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'''世界都市'''(せかいとし、{{lang-en-short|world city}}、{{lang-de-short|Weltstadt}})とは、主に経済的、政治的、文化的な中枢機能が集積しており、世界的な観点による重要性や影響力の高い[[都市]]。'''グローバル都市'''({{lang-en-short|global city}})ともいう。
[[画像:London from a hot air balloon.jpg|thumb|250px|{{flagicon|UK}} [[ロンドン]]]]
[[画像:New-York-Jan2005.jpg|thumb|250px|{{flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]]]
[[画像:Tour Eiffel, École militaire, Champ-de-Mars, Palais de Chaillot, La Défense - 01.jpg|thumb|250px|{{flagicon|FRA}} [[パリ]]]]
[[画像:Tokyo from the top of the SkyTree.JPG|thumb|250px|{{flagicon|JPN}} [[東京]]]]
[[画像:Overlook Hong Kong Island north coast, Victoria Harbour and Kowloon from middle section of Lugard Road at daytime (enlarged version and better contrast, revised).jpg|thumb|250px|{{flagicon|HK}} [[香港]]]]
[[ファイル:Merlion_statue,_Merlion_Park,_Singapore_-_20110723.jpg|thumb|250px|{{flagicon|Singapore}} [[シンガポール]]]]


==用語==
'''世界都市'''(せかいとし、{{lang-en|world city}})とは、主に[[経済]]的、[[政治]]的、[[文化]]的な中枢機能が集積しており、[[グローバル]]な観点による重要性や影響力の高い[[都市]]のことである。'''グローバル都市'''(グローバルとし、{{lang-en|global city}})ともいう。
今日の「世界都市」にあたる言葉の淵源・由来やその歴史的意味合いについてはさまざまな説があり、概念史はまだ確定状態ではない<ref name="p27">加茂利男『世界都市』 27頁 有斐閣</ref>。


[[地理学者]]で、「[[メガロポリス]]」の著者でもある[[ジャン・ゴットマン]]は、世界都市というのは文豪[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]が1787年に、[[ローマ]]の歴史的な文化的卓越性をもった都市としての性質を表現するために作った、「Weltstadt」(ドイツ語での世界都市)という言葉にその源を発すると述べている<ref name="p27" />。一方、[[ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン]]の地理学者であった{{仮リンク|ピーター・ホール|en|Peter Hall (urbanist)}}は「世界都市」を著し、[[スコットランド]]の地域計画家[[パトリック・ゲデス]]が『進化する都市』(1915年)という本の中で、「世界でもっとも重要なビジネスのきわめて大きな部分が集積して行われる大都市」のことを「世界都市」({{lang-en-short|world city}})と命名したと述べ、この言葉の由来をゲデスに求めている<ref name="p27" />。
== 概要 ==
=== 世界都市の言葉の由来 ===
今日の「世界都市」に当たる言葉の淵源・由来やその歴史的意味合いについては色々な説があり、概念史の整理はまだついているとはいえない<ref name="p27">加茂利男『世界都市』 27頁 有斐閣</ref>。[[地理学者]]で、「メガロポリス」の著者でもある[[ジャン・ゴットマン]]は、世界都市というのは文豪[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]が[[1787年]]に、[[ローマ]]の歴史的な文化的卓越性をもった都市としての性質を表現するためにつくった、「Weltstadt」(ドイツ語での世界都市)という言葉にその源を発すると述べている<ref name="p27"/>。一方、[[ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン]]の地理学者であった[[:en:Peter Hall (urbanist)|ピーター・ホール]]は「世界都市」を著し、[[スコットランド]]の地域計画家[[パトリック・ゲデス]]が「進化する都市」([[1915年]])という本の中で、「世界で最も重要なビジネスの極めて大きな部分が集積しておこなわれる大都市」のことを「世界都市」(world city)と命名したと述べ、この言葉の由来を[[パトリック・ゲデス|ゲデス]]に求めている<ref name="p27"/>。


1991年、[[コロンビア大学]]教授の[[サスキア・サッセン]]は、著書『グローバル都市-ニューヨーク、ロンドン、東京』において、初めて「グローバル都市」({{en|global city}})という表現を用いた<ref>{{Cite web|和書|url=https://ichurban.jp/research/tokyofuture/~|title=東京の未来戦略|author=市川宏雄|accessdate=2021-03-17}}</ref>。
=== 世界都市の定義 ===
多国籍企業とグローバル・マネーの形成が本格化した[[1970年代]]、国際的な企業・法人本部とそれを支える活動の複合体を擁する都市を「世界都市」と定義し、こうした都市の育成をはかる議論が始まった<ref>加茂利男『世界都市』 12頁 有斐閣</ref>。[[1986年]]、[[カリフォルニア大学]]教授の[[:en:John Friedmann|ジョン・フリードマン]]は「世界都市仮説」を著し、世界都市を定義した<ref name="p16">加茂利男『世界都市』 16頁 有斐閣</ref>。フリードマンの主要な世界都市の定義は以下の通りである。


==定義==
*資本主義の世界システムの中で、法人の拠点、[[金融センター]]、グローバル・システムや地域・国民経済の結節点としてその機能を果たす都市<ref name="p16"/>。
[[多国籍企業]]とグローバル・マネーの形成が本格化した1970年代、国際的な企業・法人本部とそれを支える活動の複合体を擁する都市を「世界都市」と定義し、こうした都市の育成をはかる議論が始まった<ref>加茂利男『世界都市』 12頁 有斐閣</ref>。1986年、[[カリフォルニア大学]]教授の{{仮リンク|ジョン・フリードマン|en|John Friedmann}}は『世界都市仮説』を著し、世界都市を定義した<ref name="p16">加茂利男『世界都市』 16頁 有斐閣</ref>。フリードマンの主要な世界都市の定義は以下の通りである。
*多国籍企業がその基地として立地し利用するため、複雑な国際的・空間的[[ヒエラルキー]]の中に位置づけられる都市<ref name="p16"/>。
*グローバルな管理機能集積を反映して、法人の中枢部門国際的な[[金融]][[輸送]][[通信]]・[[広告]]・[[保険]]・[[法務]]など高次ビジネス・サービスなどが成長都市<ref name="p16"/>。
*資本主義世界システムの中で、法人の拠点、金融センター、グローバルシステムや地域国民経済の結節点としてそ機能を果たす都市<ref name="p16" />。
*多国籍企業がその基地として立地し利用するため、複雑な国際的・空間的階層の中に位置づけられる都市<ref name="p16" />。
*グローバルな管理機能の集積を反映して、法人の中枢部門、国際的な金融・輸送・通信・広告・保険・法務などの高次ビジネス・サービスなどが成長する都市<ref name="p16" />。


[[1991年]]、[[コロンビア大学]]教授の[[サスキア・サッセン]]は、著書「グローバル都市-ニューヨーク、ロンドン、東京」において、初めて「グローバル都市」(global city)という表現を用いた。[[:en:John Friedmann|フリードマン]]は多国籍企業の本社部門の所在それ自体を重くみる世界都市論を展開していたが、[[サスキア・サッセン|サッセン]]は「[[1960年代]][[1970年代]]に比べて都市の経済力を測定する尺度としては十分なものではなくなっている」と述べ、今や[[金融]]、高次法人サービスなどの活動こそが国際都市[[ヒエラルキー]]を左右し、世界都市を形成する要因として重要性をもつものと説明した<ref>加茂利男『世界都市』 17-18頁 有斐閣</ref>。経済活動の地球的な規模での分散が同時に地球規模の統合、コントロール機能の形成を促しており、こうしたセンター機能が集積する少数の都市([[ロンドン]]、[[ニューヨーク]]、[[東京都|東京]]など)こそグローバル都市だとした<ref>加茂利男『世界都市』 17頁 有斐閣</ref>。
フリードマンは多国籍企業の本社部門の所在それ自体を重くみる世界都市論を展開していたが、サッセンは「1960年代、1970年代に比べて都市の経済力を測定する尺度としては十分なものではなくなっている」と述べ、今や金融、高次法人サービスなどの活動こそが国際都市ヒエラルキーを左右し、世界都市を形成する要因として重要性をもつものと説明した<ref>加茂利男『世界都市』 17-18頁 有斐閣</ref>。経済活動の地球的な規模での分散が同時に地球規模の統合、コントロール機能の形成を促しており、こうしたセンター機能が集積する少数の都市([[ロンドン]]、[[ニューヨーク]]、[[東京都|東京]]など)こそグローバル都市だとした<ref>加茂利男『世界都市』 17頁 有斐閣</ref>。


