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'''コネクソン'''(Connexon)は、[[コネシン]]と呼ばれる[[タンパク質]]6つ複合体で、2つの隣接[[細胞]]の[[細胞質]]同士をぐ[[ギャップ結合]]の一部となる。コネクソは実際には、片側結合の半チャネルで、通常は逆向きの2つのコネクソンが対なって、完全な細胞間ギャップ結合チャネルとなる。しかしいくつか細胞では、半チャネル自体が細胞質と[[細胞外]]を繋ぐ導管となり、イオンや1-2kDa以下の小分子移動させる。
'''コネクソン'''(Connexon)は、[[コネシン]]と呼ばれる[[タンパク質]]6つ集合した複合体で、2つの隣接した[[細胞]]の[[細胞質]]同士をつなぐ[[ギャップ結合]]の孔を形成する。'''コネキシヘミチャネル'''(connexin hemichannel)も呼ばれる。のチャネルイオンやシグナル伝達分子の双方向性の移動を可能にす<ref name="Cheung">{{cite journal|last1=Cheung|first1=Giselle|last2=Chever|first2=Oana|last3=Rouach|first3=Nathalie|date=2014-11-04|title=Connexons and Pannexons: Newcomers in Neurophysiology|journal=Frontiers in Cellular Neuroscience|volume=8|pages=348|doi=10.3389/fncel.2014.00348|pmid=25408635|pmc=4219455}}</ref>

ギャップ結合を形成している細胞の間では、両側の細胞からヘミチャネル(半チャネル)が提供され、これら2つのコネクソンが対となって結合することで完全な細胞間ギャップ結合チャネルが形成される。しかしいくつかの細胞では、ヘミチャネル自体が細胞質と細胞外をつなぐ導管としての活性を持ち、イオンや 1–2 k[[統一原子質量単位|Da]]以下の低分子を移動させる。コネクソンのこの機能については細胞内のシグナル伝達に重要な役割を果たすことを示唆する証拠が得られているものの、それ以外はほとんど未解明である<ref name="Herve">{{cite journal|last1=Herve|first1=Jean-Claude|last2=Derangeon|first2=Mickael|date=2012-09-01|title=Gap-junction-mediated cell-to-cell communication|journal=Cell and Tissue Research|volume=352|issue=1|pages=21–31|doi=10.1007/s00441-012-1485-6|pmid=22940728}}</ref>。

コネクソンが同じタイプのコネキシンから構成されている場合はホモマー(homomer)、異なるタイプのコネキシンから構成されている場合はヘテロマー(heteromer)と呼ばれる<ref name="Wright">{{cite journal|last1=Wright|first1=Josephine|last2=Richards|first2=Toby|last3=Becker|first3=David|date=2012-03-01|title=Connexins And Diabetes|journal=Cardiology Research and Practice|volume=2012|pages=496904|doi=10.1155/2012/496904|pmid=22536530|pmc=3303578}}</ref>。

==構造==
コネクソンはギャップ結合の形成に寄与し、神経回路の電気[[シナプス]]の必須の構成要素である<ref name="Thevenin">{{cite journal|last1=Thevenin|first1=Anastasia F|date=2013-03-07|title=Proteins and Mechanisms Regulating Gap-Junction Assembly, Internalization, and Degradation|journal=Physiology|volume=28|issue=2|pages=93–116|doi=10.1152/physiol.00038.2012|pmid=23455769|pmc=3768091}}</ref>。コネクソンはコネキシンから構成されるヘミチャネルである。コネキシンは構造的には4つの[[αヘリックス]]からなる膜貫通ドメインから構成され、それらは2つの細胞外ループと1つの細胞質ループで連結されている。[[N末端]]と[[C末端]]はともに細胞内に存在する。コネキシンのタイプは予測分子量によって区別されている([[コネキシン43]](Cx43)は 43 kDaである)。コネクソンは隣接する他の細胞の細胞膜に位置するヘミチャネルへドッキングすることでギャップ結合を形成する<ref name="Herve" />。この過程によって、双方の細胞の細胞膜を貫通する細胞間チャネルが形成される。

