(民話の中で、死と関連する妖精)であり[2]、猟師の頭領は亡霊、多神教の神、あるいは精霊(男女を問わない)、または歴史上や伝説上の人物であると言われる。例を挙げれば、東ゴート王テオドリック、デンマーク王ヴァルデマー4世、ウェールズで霊魂を冥界に導くとされるグウィン・アプ・ニーズ、または北欧神話の神オーディン、またアーサー王のこともある[1][3][4]。
この狩猟団を目にすることは、戦争や疫病といった、大きな災いを呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、死を免れなかった[2]。他にも、狩猟団を妨害したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて冥土へ連れていかれたといわれる[5]。また、彼らの仲間に加わる夢を見ると、魂が肉体から引き離されるとも信じられていた[6]。
オーディンとの関連
[編集]ハロウィーンからユールの時期
[編集]北欧神話ではオーディンの狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる[7]。ワイルドハントが始まるのは10月31日で、翌年4月30日までは終わらないといわれた。この2つの日は特に大事である。10月31日、太陽は九つの世界へいき、精霊や妖怪がこの世を放浪するようになるからである[8]。10月31日のサムハイン(サウィーン、ハロウィーン)は魔女の新年であり、現世と霊界の壁がいちばん薄くなる時期でもある。北欧神話では、サムハインは10月31日の9日前の夜から始まり、10月31日の9日後の夜に終わるが、31日当日が、壁が薄くなるピークである[9]。また北半球の大部分では、ハロウィーンと共に、冬の季節が始まり、かつて多くのヨーロッパの人々は、影が長くなって火をともすこの時期は家にこもった[疑問点 ]。狩猟月の先端が暗闇に浮かぶと、嵐が吹き荒れる時期となり、アンシーリーコートの時期でもあり、ワイルドハントは暗い日、10月31日から冬至の休閑期に集中する[10]。元々は、ユールと十二夜の間に、8本足のスレイプニルにまたがったオーディンが、魔物や精霊たちや遠吠えする犬を従えて、やってくるとされていた。オーディンが、スレイプニルにまたがって天に駆け出すと、雷のような音が轟き、風が吹きはじめ、やがて耳をつんざくような音へと変わる。他の悪魔や精霊の馬の蹄の音も、この音に加わり、犬たちも同様に、やはり耳をつんざくような吠え声を上げる[11]。かつてのゲルマン世界で、クリスマス前後の、燻し十二夜の頃は雪嵐が多く、その嵐にオーディンの到来を人々は重ね合わせた。また、この頃祖先の霊が帰ってくるという言い伝えがあり、今も、特に北欧ではこの習慣が守られていて、故人の好んだ料理を作って並べ(ユール・ボード)、馬の手綱を解いて、故人の霊が乗れるようにしておくという[12]。
冬の風が吹いて、ユールの火がともされる頃は、家の中にいるべきだ。暗闇の小道からも、野生のヒースからも閉ざされていて安全だ。
ユールの夜にあてどもなくうろつく者は、樹上からのさらさらと言う音を耳にする。
それは風の音だろう、でも他の木はしんとしている。
でもその次に、犬の吠える声を聞こえる、軍団の首領が舞い降りてくる。
目から火を吹く黒い猟犬、黒い馬のいななき。—クエルドルフ・ハーゲン・グンダルソン、マウンテン・サンダー、(Towrie 2005)