2017年、アメリカのシンクタンクであり、世界都市研究に深く関与し続けてきた{{仮リンク|シカゴ国際問題評議会|en|Chicago Council on Global Affairs}}は、「何がグローバル都市を作るのか?」({{lang-en-short|What Makes a Global City?}})という題名でグローバル都市の定義や傾向を定めた<ref>[https://digital.thechicagocouncil.org/global-cities {{lang|en|What Makes a Global City?}}] {{lang|en|The Chicago Council on Global Affairs}}、2017年10月15日閲覧。</ref>。主な内容な以下の通りである。
=== 1970-1990年代 ===
*世界経済をリードしている。
[[1970年代]]から[[1980年代]]の世界都市形成は、次第に金融主導型のそれに傾斜し、金融マネーの[[グローバリズム]]の所産という性格が、多分に強くなったと考えられる<ref>加茂利男『世界都市』 61頁 有斐閣</ref>。[[衛星通信]]やコンピュータ通信の飛躍的発展によって、世界の[[金融センター]]を結ぶ24時間取引や多国籍産業のグローバル・マネージメントが可能になったことも要因だと考えられる<ref name="p66">加茂利男『世界都市』 66頁 有斐閣</ref>。こうして国際情報を集積し、ボーダレス・マネーを動かして[[世界経済]]をコントロールする[[金融センター|国際金融センター]]が現れ、世界的な都市[[ヒエラルキー]]の頂点に立った<ref name="p66"/>。[[1990年]]頃には、[[ロンドン]]・[[ニューヨーク]]・[[東京都|東京]]が「三大世界都市」と呼ばれ、グローバル経済と世界都市システムの頂点に姿を現していた<ref name="page138">加茂利男『世界都市』138頁 有斐閣 </ref>。
*都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは十分ではない。
ロンドンやニューヨークは[[国際金融]]と世界的な経済センターとしての位置を強化し、高次ビジネス・サービスに経済の重点を移したのである<ref name="page121">加茂利男『世界都市』121頁 有斐閣 </ref>。世界経済はますます金融に傾斜し、世界的な金融市場の拡大は国際金融と関連したビジネス・サービスの収益性を高めた<ref name="page121"/>。ロンドンやニューヨークは、これらの国際的な金融、ビジネス・サービスと文化、[[ツーリズム]]、[[デザイン]]、[[通信]]などの中心として生まれ変わることで「世界都市」と呼ばれるようになったのである<ref name="page121"/>。一方、東京はロンドンやニューヨークとは経済構造が異なり、大都市圏としてみてみると金融やサービスはいうに及ばず、[[ハイテク]]、[[卸売|卸売業]]から都市型工業にいたるまで集積した、フルセット型の産業構造であり、いわばオールマイティーな経済機能をもつ都市として世界都市形成を行った<ref>加茂利男『世界都市』 99-100頁 有斐閣</ref>。[[2001年]]に[[グレーター・ロンドン・オーソリティー|大ロンドン庁]]が公表した報告書「ロンドン・プラン」においても、ロンドン・ニューヨーク・東京の3都市を「本物の世界都市」と定義しており、世界都市としての三強時代が続いていた<ref>[http://www.rieti.go.jp/jp/special/special_report/017.html 独立行政法人 経済産業研究所]</ref>。
*国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつける魅力がある。
*大学など高等教育が発展しており、子供や労働者にも充実した教育環境を提供している。
*外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事があり、その情熱、気迫が都市のバイタリティーを高めている。
*文化的な中心地である。博物館、劇場、レストラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実している。
*デスティネーション、いわば目的地であり、観光客にとって魅力的である。
*政治的影響力があることは有利な条件である。首都ではないグローバル都市も領事館、シンクタンク、国際会議場などを有する。
*国際的なハブであり、グローバルな連結性が高い。都市圏にメジャーな国際空港がある。
*グローバル都市に必要な先見の明のある指導者がいる。
*生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生活環境、治安のよさ、ヘルスケア、地方政府の効率性などが発展している。
*オープンである。移民、デジタルコミュニケーション、トレードなどの制限が少ない。報道の自由度が高い。


=== トップクラスの世界都市 ===
== 代表的な世界都市 ==
=== ニューヨーク(アメリカ) ===
[[2010年代]]時点での主要な研究調査において世界最高の世界都市に位置づけられるのは[[ロンドン]]が多い<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/><ref name="GaWC"/>。ロンドンは世界における金融、文化、交通、教育、メディア、娯楽、観光などの中心的都市の一つである。世界最高の金融センターとされ<ref name="GFCI"/>、[[外国為替市場]]の取引額は[[イギリス]]が世界一であり<ref name="BIS">[http://www.bis.org/publ/rpfx16.htm Triennial Central Bank Survey of foreign exchange and OTC derivatives markets in 2016] Bank of International Settlements 2016年10月30日閲覧。</ref>、その中心は首都ロンドンである。世界で最も外国人の訪れる都市の一つであり、[[ロンドン・ヒースロー空港]]は世界最大級の[[ハブ空港]]である。ロンドンで2番目に大きい[[ロンドン・ガトウィック空港]]も国際線の年間利用者数でニューヨークの[[ジョン・F・ケネディ国際空港]]を上回る<ref name="Airport"/>。外国出身者の人口は[[2011年]]時点で約300万人であり<ref>[http://www.migrationobservatory.ox.ac.uk/resources/briefings/london-census-profile/ London Census Profile] The Migration Observatory 2016年11月14日閲覧。</ref>、多種多様な民族が混在して暮らしている。[[ロンドン塔]]や[[ウェストミンスター宮殿]]など数々の世界遺産を有し、[[大英博物館]]など著名な文化施設も多い。[[王立国際問題研究所]]は世界的な[[シンクタンク]]であり、メディア大手の[[タイムズ]]や[[BBC]]は[[英語]]が事実上の世界共通語であることからも国際的な影響力を有する。[[2016年]]の調査では、個人資産が3000万ドル以上の超富裕層が世界で最も重要とする都市である<ref>[http://www.knightfrank.com/wealthreport The Wealth Report] Knight Frank 2016年11月14日閲覧。</ref>。一方で、2016年にイギリスが国民投票で[[EU]]離脱を決めたことにより、世界都市としての地位の低下も懸念されている<ref>[http://www.telegraph.co.uk/business/2016/08/31/london-will-remain-the-top-financial-centre-post-brexit-says-deu/ London will remain the top financial centre post-Brexit, says Deutsche Bank chief] The Telegraph 2016年11月14日閲覧。</ref>。
{{see also|ニューヨーク}}
ロンドンとともに世界最高峰に位置づけられる都市<ref name="JLL2" /><ref name="GCI" /><ref name="GPCI" /><ref name="GaWC" />。[[超大国]]の[[アメリカ合衆国]]ならびに世界における経済・金融・文化・交通・メディア・娯楽・観光などの中心的な都市の一つである。[[ニューヨーク証券取引所]]は世界最大の[[証券取引所]]であり、[[世界経済]]に大きな影響力を持つ。中心街の[[マンハッタン]]に[[国際連合]]の本部が所在するなど、数々の[[国際機関]]も集積しており首都ではないながらも絶大な政治的影響力がある。世界大手の[[通信社]]の[[AP通信]]や[[ニューヨーク・タイムズ]]、[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]、さらにアメリカ三大テレビ局の本社もあり、メディアに関してもグローバルな影響力を有する。[[メトロポリタン美術館]]など文化施設も多く、世界遺産[[自由の女神像]]はニューヨークならびに[[自由]]と[[民主主義]]の象徴である。[[2016年]]の調査では、個人資産が10億ドル以上の[[世界長者番付|大富豪]]が世界でもっとも多い都市である<ref name="Billionaire" />。


=== ロンドン(イギリス) ===
[[ニューヨーク]]も世界最高峰の一つとして認知されている。[[超大国]]の[[アメリカ合衆国]]並びに世界における経済、金融、文化、交通、メディア、娯楽、観光などの中心的な都市の一つである。[[ニューヨーク証券取引所]]は世界最大の[[証券取引所]]であり、[[世界経済]]に大きな影響力を持つ。中心街の[[マンハッタン]]に[[国際連合]]の本部が所在するなど、数々の[[国際機関]]も集積している。世界大手の[[通信社]]の[[AP通信]]や[[ニューヨーク・タイムズ]]、[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]、さらにアメリカ三大テレビ局の本社もあり、グローバルな影響力を有する。[[メトロポリタン美術館]]など文化施設も多く、[[自由の女神像]]はニューヨーク並びに[[自由]]と[[民主主義]]の象徴である。[[2016年]]の調査では、個人資産が10億ドル以上の[[世界長者番付|大富豪]]が世界で最も多い都市である<ref name="Billionaire"/>。
{{see also|ロンドン}}
ニューヨークとともに世界最高峰に位置づけられる都市<ref name="GCI" /><ref name="GPCI" /><ref name="GaWC" /><ref name="JLL2"/>。世界における金融・文化・交通・教育・メディア・娯楽・観光などの中心的都市の一つである。世界最高の金融センターとされ<ref name="GFCI" />、[[外国為替市場]]の取引額は[[イギリス]]が世界一であり<ref name="BIS">[http://www.bis.org/publ/rpfx16.htm Triennial Central Bank Survey of foreign exchange and OTC derivatives markets in 2016] Bank of International Settlements 2016年10月30日閲覧。</ref>、その中心は首都ロンドンである。世界でもっとも外国人の訪れる都市の一つであり、[[ロンドン・ヒースロー空港]]は世界最大級の[[ハブ空港]]である。ロンドンで2番目に大きい[[ロンドン・ガトウィック空港]]も国際線の年間利用者数でニューヨークの[[ジョン・F・ケネディ国際空港]]を上回る<ref name="Airport" />。外国出身者の人口は[[2011年]]時点で約300万人であり<ref>[http://www.migrationobservatory.ox.ac.uk/resources/briefings/london-census-profile/ London Census Profile] The Migration Observatory 2016年11月14日閲覧。</ref>、多種多様な民族が混在して暮らしている。[[ロンドン塔]]や[[ウェストミンスター宮殿]]など数々の世界遺産を有し、[[大英博物館]]など著名な文化施設も多い。特に文化的な交流の面で強く、[[王立国際問題研究所]]は世界的な[[シンクタンク]]であり、メディア大手の[[タイムズ]]や[[BBC]]は[[英語]]が事実上の世界共通語であることからも国際的な影響力を有する。[[2016年]]の調査では、個人資産が3,000万ドル以上の超富裕層が世界でもっとも重要とする都市である<ref>[http://www.knightfrank.com/wealthreport The Wealth Report] Knight Frank 2016年11月14日閲覧。</ref>。一方で、2020年にイギリスが[[欧州連合|EU]]を離脱したことにより、世界都市としての地位の低下も懸念されている<ref>[http://www.telegraph.co.uk/business/2016/08/31/london-will-remain-the-top-financial-centre-post-brexit-says-deu/ London will remain the top financial centre post-Brexit, says Deutsche Bank chief] The Telegraph 2016年11月14日閲覧。</ref>。