コネクソンの組み立ては、細胞内でのコネキシンの合成で始まり、細胞膜でのギャップ結合プラークの形成で終わる。コネクソンを構成するコネキシンサブユニットタンパク質は[[小胞体]]膜で合成される。これらのサブユニットは[[ゴルジ体]]でコネクソンへとオリゴマー化する<ref name="Thevenin" />。その後、コネクソンは細胞膜の適切な部位へ送られる。コネクソンは隣接する細胞の適合するコネクソンと結合し、ギャップ結合プラークを形成する<ref name="Thevenin" />。この過程の大部分はさまざまな[[酵素]]による[[リン酸化]]によって媒介され、特定のタンパク質との相互作用が行われたり防がれたりする<ref name="Thevenin" />。

コネクソン構造は細胞膜から除去されて分解される。コネクソンはヘミチャネルどうしがドッキングしているため、二重膜のチャネル構造として細胞内へ取り込まれる<ref name="Thevenin" />。この過程はインターナリゼーション(internalization)または[[エンドサイトーシス]]と呼ばれる。ギャップ結合は一般的に複数の方法で取り込まれる可能性が研究からは示唆されているが、最もよく知られ、よく研究されているのは[[クラスリン]]を介したエンドサイトーシスである。この過程では、膜の一部がクラスリンに包まれ、細胞の内側に向けて出芽して[[小胞]]を形成し、[[リソソーム]]経路で分解される<ref name="Thevenin" />。[[ユビキチン|ユビキチン化]]による細胞内のシグナル伝達も分解に関与している<ref name="Thevenin" />。

==細胞機能==

===性質===
個々のコネキシンタンパク質の性質がコネクソンチャネル全体の性質を決定する。チャネルの透過性と選択性は、チャネルの径だけでなく、電荷の選択性などコネキシンの分子的な選択性によっても決定される<ref name="Herve" />。コネクソンは、可溶性の[[セカンドメッセンジャー]]、[[アミノ酸]]、[[ヌクレオチド]]、[[イオン (化学)|イオン]]、[[グルコース]]の透過性が特に高いことが研究からは示されている<ref name=Herve />。また、チャネルは電位感受性である。コネクソンチャネルは電位依存的なゲートとなり、2つの細胞の間の電位差に依存して開いたり閉じたりする<ref name=Herve />。ゲートは、細胞内外の電位差([[膜電位]])に依存した電位感受性も示す<ref name=Herve />。

===調節===
ギャップ結合間のコミュニケーションは多くの方法で調節されている。主要な調節機構としては次のようなものがある。
*'''化学的調節''' – 化学的な調節の一般的なタイプの1つは、コネキシンの特定のドメインと[[カルシウム]]イオン(Ca<sup>2+</sup>)との相互作用による調節である。完全には解明されていないものの、この相互作用によってCa<sup>2+</sup>はチャネルの孔をブロックする。他のものとしては、酸性化(細胞内のpHの低下)に対するチャネルの応答がある。細胞内の酸性化はコネキシンのC末端ドメインの変化を引き起こし、チャネルの活性を低下させることが判明している<ref name="Herve" />。
*'''タンパク質のリン酸化''' – タンパク質の[[リン酸化]]は、ゴルジ体からのコネキシンの輸送、特定の領域へのコネクソンの蓄積、不必要なチャネルの分解など、複数の方法で細胞間のコミュニケーションを調節する。これらの作用は非常に複雑なものであるが、タンパク質のリン酸化が関与していることは知られている<ref name="Herve" />。
*'''体液性因子による調節''' – ギャップ結合のコミュニケーションの体液性因子による調節は、[[神経伝達物質]]、[[成長因子]]、さまざまな生理活性化合物によって行われる。[[アドレナリン]]や[[ノルアドレナリン]]などの神経伝達物質は神経細胞のギャップ結合に作用し、神経細胞に沿った活動電位の伝播を引き起こす。このタイプの調節が行われるギャップ結合は、[[心臓]]組織の神経細胞や[[脊椎動物]]の[[網膜]]に存在する<ref name="Herve" />。

