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「新世界訳聖書」の版間の差分

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==外部リンク==
==外部リンク==
*[http://www.jw.org/ja/出版物/聖書/ オンライン聖書] エホバの証人公式ウェブサイト
*[http://www.jw.org/ja/出版物/聖書/ オンライン聖書] エホバの証人公式ウェブサイト
*[http://biblia.milkcafe.to/ 「新世界訳―エホバの証人の聖書」] 他の聖書翻訳との比較研究


==参考資料==
==参考資料==

2013年3月30日 (土) 14:56時点における版

多言語で入手できる新世界訳聖書
英文新世界訳聖書

新世界訳聖書(しんせかいやくせいしょ)は、エホバの証人で構成された「新世界訳聖書翻訳委員会」によって翻訳された英訳聖書。ならびに、これを元に、同委員会の監督の下に他の諸言語に翻訳された聖書

新世界訳聖書が登場するまで、英語圏のエホバの証人は、長年に亘りジェームズ王欽定訳アメリカ標準訳を主に使用してきた。また日本のエホバの証人は日本聖書協会文語訳聖書口語訳聖書を主に使用してきた。しかし、新世界訳聖書の刊行以降、エホバの証人の使用する聖書はほぼ世界的に新世界訳へと統一されるようになってきている。

新世界訳聖書を翻訳するにあたり、ヘブライ・アラム語聖書を翻訳する底本としてルドルフ・キッテルの「ビブリア・ヘブライカ」第7版から第9版(1951年~1955年)や「ビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシア」(1977年)の校訂本文が使用された。さらに死海写本や他の言語に翻訳された数多くの初期の訳本も参考にされている。また、クリスチャン・ギリシャ語聖書については、主にウェストコットとホートによる『ギリシャ語原語による新約聖書1881年版を使用、これについても数多くの初期の訳本が参考にされた。

英語版は1950年から1960年にかけて分冊で発表され、1961年には一冊にまとめられて出版された。最新は1984年版。

日本語版は1973年にギリシャ語聖書(新約聖書)の分冊が発行され、1982年にはヘブライ語聖書(旧約聖書)の部分も含めた全巻が発行された。最新は1985年版。

新世界訳聖書の評価は二分されている。エホバの証人やその側を持つ一部の学者たちが新世界訳聖書を優れた字義訳の聖書であると高く評価する[1]一方、伝統的諸教会からは、特に三位一体論にかかわる箇所においてエホバの証人の教理に沿った恣意的な訳文が見られるとの指摘が提出されており、「新世界訳聖書はエホバの証人の教理に合わせて改竄された偽物の聖書である」との声も強い。[2]

しばしば、新世界訳聖書の訳文の問題はエホバの証人とその新世界訳聖書に固有のものと認識される。しかし実際には、争論の大部分は他の翻訳聖書にも共通の課題である。たとえば、頻繁に議論となるローマ9:5の箇所は口語訳聖書が新世界訳聖書と同様の解釈によって訳している[3][4]し、これを対立する解釈によって訳している新共同訳聖書についても、「新共同訳新約聖書略解」がそのような訳し方には無理があると述べるなどして、原語の解釈を巡る対立の様相がかいま見られる。