=== パリ(フランス) ===
[[パリ]]はロンドン、ニューヨークに次ぐ第三の世界都市として位置づけられることがある<ref name="GCI"/>。[[大陸ヨーロッパ]]の経済、文化、交通、観光などの中心都市の一つであり、[[ルーブル美術館]]や[[フランス料理]]に代表される文化に恵まれた世界屈指の観光都市であり、[[エッフェル塔]]や[[エトワール凱旋門|凱旋門]]など都市を象徴する世界的認知度の高い[[ランドマーク]]が多い。また、[[東京]]も世界屈指の世界都市であり、ニューヨークなどを上回る世界最大の経済規模の都市圏を形成している<ref name="GDPrank"/>。「世界の都市総合力ランキング」では[[2008年]]の調査開始以来8年連続で4位だったが、[[2016年]]に初めてパリを抜いて3位になるなど、[[2020年]]の[[2020年夏季オリンピック|東京オリンピック]]・[[東京パラリンピック (2020年)|パラリンピック]]の開催を前に都市力が上昇しつつある<ref name="GPCI"/>。 伝統的にはロンドン、ニューヨーク、パリ、東京の4都市を「四大世界都市」として位置づけることが多い<ref name="JLL"/>。
{{see also|パリ}}
ロンドンと共に欧州地域を代表する世界都市。[[国際連合安全保障理事会常任理事国|国連安保理常任理事国]]や[[主要国首脳会議|G7]]に加盟している国の首都であり、経済・芸術・文化・交通・メディア・娯楽・観光の中心地である。[[経済協力開発機構|OECD]]や[[国際連合教育科学文化機関|ユネスコ]]など国際機関の本部が多数集積しており、[[フランス通信社]]や[[BNPパリバ]]などはグローバルな影響力を有する。[[A.T.カーニー]]の調査では情報交換の分野において世界最高の評価を受けている<ref name="GCI" />。[[パリ=シャルル・ド・ゴール空港]]は世界屈指のハブ空港であり、地下鉄の[[メトロ (パリ)|メトロ]]など交通・アクセス部門も充実している。[[ルーブル美術館]]や[[フランス料理]]に代表される文化に恵まれた世界屈指の観光都市であり、[[エッフェル塔]]や[[エトワール凱旋門|凱旋門]]など都市を象徴する世界的認知度の高い[[ランドマーク]]が多い。[[2024年]]には[[2024年夏季オリンピック|オリンピック]]・[[パラリンピック]]が開催されている。


=== 東京(日本) ===
[[香港]]と[[シンガポール]]も屈指の世界都市とされる<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/><ref name="GaWC"/>。従来の「四大世界都市」に加え、「六大世界都市」として位置づけられることもある<ref name="JLL">[http://www.jll.com/research/158/jll-globalisation-and-competition-the-new-world-of-cities Globalisation and Competition: The New World of Cities]JLL 2015年11月14日閲覧。</ref><ref>[http://thebusinessofcities.com/wp-content/uploads/2014/07/60551428-The-Business-of-Cities-Greg-Clark-Main-Paper-June-2011.pdf The Business of Cities]2015年11月14日閲覧。</ref><ref>[https://www.jpmorganchase.com/corporate/Corporate-Responsibility/document/Hong_Kong-A_globally_fluent_metropolitan_city-final.pdf Hong Kong: A globally fluent metropolitan city] Global Cities Initiative 2016年10月30日閲覧。</ref>。香港とシンガポールは外国為替市場の取引額で[[日本]]を上回るなど<ref name="BIS"/>、ロンドンやニューヨークに次ぐ世界的な金融センターに成長している<ref name="GFCI"/>。[[アジア太平洋]]地域における交通、教育、メディアなどの中心的な役割を持つ。[[香港大学]]や[[シンガポール国立大学]]はアジア屈指の[[高等教育]]機関であり、[[香港国際空港]]や[[シンガポール・チャンギ国際空港]]は世界的なハブ空港である。高等教育を受けた人材や英語話者が比較的多く、税制の効率性やビジネスのしやすさなどが高いことから<ref>[http://data.worldbank.org/indicator/IC.BUS.EASE.XQ Ease of doing business index] World Bank 2016年11月14日閲覧。</ref>、多くの[[多国籍企業]]はアジア太平洋の地域統轄拠点としている。シンガポールは[[富裕層]]人口が多く、中央値の世帯収入も高水準である<ref>[https://www.singstat.gov.sg/docs/default-source/default-document-library/publications/publications_and_papers/household_income_and_expenditure/pp-s22.pdf Key Household Income Trends, 2015] Department of Statistics Singapore 2016年11月14日閲覧。</ref>。香港は[[2016年]]の調査では、個人資産が10億ドル以上の大富豪がニューヨークに次いで、世界で2番目に多い都市である<ref name="Billionaire"/>。
{{see also|東京}}
アジアを代表する世界都市の一つ<ref>『[https://kotobank.jp/word/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD-103308 ブリタニカ国際大百科事典]』</ref>。経済的な評価は相対的に低下傾向にあるものの<ref>{{Cite web|title=GaWC - The World According to GaWC 2004|url=https://www.lboro.ac.uk/gawc/world2004t.html|website=www.lboro.ac.uk|accessdate=2020-04-29}}</ref><ref name="GaWC" />、政治や文化を含めた総合的な評価はアジアで最高位に位置づけられる<ref name="GCI" /><ref name="GPCI" /><ref name="JLL" />。[[日本]]の政治や経済の本部機能が一極集積しており、ニューヨークを上回る世界最大の経済規模の[[都市圏]]を形成している<ref name="GDPrank" />。アメリカの大手旅行誌に2年連続で「世界でもっとも魅力のある都市」に選出されるなど、観光面でも高い評価を得ている<ref>[http://us.jnto.go.jp/pdf/20171017-condenast-travelers-top-cities.pdf 米国旅行誌の最も魅力的な都市ランキングで東京が2年連続1位] 日本政府観光局 2017年10月28日閲覧。</ref>。また、世界主要60都市の中で「もっとも安全な都市」との評価も受けている<ref>[http://safecities.economist.com/safe-cities-index-2017 Safe Cities Index 2017] The Economist 2017年10月28日閲覧。</ref>。また東京は、[[北京市|北京]]に次いで大企業の本社が多い都市とされる<ref>{{Cite web|和書|title=東京の都市力|東京でのビジネスを強力にバックアップする特区|url=https://www.senryaku.metro.tokyo.lg.jp/invest_tokyo/japanese/why-tokyo/merit.html|website=www.senryaku.metro.tokyo.lg.jp|accessdate=2020-04-29}}</ref>。東京は1980年代末から長らくニューヨーク、ロンドンと共に「三大金融センター」と位置付けられてきたが<ref>{{Cite web|和書|title=東京が狙う「三大金融センター」奪還 香港でセミナー|url=https://www.sankei.com/article/20190829-3AWL4Z4E35NMLALORZSC3Y5RDQ/|website=産経ニュース|date=2019-08-29|accessdate=2021-09-30|language=ja|first=SANKEI DIGITAL|last=INC}}</ref>、2023年の評価では世界20位にまで順位を落としている<ref>{{Cite web|title=The Global Financial Centres Index - Long Finance|url=https://www.longfinance.net/programmes/financial-centre-futures/global-financial-centres-index/|website=www.longfinance.net|accessdate=2021-09-30}}</ref>。また、日本の森記念財団は、「女性の社会進出の不足」「少ない外国人居住者数」「歴史・伝統への接触機会の限界」に加え、航空機の国際線の便数や五つ星ホテルの客室数で見劣りする点が東京の課題との分析を示している<ref>{{Cite web|和書|title=森記念財団から「世界の都市総合力ランキング」等について聞く (2018年12月13日 No.3389) {{!}} 週刊 経団連タイムス|url=http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2018/1213_08.html?v=s|website=一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren|accessdate=2020-04-29|language=ja}}</ref>。


=== 各地域の世界都市 ===
=== 香港(中国) ===
{{see also|香港}}
[[アジア]]には都市規模が比較的大きい有力な世界都市が多数存在する。特に[[先進国]]や[[経済大国]]が揃う[[東アジア]]に集中している。同地域の代表的な世界都市として[[日本]]の[[東京]]が挙げられる<ref name="GPCI"/><ref name="GCI"/>。[[大阪]]も世界有数の経済圏を形成しており<ref name="GDPrank"/>
アジアを代表する世界都市の一つ<ref name="GCI" /><ref name="GPCI" /><ref name="GaWC" /><ref name="JLL2"/>。経済面での評価においてはすでに世界トップクラスといえる<ref name="JLL">[http://www.jll.com/research/158/jll-globalisation-and-competition-the-new-world-of-cities Globalisation and Competition: The New World of Cities]JLL 2015年11月14日閲覧。</ref><ref>[http://thebusinessofcities.com/wp-content/uploads/2014/07/60551428-The-Business-of-Cities-Greg-Clark-Main-Paper-June-2011.pdf The Business of Cities]2015年11月14日閲覧。</ref><ref>[https://www.jpmorganchase.com/corporate/Corporate-Responsibility/document/Hong_Kong-A_globally_fluent_metropolitan_city-final.pdf Hong Kong: A globally fluent metropolitan city] Global Cities Initiative 2016年10月30日閲覧。</ref>。[[アジア太平洋]]地域における金融・交通・教育・メディアなどの中心的な役割を持つ。ロンドン、ニューヨークに次ぐ世界3位の[[金融センター]]との評価を受けており<ref name="GFCI" />、[[ゴールドマン・サックス]]や[[モルガン・スタンレー]]など多くの世界的金融機関がアジア太平洋地域における統括拠点としている。[[香港国際空港]]は世界屈指のハブ空港である。23年連続で世界でもっとも経済や貿易の自由度が高い都市との評価を受けており<ref>[https://www.digima-news.com/20170220_14001 経済自由度指数、香港が23年連続世界一] 出島、海外ビジネス最前線 2017年10月28日閲覧。</ref>、[[2016年]]の調査では、個人資産が10億ドル以上の大富豪がニューヨークに次いで、世界で2番目に多い都市である<ref name="Billionaire" />。一方、2019年の[[中国共産党]]の自由弾圧により、香港には政治リスクがあり、投資の減少や資産の流出によりその地位が危ぶまれている<ref>{{Cite web|和書|title=世界金融センター指数、香港が3位から6位に転落 デモの影響で|url=https://www.afpbb.com/articles/-/3276368|website=www.afpbb.com|accessdate=2020-04-29|language=ja}}</ref>。
、アジア有数の世界都市と言える<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/>
。[[韓国]]の[[ソウル]]は東京と同様に[[首都圏]]一極集中が進む同国の政治・経済などの中心都市であり、世界都市としても上位に位置づけられている<ref name="GPCI"/><ref name="GCI"/>。
[[中華人民共和国|中国]]では[[北京]]、[[上海]]、[[香港]]が代表的である。北京は世界第二の経済大国の首都であり、広大な政治的影響力を持つ。上海は同国最大の経済都市であり、世界有数の[[証券取引所]]である[[上海証券取引所]]も所在している。香港は[[中国大陸]]とは異なる政治制度や[[通貨]]、文化を有する世界屈指の世界都市である。[[広州]]や[[深セン|深圳]]も[[華南]]を代表する大都市であり、アジア有数の世界都市である<ref name="GCI"/>。[[台湾]]では政治や経済の中心都市である[[台北]]が挙げられる<ref name="GCI"/>。[[東南アジア]]では[[シンガポール]]が世界屈指の世界都市であり、同地域では随一の存在である。他にも[[マレーシア]]の[[クアラルンプール]]、[[タイ王国|タイ]]の[[バンコク]]、[[インドネシア]]の[[ジャカルタ]]、[[フィリピン]]の[[マニラ]]は[[ASEAN]]主要国の首都であり、有力な世界都市である<ref name="GCI"/>。[[南アジア]]では[[ムンバイ]]が代表的である<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/>
。世界第二の人口大国[[インド]]の経済都市であり、[[ボリウッド]]に代表される現代文化の中心都市でもある。他にもインドの首都[[ニューデリー]]や[[パキスタン]]の[[カラチ]]なども同地域有数の世界都市である<ref name="GCI"/>。