ユールの間中、ワイルドハントの動きも最高潮に達し、死者がワイルドハントの一員となって現世をうろつく。リーダーであるオーディン、その後に、黒くて吠え続ける犬を連れて、狩りの角笛を吹きならす死んだ英雄たちが続く[13]。オーディンの8本足の馬、スレイプニルのために、古代のゲルマンやノルマンの子供たちは、冬至の前の夜にブーツを暖炉のそばに置き、スレイプニルのために干し草と砂糖を入れ、オーディンはその見返りとして、子供たちに贈り物を置いていったという。現代では、スレイプニルは8頭のトナカイとなり、灰色の髭のオーディンは、キリスト教化により、聖ニコラウス、そして親切なサンタクロースとなったのである[14]。ブーツ以外に靴下を置き、やはり中に、スレイプニルの食物や干し草を入れておくと、やはり、オーディンから、子供たちへのキャンディがその中に入っているといわれる[11]。もし、戸外でワイルドハントに出逢った人は、心の純粋さと、このワイルドハントに象徴されるような恐ろしい光景に敬意を払えるか、一種の度胸試しがなされ、さらにユーモアのセンスが試される。もしそれに合格すれば、その人は靴を黄金で一杯にするか、食べ物と飲み物をもらって帰ることができる。しかし不運なことに合格しなかった場合、その人は、恐怖に満ちた夜の旅へ、生涯連れまわされることになる[13]。ワイルドハントに命を奪われ、魂が、その後何年もこの軍団と共に空を駆け巡った者は、邪悪な者や嘘つきといわれるが、ユールの時期に、祖霊へのご馳走を怠ったからだとも広く伝えられる[11]。かつては、死が間近な病人の場合、狩りに加われるように、部屋の窓が開けてあった[15]。サンタクロースがワイルドハントに由来するというこれらの説は、ヘレーン・アデリーン・ガーバーらによって唱えられたものだが、史料による確認はなされていない。また、サンタクロース伝説の元になったミラのニコラオスの逸話は、ワイルドハントとはほど遠いものである[要出典]。
その他の時期
[編集]北欧では、夏至の前夜にもみられることがある。空で犬をけしかける声がして、地域によってはケルヌンノスに率いられている。夏至の夜はヨーロッパでは妖精の夜、魔女の夜でもある。リアノン・ライアルの著述には、『ウエスト・カントリー・ウィッカ』の中で、儀式を伴う魔女の集会は、イングランド西部で何世紀も続いているとある[16]。ワイルドハントは、春分や秋分の頃にも出現する。これは、その季節の暴風と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある[7]。また、オーディンがもたらす風が、翌年の豊穣を約束するともいわれた[12]。
「オーディンの軍団」本来の姿
[編集]時が経つに連れ、オーディンの群れは魔物化していき、多くの精霊や妖怪、悪事を働いた者や非業の死を遂げた者をも引き連れた軍団へと変化していった。ワイルドハントに出逢ったら、通り過ぎるのを待つか、三つの十字架を前に並べるともいわれる。この三つの十字架には、キリスト教の影響が窺える。これは日本の百鬼夜行にも通ずるものがある。かつては物忌の象徴であったものが、いつの間にか恐ろしい物の怪の集団となっていったのである[12]。また別の地域では、聖ニコラウスの日に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、麦わらの妖精シャープ、さまざまな精霊や、化け物の格好をした人々の行列が練り歩く。先頭は道案内の神のエケハルトで、大天使のミヒャエルと共にサンクト・ニコラウスがやってくる。行列のさらに後ろからは、毛皮を着て、色とりどりの面をつけ、角を生やした鬼が続くと言われる[17]。オーディンが引き連れているのは、ワルキューレという説もある[8]。
ヨーロッパ各地での伝承
[編集]イングランドとウェールズ
[編集]多くの人々が、大勢の猟師たちが狩りをしているのを、目または耳にしていた。彼らは黒く、巨大で醜く、黒い馬または雄のヤギに乗っていた。彼らの連れていた犬は漆黒で、皿のような耳をしていて、恐ろしかった。ピーターバラのディアパークの、正のその空に見えた。その町からスタンフォードまで、森づたいに、その光景が見えていた。その夜修道士たちは、彼らが笛を吹いているのを耳にした。—著者不明、アングロサクソン年代記、a b Garmonsway, G.N., The Anglo-Saxon Chronicle, Dent, Dutton, 1972 & 1975, p. 258.