==生理学的機能==
コネクソンは行動と神経生理に重要な役割を果たしている。研究は近年始まったばかりであり、その病理学的な機能に関する詳細の多くは未解明である。[[中枢神経系]]では、コネクソンは[[てんかん]]、[[虚血]]、[[炎症]]、[[神経変性疾患|神経変性]]などの疾患で大きな役割を果たしている<ref name=Cheung />。これらの疾患においてコネクソンがどのような役割を果たすのかに関する分子的機構は完全には理解されておらず、さらなる研究が進行中である。中枢神経系での重要な役割に加えて、コネクソンは心臓組織の機能にも重要である。コネクソンを介した直接的な連結によって迅速で協調的に神経細胞の発火を行うことで、心臓は特定の刺激に応答して素早く拍動したり心拍数を変えたりすることが可能となる<ref name=Herve />。また、コネクソンは細胞の発達にも重要な役割を果たす。具体的には、脳の発達や特定の疾患・病理時の脳の修復に関与し、細胞分裂と細胞増殖を助ける[[神経発生]]の役割を担っている。これらの過程においてコネクソンが補助を行う機構はまだ研究途上であるが、{{仮リンク|プリン作動性シグナル伝達|en|Purinergic signalling|label=}}([[アデノシン]]や[[アデノシン三リン酸|ATP]]などの[[プリン塩基|プリン]][[ヌクレオシド]]や[[ヌクレオチド]]によって媒介される細胞外シグナル伝達の1種)とATPに対する透過性が関与する機構であることが現在知られている<ref name=Cheung />。他の重要な役割は、[[グルコース]]の検知と[[シグナル伝達]]である。コネクソンは、摂食行動や睡眠-覚醒サイクル、エネルギー利用に影響を与える細胞外グルコース濃度の変化を引き起こす<ref name=Cheung />。さらに、高ストレスや炎症時にコネクソンを介したグルコースの取り込みが増加することが示されている(その機構は完全には理解されていない)<ref name=Cheung />。

==関連する疾患==
[[心血管疾患]]や[[糖尿病]]の一部はコネクソンと関係しており、グルコースの取り込みのための[[インスリン]]産生不全が引き起こされたり、コネキシンと呼ばれるコネクソンのユニットの分解が心血管疾患の発症へつながったりしていると考えられている。心血管疾患と糖尿病では、心臓と膵臓の細胞内の類似した部位が影響を受けている。その部位とはギャップ結合であり、そこでコネクソンは電気的な伝達によって迅速な細胞間相互作用を促進している。ギャップ結合は多くの場合心筋などの神経末端部に存在し、肝臓での恒常性維持や腎臓の適切な機能にも重要である。ギャップ結合自身は、コネクソンヘミチャネルによって形成される特殊な膜貫通タンパク質構造である<ref name="Tomaselli">{{cite journal|last1=Tomaselli|first1=Gordon F.|date=2010-12-04|title=Oxidant stress derails the cardiac connexon connection|journal=Journal of Clinical Investigation|volume=120|issue=1|pages=87–89|doi=10.1172/jci41780|pmid=20038808|pmc=2798705}}</ref>。心血管疾患と糖尿病は、それぞれギャップ結合を構成している主要なコネキシンと関係している。