=== シンガポール ===
[[ヨーロッパ]]は多くの[[先進国]]が集積していることもあり、多数の世界都市を有する。代表的なのは[[イギリス]]の[[ロンドン]]と[[フランス]]の[[パリ]]である。ロンドンやパリは経済、文化、交通などの中心的な役割を担っており、ニューヨークや東京と共に「四大世界都市」と位置づけられることが多い<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/>。[[EU]]最大の経済大国である[[ドイツ]]には、首都[[ベルリン]]、金融・交通の中心である[[フランクフルト]]、工業が盛んな[[ミュンヘン]]などがある<ref name="GCI"/>。[[イタリア]]は[[ローマ]]と[[ミラノ]]、[[スペイン]]は[[マドリード]]と[[バルセロナ]]、[[スイス]]は[[チューリッヒ]]や[[ジュネーヴ]]が挙げられる<ref name="GCI"/>。他には[[オランダ]]の[[アムステルダム]]、[[ベルギー]]の[[ブリュッセル]]、[[オーストリア]]の[[ウィーン]]、[[スウェーデン]]の[[ストックホルム]]は比較的人口規模は小さいものの、先進国の首都であり、[[国際機関]]も集積している有数の世界都市である<ref name="GCI"/>。
{{see also|シンガポール}}
[[東ヨーロッパ]]では[[ロシア]]の[[モスクワ]]と[[トルコ]]の[[イスタンブール]]が都市圏人口1000万人を越える[[メガシティ|巨大都市]]であり<ref name="demo"/>、ヨーロッパ[[新興国]]の代表的な世界都市と言える<ref name="JLL"/><ref name="GCI"/>。
アジアを代表する世界都市の一つ<ref name="GCI" /><ref name="GPCI" /><ref name="GaWC" /><ref name="JLL2"/>。外国為替市場の取引額で[[日本]]を上回るなど<ref name="BIS" />、世界的な金融センターに成長している<ref name="GFCI" />。[[富裕層]]人口が多く、中央値の世帯収入も高水準である<ref>[https://www.singstat.gov.sg/docs/default-source/default-document-library/publications/publications_and_papers/household_income_and_expenditure/pp-s22.pdf Key Household Income Trends, 2015] Department of Statistics Singapore 2016年11月14日閲覧。</ref>。[[シンガポール国立大学]]や[[南洋理工大学]]はアジア最高水準の大学との評価を受けるなど<ref>[https://www.topuniversities.com/university-rankings/asian-university-rankings/2018 QS Asia University Rankings 2018] QS World University Rankings 2017年10月28日閲覧。</ref>、高水準の[[高等教育]]機関が所在する。[[シンガポール・チャンギ国際空港]]は2017年に世界最高の空港に選出されている<ref>[http://www.worldairportawards.com/awards/world_airport_rating.html The World's Top 100 Airports in 2017] World Airport Awards 2017年10月28日閲覧。</ref>。世界有数の[[デスティネーション]]であり、[[マーライオン]]や[[マリーナベイ・サンズ]]は代表的なランドマークである。高等教育を受けた人材や英語話者が比較的多く、税制の効率性やビジネスのしやすさなどが高いことから<ref>[http://data.worldbank.org/indicator/IC.BUS.EASE.XQ Ease of doing business index] World Bank 2016年11月14日閲覧。</ref>、多くの[[多国籍企業]]はアジア太平洋の地域統轄拠点としている。


== 特徴 ==
[[北アメリカ]]では、[[超大国]]の[[アメリカ合衆国]]に多くの世界都市を有する。同国の経済、文化、交通などの中心地である[[ニューヨーク]]は世界最高峰の一つである<ref name="GaWC"/>
。グローバルな政治的影響力を有する首都[[ワシントンD.C.]]や同国の三大都市である[[ロサンゼルス]]や[[シカゴ]]も代表的である<ref name="GCI"/>。他にも世界の[[ハイテク]]産業の中心地の一つである[[サンフランシスコ]]や[[ハーバード大学]]や[[マサチューセッツ工科大学]]など高水準の[[教育機関]]が都市圏に所在する[[ボストン]]、さらに[[アメリカ合衆国南部|南部]]の主要都市である[[ヒューストン]]、[[ダラス]]、[[マイアミ]]、[[アトランタ]]も挙げられる。[[カナダ]]では同国の経済や金融の中心都市である[[トロント]]や[[モントリオール]]、[[バンクーバー (ブリティッシュコロンビア州)|バンクーバー]]が有力である。[[ラテンアメリカ]]では[[メキシコ]]の[[メキシコシティ]]、[[ブラジル]]の[[サンパウロ]]や[[リオデジャネイロ]]、[[アルゼンチン]]の[[ブエノスアイレス]]、[[コロンビア]]の[[ボゴタ]]などが挙げられる<ref name="GCI"/>

[[中東]]では[[アラブ首長国連邦]]の[[ドバイ]]が同地域最高の世界都市と評価を受けることが多い<ref name="GCI"/><ref name="GaWC"/>。金融、観光、交通などの中心地の一つであり、[[ドバイ国際空港]]の国際線の年間乗降者数が[[ロンドン・ヒースロー空港]]を上回り世界一になるなど<ref name="Airport"/>、国際色に溢れている。他には同じくアラブ首長国連邦の[[アブダビ]]、[[イスラエル]]の[[テルアビブ]]、[[サウジアラビア]]の[[リヤド]]、[[カタール]]の[[ドーハ]]が挙げられる<ref name="GCI"/>。[[アフリカ]]では[[エジプト]]の[[カイロ]]が同地域最高の世界都市に挙げられることが多い<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/>。[[アラブ連盟]]本部所在地であるなど、[[アラブ世界]]の政治、文化の中心都市の一つであり、アフリカ最大の[[メガシティ]]でもある<ref name="demo"/>。また、アフリカ最大の金融センターである[[南アフリカ共和国]]の[[ヨハネスブルグ]]もアフリカを代表する世界都市である<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/>。他には[[国連]]などの国際機関が集積する[[ケニア]]の[[ナイロビ]]や[[ナイジェリア]]の巨大都市[[ラゴス]]なども挙げられる<ref name="GCI"/>。[[オセアニア]]では[[オーストラリア]]の[[シドニー]]が代表的であり、[[南半球]]の世界都市として首位に位置づけられることが多い<ref name="GCI"/><ref name="GPCI"/><ref name="GaWC"/>
。同国の第二都市[[メルボルン]]も有力な世界都市に数えられる<ref name="GCI"/>。

===世界都市とメガシティ===
{{main|メガシティ}}
世界都市と対照的な都市概念として、主に人口に基づいた都市規模の大きさを示す[[メガシティ]](巨大都市)がある。[[国連]]の統計によると、[[2016年]]現在で世界最大の都市は[[東京都|東京]]である<ref name="UN">[http://www.un.org/en/development/desa/population/publications/pdf/urbanization/the_worlds_cities_in_2016_data_booklet.pdf The World’s Cities in 2016] 国際連合 2016年10月22日閲覧。</ref>。[[首都圏 (日本)|東京都市圏]]は、世界で唯一人口3500万人を超えている[[大都市圏]]であり<ref name="demo">[http://www.demographia.com/db-worldua.pdf Demographia: World Urban Areas & Population Projections]</ref>、経済規模も世界最大である<ref name="GDPrank"/>。ニューヨークも人口2000万人前後を抱える世界有数の都市圏を形成しており、東京と共に世界都市とメガシティの両性を強く兼ね備えた都市である。一方、同じく代表的な世界都市に挙げられるロンドンやパリは、都市圏人口において[[名古屋市|名古屋]]とほぼ同水準であるなど<ref name="demo"/>、世界トップクラスのメガシティとは言い難い。[[サスキア・サッセン]]が「多くの世界都市はメガシティではない」と述べているように、例えば[[チューリッヒ]]や[[ジュネーヴ]]は都市圏人口が100万人にも満たない非メガシティであるが、世界都市としては高い評価を得ている<ref name="GCI"/>。

