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[[1935年]]、[[アメリカ]]の[[デュポン]]社の[[ウォーレス・カロザース]]が合成に成功した。ナイロンは本来、インビスタ社(旧デュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社)の商品名だが、現在ではポリアミド系繊維([[単量体]]が[[アミド|アミド結合]] (-CO-NH-) により次々に縮合した[[高分子]])の総称として定着している。
[[1935年]]、[[アメリカ合衆国]]の[[デュポン]]社の[[ウォーレス・カロザース]]が合成に成功した。ナイロンは本来、インビスタ社(旧デュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社)の商品名だが、現在ではポリアミド系繊維([[単量体]]が[[アミド|アミド結合]]-CO-NH-により次々に縮合した[[高分子]])の総称として定着している。


種類としては、[[ナイロン6]][[ナイロン6,6]]、ナイロン4,6などがある。これらの数字は、合成原料の炭素原子の数に由来する。
ナイロン(nylon)の名称は、「伝線(run)しない[[パンティストッキング]]用の繊維」を意図した「norun」に由来する<ref name=dup0502/>。

種類としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などがある。これらの数字は、合成原料の炭素原子の数に由来す


構造(右図)は、
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* ナイロン6:{CO-(CH<sub>2</sub>)<sub>5</sub>-NH}<sub>n</sub>
* ナイロン6:<chem>{CO\ - (CH2)5\ - NH}n</chem>
* ナイロン6,6:{CO-(CH<sub>2</sub>)<sub>4</sub>-CO-NH-(CH<sub>2</sub>)<sub>6</sub>-NH}<sub>n</sub>
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== 語源 ==
ナイロン(nylon)の名称は、「伝線(run)しない[[ストッキング]]用の繊維」を意図した「norun」に由来する<ref name="dup0502"/>。また暗にnil(虚無)の意を込めてこの繊維をNylonと命名した、と『ナイロンの発見』には書かれている。<ref name=":0">{{Cite book|和書|title=化学史への招待|date=2019年1月25日|publisher=株式会社オーム社|page=40}}</ref>


== 歴史 ==
== 歴史 ==
=== 合成法、製造法の歴史 ===
[[ウォーレス・カロザース]]が合成したナイロン6,6は、[[アジピン酸]]と[[ヘキサメチレンジアミン]]を[[重合]]して作られる。一方、[[1941年]]に[[日本]]で[[東レ|東洋レーヨン(現・東レ)]]の[[星野孝平]]らにより合成された<ref>ちなみに、[[1937年]]には[[ドイツ]]・[[IGファルベン]]の[[パウル・シュラック]]らにより合成されており、[[1942年]]に"Perlon"の名で生産が開始されている</ref>ナイロン6(合成当時の名はアミラン<ref>現在では、'''[http://www.toray.jp/plastics/products/amilan/index.html アミラン&reg;]'''は[[東レ]]のナイロン製品の[[登録商標]]となっている</ref>)は[[カプロラクタム|ε-カプロラクタム]]を[[開環重合]]して作られる。1960年代には[[デュポン]]社により、[[ニッケル]]触媒を利用した1,3-[[ブタジエン]]の[[ヒドロシアノ化]]によるナイロン6,6の合成法が開発された。ほかに[[プロピレン]]を[[アンモ酸化]]した[[アクリロニトリル]]を原料に、[[モンサント]]社が開発した電解ヒドロ二量化法により中間体の[[アジポニトリル]]を合成する方法もあり、[[ベンゼン]]・[[ブタジエン]]・[[プロピレン]]の価格動向や電力価格により優劣が変動する<ref>{{Cite book|和書
[[ウォーレス・カロザース]]が合成したナイロン6,6は、[[アジピン酸]]と[[ヘキサメチレンジアミン]]を[[重合]]して作られる。一方、[[1941年]]に[[日本]]で[[東レ|東洋レーヨン(現・東レ)]]の[[星野孝平]]らにより合成された<ref>ちなみに、[[1937年]]には[[ドイツ]]・[[IGファルベン]]の[[パウル・シュラック]]らにより合成されており、[[1942年]]に"Perlon"の名で生産が開始されている</ref>ナイロン6(合成当時の名はアミラン<ref>現在では、'''[http://www.toray.jp/plastics/products/amilan/index.html アミラン&reg;]'''は[[東レ]]のナイロン製品の[[登録商標]]となっている</ref>)は[[カプロラクタム|ε-カプロラクタム]]を[[開環重合]]して作られる。1960年代には[[デュポン]]社により、[[ニッケル]]触媒を利用した1,3-[[ブタジエン]]の[[ヒドロシアノ化]]によるナイロン6,6の合成法が開発された。ほかに[[プロピレン]]を[[アンモ酸化]]した[[アクリロニトリル]]を原料に、[[モンサント (企業)|モンサント]]社(現:[[バイエル (企業)|バイエル]])が開発した電解ヒドロ二量化法により中間体の[[アジポニトリル]]を合成する方法もあり、[[ベンゼン]]・[[ブタジエン]]・[[プロピレン]]の価格動向や電力価格により優劣が変動する<ref>{{Cite book|和書
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女性の[[ストッキング]]用として使われたが始まり。[[石炭]]と[[水]]と[[空気]]から作られ、鋼鉄よりも強く、[[クモ]]の糸より細いというのが当時のキャッチフレーズだった。


