「ヘロイン」の版間の差分
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| routes_of_administration = 吸入、経粘膜、静脈注射、経口、経鼻投与、直腸、筋肉注射}} |
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'''ヘロイン''' (heroin, diamorphine) は、[[アヘン]]に含まれる[[モルヒネ]]から作られる[[麻薬]]。塩酸モルヒネを[[無水酢酸]]で処理し、生成する。正式には、3,6-ジアセチルモルヒネ (3,6-diacetylmorphine)。[[組成式]]は、C<sub>21</sub>H<sub>23</sub>NO<sub>5</sub>。[[CAS登録番号]]は、561-27-3。 |
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依存性の極めて強い麻薬であり、 |
依存性の極めて強い麻薬であり、日本国内では[[麻薬及び向精神薬取締法]]によって、その製造・所持・医療目的を含め、規制対象となっている。現存するあらゆる薬物の中で「快」の面でも「悪」の面でも最高峰に位置するものとして、「薬物の王者」(The king of drug) の代名詞を持つ。 |
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== 歴史 == |
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米国の作家[[ウィリアム・S・バロウズ]]を始めとして経験者の多くが挙げるのが、まずもってこの上ないと言われる[[多幸感]]である。 |
米国の作家[[ウィリアム・S・バロウズ]]を始めとして経験者の多くが挙げるのが、まずもってこの上ないと言われる[[多幸感]]である。 |
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その使用法は主に、鼻からの摂取、経口摂取、そして静脈への注射という3種であるが、様々な点においてこれらの中でも特に重視されるのが静脈への注射による摂取である。 |
その使用法は主に、鼻からの摂取、経口摂取、そして静脈への注射という3種であるが、様々な点においてこれらの中でも特に重視されるのが静脈への注射による摂取である。 |
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静脈注射によって摂取した直後から数分間にわたって続く「ラッシュ」と呼ばれる強烈な快感は何物にも代えがたいものと言われる。常態の人間が一生のうちに体感し得る全ての「快感」の合計を上回る快感を瞬時に得ることに等しいと云われるその快楽度の強さ、そしてそこから生ずる至福感は、しばしば「約束された安堵」などと表現されてきた。 |
静脈注射によって摂取した直後から数分間にわたって続く「ラッシュ」と呼ばれる強烈な快感は何物にも代えがたいものと言われ、時には『[[オーガズム]]の数万倍の快感を伴う射精を全身の隅々の細胞で行っているような』と、また時には『人間の経験しうるあらゆる状態の中で、ほかの如何なるものをもってしても得られない最高の状態』などと表現される。 |
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常態の人間が一生のうちに体感し得る全ての「快感」の合計を上回る快感を瞬時に得ることに等しいと云われるその快楽度の強さ、そしてそこから生ずる至福感は、しばしば「約束された安堵」などと表現されてきた。 |
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=== 禁断症状 === |
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ヘロインはその使用者に対して肉体面での依存症と精神面での依存症の両方を形成する。 |
ヘロインはその使用者に対して肉体面での依存症と精神面での依存症の両方を形成する。 |
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その肉体面における依存、 |
その肉体面における依存、いわゆる[[禁断症状]]としては、身体中の関節に走る激痛、小風に撫でられただけで素肌に走る激痛、体温の調節機能の狂いにより生じる激暑と酷寒の体感の数秒ごとの循環、身体中に湧き上がる強烈な不快感と倦怠感、などが挙げられる。 |
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こうした一連の症状は「地獄そのもの以外の何でもない」などと表現される苛烈なもので、この禁断症状を指していう「コールド・ターキー」(cold turkey) という[[スラング]]が生まれた。このスラングは1969年に歌手の[[ジョン・レノン]](プラスティック・オノ・バンド)が発表した楽曲 "Cold Turkey" (邦題「[[コールド・ターキー|冷たい七面鳥]]」)によって世界的に著名となった。レノンはこの曲を通して薬物の禁断症状の恐ろしさを世に知らしめようとしたつもりだったが、ドラッグソングと誤解を受け放送禁止にした放送局もあったという。 |
こうした一連の症状は「地獄そのもの以外の何でもない」などと表現される苛烈なもので、この禁断症状を指していう「コールド・ターキー」(cold turkey) という[[スラング]]が生まれた。このスラングは1969年に歌手の[[ジョン・レノン]](プラスティック・オノ・バンド)が発表した楽曲 "Cold Turkey" (邦題「[[コールド・ターキー|冷たい七面鳥]]」)によって世界的に著名となった。レノンはこの曲を通して薬物の禁断症状の恐ろしさを世に知らしめようとしたつもりだったが、ドラッグソングと誤解を受け放送禁止にした放送局もあったという。 |
2016年9月9日 (金) 07:32時点における版