== 世界都市の特徴 ==
世界都市の顕著な特徴の主な点は、以下の通りである。
===経済的特徴===
===経済的特徴===
[[Image:Wall-Street Nueva York6397.JPG|thumb|200px|[[ニューヨーク証券取引所]]]]
[[ファイル:Wall-Street Nueva York6397.JPG|thumb|200px|[[ニューヨーク証券取引所]]]]
*ビジネス活動が盛んであり、都市の経済規模が大きい(東京は都市の経済規模が世界最大であり、2位のニューヨークも巨大な経済圏を形成している <ref name="GDPrank">[https://www.thechicagocouncil.org/issue/global-cities Cities Rank Among the Top 100 Economic Powers in the World] Chicago Council on Global Affairs 2016年10月28日閲覧。</ref>)。
*ビジネス活動が盛んであり、都市の経済規模が大きい(東京は都市の経済規模が世界最大であり、2位のニューヨークも巨大な経済圏を形成している <ref name="GDPrank">[https://www.thechicagocouncil.org/issue/global-cities Cities Rank Among the Top 100 Economic Powers in the World] Chicago Council on Global Affairs 2016年10月28日閲覧。</ref>)。
*国際的に活動している法人本社部門とその活動を支える[[金融]]、[[保険]]、[[通信]]、[[証券]]、[[不動産]]、[[法務]]、[[会計]]、[[広告]]、[[コンサルティング]]などの高次法人サービス、それに[[レストラン]]、[[出版]][[印刷]]、専門店、[[ファッション]]、[[ホテル]]、[[観光]]、[[教育]]、[[芸術]]などの補助サービスが集積している。
*国際的に活動している法人本社部門とその活動を支える金融保険通信証券不動産法務会計広告コンサルティングなどの高次法人サービス、それにレストラン出版・印刷、運輸・倉庫・専門店ファッションホテル観光教育芸術・医療・福祉・娯楽などの補助サービスが集積している。
*[[多国籍企業]]の本社など、[[世界経済]]に影響を及ぼす組織の中枢が所在する(2016年時点で世界の500大企業の中でも本社数が多い都市は[[北京]]であり、2位は東京である<ref>[http://selectgeorgia.com/publications/Fortune_500_Companies.pdf Fortune 500 and Fortune 1000]2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*多国籍企業の本社など、世界経済に影響を及ぼす組織の中枢が所在する(2016年時点で世界の500大企業の中でもっとも本社数が多い都市は北京であり、2位は東京である<ref>[http://selectgeorgia.com/publications/Fortune_500_Companies.pdf Fortune 500 and Fortune 1000]2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*[[証券取引所]][[銀行]][[保険会社]]などが集積し、高度に発達した[[金融センター]]を形成している(世界を代表する[[金融センター]]としてロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、東京が挙げられる<ref name="GFCI">[http://www.longfinance.net/global-financial-centres-index-20/1037-gfci-20.html Global Financial Centres Index 20] 2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*証券取引所、銀行、保険会社などが集積し、高度に発達した[[金融センター]]を形成している(世界を代表する金融センターとしてロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、東京が挙げられる<ref name="GFCI">[http://www.luxembourgforfinance.com/sites/luxembourgforfinance/files/files/GFCI22_Report.pdf The Global Financial Centres Index 22] 2017年10月28日閲覧。</ref>)。
*労働人口における高学歴者の割合が高く、企業や市場にサービスを提供する専門サービス業や知的産業が発展している。
*労働人口における高学歴者の割合が高く、企業や市場にサービスを提供する専門サービス業や知的産業が発展している。
*学術研究やビジネス、文化人など各分野における著名人が拠点を置いており、実績ある人材が集積している。


===政治的特徴===
===政治的特徴===
[[ファイル:WhiteHouseSouthFacade.JPG|thumb|200px|[[ホワイトハウス]]]]
[[ファイル:WhiteHouseSouthFacade.JPG|thumb|200px|[[ホワイトハウス]]]]
*[[中央政府]]など[[行政機関]]が所在し、グローバルな政治的影響力がある(例えば、主要国の首都である[[ワシントンD.C.]][[北京市|北京]]、東京、ロンドン、パリ、[[ベルリン]][[モスクワ]]などが代表的である)。
*中央政府など行政機関が所在し、グローバルな政治的影響力がある(主要国の首都であるワシントンD.C.、北京、東京、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、モスクワなどが代表的である)。
*[[大使館]][[領事館]]が所在してる。
*大使館や領事館が所在しており、外交の舞台となり得る。
*主要な[[シンクタンク]]がある(例えば、ニューヨークの[[外交問題評議会]]、ロンドンの[[王立国際問題研究所]]、北京の[[中国社会科学院]])。
*主要な[[シンクタンク]]がある(ニューヨークの[[外交問題評議会]]、ロンドンの[[王立国際問題研究所]]、北京の[[中国社会科学院]]など)。
*[[国際機関]]や地域統合体の本部が所在する(えば、ニューヨークには[[国際連合本部ビル|国連本部]]があり、[[ブリュッセル]]には[[欧州連合]]の主要機関が置かれている)。
*国際機関や地域統合体の本部が所在する(たとえば、ニューヨークには[[国際連合本部ビル|国連本部]]があり、[[ブリュッセル]]には[[欧州連合]]の主要機関が置かれている)。
*[[行政区画]]の人口が通常数百万人規模の大都市であり、さらに[[都市圏]]の中枢として機能している場合が多い。
*行政区画の人口が通常数百万人規模の大都市であり、さらに都市圏の中枢として機能している場合が多い。
*都市が世界的な影響力を持つことから、通常世界政治ではあまり注目されない地方首長も各国から注目される場合が多い(たとえば、[[ニューヨーク市長]]や[[東京都知事]]、[[ロンドン市長]]といった上位世界都市の選挙の場合は、世界的なニュースとなる)。


===文化的特徴===
===文化的特徴===
[[ファイル:British Museum from NE 2.JPG|thumb|upright|200px|[[大英博物館]]]]
[[ファイル:British Museum from NE 2.JPG|thumb|upright|200px|[[大英博物館]]]]
*都市の世界的な認知度が高い(えば、パリは「フランスのパリ」と国名を補足しなくてもそれが何かが自明であり、[[エッフェル塔]]や[[エトワール凱旋門|凱旋門]]など有名な[[ランドマーク]]がある)。
*都市の世界的な認知度が高い(たとえば、パリは「フランスのパリ」と国名を補足しなくてもそれが何かが自明であり、[[エッフェル塔]]や[[エトワール凱旋門|凱旋門]]など有名な[[ランドマーク]]がある)。
*外国人の訪問者数が多い([[2016]]の統計によると、世界でも外国人の訪問者数が多いのは[[バンコク]]であり、2位はロンドンである<ref>[http://newsroom.mastercard.com/press-releases/bangkok-takes-title-in-2016-mastercard-global-destinations-cities-index/ Bangkok Takes Title in 2016 Mastercard Global Destinations Cities Index] ''Mastercard.com'' 2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*外国人の訪問者数が多い(2016年の統計によると、世界でもっとも外国人の訪問者数が多いのは[[バンコク]]であり、2位はロンドンである<ref>[http://newsroom.mastercard.com/press-releases/bangkok-takes-title-in-2016-mastercard-global-destinations-cities-index/ Bangkok Takes Title in 2016 Mastercard Global Destinations Cities Index] ''Mastercard.com'' 2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*世界的に有名な学府や文化施設を擁する(例えば、ロンドンの[[ロンドン大学]]や[[大英博物館]]、ニューヨークの[[コロンビア大学]]や[[メトロポリタン美術館]]などが挙げられる)。
*世界的に有名な学府や文化施設を擁する(ロンドンの[[ロンドン大学]]や[[大英博物館]]、ニューヨークのコロンビア大学や[[メトロポリタン美術館]]など)。
*世界的に有名で世界情勢に多大な影響力をもつ[[通信社]][[マスメディア]]が本拠を置く(例えば、ニューヨークの[[AP通信]]や[[ニューヨーク・タイムズ]]、ロンドンの[[ロイター通信]]や[[英国放送協会|BBC]]、パリの[[フランス通信]]などが挙げられる)。
*世界的に有名で世界情勢に多大な影響力をもつ通信社やマスメディアが本拠を置く(ニューヨークの[[AP通信]]や[[ニューヨーク・タイムズ]]、ロンドンの[[ロイター通信]]や[[英国放送協会|BBC]]、パリの[[フランス通信]]など)。
*[[チャイナタウン]]など、都市の内部に複数の移民コミュニティーや異文化圏が存在することが多い。また、国際都市として大規模なビジネスを引きけることから、その土地本来の文化とは別に[[異邦人]]文化も形成される傾向もある。
*[[チャイナタウン]]など、都市の内部に複数の移民コミュニティーや異文化圏が存在することが多い。また、国際都市として大規模なビジネスを引きけることから、その土地本来の文化とは別に異邦人文化も形成される傾向もある。
*アートシーンをリードする様々な媒体や受け皿となる施設がある(例えば、ニューヨークの[[ブロードウェイ]]([[演劇]][[ミュージカル]])、[[リンカーンセンター]]([[オペラ]][[バレエ]][[音楽]])、[[ソーホー (ニューヨーク)|ソーホー]]([[ギャラリー (美術)|アートギャラリー]])、七番街([[ファッション]])、マディソン街([[広告]])などが挙げられる)。
*アートシーンをリードするさまざまな媒体や受け皿となる施設がある(ニューヨークの[[ブロードウェイ]](演劇・ミュージカル)、[[リンカーンセンター]](オペラ、バレエ、音楽)、[[ソーホー (ニューヨーク)|ソーホー]](美術)、七番街(ファッション)、マディソン街(広告)など)。
*幅広いスポーツコミュニティが存在し、メジャースポーツチームが本拠を置く(例えば、ニューヨークの[[ニューヨーク・ヤンキース|ヤンキース]]や[[ニューヨーク・メッツ|メッツ]]([[ジャーリーグベースボール|MLB]])、ロンドンの[[アーセナルFC]]や[[チェルシーFC]]([[サッカー]])などが挙げられる)。また、[[近代オリンピック|オリンピック]]、[[世界陸上選手権|世界陸上]]、[[世界水泳選手権|世界水泳]]、[[FIFAワールドカップ|サッカーワールドカップ]]などの国際スポーツイベントを開催可能な、あるいは過去に開催した実績のある施設が存在する。
*幅広いスポーツコミュニティが存在し、メジャースポーツチームが本拠を置く(ニューヨークの[[ニューヨーク・ヤンキース|ヤンキース]]や[[ニューヨーク・メッツ|メッツ]](プロ野球チーム)、東京の[[読売ジャイアンツ|ジャイアンツ]](プロ野球チーム)、ロンドンの[[チェシーFC|チェルシー]]や[[セナルFC|アーセナル]](プロサッカーチーム)など)。また、[[近代オリンピック|オリンピック]]、[[FIFAワールドカップ|ワールドカップ]]などの国際スポーツイベントを開催可能な、あるいは過去に開催した実績のある施設が存在する。