ワイルドハントは、時を経るに従って、オーディン以外の神や、民話の英雄が狩猟団の頭領となっていく。それはアーサー王であったり、ダートムアの民間伝承では、サー・フランシス・ドレイクであったりする。サマセットのキャドバリー城近くの古い道はキング・アーサー・レインと呼ばれており、19世紀の時点でも、風の強い冬の夜は、アーサー王が犬を連れてそこを疾駆するという話が信じられていた[3]。英国のある場所では、この狩猟団は、宗教上の大罪を犯した者や、受洗していない者を追いかける地獄の猟犬であると言われている。デボンでは、イェス(ヒース)またはウィシュトハウンドと呼ばれ、コーンウォールではダンドーと犬たち、またはデビルとダンディードッグと呼ばれる。ウェールズではクンアンゥン(地獄の猟犬)、サマセットではガブリエル・ラチェッツまたはレチェッツ(犬)、デボンでは特に、ウィストマンウッドで見られ[18]。、ウィストハウンドという名もある[10]。このガブリエル・ラチェッツ(ラチェットは犬のこと)、またはガブリエルハウンズとは、古い表現で「死体」を意味する。セブンホイッスラーズ(夜の間中飛び回る七羽の鳥、恐らくは死んだ鉱夫や漁師の霊)と似通ったものがある。このセブンホイッスラーズの鳴き声は天災の前兆とされた[11]。
古代ヨーロッパでは、犬は守護神であり、亡霊を食らうものだった。これは狼も同様だった。「肉が骨と切り離されるまでは、魂は来世で自由になれない」と信じられており、犬たちは肉体を食らってその人を自由にするとされた。サウスウォーウィックシャーでは、キリスト教が伝わる前の冬至の祭りでワイルドハントと共に見られた、お化けのような猟犬の一団は、ナイトハウンズやヘルハウンズ(正確には「ノルマンの女神のヘルハウンズ」)と呼ばれた。シャックまたはショックとも呼ばれたこれは、古代英語の悪魔(スクッカ)が起源と思われる。北欧神話のバーサーカーと狼は、いずれも死を表し、古代英語での狼(ウルヴズ)は、放浪者や犯罪者のような「社会的に死んだ者」と同義であり、彼らがワイルドハントの一因となっている理由とされる[11]。
ワイルドハントの後に、暖炉のそばに小さな黒い犬がいたら、見つけた人が、その後1年世話をし、労わらなければならない。きちんと世話をしないと、悲惨な結末が待ち受けている。また、夜に黒い犬を見るのは、間近な死の前兆とされた[11]。
イングランドで主にワイルドハントの首領と考えられるのは、イングランド オーディン[19]、オーディンの一形態であるヘルラ[20][21]サクソンの富豪でノルマンに盾突いたエドリック[22]、アーサー王、サー・フランシス・ドレーク、ダラム地方ではイェスまたはウィッシュハウンドなどである[1][3]。ヘルラ(ハーン)は頭に雄鹿の頭蓋骨と角を飾り、体中から燐光を放って、冬の真夜中ウィンザーの森に現れる精霊で、不吉の前兆とされる。ウィリアム・シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』には、このヘルラが登場する[23]。ヘルラに関しての、12世紀のウォルター・マップの次のような文章もある。
ヘルラ王の一族は、ヘンリー2世の治世の最初の年に、ウェールズとヘレフォードの境界地方で目撃された。昼間のことで、我々と同じように馬車に乗って、馬に荷物を載せ、馬の荷鞍に荷籠、鷹に猟犬、そして男女が集まっていた。
この一行を最初に見た者は、国を挙げて彼らを敵に回しラッパを吹いて、叫びをあげた。
なぜなら彼らは、話しかけるための言葉をひねり出せない。
武器を突きつけ、彼らに答えさせようとしたが、彼らは宙に浮かんですぐさま消えてしまった。
—クエルドルフ・ハーゲン・グンダルソン、マウンテン・サンダー、(Towrie 2005)
ウェールズでは、グウィン・アプ・ニーズのほかに、マリュティノス(マチルダ・オブ・ザ・ナイトまたはナイト・マリュト)の伝承もある。マリュティノスは、かつては不信心な貴婦人で、狩りが大好きで、「天国に狩りがないのなら、行かない方がいいわ」と口にしてしまったため、死後はその望み通りになり、暴れ馬に乗って、アラウンと共に、泣きわめくような声を上げながら、クリスマスや大晦日に、アヌンウンの犬の亡霊を走らせるという[24]。この犬は、ガブリエル・ラチェッツと同じ犬ともいわれる[25]。