特徴

  • 新世界訳聖書は神名「エホバ」の訳出に積極的である。多くの聖書翻訳において神名は「主」や「神」といった称号に置き換えられているが、新世界訳聖書はこれを復元した。『ビブリア・ヘブライカ』(略称BHK)ならびに『ビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシア』(略称BHS)のヘブライ語本文中において、神の名前を示すヘブライ語の四文字語יהוה(YHWH)は6,828回使用されているが、新世界訳聖書は、裁き人(士師記)19章18節以外の箇所においてこれを「エホバ」と訳している。また、『セプトゥアギンタ訳聖書』の読みに倣い、申命記30章16節、サムエル第二15章20節、歴代第二3章1節でも四文字語を復元し、これを「エホバ」と訳している。また、BHK・BHSの脚注に基づき、イザヤ34章16節とゼカリヤ6章8節の1人称単数代名詞を「エホバ」と訳している。さらにマソラソフェリムによって神名が修正された141カ所において四文字語を復元し、これを「エホバ」と訳している。
  • ギリシャ語聖書中においても、ギリシャ語聖書の27のヘブライ語訳に基づいて237箇所に神名を復元し、これを「エホバ」と訳している。
  • 他の翻訳で「十字架」と訳されているギリシャ語σταυρος(スタウロス)を「苦しみの杭」、ギリシャ語ξυλον(クシュロン)を「」と訳している。
  • 他の翻訳で「地獄」や「陰府」と訳されているヘブライ語שאול(シェオール)、ギリシャ語αδης(ハーイデース)を「シェオル」、「ハデス」と音訳し、ギリシャ語γεεννα(ゲエンナ)を「ゲヘナ」、ギリシャ語ταρταροω(タルタロオー)を「タルタロス」と音訳している。
  • 他の翻訳で「」・「」・「」とさまざまに訳されるヘブライ語נפש(ネフェシュ)、ギリシャ語ψυχη(プシュケー)を一貫して「」と訳している。
  • 他の翻訳で「再臨」・「再来」・「来ること」と訳されるギリシャ語παρουσία(パルーシア)を「臨在」と訳している。
  • 他の翻訳で「会堂」・「会衆」・「教会」と訳し分けられるヘブライ語קהל(カーハール)、ギリシャ語εκκλησια(エックレーシア)を一貫して「会衆」と訳している。
  • 他の翻訳で「」と訳されるギリシャ語αιων(アイオーン。字義、時代・存在の期間の状態)を「事物の体制」と訳し、ギリシャ語κοσμος(コスモス。「世界」の意)と訳し分けている。
  • ヘブライ語聖書の底本はルドルフ・キッテルの『ビブリア・ヘブライカ』(BHK、第7版、8版、9版)に載せられたレニングラード写本B19Aである。1985年版の研究資料を準備するため、『ビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシア』(BHS、1977年版)が用いられた。また、ドイツ聖書協会が1935年に発行した『ギリシャ語セプトゥアギンタ』からの翻字も含まれている。[5]
  • ギリシャ語聖書の底本はウェストコットとホートの『ギリシャ語原語による新約聖書』(1881年版)である。イエズス会の学者ホセ・マリア・ボーベルおよびフランシスコ・カンテラ・ブルゴス編『聖書』(1943年)、アウグスティヌス・メルク編『聖書』(1948年)、聖書協会世界連盟発行『ギリシャ語新約聖書(The Greek New Testament)』(1975年)、『ギリシャ語新約聖書(Novum Testamentum Graece)』(1979年)などの、他のギリシャ語本文も参考にされた。シリア語ペシタ訳』(1826年版、ならびに聖書協会世界連盟による再版、1979年)、ラテン語ウルガタ訳聖書』(ウュルテンベルク聖書出版社、1975年版)も参考にされた。[6]
  • 横組みで、章と節は「ジェームズ王欽定訳」の章節番号に従っている。普通版には上部に見出し、中央に参照聖句が記され、巻末に聖書語句索引と付録が付いている。参照資料付き聖書には下部に欄外脚注が載せられている。
  • 外典(間約聖書、旧約聖書続編)は含まない。

論争

  • 伝統的諸教会は一般的に、エホバの証人をキリスト教における異端、またその新世界訳聖書を改竄された聖書であると考えている。そのため、新世界訳聖書の訳文の是非を巡って多くの論争が提起されてきた。
  • 主要な論点となるのは「三位一体」についてのテーマである。伝統的諸教会は三位一体の論理に基づいて「キリストは神性を備えており神ご自身である」「聖霊もまた、人格を持つ存在で、神性を持つ神ご自身である」と考えるが、エホバの証人は「キリストは神性を備えてはいるが神御自身ではなかった」、「聖霊は人格的なものではなく神の活動力である[7]」と論じる。
  • 聖書の箇所ごとについての論争
    • ヨハネの福音書1:1「初めに言葉がおり,言葉は神と共におり,言葉は神であった。(新世界訳)」エホバの証人は「言葉は神とともにおり」の「神(テオス)」には冠詞があり、「言葉は神であった」の「神」には冠詞がないことを重視。後半部分を「ことば(イエス・キリスト)は神のように強力なものであった」[8]と主張する。一方、伝統的諸教会は冠詞の有無によって区別されないとし、「言葉」はイエス・キリストを指し、このイエスキリストが神と呼ばれていると解釈する。なお、ヨハネの福音書において、1:6、1:18(前半)等16箇所においての「神(エホバ)」について、冠詞がない。
  • 聖書の翻訳において特に問題となるのは神とキリストとが平行して言及されている箇所の訳し方である。ギリシャ語には「AとB」という表現が「AであるB」と読みうるという文法上の問題がある。それは「神とキリスト」という表現が「神であるキリスト」と読みうることを意味している。このような問題を生じさせているすべての句において新世界訳聖書は「神とキリスト」の読みを採用した。
    • テサロニケ第二1:12においては新世界訳聖書と新共同訳聖書口語訳聖書が「神とキリスト」の読みを採用し、新改訳聖書が「神であるキリスト」の読みを採用している。
    • ペテロ第二1:1においては新世界訳聖書と新共同訳聖書口語訳聖書が「神とキリスト」の読みを採用し、新改訳聖書が「神であるキリスト」の読みを採用している。
    • テトス2:13においては新世界訳聖書が「神とキリスト」の読みを採用し、新共同訳聖書口語訳聖書新改訳聖書が「神であるキリスト」の読みを採用している。
      • 伝統的諸教会は一般的に、聖書がキリストの神性に言及している箇所(ヨハネ1:1、あるいは上述の句など)について、「新世界訳聖書の訳文は改竄されており、キリストの神性を否定する異端的な内容に書き換えられている」との批評を述べるが、これは、エホバの証人への反対論が福音主義教会によって主導されているという事情によるところが大きい。福音主義者の聖書である新改訳聖書は上述のすべての句において「神であるキリスト」の読みを採用しており、新世界訳聖書における改竄疑惑が論じられる際には「正しい聖書」として新改訳聖書の訳文のみが引用されることが多いのである。一方、エホバの証人側は新世界訳聖書にそのような問題はないと返答している。[9]