===社会基盤の特徴===
===社会基盤の特徴===
[[File:Airbus A340-642X, Virgin Atlantic Airways AN1204296.jpg|thumb|200px|[[ドバイ国際空港]]]]
[[ファイル:Airbus A340-642X, Virgin Atlantic Airways AN1204296.jpg|thumb|200px|[[ドバイ国際空港]]]]
*[[公共交通機関]][[高速道路|高速道路網]]が整備され、多種多様な交通手段をもつ。
*公共交通機関や高速道路網が整備され、多種多様な交通手段をもつ。
*複数の航空会社が[[ハブ空港]]としている大規模な[[国際空港]]がある([[2015]]において国際線の利用者数が世界でも多い[[空港]]は[[ドバイ国際空港]]である<ref name="Airport">[http://www.aci.aero/News/Releases/Most-Recent/2016/04/04/ACI-releases-preliminary-world-airport-traffic-rankings- ACI Media Releases]Airport Council International 2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*複数の航空会社が[[ハブ空港]]としている大規模な国際空港がある(2015年において国際線の利用者数が世界でもっとも多い空港は[[ドバイ国際空港]]である<ref name="Airport">[http://www.aci.aero/News/Releases/Most-Recent/2016/04/04/ACI-releases-preliminary-world-airport-traffic-rankings- ACI Media Releases]Airport Council International 2016年10月18日閲覧。</ref>)。
*[[多国籍企業]]の運営には不可欠な、先端技術を用いた高速[[電気通信|テレコミュニケーション]][[インフラストラクチャー]]が整備されている(例えば、[[光ファイバーケーブル|光ファイバーケーブル網]][[基地局|セリュラーネットワーク]][[Wi-Fi|インターネットアクセス]]などが挙げられる)。
*多国籍企業の運営には不可欠な、先端技術を用いた高速通信の都市基盤設備が整備されている(光ファイバーケーブル網、セリュラーネットワーク、インターネットアクセスなど)。
*住居コストが高い([[2016]]の調査報告によると、シンガポールが世界でも生活コストのかかる都市である<ref>[http://edition.cnn.com/2016/03/10/travel/most-expensive-cities-2016/ The world's most expensive city in 2016 is ...] CNN 2016年11月2日閲覧。</ref>)
*住居コストが高い(2016年の調査報告によると、シンガポールが世界でもっとも生活コストのかかる都市である<ref>[http://edition.cnn.com/2016/03/10/travel/most-expensive-cities-2016/ The world's most expensive city in 2016 is ...] CNN 2016年11月2日閲覧。</ref>
*[[コミュニティ]]の崩壊、[[ホームレス]]の増大、[[交通渋滞]]、外国人労働者の大量流入などの社会問題も抱える傾向にある<ref>加茂利男『世界都市』15頁 有斐閣 </ref>(えば、[[ドバイ]]の人口の83%は外国出身者で占められている<ref>[http://www.emirates247.com/news/emirates/dubai-most-cosmopolitan-city-globally-83-population-is-foreign-born-2016-01-17-1.617596 Dubai most cosmopolitan city globally, 83% population is foreign-born] emirates247 2016年11月3日閲覧。</ref>)。
*[[コミュニティ]]の崩壊、[[ホームレス]]の増大、[[交通渋滞]]、外国人労働者の大量流入などの社会問題も抱える傾向にある<ref>加茂利男『世界都市』15頁 有斐閣 </ref>(たとえば、[[ドバイ]]の人口の83%は外国出身者で占められている<ref>[http://www.emirates247.com/news/emirates/dubai-most-cosmopolitan-city-globally-83-population-is-foreign-born-2016-01-17-1.617596 Dubai most cosmopolitan city globally, 83% population is foreign-born] emirates247 2016年11月3日閲覧。</ref>)。
*[[富豪]][[富裕層]]が多く、社会格差が大きい(2016年時点で、個人資産10億ドル以上の[[ビリオネア]]も多い都市はニューヨークであり、2位は香港である<ref name="Billionaire">[http://www.forbes.com/sites/emilycanal/2016/03/09/the-cities-with-the-most-billionaires/#21307f6f1031 The Cities With The Most Billionaires] ''Forbes.com''. 2016年3月公表</ref>)。
*富豪、富裕層が多く、社会格差が大きい(2016年時点で、個人資産10億ドル以上の富裕層もっとも多い都市はニューヨークであり、2位は香港である<ref name="Billionaire">[http://www.forbes.com/sites/emilycanal/2016/03/09/the-cities-with-the-most-billionaires/#21307f6f1031 The Cities With The Most Billionaires] ''Forbes.com''. 2016年3月公表</ref>)。


==対照的な概念==
== 研究調査 ==
{{main|メガシティ}}
=== 世界都市指数 ===
世界都市と対照的な都市概念として、主に人口に基づいた都市規模の大きさを示す[[メガシティ]](巨大都市)がある。国連の統計によると、2018年現在で世界最大の都市は東京である<ref>[http://www.demographia.com/db-worldua.pdf Demographia World Urban Areas 14th Annual Edition: 201804] 2018年5月19日閲覧。</ref>。[[首都圏 (日本)|東京都市圏]]は、世界で唯一人口3,500万人を超えている大都市圏であり<ref name="demo">[http://www.demographia.com/db-worldua.pdf Demographia:World Urban Areas & Population Projections]</ref>、経済規模も世界最大である<ref name="GDPrank" />。[[ニューヨーク]]も人口2,000万人前後を抱える世界有数の都市圏を形成しており、東京とともに世界都市とメガシティの両性を強く兼ね備えた都市である。一方、同じく代表的な世界都市に挙げられるロンドンやパリは、都市圏人口において[[名古屋市]]とほぼ同水準であるなど<ref name="demo" />、世界トップクラスのメガシティとは言いがたい。サスキア・サッセンが「多くの世界都市はメガシティではない」と述べているように、たとえば[[チューリッヒ]]や[[ジュネーヴ]]は都市圏人口が100万人にも満たない非メガシティであるが、世界都市としては高い評価を得ている<ref name="GCI">[https://at.kearney.com/web/guest/global-cities/2020 2020 Global Cities Index: New priorities for a new world] AT Kearney 2020年公表</ref>。
アメリカの世界的な[[経営コンサルタント|経営コンサルティング]]会社[[A.T.カーニー]]は[[2016年]]、第6回目となる世界都市指数(Global Cities 2016)のレポートを公表した<ref name="GCI">[https://www.atkearney.com/documents/10192/8178456/Global+Cities+2016.pdf/8139cd44-c760-4a93-ad7d-11c5d347451a Global Cities 2016] (2016年公表)</ref>。[[2008年]]から開始されたこのランキングは、グローバル都市研究の第一人者である[[コロンビア大学]]教授の[[サスキア・サッセン]]や世界都市研究で有名な[[:en:Globalization and World Cities Research Network|GaWC]]ディレクターのピーター・テイラーが同レポートで見解を示すなど、代表的な世界都市指標の一つになっている。世界主要125都市を評価の対象としており、「ビジネス活動」(加重平均30%)、「人的資本」(同30%)、「情報流通」(同15%)、「文化的経験」(同15%)、「政治的関与」(同10%)の5つの分野、合計27の測定基準による総合評価によって順位を決めている。調査結果によると、[[ロンドン]]が世界最高であり、[[ニューヨーク]]、[[パリ]]、[[東京都|東京]]が続いた。上位10都市は以下の通りである。


==1970-1990年代==
{|class="wikitable" style="font-size:middle; text-align:right"
1970年代から1980年代の世界都市形成は、次第に金融主導型のそれに傾斜し、金融マネーの[[グローバリズム]]の所産という性格が、多分に強くなったと考えられる<ref>加茂利男『世界都市』 61頁 有斐閣</ref>。衛星通信やコンピュータ通信の飛躍的発展によって、世界の金融センターを結ぶ24時間取引や多国籍産業のグローバル・マネージメントが可能になったことも要因だと考えられる<ref name="p66">加茂利男『世界都市』 66頁 有斐閣</ref>。こうして国際情報を集積し、ボーダレス・マネーを動かして世界経済をコントロールする国際金融センターが現れ、世界的な都市ヒエラルキーの頂点に立った<ref name="p66" />。1990年ごろには、ロンドン・ニューヨーク・東京が「三大世界都市」と呼ばれ、グローバル経済と世界都市システムの頂点に姿を現していた<ref name="page138">加茂利男『世界都市』138頁 有斐閣 </ref>。ロンドンやニューヨークは[[国際金融]]と世界的な経済センターとしての位置を強化し、高次ビジネス・サービスに経済の重点を移したのである<ref name="page121">加茂利男『世界都市』121頁 有斐閣 </ref>。世界経済はますます金融に傾斜し、世界的な金融市場の拡大は国際金融と関連したビジネス・サービスの収益性を高めた<ref name="page121" />。ロンドンやニューヨークは、これらの国際的な金融、ビジネス・サービスと文化、人の移動、ものの輸送、デザイン、通信などの中心として生まれ変わることで「世界都市」と呼ばれるようになったのである<ref name="page121" />。一方、東京はロンドンやニューヨークとは経済構造が異なり、大都市圏としてみてみると金融やサービスはいうに及ばず、ハイテク、卸売業から都市型工業にいたるまで集積したフルセット型の産業構造であり、いわばオールマイティーな経済機能をもつ都市として世界都市形成を行った<ref>加茂利男『世界都市』 99-100頁 有斐閣</ref>。2001年に[[グレーター・ロンドン・オーソリティー|大ロンドン庁]]が公表した報告書「ロンドン・プラン」においても、ロンドン・ニューヨーク・東京の3都市を「本物の世界都市」と定義しており、世界都市としての三強時代が続いていた<ref>[https://www.rieti.go.jp/jp/special/special_report/017.html 独立行政法人 経済産業研究所]</ref>。
|-

==研究調査==
世界都市に関してもランキング指標が作成されている{{Sfn|埴淵|2018|p=491}}。

{{Harvtxt|埴淵|2018}}では、代表的なランキング指標として[[GaWC研究]]、グローバル都市指標、世界の都市総合力ランキングが挙げられている{{Sfn|埴淵|2018|p=491}}。

===グローバル都市指標===
'''グローバル都市指標'''({{en|Global Cities Index}})は、[[A.T.カーニー]]による指標である{{Sfn|埴淵|2018|p=492}}。

