「処女」の版間の差分
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2011年10月1日 (土) 11:42時点における版
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処女(しょじょ)とは、男性と性交経験がない女性のこと。また、その女性の状態。「バージン、ヴァージン(英:virgin[1]から)」とも呼ぶ。
語源と用法
語源および過去における用法
白川静によれば、処女は聖所を指す「処」に仕える年齢に達した女性で、ヲトメも本来「わちかへり」成人になった女性を表した。
漢語の「処女」の本来の解釈は、「処」は「居る」の意味であり、「結婚前で実家に居る女性」という意味であり、「未婚」と「性交の未経験」がほとんど同義語として捉えられていた[2]。以下、このような意味合いでの「処女」の用例をいくつか挙げる。
- 『孫子』から来た故事成語「始めは処女のごとく、後に脱兎のごとし」
- 以前は青年団等においてその女性組織を「処女会」と呼んでいた。
- 和語の「オトメ」(乙女)も「未婚の女性」という意味で使われることがあり、「処女」を「オトメ」と訓読することもある。また、万葉集では、「未通女」「童女」にをとめの訓がある
現代における用法
女性が初めて性行為を経験することを「処女を失う(なくす・喪失する・奪われる・捧げる・捨てる[3])」あるいは単に「処女喪失」、また「ロストバージン」[4]などという。また最近では、若年層を中心に「処女卒」という言い方も流布している[5]。その動詞化した用法として「処女卒する」、またはより砕けて「処女卒った」等がある。
「処女膜」という日本語自体が示すとおり、しばしば、女性が性行為を初めて経験する場合は処女膜の損傷と出血を伴うものと認識されていることが多いが[6]、実際には性行為を経験しても処女膜が損傷しない場合もあるし、逆に性行為以外の原因によって処女膜が損傷する場合もある。詳細は処女膜の項目参照。
様々な国・思想・宗教・文化における処女
思想・宗教などでは、処女に特別な意味を見出すことが多い。その中には、女性への人権侵害となっているものがある。本来、初めて性体験することが人間性を大きく変えるわけではない。 例を挙げると、「日本の巫女やシスターなどは、処女でなくてはならない」とする規則などが挙げられる。処女には神聖な力が宿っており、処女でなくなった場合にはその力が穢れたり、失せたりするという。その為、結婚前に処女を失った女性は結婚が不利になったり離婚されるなど実生活上の不利益が多かった。また、信仰する神の嫁であるため他の男性との性交を禁止しているという考え方もある。また、古代文明では処女を生贄とすることで、神々・悪魔・呪い・天災などから平和が得られると信じられていた。
中世ヨーロッパ、古代中東、中世東アジア、東南アジアなどで、領主や聖職者が花嫁の処女を奪う初夜権(処女権)というのがあり、夫が初夜税(処女税)という税を納めて、妻の処女を守っていた事があったとされている。
また、古代から世界各地でシュナミティズムという接触呪術的な回春術が行われていたり、古代から中世までの時代での処女への強姦犯罪は、非処女及び売春婦に対する強姦犯罪よりも重大な犯罪として扱われた。
モンゴル帝国(現在のモンゴル)支配下の高麗朝(現在の朝鮮半島)はモンゴル帝国に、処女の女性を献上していた。また、明帝国や清支配下時代も、同様に朝鮮半島から処女の女性を献上していた。
古代ローマでは、処女を殺すことはタブーとされていたため、処刑する前に強姦して穢れさせてから処刑するという風習があったといわれる(ルキウス・アエリウス・セイヤヌス#その後を参照)。
中世ヨーロッパにも、同様の風習があったといわれている。また、未婚の非処女の女性は魔女狩りの対象となった。
イスラム教でも、善行を積んで死んだ者は「永遠のフーリー(処女)と好きなだけセックスができ、酔うことのない酒やうまい果物、肉などを好きなだけ飲み食いできる」とされている。この場合の「処女」は、字義通りに理解するのが伝統的だったが、現代では比喩であるとする見解も出ている。
アフリカでも、「処女と性交すればエイズが治る」という迷信が広まっており、幼女を対象とするレイプや人身売買の増加、エイズ拡大の原因になっている。
イスラエルでも、木曜日が裁判であったので、水曜日に結婚式が行われ、花嫁が処女でなかった場合には翌日、裁判にかけられた。
サモアでも、結婚式において、婿となる者が嫁となる娘の性器に指をいれて、彼女が処女であることを(出血の有無を)確かめ、花嫁になる女性が非処女である場合には、鶏の膀胱に鶏の血を詰めて、性器の中に仕込むという風習・習慣がある。また、「社会的地位の高い男性と結婚するのには、いかに女性が処女である事が重要視されていたか」というのが明らかになった。
日本国における処女