付録

普通版には聖書の各書の一覧表、重要語句索引、「話し合いのための聖書の話題」、原語の説明、地図などが付録として載せられている。

参照資料つき版(脚注つき)には聖書(重要)語句索引、脚注語句索引、付録としてエホバの御名の説明、聖書の原語の音訳他、生命の状態、聖句の説明、神とキリストの違い(反三位一体)、他換算表、地図と図表。などがある。

他の版

  • 2011年現在、(点字・手話を含め)106の言語[10]で1億7,800万部以上発行

全訳版:アフリカーンス語アラビア語アルバニア語アルメニア語イタリア語イボ語イロカノ語インドネシア語英語点字版あり)、エフィク語オセット語オランダ語韓国・朝鮮語キニャルワンダ語ギリシャ語キルギス語キルンジ語グルジア語クロアチア語コーサ語サモア語ショナ語シンハラ語スウェーデン語ズールー語スペイン語点字版あり)、スロバキア語スロベニア語スワヒリ語セソト語セブアノ語セルビア語セルビア語ローマ字)、タガログ語チェコ語チェワ語中国語簡体字)、中国語繁体字)、ツォンガ語ツワナ語デンマーク語ドイツ語トウィ語(アクアペム)、トウィ語(アサンテ)、トルコ語日本語ノルウェー語ハンガリー語フィンランド語ブルガリア語フランス語ペディ語ベンバ語ポーランド語ポルトガル語点字版あり)、マケドニア語マダガスカル語マルタ語ヨルバ語リンガラ語ルーマニア語ロシア語

部分訳:アゼルバイジャン語アゼルバイジャン語(キリル文字)、アムハラ語アメリカ手話DVD)、イタリア手話、ウクライナ語ウズベク語エウェ語エストニア語カオンデ語カザフ語ガンダ語カンナダ語カンボジア語キリバス語グン語、コロンビア手話、サンゴ語スラナン語タイ語タミール語トゥンブカ語トク・ピシン語トンガ語、トンガ語(Chitonga)、ヒリガイノン語ネパール語ハイチ・クレオール語パピアメント語(クラサオ)、パンガシナン語パンジャブ語ヒリガイノン語ヒリモツ語ヒンディー語フィジー語、ブラジル手話、ベトナム語マラヤラム語ミャンマー語、メキシコ手話、ラトビア語リトアニア語ルバレ語、ロシア手話、ロジ語

日本語版には、普通版、ソフトカバー版、ソフトカバーポケット版、大文字版(分冊)、参照資料付き版、デラックス版、デラックスポケット版、コンパクト・ディスクMP3版、インターネットダウンロード版、ウェブ版、デイジー図書CD版、デイジー図書DVD版がある。また、新世界訳聖書を収録した聖書研究ソフトウェアとして、Watchtower Library、Watchtower Library Mobileがある。

外部リンク

参考資料

  1. ^ 『研究8―「新世界訳」の利点』, p.329, 『聖書全体は神の霊感を受けたもので有益です』(1990年, ものみの塔聖書冊子協会);『新世界訳』, p245, 『聖書から論じる』(1989年, ものみの塔聖書冊子協会)
  2. ^ 「あなたは三位一体を信ずるべきですか」ものみの塔聖書冊子協会
  3. ^ 藤原藤男『聖書の和訳と文体論』キリスト新聞社ISBN 4873950635
  4. ^ 内田和彦『キリストの神性と三位一体』いのちのことば社
  5. ^ 「序文」, 6ページ,『新世界訳聖書―参照資料付き』(ものみの塔聖書冊子協会
  6. ^ 「序文」, 6-11ページ,『新世界訳聖書―参照資料付き』(ものみの塔聖書冊子協会
  7. ^ 「楽園」P.40
  8. ^ 「とこしえの命に導く真理」P.24」
  9. ^ この点についてはヨハネ1:1について述べた http://biblia.milkcafe.to/43-joh-01-01.html 「エホバの証人とキリストの神性」の見出し以下を参照。
  10. ^ 『2012 エホバの証人の年鑑』[1]、26ページ参照