心血管疾患に関しては、コネキシン43(Cx43)が心臓の同期した拍動を促進する[[介在板]]のギャップ結合で一般的なコネクソンのサブユニットである。心血管疾患を発症した場合、Cx43サブユニットは[[酸化ストレス]]の徴候を示し始め、これは加齢や血管機能を低下させる食生活に伴う有害な毒素の蓄積に対する心臓の対抗機能である<ref name="Tomaselli" />。さらに、[[心筋梗塞]]後の心室リモデリングや創傷治癒に関与するCx43の発現の低下が構造的心疾患ではみられる<ref name="Zhang">{{cite journal|last1=Zhang|first1=Yan|last2=Wang|first2=Hongtao|last3=Kovacs|first3=Attila|last4=Kanter|first4=Evelyn|last5=Yamada|first5=Kathryn|date=2010-02-01|title=Reduced expression of Cx43 attenuates ventricular remodeling after myocardial infarction via impaired TGF-β signaling|journal=American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology|volume=298|issue=2|pages=H477-87|doi=10.1152/ajpheart.00806.2009|pmid=19966054|pmc=2822575}}</ref>。一方で、心臓におけるCx43の具体的機構はあまり理解されていない<ref name="Zhang" />。こうしたCx43の発現の変化や酸化ストレスは、心拍の協調性の異常につながり、[[不整脈]]の素因となる可能性がある<ref name="Tomaselli" />。

コネクソンは、[[1型糖尿病|I型糖尿病]]と[[2型糖尿病|II型糖尿病]]の双方と関係している。{{仮リンク|GJD2|en|GJD2|label=コネキシン36}}(Cx36)サブユニットは、肝臓と膵臓のギャップ結合でインスリンの排出とグルコース誘導性インスリン放出(glucose-induced insulin release)を媒介する<ref name="Wright" />。肝臓と膵臓の恒常性は、内分泌シグナル伝達と呼ばれる細胞間相互作用の複雑なシステムによって支えられている。ホルモンの血流への分泌は離れた器官の標的化に利用される。一方、膵臓と肝臓の内分泌シグナルは、シグナル伝達経路、[[イオンチャネル]]、[[Gタンパク質共役受容体|Gタンパク質共役型受容体]]、[[受容体型チロシンキナーゼ]]、細胞間接触を介して細胞膜から短距離で作用する<ref name="Wright" />。これらの組織のギャップ結合は、隣接する細胞同士を緊密に接続することで、細胞間やより大きな器官間での細胞内のシグナルを仲介する。ギャップ結合での緊密な接続により、組織内の細胞はより効率的にコミュニケーションし、恒常性を維持することが可能となる。ギャップ結合の目的は、イオン、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、低分子量生体分子の通路の調節である<ref name="Wright" />。糖尿病では、Cx36の喪失や分解によって、膵臓でのインスリン産生と肝臓でのグルコースの取り込みが大きく阻害される。これらの組織でのCx36の欠乏はギャップ結合の能力に悪影響を与え、機能の低下や疾患へとつながる可能性がある。ギャップ結合の喪失や分解と関係した類似の症状はII型糖尿病でも観察されているが、ヒトのI型、II型糖尿病におけるCx36の機能は未解明である。Cx36は''GJD2''遺伝子によってコードされているが、II型糖尿病や糖尿病性症候群の遺伝的素因となる[[遺伝子座]]である<ref name="Wright" />。

==出典==
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==関連文献==
==関連文献==
*{{cite book| author = Andrew L Harris and Darren Locke | title = Connexins, A Guide | publisher = Springer | year = 2009 | location = New York | pages = 574 | url = http://www.springer.com/978-1-934115-46-6 | isbn = 978-1-934115-46-6}}
*{{cite book| author = Andrew L Harris and Darren Locke | title = Connexins, A Guide | publisher = Springer | year = 2009 | location = New York | pages = 574 | url = http://www.springer.com/978-1-934115-46-6 | isbn = 978-1-934115-46-6}}
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コネクソン
Connexon
コネクソンとコネクシンの構造
概要
ラテン語 connexona
TH H1.00.01.1.02025
解剖学用語

コネクソン(Connexon)は、コネキシンと呼ばれるタンパク質が6つ集合した複合体で、2つの隣接した細胞細胞質同士をつなぐギャップ結合の孔を形成する。コネキシンヘミチャネル(connexin hemichannel)とも呼ばれる。このチャネルはイオンやシグナル伝達分子の双方向性の移動を可能にする[1]