グウィン・アプ・ノーズはウェールズの五月祭(カランマイ)に現れる[8]。
ドイツ
[編集]時に、狩猟団がドラゴンや悪魔を連れているという話がある。猟師たちは馬、または馬車に乗っている場合が多く、何頭かの犬を引き連れている。特に若い女性は、罪があろうとなかろうと、彼らの獲物となる。この話の多くは、ワイルドハントに出くわして難を逃れた人々によるもので、もし彼らの道を塞ぐようなことをすれば罰せられ、もし彼らの手助けをすれば、金や黄金、あるいは、かなり高い確率で、死者や死んだ動物の脚が与えられる。この人間や動物たちは、呪われて逃れられなかった者たちである。
この場合、その人は聖職者や魔術師に頼んでワイルドハントを撃退してもらうか、塩をねだって、脚を取り戻させるように仕向ける。ワイルドハントは塩を渡すことができないからである。多くの場合、狩猟団が通過する間、道の中央より右側にいた人は安全だと言われる[26][27][28]。ドイツでは、ヴォーダン(オーディン)、ベルヒトルト、ディートリッヒ・フォン・ベルン、ホルタ、ペルヒタ、ビルデヒャイト、ローデンシュタインとハンス・フォン・ハッケルベルクの従者(2人とも安息日を破った罪人)[29]、レイジングホストまたはフュリアスホスト、レッドベアード[要出典]などが首領とされている。
ザクセンの神話では、オーディン、またはヴォータンは、戦死した兵士をワルハラに連れていき、蘇らせてからエインヘリャルを編成した。毎日兵士たちは戦死し、夜に蘇って、酒宴を楽しんだ[30]。
ザクセンには次のような伝説もある。ある王子が、少年を切り裂いた。少年はヤナギの皮をはいで笛を作った。王子は少年が木を傷つけたため、罰を与えたのである。王子は少年の腸をヤナギの周囲に巻き付けた。また、鹿を狩った農奴にも残酷な刑を科した。
王子は狩りの途中、カバノキに激突して死に、永遠に狩りをすることになった。この王子の集団は、十字路では転落し、また広い通りを避ける[15]。また、1123年、このザクセンのヴォルムスの司教管区の住民たちは、毎晩のように、大勢の武装した騎士たちが隊列を組んで山から下りてきて、また山に引き返すのを目撃していた。
彼らの前に十字架を押しやって、そのうちの一人に尋ねたところ、彼らは実は皆死んでいるのだと答えた。 この騎士たちは、戦死した者の魂だったのである[30]。オーストリアの民族学者であるアレクサンダー・スラヴィクは、ワイルドハントが「来訪する死者」「来訪する亡くなった隣人」への昔からの信仰を示唆する、と考えた[31]。
ワイルドハントを率いるといわれる、ハンス・フォン・ハケルンベルク(ハッケルベルク)という人物は1521年または1581年に没したといわれる。 後世の民話では、ハケルンベルクは猪を殺したが、牙で脚を負傷し、毒が回って死んだ。彼は、死んでから天国へ行くことは望まない、代わりに狩りをさせてくれるように望んだ。
彼の願いは聞き届けられ、あるいは呪われ、夜空で狩りをすることになった。この話のもう一つ別の形として、生前の罪の罰として軍団を率いるようになったというのもある。この話には、もっと昔のものではないかとも思われる。また、ハッケンベルクとは、単に、古代サクソン(ザクセン)語で、ボーダン(オーディン)のあだ名であるハコルベランドがなまったものだともいわれている[25]。
グリム兄弟は、「怒れる軍団」(ワイルドハント)は、オーディンの軍に起源があるとしている[32]。
フランス
[編集]1133年のノルマンディーの聖職者、オルデリック・ヴィタリスによると、1091年の1月1日、亡霊たちからの伝言を依頼された聖職者のボンヌヴァル・ウォルシュランは、彼らを無視し、乗り手のいない馬を一頭盗もうとした。しかし赤く焼けた手綱と、盗みで彼を取り押さえた騎士の手で焼かれてしまう。ウォルシュランは兄弟のとりなしで難をのがれたが、死んでからは、ワイルドハントに加わったと言う[11]。
パリ近くのフォンテーヌブローの森には、ル・グラン・ヴェヌール(大頭領)がいて、森の中を風が吹けば、ル・グラン・ヴェヌールが現れたといわれる[15]。