日本では、折口信夫『古代日本の恋愛観』によれば、ある年齢以下の童女に触れる男性は穢れるとされた。成女戒を受け「ヲトメ」になったものは、夜中あるいは祭りの日などハレの日に所属するコミュニティの男性と性行為を行った(いわゆる夜這い[7])婚姻後は、嘗ての日本では貞淑となったと、谷川健一著、『草履の足音』に書いてあり、また折口は「結婚後、一から二週間程 夜は旦那から逃げ回る」嫁の風習があり、一週間ほどで見つけられた嫁は貞操を疑われたという。尚万葉集に見られる、「男性に言い寄られて死ぬ女」は、たいてい巫女の習俗を表した歌であるとするのが折口説である
柳田國男の『巫女考』によれば、伊勢神宮の斎宮(サイクウまたはイツキノミヤ)に奉仕する斎王(イツキノミヤ)、斎大明神に仕える斎女(イツキメ)等、特殊な巫女を除き、大半の巫女は、神の子孫を伝えるため結婚し子を造って神社を経営した。
キリスト教における処女
キリスト教徒の間では、イエスの母親のマリアが「処女」と呼ばれることが多い。西欧の言語の中には「処女」を意味する語を大文字にする(定冠詞をつけることが多い)と「聖母マリア」を指すものもある。
など。キリスト教神学において、処女性は『無罪性』の象徴である[9]。
聖書の申命記22章20-22節は、処女で無い女性を性犯罪者として死刑にするように命じている。またレビ記21章7節、エゼキエル書44章22章は、祭司が処女でない淫行で汚れた女性や、離婚した女性を娶ってはならないと命じている。[10]
キリスト教の結婚式において、純白のウェディングドレスの着用を許される女性は処女だけであり、婚前交渉によって処女で無くなった女性は、「着色したドレス」を着ていた。[11]
士師記11章37節で語られる、エフタの娘が「山の頂で、処女であることを嘆く」様は、岩波訳聖書の注釈によれば、これは嘗て「聖なる高台」に建てられたバアル神の神殿で行われた、性行為を伴う祭儀を、脱バアル化した儀礼である。[12]なお福音派の資料によれば、全焼のいけにえとして捧げられた説と、一生神に仕える者である処女として献身したという説の二説がある[13]
カトリック教会には一生処女をささげる処女の祝別がある[14]。
哀歌では、ヘブライ人を指して使われる「おとめ、我が民の娘」「おとめ、シオンの娘」という表現がある。
エゼキエル書では、アッシリアに迎合するエルサレムとユダの王国が、「処女である二人の嫁が、姦通を犯した」としてヤハウェから糾弾される。
処女に対する受け止め方の推移
少女漫画やフェミニズムの台頭、アメリカよりウェストコースト、ヒッピー文化を女性雑誌メディアやマスコミが喧伝した為、奔放に性行為を行う風潮が生まれた。 近年、HIVなどの性感染症の知識の広まり、晩婚化の進行などによって結婚を冷静に見定める男性が増え、処女であることを結婚の条件に挙げる男性が世界中で増加傾向であり、事実アメリカ合衆国などでは純潔運動が徐々に起き始めている。 アメリカ合衆国で1999年にデビューしたシンガーソングライターのジェシカ・シンプソンが「結婚するまで純潔を守る」発言で話題となり、その後を追うようにブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラも純潔宣言をし、アメリカ国内は一時「空前の純潔ブーム」となった。また中には、レネ・ルッソのように過去に純潔を失っていても、ある時点から第二の純潔(セカンダリー・バージニティ)という道を選ぶ者も少なくない。
男性視点から婚約者としてみた処女
国籍を問わず多くの男性が結婚相手に処女を望むという事が、「男性の本能」なのか「思想や文化の影響」なのかというのは、生物学者と文化人類学者で長い間論争が繰り広げられてきた。文化人類学者は「男性が結婚相手には処女の女性を求める」事を、文化によって作られたものと主張[15]したが、生物学と近年発展してきた遺伝学によって、学問的には「男性が結婚相手には処女の女性を求める」事は『男性が本来持っている本能である』という結論で終止符が打たれ、勝敗がつく事となった[16][17][18]。「自分の遺伝子をつぐ子供を確実に残す為」等の、本来男性が持っているはずの本能が根底にあり、その自分自身の本能に気づいている男性と、「まだ」気づいていない男性とで二極化される事が、今のところわかっている。 処女ではない女性と結婚後、又は結婚数年後に男性の心中に「生理的な嫌悪感」が沸き起こり、家庭内暴力やセックスレス、妻に対する愛情が失われ平気で浮気に走る様になる等の傾向がある。そして最悪の場合、離婚に発展するケースも少なくない[19][20]。
アメリカ人男性の結婚観
米『Time』誌が、アメリカの32都市で43000人以上の男性(16歳から25歳まで)を対象に調査を行ったところ、アメリカ人男性の約5分の4以上は、結婚する女性にバージン(処女)を期待していることが分かった。日本人のイメージとは反して、アメリカでは処女の女性はかなり重宝され、純潔を守る事を美徳としている人が意外と多い[21]。特に、近年のアメリカでは婚前交渉を極力控える事が美徳とされており、こういった世間の風潮がアメリカでの初体験の高年齢化を後押ししている。