ギャップ結合を形成している細胞の間では、両側の細胞からヘミチャネル(半チャネル)が提供され、これら2つのコネクソンが対となって結合することで完全な細胞間ギャップ結合チャネルが形成される。しかしいくつかの細胞では、ヘミチャネル自体が細胞質と細胞外をつなぐ導管としての活性を持ち、イオンや 1–2 kDa以下の低分子を移動させる。コネクソンのこの機能については細胞内のシグナル伝達に重要な役割を果たすことを示唆する証拠が得られているものの、それ以外はほとんど未解明である[2]

コネクソンが同じタイプのコネキシンから構成されている場合はホモマー(homomer)、異なるタイプのコネキシンから構成されている場合はヘテロマー(heteromer)と呼ばれる[3]

構造

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コネクソンはギャップ結合の形成に寄与し、神経回路の電気シナプスの必須の構成要素である[4]。コネクソンはコネキシンから構成されるヘミチャネルである。コネキシンは構造的には4つのαヘリックスからなる膜貫通ドメインから構成され、それらは2つの細胞外ループと1つの細胞質ループで連結されている。N末端C末端はともに細胞内に存在する。コネキシンのタイプは予測分子量によって区別されている(コネキシン43(Cx43)は 43 kDaである)。コネクソンは隣接する他の細胞の細胞膜に位置するヘミチャネルへドッキングすることでギャップ結合を形成する[2]。この過程によって、双方の細胞の細胞膜を貫通する細胞間チャネルが形成される。

コネクソンの組み立ては、細胞内でのコネキシンの合成で始まり、細胞膜でのギャップ結合プラークの形成で終わる。コネクソンを構成するコネキシンサブユニットタンパク質は小胞体膜で合成される。これらのサブユニットはゴルジ体でコネクソンへとオリゴマー化する[4]。その後、コネクソンは細胞膜の適切な部位へ送られる。コネクソンは隣接する細胞の適合するコネクソンと結合し、ギャップ結合プラークを形成する[4]。この過程の大部分はさまざまな酵素によるリン酸化によって媒介され、特定のタンパク質との相互作用が行われたり防がれたりする[4]

コネクソン構造は細胞膜から除去されて分解される。コネクソンはヘミチャネルどうしがドッキングしているため、二重膜のチャネル構造として細胞内へ取り込まれる[4]。この過程はインターナリゼーション(internalization)またはエンドサイトーシスと呼ばれる。ギャップ結合は一般的に複数の方法で取り込まれる可能性が研究からは示唆されているが、最もよく知られ、よく研究されているのはクラスリンを介したエンドサイトーシスである。この過程では、膜の一部がクラスリンに包まれ、細胞の内側に向けて出芽して小胞を形成し、リソソーム経路で分解される[4]ユビキチン化による細胞内のシグナル伝達も分解に関与している[4]

細胞機能

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性質

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個々のコネキシンタンパク質の性質がコネクソンチャネル全体の性質を決定する。チャネルの透過性と選択性は、チャネルの径だけでなく、電荷の選択性などコネキシンの分子的な選択性によっても決定される[2]。コネクソンは、可溶性のセカンドメッセンジャーアミノ酸ヌクレオチドイオングルコースの透過性が特に高いことが研究からは示されている[2]。また、チャネルは電位感受性である。コネクソンチャネルは電位依存的なゲートとなり、2つの細胞の間の電位差に依存して開いたり閉じたりする[2]。ゲートは、細胞内外の電位差(膜電位)に依存した電位感受性も示す[2]

調節

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ギャップ結合間のコミュニケーションは多くの方法で調節されている。主要な調節機構としては次のようなものがある。

