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2016年6月8日 (水) 05:31時点における版
森 毅 (もり つよし) | |
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生誕 |
1928年1月10日 日本 東京府荏原郡入新井町(現東京都大田区) |
死没 |
2010年7月24日(82歳没) 日本 大阪府寝屋川市 |
研究分野 | 数学 |
研究機関 |
北海道大学 京都大学 |
出身校 |
旧制第三高等学校 (現・京都大学教養部) 東京帝国大学理学部数学科 |
プロジェクト:人物伝 |
森 毅(もり つよし、1928年1月10日 - 2010年7月24日[1])は、日本の数学者、評論家、エッセイスト。京都大学名誉教授。専攻は、関数空間の解析の位相的研究。
来歴・人物
東京府荏原郡入新井町(現東京都大田区)生まれ、大阪府豊中市育ち。亡くなるまで京都府八幡市に在住した。[2]
小学生の頃から塾へ通うなどしていたが、『戦時中、ぼくはというと、自他共に許す非国民少年で、迫害のかぎりを受けた不良優等生、要領と度胸だけは抜群の受験名人、それに極端に運がよくって、すべての入試をチョロマカシでくぐりぬけた』という(本人著『数学受験術指南』より)。
旧制北野中学校(現・北野高校)在学中から数学が得意であった。その後、旧制第三高等学校(現・京都大学教養部)へ進学。受験した理由は戦時下にあって最もリベラルが残っている、と評判であったからだそうだ。在学中の二年生の時に終戦を迎え、東京帝国大学理学部数学科へ。この頃は、東大では医学部よりも理学部物理学科の方が難関であったらしく、『数学科なんて入りやすいほうだった』(同著)という。
数学・教育にとどまらず社会や文化に至るまで広い範囲で評論活動を行う。歌舞伎、三味線、宝塚歌劇団は在学中より熱中し、これらもエッセイの材料としている。北海道大学理学部助手を務めた後、1957年京都大学教養部助教授に就任。1971年、教授昇任の審査の際に、助教授就任後の数学者としての業績は論文が2本だけだったため、「これほど業績がない人物を教授にしてよいのか」と問題になったが、「こういう人物がひとりくらい教授であっても良い」ということで京都大学の教授となった。
数学教育に関していえば、民間の教育団体である数学教育協議会の活動との関わりが挙げられる。
京大時代は名物教授の一人として人気を博す。40代半ばから一般向けの数学の本で知られ、1981年刊行の『数学受験術指南』はロングセラーとなった。また浅田彰は森に数学を習い、ニューアカ・ブームの当時は盛んに森を称揚していた。「一刀斎」と号する。
「エリートは育てるもんやない、勝手に育つもんや」というのが教育に関する持論。
新聞・テレビなどのマスコミでも広く活躍。また、文学・哲学についても造詣が深く、『ちくま文学の森』『ちくま哲学の森』などの編集に加わった。
2009年2月27日、一人暮らししていた八幡市内の自宅で卵料理を作っていた最中に、ガスコンロの火が着ていた衣服に燃え移り、腕、胸、背中など全身の30パーセント以上に大火傷の重傷を負った。
2010年7月24日午後7時30分、敗血症性ショックのため大阪府寝屋川市内の病院で死去[1]。
略歴
- 旧制北野中学校(現・大阪府立北野高等学校)卒業
- 第三高等学校(現・京都大学教養部)卒業
- 1950年 東京大学理学部数学科卒業
- 1951年 北海道大学理学部助手
- 1957年 京都大学教養部助教授
- 1971年 京都大学教養部教授
- 1991年 退官、京都大学名誉教授
主要な研究論文
- On the group structure of Boolean lattices. Proc., Japan. Acad. 32 (1956), pp. 423-425
- Topological structures in ordered linear spaces. (with Ichiro Amemiya), J. Math. Soc. Jp., vol. 9 (1957), pp. 131-142.
- 位相線形空間、--Lebesgue積分論とBanach空間論の発展として--, 数学, vol.12 (1960), pp. 210-225.