「結婚するなら処女がいい」インド人男性の結婚願望の本音
『インディア・トゥデイ』誌が、インド11都市の16歳から25歳の男性2500人以上を対象に行った調査[22]によれば、若い男性のおよそ83%以上が、本音では自分の将来の花嫁は処女が望ましいと考えているという結果になった。同調査によれば、彼らの半数近くは売春婦とセックスしたことがある。
転用
上述の意味から転じて、「初めての」(例:「処女作」、「処女航海」(これは船が女性として表現される事にもちなむ))、また「人がまだ足を踏み入れていない」[23](例:「処女地」、「処女雪」)という意味でも使われる。
また、食品など原材料との関係でバージンと呼ばれるものも存在する。
- オリーブ・オイルで、果汁から遠心分離などによって直接得られた油を「バージン・オイル」、その中で果汁の香りが良いものを「エクストラ・バージン・オイル」と呼ぶ。
- パルプで、古紙や再利用原料ではない木材パルプを「バージン・パルプ」と呼ぶ。
この節の加筆が望まれています。 |
脚注
- ^ 英語(その他のヨーロッパ諸語において対応する単語も同様)のvirginは、「処女である女性」という意味の名詞および「処女である」という意味の形容詞として用いられる。日本語の「処女」が持つ様々な意味合い・用法のうち、「処女であること」に対応する語(名詞)はvirginityである。日本語においてこの語義を明確に述べる場合に「処女性」という語が用いられる場合もある。
- ^ 一方、英 virgin 独 Jungfrau等のヨーロッパ語は本来「若い女性」という意味合いを持つ。
- ^ どちらかといえば「失う」「なくす」「喪失する」が中立的、「奪われる」は女性本人の意思に反した受動的・不本意な状況、「捧げる」「捨てる」は女性の側の同意ないしより積極的な願望によるというニュアンスを含む。
- ^ これは和製英語であり、同様の意味を英語で表現するとすれば「lose virginity」あるいは「loss of virginity」となる。なお「処女喪失」に対応する英単語は「defloration」。
- ^ 痛いテレビ:処女卒、Yahoo!知恵袋
- ^ 小説や映画、ドラマ等でも、劇的な体験を効果的に表現するためそのような描写、演出がされることが多く、イメージの補強ないし再生産に一役買っている。
- ^ 尚正式には「呼ばふ」であるが、谷川健一『草履の足音』によれば、夜這いをする男は夜忍んでいくのでこの表意も捨てがたいという
- ^ キリシタン用語「ビルゼン」を派生。
- ^ 尾山令仁『聖書の教理』羊群社
- ^ 『聖書ハンドブック』聖書図書刊行会
- ^ 鈴木崇巨『牧師の仕事』教文館
- ^ 旧約聖書翻訳委員会訳 『ヨシュア記 士師記』(鈴木佳秀訳) 150頁 岩波書店
- ^ 尾山令仁著『聖書の概要』羊群社 『新聖書辞典』いのちのことば社
- ^ 『現代カトリック事典』エンデルレ書店
- ^ 『性家族の誕生(セクシャリティの近代)』著者:川村邦光 出版社:筑摩書房
- ^ 篠原修司 (2010年11月12日). “男性が処女を好きになるのは本能? 蜘蛛の世界でもオスは処女のメスを好むことが判明”. デジタルマガジン 2011年9月30日閲覧。
- ^ 『人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り』 ジャレド・ダイアモンド 1993
- ^ 『人間の本能-心にひそむ進化の過去』 ロバート・ウィンストン 2008
- ^ Yoshio (2011年6月17日). “【親必読】 10代で処女を失うと “アレ” が顕著に高まる / 米・アイオワ大学が発表”. Pouch. 2011年9月30日閲覧。
- ^ Paik, Anthony (April 2011). “Adolescent Sexuality and the Risk of Marital Dissolution”. Journal of Marriage and Family (National Council on Family Relations) 73 (2): pp.472-485. doi:10.1111/j.1741-3737.2010.00819.x.
- ^ アメリカ人男性、「バージンと結婚したい」 【ニューヨーク 2010年12月10日 ロイター】
- ^ 『インディア・トゥデイ』2003年9月15日号
- ^ この場合、文字通りの無人地だけでなく、その言葉の発言者が属する「文明人」によって「発見」されていない土地という意味合いでも用いられる。特にヨーロッパ人にとってのアメリカ、オーストラリア、太平洋諸島、アフリカ・アジアの内陸部に対してこの表現が用いられてきた。絵画等においてはヨーロッパの「文明人」が男性、新たに「発見」された世界が若い女性でしばしば象徴された。
参考文献
- アンケ・ベルナウ『処女の文化史』夏目幸子訳、新潮選書、2008
- ハンナ・ブランク『ヴァージン:処女の文化史』堤理華・竹迫仁子訳、作品社、2011