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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依存性 | 強 |
薬物動態データ | |
生物学的利用能 | <35% (経口)、44–61% (吸入)[1] |
血漿タンパク結合 | 0% (モルヒネ代謝物35%) |
代謝 | 肝臓 |
半減期 | 10分未満[2] |
排泄 | 90% はグルクロニドのまま尿で排出、残りは胆汁 |
データベースID | |
CAS番号 | 561-27-3 |
ATCコード | N02AA09 (WHO) |
PubChem | CID: 5462328 |
DrugBank | DB01452 |
ChemSpider | 4575379 |
UNII | 8H672SHT8E |
ChEMBL | CHEMBL459324 |
別名 | Diamorphine, Diacetylmorphine, Acetomorphine, (Dual) Acetylated morphine, Morphine diacetate |
化学的データ | |
化学式 | C21H23NO5 |
分子量 | 369.41 g/mol |
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ヘロイン (heroin, diamorphine) は、アヘンに含まれるモルヒネから作られる麻薬。塩酸モルヒネを無水酢酸で処理し、生成する。正式には、3,6-ジアセチルモルヒネ (3,6-diacetylmorphine)。組成式は、C21H23NO5。CAS登録番号は、561-27-3。
依存性の極めて強い麻薬であり、日本国内では麻薬及び向精神薬取締法によって、その製造・所持・医療目的を含め、規制対象となっている。現存するあらゆる薬物の中で「快」の面でも「悪」の面でも最高峰に位置するものとして、「薬物の王者」(The king of drug) の代名詞を持つ。
歴史
ロンドン・セントメアリー病院医学校のアルダー・ライトによって1874年に調合され、ドイツのバイエル社から鎮咳薬として1898年に発売された。名称はギリシャ語の「ヘロス」(hḗrōs、ヒーロー)に由来する。当初は経口投与が一般的であり、モルヒネよりも依存性は低いと考えられていたが、注射器による投与が広まると、単純にモルヒネよりも脂溶性が高かったため、多く脳に取り込まれ、強烈な麻薬作用を引き起こすことが判明し、各国にて相次いで厳しく規制されることとなった。
作用
米国の作家ウィリアム・S・バロウズを始めとして経験者の多くが挙げるのが、まずもってこの上ないと言われる多幸感である。
その使用法は主に、鼻からの摂取、経口摂取、そして静脈への注射という3種であるが、様々な点においてこれらの中でも特に重視されるのが静脈への注射による摂取である。
静脈注射によって摂取した直後から数分間にわたって続く「ラッシュ」と呼ばれる強烈な快感は何物にも代えがたいものと言われ、時には『オーガズムの数万倍の快感を伴う射精を全身の隅々の細胞で行っているような』と、また時には『人間の経験しうるあらゆる状態の中で、ほかの如何なるものをもってしても得られない最高の状態』などと表現される。
常態の人間が一生のうちに体感し得る全ての「快感」の合計を上回る快感を瞬時に得ることに等しいと云われるその快楽度の強さ、そしてそこから生ずる至福感は、しばしば「約束された安堵」などと表現されてきた。
禁断症状
ヘロインはその使用者に対して肉体面での依存症と精神面での依存症の両方を形成する。
その肉体面における依存、いわゆる禁断症状としては、身体中の関節に走る激痛、小風に撫でられただけで素肌に走る激痛、体温の調節機能の狂いにより生じる激暑と酷寒の体感の数秒ごとの循環、身体中に湧き上がる強烈な不快感と倦怠感、などが挙げられる。
こうした一連の症状は「地獄そのもの以外の何でもない」などと表現される苛烈なもので、この禁断症状を指していう「コールド・ターキー」(cold turkey) というスラングが生まれた。このスラングは1969年に歌手のジョン・レノン(プラスティック・オノ・バンド)が発表した楽曲 "Cold Turkey" (邦題「冷たい七面鳥」)によって世界的に著名となった。レノンはこの曲を通して薬物の禁断症状の恐ろしさを世に知らしめようとしたつもりだったが、ドラッグソングと誤解を受け放送禁止にした放送局もあったという。
この症状に対しては、メタドンの定期的投与が有効である。メタドンを投与すると、その禁断症状は短時間で止まり、また、その効果中はヘロインが投与されても麻薬作用は抑制される。
出典
- ^ Rook, Elisabeth J.; Van Ree, Jan M.; Van Den Brink, Wim; Hillebrand, Michel J. X.; Huitema, Alwin D. R.; Hendriks, Vincent M.; Beijnen, Jos H. (2006). “Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of High Doses of Pharmaceutically Prepared Heroin, by Intravenous or by Inhalation Route in Opioid-Dependent Patients”. Basic <html_ent glyph="@amp;" ascii="&"/> Clinical Pharmacology <html_ent glyph="@amp;" ascii="&"/> Toxicology 98: 86–96. doi:10.1111/j.1742-7843.2006.pto_233.x.
- ^ “Chemical Sampling Information: Heroin”. Osha.gov. 2010年10月20日閲覧。
関連項目
- フェンタニル - ヘロインのデザイナーズドラッグともされる。