ドイツに近いアルザスの住人であるジャン・ガイレ・カイゼルベールは、1516年に、ワイルドハントについて次のように書いている。「神の決断が下される前に世を去ったものは、ワイルドハントの一員となる。彼らは、突き刺されたり、吊るされたり、水におぼれたりして死に至ったもので、神の決断が来るまで、死後もこの世に留まっているのである」
フランスでは、ワイルドハントを率いるのは、必ずしもオーディンや、シャッセマカベイ、シャッセアルトゥ、そしてメスネデレキン(死の女神エル)[11]だけではなく、アルザスではホレのおばさんやペルヒタのこともある。また、ワイルドハントが、大人にならないうちに死んだ子供たちの集団である場合もある。これは子供だけが見ることができるが、これを見た子供たちに危害は加えられず、ワイルドハントの一員として引き込まれることもない。むしろ、この集団を率いるホレおばさんは、子供たちに贈り物(しばしば小さな食物)をくれ、これが、アルザスのクリスマスイブに、子供たちにプレゼントをくれる、白いドレスの女性、クリストキントの発祥になったといわれている。(現代のサンタクロースとは別物である)
20世紀の始め、アルザスには、冬至の近くに、仮面を付けて幽霊や動物に扮し、できるだけ大きな音を立てて歩く祭があった。彼らは村中を歩き、特に、その年死者が出た家からは、なかなか離れようとしなかった。夜には、オーディンの戦場でよみがえった戦士に扮したダンサーによる饗宴があり、その時に祭の王が選ばれた[32]。
また、「提督の狩猟」という、クリスマスの時期の恐怖話(プレ)もある。フランス海軍提督で、サン=ジャン=ローヌ付近のフランソに領地を持つシャルニ伯フィリップ・ド・シャボは、非回心の狩人と呼ばれ、1541年、領地に近いジュラの付近にオオカミが沢山出るということで、クリスマスイブの礼拝をすっぽかして狩猟に行こうとするが、夫人に促され、教会に出かけた。しかし、ミサのさなかに、伯爵領にオオカミが出たとの連絡が入り、そのまま、連絡に来た貴族と共に教会を出ていった。その後、教会の中にフクロウが降りてきてろうそくの火が消えたり、クモが降りてきたりで、人々を不安に陥れる。その後、遠くで狩猟の音が聞こえる中を、夫人や子供たち、召使たちは城に戻るが、夜が明けて狩猟の音がやんでも、提督は2度と戻らなかった。その後、この地域では、イブのミサが始まるころ、狩猟の音が聞こえるという。このシャルニ伯フィリップ・ド・シャボはほぼ同時代に実在し、この話とは違った運命をたどる[33]。(en:Philippe de Chabot)
オークニー諸島
[編集]オークニーにも、ワイルドハントの伝説が残っている。妖精やトロールが、時折り、夜中に白馬や雑草でできた馬[34]に乗り、空を飛ぶと言われる。盗んだ雌牛に乗っているともいわれる。ヨーロッパ中で、ワイルドハントはいろんな時期に現れるが、ユールの時期が最も一般的だといわれる。この時期は、超自然的な存在が現世を訪れる時期で、特に死者の霊が家に帰るのを許される時期でもある。この考えが、ワイルドハントは死者の集まりということになり、オークニーでもそれが当てはまる。オークニーのトロールは元々は生霊、あるいは幽霊と考えられていた。そしてユールや、ハロウィンや大晦日に悪さをするのである[25]。
スウェーデン
[編集]北欧では、オーディンのワイルドハントは、耳にはしても、めったに見られない。典型的なものとしては、オーディンの2頭の犬が、1頭は騒がしく、1頭は弱々しく吠えるということである。この吠える声は、誰にでも聞き分けられる。多くの地域では、この声が聞こえると、天候が変わると言われているが、戦争や社会不安の前兆の場合もある。幾つかの報告によると、静かな森で、犬が鼻を鳴らす音と吠える声だけが聞こえたという。
スウェーデンでは、特にイェータランドにこの伝承が広まっている。ここは、古くからオーディン信仰があった地域でもある。民間伝承のオーディンは、神話で見せる姿とは違い、外部からの影響が大きいのは特筆すべきことである。キリスト教以前の時代から今に至るまで、オーディン信仰は、人びとの信心に強い影響を与えている。