  • 化学的調節 – 化学的な調節の一般的なタイプの1つは、コネキシンの特定のドメインとカルシウムイオン(Ca2+)との相互作用による調節である。完全には解明されていないものの、この相互作用によってCa2+はチャネルの孔をブロックする。他のものとしては、酸性化(細胞内のpHの低下)に対するチャネルの応答がある。細胞内の酸性化はコネキシンのC末端ドメインの変化を引き起こし、チャネルの活性を低下させることが判明している[2]
  • タンパク質のリン酸化 – タンパク質のリン酸化は、ゴルジ体からのコネキシンの輸送、特定の領域へのコネクソンの蓄積、不必要なチャネルの分解など、複数の方法で細胞間のコミュニケーションを調節する。これらの作用は非常に複雑なものであるが、タンパク質のリン酸化が関与していることは知られている[2]
  • 体液性因子による調節 – ギャップ結合のコミュニケーションの体液性因子による調節は、神経伝達物質成長因子、さまざまな生理活性化合物によって行われる。アドレナリンノルアドレナリンなどの神経伝達物質は神経細胞のギャップ結合に作用し、神経細胞に沿った活動電位の伝播を引き起こす。このタイプの調節が行われるギャップ結合は、心臓組織の神経細胞や脊椎動物網膜に存在する[2]

生理学的機能

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コネクソンは行動と神経生理に重要な役割を果たしている。研究は近年始まったばかりであり、その病理学的な機能に関する詳細の多くは未解明である。中枢神経系では、コネクソンはてんかん虚血炎症神経変性などの疾患で大きな役割を果たしている[1]。これらの疾患においてコネクソンがどのような役割を果たすのかに関する分子的機構は完全には理解されておらず、さらなる研究が進行中である。中枢神経系での重要な役割に加えて、コネクソンは心臓組織の機能にも重要である。コネクソンを介した直接的な連結によって迅速で協調的に神経細胞の発火を行うことで、心臓は特定の刺激に応答して素早く拍動したり心拍数を変えたりすることが可能となる[2]。また、コネクソンは細胞の発達にも重要な役割を果たす。具体的には、脳の発達や特定の疾患・病理時の脳の修復に関与し、細胞分裂と細胞増殖を助ける神経発生の役割を担っている。これらの過程においてコネクソンが補助を行う機構はまだ研究途上であるが、プリン作動性シグナル伝達英語版アデノシンATPなどのプリンヌクレオシドヌクレオチドによって媒介される細胞外シグナル伝達の1種)とATPに対する透過性が関与する機構であることが現在知られている[1]。他の重要な役割は、グルコースの検知とシグナル伝達である。コネクソンは、摂食行動や睡眠-覚醒サイクル、エネルギー利用に影響を与える細胞外グルコース濃度の変化を引き起こす[1]。さらに、高ストレスや炎症時にコネクソンを介したグルコースの取り込みが増加することが示されている(その機構は完全には理解されていない)[1]

関連する疾患

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心血管疾患糖尿病の一部はコネクソンと関係しており、グルコースの取り込みのためのインスリン産生不全が引き起こされたり、コネキシンと呼ばれるコネクソンのユニットの分解が心血管疾患の発症へつながったりしていると考えられている。心血管疾患と糖尿病では、心臓と膵臓の細胞内の類似した部位が影響を受けている。その部位とはギャップ結合であり、そこでコネクソンは電気的な伝達によって迅速な細胞間相互作用を促進している。ギャップ結合は多くの場合心筋などの神経末端部に存在し、肝臓での恒常性維持や腎臓の適切な機能にも重要である。ギャップ結合自身は、コネクソンヘミチャネルによって形成される特殊な膜貫通タンパク質構造である[5]。心血管疾患と糖尿病は、それぞれギャップ結合を構成している主要なコネキシンと関係している。

心血管疾患に関しては、コネキシン43(Cx43)が心臓の同期した拍動を促進する介在板のギャップ結合で一般的なコネクソンのサブユニットである。心血管疾患を発症した場合、Cx43サブユニットは酸化ストレスの徴候を示し始め、これは加齢や血管機能を低下させる食生活に伴う有害な毒素の蓄積に対する心臓の対抗機能である[5]。さらに、心筋梗塞後の心室リモデリングや創傷治癒に関与するCx43の発現の低下が構造的心疾患ではみられる[6]。一方で、心臓におけるCx43の具体的機構はあまり理解されていない[6]。こうしたCx43の発現の変化や酸化ストレスは、心拍の協調性の異常につながり、不整脈の素因となる可能性がある[5]