著書
- マトリックス 明治図書出版 1964(現代数学入門シリーズ)
- 数学的思考 その論理と構造 明治図書出版 1964 のち講談社学術文庫
- 算数教育の基礎理論 明治図書出版 1965
- ベクトル解析 多変関数の微分・積分 国土社 1966
- 大学教育と数学 総合図書 1967
- 現代の古典解析-微積分基礎課程 現代数学社 1970 のちちくま学芸文庫
- 数学の歴史 紀伊国屋新書 1970 のち講談社学術文庫
- 数学で何を学ぶか 講談社現代新書 1971
- 数学文化の歴史と教育 国土社・新書 1971
- 有限の数学 新しい集合論 明治図書出版 1971
- 異説数学者列伝 蒼樹書房 1973 のちちくま文庫
- 解析学 日本放送出版協会 1974(現代数学への序章 2)
- 位相のこころ 位相空間論と関数解析のために 現代数学社 1975 のちちくま学芸文庫
- 無限集合 共立出版 1976
- 数学と文化 一刀斎対談 現代数学社 1976
- 現代数学と数学教育 裳華房 1976(基礎数学選書)
- 存在定理 共立出版 1977
- 学校とテスト 朝日選書 1977
- 文化の中の数学 新潮選書 1978
- 微積分の意味 日本評論社 1978
- 数の現象学 朝日新聞社 1978 のち選書
- 数学のある風景 海鳴社 1979
- エエカゲンが面白い 海鳴社 1979 のちちくま文庫
- 計算のいらない数学入門 「できる」から「わかる」へ 光文社 1980(カッパ・サイエンス) 「魔術から数学へ」講談社学術文庫
- 線型代数 生態と意味 日本評論社 1980
- ものぐさ数学のすすめ 青土社 1980 のち講談社文庫、「ものぐさのすすめ」ちくま文庫
- 数学受験術指南 中公新書 1981 のち中公文庫
- 学校ファシズムを蹴っとばせ 太郎次郎社 1981 のち講談社文庫
- まちがったっていいじゃないか 創隆社 1981 のちちくま文庫
- 教育舞芸帳 学校を笑え 太郎次郎社 1982
- 居なおり数学のすすめ 青土社 1982 のち講談社文庫、「居なおりのすすめ」ちくま文庫
- 佐保利流数学のすすめ 青土社 1982 のちちくま文庫
- おもしろ勉強読本 子供が楽しんで学習する法 PHP研究所 1982 「生きていくのはアンタ自身よ」と改題、文庫
- すうがく博物誌 童話屋 1982(美しい数学)
- 数学プレイ・マップ 日本評論社 1983
- 雑木林の小道 朝日新聞社 1983 「ひとりで渡ればあぶなくない」ちくま文庫
- チャランポラン数学のすすめ 青土社 1983 「チャランポランのすすめ」ちくま文庫
- 気まぐれ数学のすすめ 青土社 1984 「気まぐれのすすめ」ちくま文庫
- グッバイ、管理主義 佐保利流学校心得 太郎次郎社 1984
- ゆかいな参考書 森毅センセとの論楽塾 径書房 1985
- 3びきのこぶた 童話屋 1985(美しい数学)
- 世話噺数理巷談(さろんのわだいにすうがくはいかが)対談集 浅田彰編 平凡社 1985 「森毅の学問のススメ」ちくま文庫
- はみだし数学のすすめ 青土社 1986 のち講談社+α文庫
- 逆説っぽく数学のすすめ 青土社 1986
- 数学近未来 培風館 1986
- 自分流教育のすすめ 明治図書出版 1986(シリーズ・教育をひらく 1)
- ムダっぽく数学のすすめ 青土社 1987
- 数学という文化 佐保利流数学文化論 太郎次郎社 1988
- しなやか数学のすすめ 青土社 1988
- 面白ゆるやか教育のすすめ 明治図書出版 1988(シリーズ・教育をひらく)
- ほんにゃら数学のすすめ 青土社 1989
- 関西弁の数学噺 数学世界を散歩する 福武ブックス 1989
- 指数・対数のはなし 東京図書 1989
- あたまをオシャレに 大学番外地から 筑摩書房 1989 のち文庫
- 悩んでなんぼの青春よ 筑摩書房 1990(ちくまプリマーブックス)
- 一刀斎の古本市 日本評論社 1990 のちちくま文庫
- 思い出つくれる学校のすすめ 明治図書出版 1990(シリーズ・教育をひらく)
- 僕の選んだ105冊 青土社 1990
- ふるさと幻想 数学のすすめno.11 青土社 1990
- 数学のある社会に生きる 日本評論社 1991
- ベンキョーなんか、けっとばせ! やぶにらみ人生相談 創隆社 1991
- まあ、ええやないか 青土社 1992 「考えすぎないほうがうまくいく」三笠書房知的生きかた文庫
- 一刀斎の人生相談 思想の科学社 1992
- 人生20年説 人は一生に4回生まれ変わる イースト・プレス 1992 「人は一生に四回生まれ変わる」三笠書房知的生きかた文庫
- なんでもありや 青土社 1992
- ボクの京大物語 福武書店 1992 のち文庫
- 森センセイは本日休講 対談集 ベストセラーズ 1992(ワニの本)
- ゆきあたりばったり文学談義 日本文芸社 1993 のちハルキ文庫
- 森毅の友達サロン イースト・プレス 1993
- みんなが忘れてしまった大事な話 マイナスが実はプラスなんだという発想 ベストセラーズ 1993(ワニの本) のち文庫