一般的にはナイロン6,6は絹、ナイロン6は木綿に近い肌触りとされている。
一般的にはナイロン6,6は絹、ナイロン6は木綿に近い肌触りとされている。


=== ナイロン繊維の利用法、ナイロン製品の販売の歴史 ===
軽量で水分を吸う性質があり、[[登山]]用のロープとしても使われたが、突然切れるという事故が発生して問題になったことがある。{{main|ナイロンザイル事件}}
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1936年に[[アメリカ]]のデュポン社のウォーレス・カロザースが合成に成功し、[[1939年]]にデュポン社はナイロン繊維の工業生産([[大量生産]])を開始した。当初は[[歯ブラシ]]のいわゆる「毛」の部分などに使い商品化していたが、次に同社はナイロンの用途として、それまで主に絹で作られていた薄手の[[ストッキング]]に着目、まずは女性たちの反応を調べるために、1939年10月24日に[[デラウェア州]][[ウィルミントン (デラウェア州)|ウィルミントン]]でナイロンストッキング4,000着を販売してみたところ、わずか3時間で完売<ref name="Kativa">{{cite journal|last1=Kativa|first1=Hillary|title=Synthetic Threads|journal=Distillations|date=2016|volume=2|issue=3|pages=16–21|url=https://www.sciencehistory.org/distillations/magazine/synthetic-threads|access-date=20 March 2018}}</ref>。これを踏まえて、1940年5月15日に全米でナイロンストッキングを発売(これは大センセーションとなり、この日は「N-DAY」と人々に記憶されることになり)、発売1年で6400万着も売れた。だが、[[第二次世界大戦]]が始まっており、各国政府は次第に軍需を優先するようになり、ナイロンは[[パラシュート]]の傘やコードの部分に使われるようになっていった。<ref>[https://www.sciencehistory.org/education/classroom-activities/role-playing-games/case-of-plastics/history-and-future-of-plastics/ History and Future of Plastics]</ref><ref>[https://www.naigai.co.jp/museum/items/change-pantyhose/ NAIGAI, 所蔵品でたどるストッキングの変遷]</ref>

なお、ナイロンストッキング発売当時キャッチフレーズは「[[石炭]]と[[水]]と[[空気]]から作られ、鋼鉄よりも強く、[[クモ]]の糸より細いというのだった。


== 用途 ==
== 用途 ==
主に[[合羽]]や[[ウインドブレーカー]]、スキーウェアなど冬用スポーツウなど衣類に用いられるほか、ギターの弦、ストッキングや[[水着]]、釣り糸などに用いられている。
[[ストッキング]]や[[水着]]、[[合羽]]や[[ウインドブレーカー]]、[[スキーウェア]]など冬用スポーツウ、[[傘]]。そ[[クラシックギター]]の[[]]、[[釣り糸]]などに用いられている。


== 強度にまつわる事件 ==
なおナイロンは登場当初、その強度が盲信され、1950年代から1970年代ころまで[[クライミングロープ]]としても多用されたが、実際の鋭い岩肌にすれる環境下での強度テストは行われておらず、[[登山]]の現場では突然あっけなく切れて登山者が墜落する事故(死亡事故)が何度も発生した。{{main|ナイロンザイル事件}}

== 他 ==
(昨今では、自然環境中で分解されない[[マイクロプラスチック]]類の海洋生物への悪影響が深刻化していることが次第に認識されるようになってきて、国際機関や各国政府が対策を進めるようになってきており)ナイロンも[[生分解性]]はほとんど無いため、モノマーに分解する酵素([[ナイロン加水分解酵素]])の研究が進められている<ref>[http://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9208/9208_tokushu_2.pdf 高分子ナイロンを加水分解する酵素(NylC)の発見]</ref>。
== 脚注 ==
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== 関連項目 ==
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[[de:Polyamide#Nylon]]
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2024年11月13日 (水) 14:24時点における最新版

ナイロン6ナイロン6,6の分子構造

ナイロン(nylon)は、ポリアミド合成樹脂の種類である。当初は主に繊維として使われた。世界初の合成繊維のナイロン6,66,6-ナイロンなどとも)が含まれる。

ウォーレス・カロザース

1935年アメリカ合衆国デュポン社のウォーレス・カロザースが合成に成功した。ナイロンは本来、インビスタ社(旧デュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社)の商品名だが、現在ではポリアミド系繊維(単量体アミド結合(-CO-NH-)により次々に縮合した高分子)の総称として定着している。