ワイルドハントは、古代ゲルマン信仰が発祥なのは明らかである。近年のオーディンの伝承が、オーディン自身と彼の神性とを結びつけようとしないのは、注目されるべきである。何世紀もにわたり、オーディンはエウヘメロスの説に基づいて、伝説の人物であり、悪魔のように恐ろしく、危険な存在とされてきたが、北欧神話の主神とのはっきりした関連付けは見られなかった。スウェーデン西部、また東部でも、オーディンは貴族であり王ですらあった。日曜日にも狩りをし、そのため、この世の終わりまで、超自然的なものを追い詰め、狩ることを運命づけられたのだと言い伝えられている。
オーディンは、馬ではなく、やはり北欧神話に登場するトールが乗っているような馬車で駆け回っているともいわれている。オーディンが現れるという地域には、それぞれの伝説があるようで、オーランドのガルドローサでは、オーディンが、険しい岩山に馬を繋ぎ、馬が繋がれた綱を強く引っ張ったところ、岩山は粉々に砕け、そして馬も地上に落ちて、底なし沼ができたと言われる。スモーランドのある地域では、犬たちが疲れてくると、オーディンは大きな鳥たちを使って狩りをしたという話がある。その鳥は、スズメの群れを変身させたものであるという。また、かつて通った道に家が建っていれば、その家は燃やされてしまう。またある伝説によれば、雄牛にくびきを付けている時は、オーディンは狩りをしないといい、オーディンが狩りをしているときは、地面に身を投げ出して、悪いことをされないようにするのが一番いいやり方だという。
スモーランドのアルグールトでは、クリスマスに教会に行く時は、パンをひとかけらと金属を一片持っていくのが一番良いといわれ、もしつばの広い帽子を被った狩人[注釈 3]に出会った場合、自分の前に金属を投げる、しかし犬に最初に出会った場合は、その代わりにパンを投げるのがいいとされる[1]。
ノルウェー
[編集]ノルウェーではオスコレイと呼ばれる。20世紀初頭まで、ノルウェーの若者は、冬至にワイルドハントの再演を行っていた。扮装した若者たちは、伝統行事を破壊する、大抵はビールや穀物を盗む人々に罰を与えた。この若者たちに食べ物や飲み物を与えると、繁栄がもたらされると言われた[11]。
その他
[編集]カタルーニャ州リポイの貴族、アラナウ伯爵はその残忍さ、とりわけ神父への残忍さで知られ、その祟りとして、田舎を、火を吹く黒い「地獄の乗馬」に乗って、獰猛な地獄の猟犬と走り回ることになった。イタリアでは、ヘロディアス、のちのストレゲリアのアラディアの伝承がある。イタリアの魔女を引き連れて、海で邪悪な水兵を狩る[10]。
ギリシャ神話のヘカテーは、月の出ない夜に、遠吠えをする不気味な犬の一団を連れて放浪する[25]。ヘカテーも、元々はワイルドハントのリーダーと考えられており、他にもテュンリドル(妖婆ハッグの乗り手たち)、ガンドライド(魔女の騎行)という名もあって、女性が率いるものであったともいわれる[15]。
デンマークでは、首領としてホルガー・ダンスク、ポーランドではヤドヴィガ女王、セルビアではマルコ王子の名が挙げられる[11]。
中央ヨーロッパでは、ワイルドハントをよけるため、肉を沢山いれた木の容器を、家の正面の木の上に置く。 また、マレー半島、イロコイ族にも似た伝説がある[15]。
分類
[編集]頭領
[編集]- イタリア、ロンバルディア州 - テオドリック、la Dona del Zöch[35]
- イングランド - オーディン[36]、Herla[37]、Eadric the Wild[38]
- ドイツ - オーディン、Berchtold、テオドリック、ホレのおばさん(ホルダ)、ペルヒタ、 Wildes Gjait、Hanns von HackelbergとRodensteinの従者[39], テュルスト
- フランス、ブルターニュ地方 - アーサー王[40],ヘリワード・ザ・ウェイク
- フランス - アーサー王、Herne the Hunter,Guthlac of Crowland
- スペイン、カタルーニャ州 - アルナウ伯爵(el comte Arnau)
- その他の地域の例
メンバー
[編集]- 輝く馬車、燃える馬車
- 首のない騎士
- 空を飛ぶ兵士・騎士・騎馬・馬車
- 人外(悪魔、ドラゴン、天使、幽霊、精霊、豚、犬…)
類似の例