- 時代のにおい 青土社 1993
- 快食・快便・快読 青土社 1993
- おしゃべりな置きもの 青土社 1993
- 世紀末のながめ 毎日新聞社 1994
- 森毅・福原義春いきいき対談 柔らかい生き方をしよう 明日香出版社 1994
- たいくつの美学 青土社 1994
- 数学と人間の風景 日本放送出版協会 1994 のちNHKライブラリー
- あったか~い話 時代の風を楽しみながら生きよう ベストセラーズ 1994(ワニの本) 「変わらなきゃの話」ワニ文庫
- 時の踊り場 青土社 1994 「二番が一番」小学館文庫
- ま、しゃあないか 青土社 1995
- 「おしゃべりな置きもの」と再編集して「自分は自分「頭ひとつ」でうまくいく」三笠書房知的生きかた文庫
- 電脳は自由をめざす 読売新聞社 1996
- 読書の森の散歩道 青土社 1996
- 無為の境地! 青土社 1998
- 時代の寸法 文藝春秋 1998
- ぼちぼちいこか 実業之日本社 1998
- 人生忠臣蔵説 年をとるのが愉しくなる本 ベストセラーズ 1998
- ぼけとはモダニズムのこっちゃ 青土社 1999
- 自由を生きる 人生は芸能、そしてゲームだ 東京新聞出版局 1999
- 東大が倒産する日 旺文社 1999 のちちくま文庫
- ええかげん社交術 角川書店 2000(角川oneテーマ21)
- 息子、娘に頼らず老後を楽しく生きる法 2000 中経出版
- 社交主義でいこか 青土社 2000
- 21世紀の歩き方 青土社 2002
- 元気がなくてもええやんか 青土社 2003
- ぼくはいくじなしと、ここに宣言する 青土社 2006
- もうろくの詩 青土社、2008
- 森毅の置き土産傑作選集 池内紀編 青土社 2010
- 一刀斎、最後の戯事 福井直秀編 平凡社 2010
共著
- 数学の世界 それは現代人に何を意味するか 竹内啓対談 中公新書 1973
- 元気が出る教育の話 学校・世の中・自分 斎藤次郎対談 中公新書 1982
- 数学大明神 安野光雅対談 日本評論社 1982 のち新潮文庫、ちくま文庫
- ことばを豊かにする教育 鶴見俊輔対談明治図書出版、1989
- 森毅・福原義春らくらく対談 ええ加減が仕事の極意 明日香出版社 1993
- 日本文化の現在 鶴見俊輔対談 潮出版社 1993
- 真剣な対話 智の行者と炎の行者曼荼羅談義 池口恵観 紫翠会出版 1996
- 寄り道して考える 養老孟司対談 PHP研究所 1996 のち文庫
- 明日をよむ商い文化の時代 21世紀への異色対談 中内功 未来文化社 1997
- 学ぶ力 河合隼雄、工藤直子、佐伯胖 岩波書店 2004
- 人生に退屈しない知恵 鶴見俊輔 編集グループSURE 2009
翻訳
- 現代解析の基礎 1-4 ディユドネ 東京図書 1971-74
- 数学原論 位相 第1巻 ブルバキ 東京図書 1968
- 抽象空間論 モーリス・ルネ・フレシェ 共立出版 1987(訳・解説・討論)
編著
- 量の授業 明治図書出版 1964
- 解析幾何学 安藤洋美共編 明治図書出版 1967
- 量数概論 市川徹共編 明治図書出版 1968
- 数量関係指導の現代化 内藤久夫共編 明治図書出版 1969
- 現代数学への道 銀林浩共著 国土社 1970
- キノコの不思議 「大地の贈り物」を100%楽しむ法 光文社 1986(カッパ・サイエンス) のち文庫
- ことばを豊かにする教育 鶴見俊輔共編 明治図書出版 1989(シリーズ・教育をひらく)
- 『ちくま文学の森』(安野光雅、井上ひさし・池内紀共編) 筑摩書房、1988年〜
- 『ちくま哲学の森』(鶴見俊輔、安野光雅、井上ひさし・池内紀共編) 筑摩書房、1989年〜
- 『ちくま日本文学全集』『ちくま日本文学』 (安野光雅・池内紀・井上ひさし・鶴見俊輔共編) 筑摩書房、1991年〜
- 『新・ちくま文学の森』(鶴見俊輔、安野光雅、井上ひさし・池内紀共編) 筑摩書房、1994年〜
- 日本の名随筆 別巻 52 学校 作品社 1995
出演
主にゲストとして出演。
- おかあさんの勉強室(NHK)
- ETV8(NHK)
- NHK人間大学(NHK)
- タモリの新・哲学大王!(フジテレビ)
- ビートたけしのTVタックル(テレビ朝日)
CM
- キリンポストウォーター(1992年、キリンビール後にキリンビバレッジ)
- 「阪神淡路大震災激励」(1995年、公共広告機構・現ACジャパン)
- MX-T GREEN(1997年、MICHELIN)
エピソード
- 『ちくま文学の森』の編集会議の際、森が「ボンテンペルリはええよ」「ピチグリッリ(Pitigrilli)もよかったなあ」とつぶやいたが、この際博覧強記な他の編集委員の面々も驚愕した。その2人の作家は、森が戦後の学生時代、闇市の古本屋で買った、イタリアの作家たちであった。彼らの作品は『ちくま文学の森』に収録され、ボンテンペルリについては、ちくま文庫からマッシモ・ボンテンペルリ(Massimo Bontempelli)『わが夢の女』として刊行された。