種類としては、ナイロン6ナイロン6,6、ナイロン4,6などがある。これらの数字は、合成原料の炭素原子の数に由来する。

構造(右図)は、

  • ナイロン6:
  • ナイロン6,6:

語源

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ナイロン(nylon)の名称は、「伝線(run)しないストッキング用の繊維」を意図した「norun」に由来する[1]。また暗にnil(虚無)の意を込めてこの繊維をNylonと命名した、と『ナイロンの発見』には書かれている。[2]

歴史

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合成法、製造法の歴史

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ウォーレス・カロザースが合成したナイロン6,6は、アジピン酸ヘキサメチレンジアミン重合して作られる。一方、1941年日本東洋レーヨン(現・東レ)星野孝平らにより合成された[3]ナイロン6(合成当時の名はアミラン[4])はε-カプロラクタム開環重合して作られる。1960年代にはデュポン社により、ニッケル触媒を利用した1,3-ブタジエンヒドロシアノ化によるナイロン6,6の合成法が開発された。ほかにプロピレンアンモ酸化したアクリロニトリルを原料に、モンサント社(現:バイエル)が開発した電解ヒドロ二量化法により中間体のアジポニトリルを合成する方法もあり、ベンゼンブタジエンプロピレンの価格動向や電力価格により優劣が変動する[5]

一般的にはナイロン6,6は絹、ナイロン6は木綿に近い肌触りとされている。

ナイロン繊維の利用法、ナイロン製品の販売の歴史

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ナイロンストッキング工場での検品作業(1954年、スウェーデン)

1936年にアメリカのデュポン社のウォーレス・カロザースが合成に成功し、1939年にデュポン社はナイロン繊維の工業生産(大量生産)を開始した。当初は歯ブラシのいわゆる「毛」の部分などに使い商品化していたが、次に同社はナイロンの用途として、それまで主に絹で作られていた薄手のストッキングに着目、まずは女性たちの反応を調べるために、1939年10月24日にデラウェア州ウィルミントンでナイロンストッキング4,000着を販売してみたところ、わずか3時間で完売[6]。これを踏まえて、1940年5月15日に全米でナイロンストッキングを発売(これは大センセーションとなり、この日は「N-DAY」と人々に記憶されることになり)、発売1年で6400万着も売れた。だが、第二次世界大戦が始まっており、各国政府は次第に軍需を優先するようになり、ナイロンはパラシュートの傘やコードの部分に使われるようになっていった。[7][8]

なお、ナイロンストッキング発売当時のキャッチフレーズは「石炭空気から作られ、鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というものだった。

用途

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ストッキング水着合羽ウインドブレーカースキーウェアなど冬用スポーツウェア、。その他、クラシックギター釣り糸などに用いられている。

強度にまつわる事件

[編集]

なおナイロンは登場当初、その強度が盲信され、1950年代から1970年代ころまでクライミングロープとしても多用されたが、実際の鋭い岩肌にすれる環境下での強度テストは行われておらず、登山の現場では突然あっけなく切れて登山者が墜落する事故(死亡事故)が何度も発生した。

[編集]

(昨今では、自然環境中で分解されないマイクロプラスチック類の海洋生物への悪影響が深刻化していることが次第に認識されるようになってきて、国際機関や各国政府が対策を進めるようになってきており)ナイロンも生分解性はほとんど無いため、モノマーに分解する酵素(ナイロン加水分解酵素)の研究が進められている[9]

脚注

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  1. ^ DuPont. “デュポン200年の軌跡 5-2”. 2015年12月29日閲覧。
  2. ^ 『化学史への招待』株式会社オーム社、2019年1月25日、40頁。 
  3. ^ ちなみに、1937年にはドイツIGファルベンパウル・シュラックらにより合成されており、1942年に"Perlon"の名で生産が開始されている
  4. ^ 現在では、アミラン®東レのナイロン製品の登録商標となっている
  5. ^ Whyman, Robin 著、碇屋隆雄・山田徹 訳『有機金属と触媒 -工業プロセスへの展開』化学同人、2003年。ISBN 978-4759809480 
  6. ^ Kativa, Hillary (2016). “Synthetic Threads”. Distillations 2 (3): 16–21. https://www.sciencehistory.org/distillations/magazine/synthetic-threads 20 March 2018閲覧。. 
  7. ^ History and Future of Plastics
  8. ^ NAIGAI, 所蔵品でたどるストッキングの変遷
  9. ^ 高分子ナイロンを加水分解する酵素(NylC)の発見

関連項目

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