[編集]- Cŵn Annwn
- ウェールズの神話。異界アンヌンの王アラウンのワイルドハント
- Mallt-y-Nos
- クロウンが「天国に狩りがなければ、行きたくない!」と言った結果、異界アンヌンの王アラウンと共に永遠に狩りを強制されている。
- シュヌグーダ(la chenegouda)
- スイスのヴァレー州に伝わる集団幻聴。各村で話が異なり。「冬の夜暴れる悪意のある騒々しい悪霊の集団」「鈴、鎖、鎌、シャベル、大きな叫び声などの混じったもの」などがある[41]。
- ムオーデル(綴り字不明、英語・ドイツ語資料確認できず)
- 日本の書籍で、以下のように紹介された[42]。
- 「ドイツ[42]、(別資料ではオーストラリア[43])に伝わる伝説の幽霊の軍勢である。夜になると、四辻を地面から数10cm浮かんで飛んでいく軍勢の姿が見えるという。この時、物凄い叫び声や吼え声、浮かんでいるのにもかかわらず轍の響きまで聞こえる。ムオーデルの先頭では、白馬に乗った男が角笛を吹きながら「そこを退け、そこを退け、退かぬ者は危ないぞ!!」と警告を発する。軍勢は、徒歩や騎馬だけでなく、炎の馬車や黒い馬車に乗って現れる。
- 年寄りの言い伝えには、ムオーデルの軍勢に出会った場合は、近くにある十字架にしがみつき、目を閉じていることと伝えられる。そうすれば軍勢は何もしないで通り過ぎる。また、近くに十字架がない場合、両足を閉じ、両腕で十字架の形を作り寝ることとされている。」
- オーディン( Woden )を読み間違えたか変形させて( Moder とか)としているのだろうが、ドイツ語や英語などの資料では発見できず。
文化
[編集]- 音楽作品
- カール・マリア・フォン・ウェーバー 『魔弾の射手』
- フランツ・リスト 『超絶技巧練習曲』(別名がWilde Jagd、ドイツ語でワイルドハント)
- アーノルト・シェーンベルク 『グレの歌』
- スタン・ジョーンズ 『ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ』
- ジム・モリソン『ライダーズ・オン・ザ・ストーム』
- セリオン Vovin
- Aes Dana Las Chasse Sauvage(フランス語でワイルドハント)
- トーレスト・マン・オン・アース 『ワイルドハント (The Wild Hunt)』日本でのデビューアルバム
- Omnia Crone of War
- Heidevolk (バイキングメタルバンド) Walhalla Wacht
- Steve Von Till, If I should Fall to the Field (ニューロシスのメンバーの2ndソロアルバム)
- ゲーム作品
- ウィッチャー3 ワイルドハント ポーランドの小説を原作とするゲーム
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d Schön 2008.
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文献
[編集]参考文献
[編集]- Chambers, William; Chambers, Robert (1973) (British English). Chambers's Encyclopaedia. more than 3000 (12 ed.). London, the U.K.: W. & R. Chambers 2023年3月5日閲覧. "[Gabriel's Hounds]...portend death or calamity to the house over which they hang;the cry of the Seven Whistlers... a death omen"
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- Briggs, Katharine (1967). The Fairies in English Tradition and Literature. University of Chicago Press. ISBN 978-0415286015