アメリカの世界的な[[経営コンサルタント|経営コンサルティング]]会社[[A.T.カーニー]]は2024年、第14回目となるグローバル都市指標のレポートを公表した<ref>{{Cite web|title=2024 Global Cities Report|url=https://www.kearney.com/service/global-business-policy-council/gcr|accessdate=2024-11-08|language=en}}</ref>。2008年から開始されたこのランキングは、グローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンや世界都市研究で有名なGaWCディレクターのピーター・テイラーが同レポートで見解を示すなど、代表的な世界都市指標の一つになっている。2024年版では世界主要156都市を評価の対象としており、「ビジネス活動」(加重平均30%)、「人的資本」(同30%)、「情報流通」(同15%)、「文化的経験」(同15%)、「政治的関与」(同10%)の5つの分野、合計31の測定基準による総合評価によって順位を決めている。調査結果によると、ニューヨークが世界最高であり、ロンドン、パリ、東京が続いた。上位10都市は以下の通りである。

{|class="wikitable" style="text-align:right"
!colspan="1"|'''順位'''
!colspan="1"|'''順位'''
!colspan="1"|{{center|'''変動'''}}
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|}
|}


=== 世界の都市総合力ランキング ===
===世界の都市総合力ランキング===
森記念財団都市戦略研究所は、[[2008年]]に「世界の都市総合力ランキング」(Global Power City Index, GPCI)の発表を開始して以来、毎年そのランキングを更新している<ref name="GPCI">世界の都市総合力ランキング (Global Power City Index 2016)([http://mori-m-foundation.or.jp/ius/gpci/index.shtml])</ref>。最高顧問に[[ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン]]元教授で「世界都市」を著した故[[:en:Peter Hall (urbanist)|ピーター・ホール]]、委員にグローバル都市研究の第一人者である[[コロンビア大学]]教授の[[サスキア・サッセン]]など世界的な有力者によって作成・監修されている。最新の[[2016年]]版では、世界を代表する主要42都市を選定し、都市の力を表す6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」)における70の指標に基づいて評価を行った。総合順位の首位は5年連続で[[ロンドン]]であった。分野別では「経済」で[[東京]]、「研究・開発」で[[ニューヨーク]]、「文化・交流」及び「交通・アクセス」でロンドン、「居住」で[[パリ]]、「環境」で[[フランクフルト]]がそれぞれ首位になった。総合順位の上位10都市は以下の通りである。<br />
'''世界の都市総合力ランキング'''(GPCI, {{en|Global Power City Index}})は、森記念財団都市戦略研究所(森ビル)による指標である{{Sfn|埴淵|2018|p=492}}。2008年に発表を開始して以来、毎年そのランキングを更新している<ref name="GPCI">世界の都市総合力ランキング[http://www.mori-m-foundation.or.jp/ius/gpci/]</ref>。最高顧問にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン元教授で「世界都市」を著したピーター・ホール、委員にグローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンなど世界的な有力者によって作成・監修されている。


最新の2022年版では、世界を代表する主要48都市を選定し、都市の力を表す6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」)における70の指標に基づいて評価を行った{{Sfn|森記念財団都市戦略研究所|2022|pp=2-3}}。総合順位の首位は11年連続でロンドンであった{{Sfn|森記念財団都市戦略研究所|2022|p=4}}。分野別では「経済」及び「研究・開発」でニューヨーク、「文化・交流」でロンドン、「居住」でパリ、「環境」でストックホルム、「交通・アクセス」で上海がそれぞれ首位になった{{Sfn|森記念財団都市戦略研究所|2022|p=11}}。総合順位の上位10都市は以下の通りである{{Sfn|森記念財団都市戦略研究所|2022|pp=4-5}}。
{|class="wikitable" style="font-size:middle; text-align:right"

{|class="wikitable" style="text-align:right"
|-
|-
!colspan="1"|'''順位'''
!colspan="1"|'''順位'''
!colspan="1"|{{center|'''変動'''}}
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!colspan="1"|{{center|'''都市'''}}
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|-
|1
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|align=left|{{Flagicon|UK}} [[ロンドン]]
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|align=left|{{Flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]
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|-
|3
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|-
|4
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|5
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|align=left|{{Flagicon|SIN}} [[シンガポール]]
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|6
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|10
|10
|align=center|{{steady}}
|align=left|{{Flagicon|CHN}} [[上海市|上海]]
|align=left|{{Flagicon|Austria}} [[ウィーン]]
|}
|}


===JLL===
=== 世界都市競争力レポート ===
アメリカの総合不動産大手のJLL([[ジョーンズ・ラング・ラサール]])は2017年、The Business of Cities(ザ・ビジネス・オブ・シティーズ)と共著で世界都市ランキングを発表した<ref name=":0">[http://www.jll.com/cities-research/Cities/benchmarking-and-indices Decoding City Performance] JLL 2017年10月14日閲覧。</ref><ref name="JLL2">[http://www.joneslanglasalle.co.jp/japan/ja-jp/Documents/Cities%20Research/20171023-DecodingCityPerformance2017-J.pdf 2017年版 都市比較インデックス 都市パフォーマンスの解読] JLL 2017年10月24日閲覧。</ref>。世界300以上の最先端の都市比較インデックスの中から網羅性、安定性、認知度に基づき選出された44の都市比較インデックスを7項目(企業のプレゼンス、[[ゲートウェイ]]機能、[[市場規模]]、[[インフラ]]基盤、[[人材]]、専門性と[[イノベーション]]、[[ソフトパワー]]) において分析し、都市の現状や発展のレベルなどを総合的に評価した<ref name="JLL3">[http://www.joneslanglasalle.co.jp/japan/ja-jp/news/353/decodingcityperformance2017 JLL、世界の都市比較インデックスを分析「都市パフォーマンスの解読」を発表 ] JLL 2017年10月25日閲覧。</ref>。世界でもっともグローバル化が進み、競争力のある経済があり、[[企業]]、[[資本]]、有能な人材が集中している都市を「確立された世界都市」({{en|Established World Cities}})として最上層のヒエラルキーに位置づけた<ref>[http://www.joneslanglasalle.co.jp/japan/ja-jp/news/308/city-momentum-index-2017 世界の都市活力ランキング「2017年版JLLシティ・モメンタム・インデックス」を発刊 ] JLL 2017年10月14日閲覧。</ref>。ロンドン(1位)、ニューヨーク(2位)、パリ(3位)、シンガポール(4位)、東京(5位)、香港(6位)が上位6都市となっており、これに今回新たにソウル(7位)が加わり、世界最高水準のグローバル都市「ビッグ7」を形成している<ref name="JLL3" />。特にロンドンとニューヨークが世界のグローバル都市を牽引し、企業の存在感、人材を惹きつける魅力、投資総額、文化や価値観で主導的な地位を維持している<ref name="JLL3" />。また、ロサンゼルスを筆頭に「ビッグ7」に続く第2グループの10都市も特定した<ref name="JLL2" />。2017年版において「確立された世界都市」に特定された17都市は以下の通りである。
[[中華人民共和国|中国]]のシンクタンクである[[中国社会科学院]]と[[国連]]機関の[[国際連合人間居住計画]]は[[2016年]]12月、最新の世界都市競争力レポート2017([[中国語]]: 全球城市竞争力报告2017、[[英語]]: The Global Urban Competitiveness Report 2017)を発表した<ref name="GUCP">[http://www.gucp.org/News/Articles/Index/1298 “丝绸之路城市网”研讨与《全球城市竞争力报告》发布] GUCP 2017年1月13日閲覧。</ref>。世界の505都市を評価の対象としており、首位は[[ロンドン]]であった。上位100都市には[[欧州]]が37都市、[[北米]]が38都市、[[アジア]]が19都市、[[オセアニア]]が6都市ランクインした。また、[[南米]]と[[アフリカ]]の都市は上位100都市にランクインしなかった。上位10都市は以下の通りである。


{|class="wikitable" style="font-size:middle; text-align:right"
{|class=wikitable
!格付け
!都市
|-
|-
|トップグループ
!colspan="1"|'''順位'''
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!colspan="1"|{{center|'''都市'''}}
*{{flagicon|GBR}} [[ロンドン]]
|-
*{{flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]
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|2
*{{flagicon|HKG}} [[香港]]
|align=left|{{Flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]
*{{flagicon|KOR}} [[ソウル特別市|ソウル]]
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|7
|align=left|{{Flagicon|China}} [[上海]]
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|align=left|{{Flagicon|China}} [[北京]]
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|9
|align=left|{{Flagicon|AUS}} [[シドニー]]
|-
|-
|第2グループ
|10
|
|align=left|{{Flagicon|Germany}} [[フランクフルト]]
*{{flagicon|USA}} [[ロサンゼルス]]
*{{flagicon|CHN}} [[上海市|上海]]
*{{flagicon|CHN}} [[北京市|北京]]
*{{flagicon|NED}} [[アムステルダム]]
*{{flagicon|USA}} [[シカゴ]]
*{{flagicon|USA}} [[サンフランシスコ]]
*{{flagicon|CAN}} [[トロント]]
*{{flagicon|ESP}} [[マドリード]]
*{{flagicon|AUS}} [[シドニー]]
*{{flagicon|USA}} [[ワシントンD.C.]]
|}
|}


=== GaWC ===
===GaWC===
{{Main|GaWC研究|:en:Globalization and World Cities Research Network}}
「[[:en:Globalization and World Cities Research Network|グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク]]」(GaWC)は、[[イギリス]]の[[:en:Loughborough University|ラフバラー大学]]の地理学部がベースとなって行われている有力な世界都市研究グループの一つである<ref>[http://www.lboro.ac.uk/gawc/index.html Globalization and World Cities Research Network] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。世界都市の評価基準はビジネス分野にほぼ特化しており、[[会計]]、[[広告]]、[[法律]]、[[経営コンサルタント]]、[[金融]]など特定の高度サービス企業のオフィスの立地、充実度、都市間におけるグローバルな連結性などである<ref>[http://www.lboro.ac.uk/gawc/rb/rb310.html GaWC Research Bulletin 310] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。[[1998年]]に最初の格付けを行い、最高峰の世界都市として[[ロンドン]]、[[ニューヨーク]]、[[パリ]]及び[[東京]]を選定した<ref>[http://www.lboro.ac.uk/gawc/citylist.html Inventory of World Cities (1998)] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。その後、[[2000年]]版、[[2004年]]版、[[2008年]]版、[[2010年]]版、[[2012年]]版を公表しており、いずれも最高峰の"アルファ++"と格付けされた都市はロンドンとニューヨークの2都市のみである<ref name="GaWC">[http://www.lboro.ac.uk/gawc/gawcworlds.html The World According to GaWC] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。2012年版の上位10都市は以下の通りである。
'''GaWC'''({{en|Globalization and World City Research Network}}、グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク){{Efn|[http://www.lboro.ac.uk/gawc/index.html Globalization and World Cities Research Network] 2021年3月17日閲覧。}}は、イギリスの[[ラフバラー大学]]に研究拠点を置くグループである{{Sfn|埴淵|2008|p=572}}。[[ピーター・テイラー (地理学者)|ピーター・テイラー]]などがこのグループの中心となり{{Sfn|埴淵|2018|p=492}}、世界都市システム研究をリードしてきた{{Sfn|埴淵|2008|p=572}}。世界都市の評価基準はビジネス分野にほぼ特化しており、会計、広告、[[法律]]、経営コンサルタント、金融など特定の高度サービス企業のオフィスの立地、充実度、都市間におけるグローバルな連結性などである<ref>[http://www.lboro.ac.uk/gawc/rb/rb310.html GaWC Research Bulletin 310] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。