コネクソンは、I型糖尿病II型糖尿病の双方と関係している。コネキシン36英語版(Cx36)サブユニットは、肝臓と膵臓のギャップ結合でインスリンの排出とグルコース誘導性インスリン放出(glucose-induced insulin release)を媒介する[3]。肝臓と膵臓の恒常性は、内分泌シグナル伝達と呼ばれる細胞間相互作用の複雑なシステムによって支えられている。ホルモンの血流への分泌は離れた器官の標的化に利用される。一方、膵臓と肝臓の内分泌シグナルは、シグナル伝達経路、イオンチャネルGタンパク質共役型受容体受容体型チロシンキナーゼ、細胞間接触を介して細胞膜から短距離で作用する[3]。これらの組織のギャップ結合は、隣接する細胞同士を緊密に接続することで、細胞間やより大きな器官間での細胞内のシグナルを仲介する。ギャップ結合での緊密な接続により、組織内の細胞はより効率的にコミュニケーションし、恒常性を維持することが可能となる。ギャップ結合の目的は、イオン、栄養素、代謝産物、セカンドメッセンジャー、低分子量生体分子の通路の調節である[3]。糖尿病では、Cx36の喪失や分解によって、膵臓でのインスリン産生と肝臓でのグルコースの取り込みが大きく阻害される。これらの組織でのCx36の欠乏はギャップ結合の能力に悪影響を与え、機能の低下や疾患へとつながる可能性がある。ギャップ結合の喪失や分解と関係した類似の症状はII型糖尿病でも観察されているが、ヒトのI型、II型糖尿病におけるCx36の機能は未解明である。Cx36はGJD2遺伝子によってコードされているが、II型糖尿病や糖尿病性症候群の遺伝的素因となる遺伝子座である[3]

出典

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  1. ^ a b c d e Cheung, Giselle; Chever, Oana; Rouach, Nathalie (2014-11-04). “Connexons and Pannexons: Newcomers in Neurophysiology”. Frontiers in Cellular Neuroscience 8: 348. doi:10.3389/fncel.2014.00348. PMC 4219455. PMID 25408635. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4219455/. 
  2. ^ a b c d e f g h i j Herve, Jean-Claude; Derangeon, Mickael (2012-09-01). “Gap-junction-mediated cell-to-cell communication”. Cell and Tissue Research 352 (1): 21–31. doi:10.1007/s00441-012-1485-6. PMID 22940728. 
  3. ^ a b c d e Wright, Josephine; Richards, Toby; Becker, David (2012-03-01). “Connexins And Diabetes”. Cardiology Research and Practice 2012: 496904. doi:10.1155/2012/496904. PMC 3303578. PMID 22536530. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3303578/. 
  4. ^ a b c d e f g Thevenin, Anastasia F (2013-03-07). “Proteins and Mechanisms Regulating Gap-Junction Assembly, Internalization, and Degradation”. Physiology 28 (2): 93–116. doi:10.1152/physiol.00038.2012. PMC 3768091. PMID 23455769. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3768091/. 
  5. ^ a b c Tomaselli, Gordon F. (2010-12-04). “Oxidant stress derails the cardiac connexon connection”. Journal of Clinical Investigation 120 (1): 87–89. doi:10.1172/jci41780. PMC 2798705. PMID 20038808. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2798705/. 
  6. ^ a b Zhang, Yan; Wang, Hongtao; Kovacs, Attila; Kanter, Evelyn; Yamada, Kathryn (2010-02-01). “Reduced expression of Cx43 attenuates ventricular remodeling after myocardial infarction via impaired TGF-β signaling”. American Journal of Physiology. Heart and Circulatory Physiology 298 (2): H477-87. doi:10.1152/ajpheart.00806.2009. PMC 2822575. PMID 19966054. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2822575/. 

関連文献

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