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- Ed LeBouthillier (2008年). “The Wild Hunt”. Hlidskjalf. Eurofolk Asatru Community Association. 2011年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月4日閲覧。
- Towrie, Sigurd (2005年10月10日). “The Wild Hunt” (英語). www.orkneyjar.com. 2023年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月11日閲覧。
関連書籍
[編集]- フィリップ・ヴァルテール『中世の祝祭-伝説・神話・起源』原書房、2007年(第2版2012年)、第3章および補遺
- Moricet, Marthe. "Récits et contes des veillées normandes". In: Cahier des Annales de Normandie n° 2, 1963. Récits et contes des veillées normandes. pp. 3–210 [177-194]. [DOI: Récits et contes des veillées normandes] ; www.persee.fr/doc/annor_0570-1600_1963_hos_2_1
- Jean-Claude Schmitt, Ghosts in the Middle Ages: The Living and the Dead in Medieval Society (1998), ISBN 0-226-73887-6 and ISBN 0-226-73888-4
- Carl Lindahl, John McNamara, John Lindow (eds.) Medieval Folklore: A Guide to Myths, Legends, Tales, Beliefs, and Customs, Oxford University Press (2002), p. 432f. ISBN 0-19-514772-3
- Otto Höfler, Kultische Geheimbünde der Germanen, Frankfurt (1934).
- Ruben A. Koman, 'Dalfser Muggen'. – Bedum: Profiel. – With a summary in English, (2006).
- Margherita Lecco, Il Motivo della Mesnie Hellequin nella Letteratura Medievale, Alessandria (Italy), Edizioni dell'Orso, 2001
- HUTTON, RONALD. "THE HOSTS OF THE NIGHT." In: The Witch: A History of Fear, from Ancient Times to the Present. NEW HAVEN; LONDON: Yale University Press, 2017. pp. 120–46. Accessed March 14, 2021. doi:10.2307/j.ctv1bzfpmr.11.
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- . Encyclopedia Americana (英語). 1920.
- The Wild Hunt in Orcadian traditional legend at Orkneyjar
- Rogers, Liam. “The Wild Hunt”. White Dragon (Samhain 1999) .
- Legends of the Wild Hunt by D. L. Ashliman