1998年に最初の格付けを行い、最高峰の世界都市としてロンドン、ニューヨーク、パリ及び東京を選定した<ref>[http://www.lboro.ac.uk/gawc/citylist.html Inventory of World Cities (1998)] GaWC 2016年10月30日閲覧。</ref>。2008年以降2年ごとに公表しており、いずれも最高峰のアルファ++に格付けされた都市はロンドンとニューヨークの2都市のみである<ref name="GaWC">[http://www.lboro.ac.uk/gawc/gawcworlds.html The World According to GaWC] GaWC 2017年4月2日閲覧。</ref>。最新の2020年版においてアルファ++とアルファ+に格付けされた都市は以下の通りである<ref>{{Cite web|url=https://www.lboro.ac.uk/gawc/world2020t.html|title=GaWC - The World According to GaWC 2020|date=2020-08-21|accessdate=2021-03-17}}</ref>。
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!格付け
!都市
|-
|-
|アルファ ++
!colspan="1"|{{center|'''格付け'''}}
|
!colspan="1"|{{center|'''都市'''}}
*{{flagicon|GBR}} [[ロンドン]]
*{{flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]
|-
|-
|rowspan="2"|アルファ++
|アルファ +
|
|align=left|{{Flagicon|UK}} [[ロンドン]]
*{{flagicon|HKG}} [[香港]]
|-
|align=left|{{Flagicon|USA}} [[ニューヨ]]
*{{flagicon|SGP}} [[シンガポ]]
*{{flagicon|CHN}} [[上海市|上海]]
|-
*{{flagicon|CHN}} [[北京市|北京]]
|rowspan="8"|アルファ+
|align=left|{{flagicon|HK}} [[香港]]
*{{flagicon|UAE}} [[ドバイ]]
*{{flagicon|FRA}} [[パリ]]
|-
|align=left|{{Flagicon|France}} [[パリ]]
*{{flagicon|JPN}} [[東京]]
|-
|align=left|{{Flagicon|Singapore}} [[シンガポール]]
|-
|align=left|{{Flagicon|CHN}} [[上海]]
|-
|align=left|{{Flagicon|JPN}} [[東京都|東京]]
|-
|align=left|{{Flagicon|CHN}} [[北京]]
|-
|align=left|{{Flagicon|AUS}} [[シドニー]]
|-
|align=left|{{Flagicon|UAE}} [[ドバイ]]
|}
|}
<br />


=== グローバルシティズ・イニシアチブ ===
== 脚注 ==
[[ブルッキングス研究所]]は2016年、独自の定義により世界都市を7つのカテゴリに分けて評価した研究を発表した<ref>{{Cite web|title=Redefining Global Cities|url=https://www.brookings.edu/research/redefining-global-cities/|website=Brookings|date=-001-11-30T00:00:00+00:00|accessdate=2019-11-30|language=en-US|first=Jesus Leal Trujillo and Joseph|last=Parilla}}</ref>。その中でも裕福かつ巨大な大都市圏を形成し、金融と大企業の本社機能のハブでもあり、国際的な資本と才能の集まる結節点になっている先進国の都市をグローバルジャイアントと定義した。グローバルジャイアントとして評価されている都市は以下の通りである。
<div class="references-small">{{reflist|2}}</div>
* {{Flagicon|USA}} [[ニューヨーク]]
* {{Flagicon|USA}} [[ロサンゼルス]]
* {{Flagicon|JPN}} [[東京都|東京]]
* {{Flagicon|JPN}} [[京阪神|京都-大阪-神戸]]
* {{Flagicon|GBR}} [[ロンドン]]
* {{Flagicon|FRA}} [[パリ]]

==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|author=埴淵知哉|year=2008|title=GaWCによる世界都市システム研究の成果と課題ー組織論およびNGO研究の視点からー|journal=地理学評論|volume=81|issue=7|pages=571-590|doi=10.4157/grj.81.571|ref={{SfnRef|埴淵|2008}}}}
* {{Cite book|和書|author=埴淵知哉|year=2018|chapter=世界都市ランキング|pages=491-494|editor=[[経済地理学会]] 編|title=キーワードで読む経済地理学|publisher=原書房|isbn=978-4-562-09211-6|ref={{SfnRef|埴淵|2018}}}}
* {{Cite web|author=森記念財団都市戦略研究所 編|url=https://www.mori-m-foundation.or.jp/pdf/GPCI2022_summary.pdf|title=Global Power City Index 2022|date=2022-12|accessdate=2022-12-15|ref={{SfnRef|森記念財団都市戦略研究所|2022}}}}


== 関連項目 ==
==関連項目==
{{Commons|Global City}}
{{Commons|Global City}}
* [[メトロポリス]]
*[[メガシティ]]
* [[メロポリス]]
*[[メロポリス]]
* [[メガシティ]]
*[[メガロポリス]]
*[[グローバリゼーション]]
* [[域内総生産順リスト|都市のGDP]]
*[[世界の都市圏人口の順位]]
* [[金融センター]]
* [[世界の都市圏人口の順位]]


{{グローバリゼーション}}
{{グローバリゼーション}}
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{{都市社会学}}
{{都市社会学}}
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{{DEFAULTSORT:せかいとし}}
{{デフォルトソート:せかいとし}}
[[Category:都市]]
[[Category:都市]]
[[Category:グローバリゼーション]]
[[Category:グローバリゼーション]]

2024年11月8日 (金) 04:58時点における最新版

世界都市(せかいとし、: world city: Weltstadt)とは、主に経済的、政治的、文化的な中枢機能が集積しており、世界的な観点による重要性や影響力の高い都市グローバル都市: global city)ともいう。

用語

[編集]

今日の「世界都市」にあたる言葉の淵源・由来やその歴史的意味合いについてはさまざまな説があり、概念史はまだ確定状態ではない[1]

地理学者で、「メガロポリス」の著者でもあるジャン・ゴットマンは、世界都市というのは文豪ゲーテが1787年に、ローマの歴史的な文化的卓越性をもった都市としての性質を表現するために作った、「Weltstadt」(ドイツ語での世界都市)という言葉にその源を発すると述べている[1]。一方、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの地理学者であったピーター・ホール英語版は「世界都市」を著し、スコットランドの地域計画家パトリック・ゲデスが『進化する都市』(1915年)という本の中で、「世界でもっとも重要なビジネスのきわめて大きな部分が集積して行われる大都市」のことを「世界都市」(: world city)と命名したと述べ、この言葉の由来をゲデスに求めている[1]

1991年、コロンビア大学教授のサスキア・サッセンは、著書『グローバル都市-ニューヨーク、ロンドン、東京』において、初めて「グローバル都市」(global city)という表現を用いた[2]

定義

[編集]

多国籍企業とグローバル・マネーの形成が本格化した1970年代、国際的な企業・法人本部とそれを支える活動の複合体を擁する都市を「世界都市」と定義し、こうした都市の育成をはかる議論が始まった[3]。1986年、カリフォルニア大学教授のジョン・フリードマン英語版は『世界都市仮説』を著し、世界都市を定義した[4]。フリードマンの主要な世界都市の定義は以下の通りである。

  • 資本主義の世界システムの中で、法人の拠点、金融センター、グローバル・システムや地域・国民経済の結節点としてその機能を果たす都市[4]
  • 多国籍企業がその基地として立地し利用するため、複雑な国際的・空間的階層の中に位置づけられる都市[4]
  • グローバルな管理機能の集積を反映して、法人の中枢部門、国際的な金融・輸送・通信・広告・保険・法務などの高次ビジネス・サービスなどが成長する都市[4]

フリードマンは多国籍企業の本社部門の所在それ自体を重くみる世界都市論を展開していたが、サッセンは「1960年代、1970年代に比べて都市の経済力を測定する尺度としては十分なものではなくなっている」と述べ、今や金融、高次法人サービスなどの活動こそが国際都市ヒエラルキーを左右し、世界都市を形成する要因として重要性をもつものと説明した[5]。経済活動の地球的な規模での分散が同時に地球規模の統合、コントロール機能の形成を促しており、こうしたセンター機能が集積する少数の都市(ロンドンニューヨーク東京など)こそグローバル都市だとした[6]

2017年、アメリカのシンクタンクであり、世界都市研究に深く関与し続けてきたシカゴ国際問題評議会英語版は、「何がグローバル都市を作るのか?」(: What Makes a Global City?)という題名でグローバル都市の定義や傾向を定めた[7]。主な内容な以下の通りである。

  • 世界経済をリードしている。
  • 都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは十分ではない。
  • 国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつける魅力がある。
  • 大学など高等教育が発展しており、子供や労働者にも充実した教育環境を提供している。
  • 外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事があり、その情熱、気迫が都市のバイタリティーを高めている。
  • 文化的な中心地である。博物館、劇場、レストラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実している。
  • デスティネーション、いわば目的地であり、観光客にとって魅力的である。
  • 政治的影響力があることは有利な条件である。首都ではないグローバル都市も領事館、シンクタンク、国際会議場などを有する。
  • 国際的なハブであり、グローバルな連結性が高い。都市圏にメジャーな国際空港がある。
  • グローバル都市に必要な先見の明のある指導者がいる。
  • 生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生活環境、治安のよさ、ヘルスケア、地方政府の効率性などが発展している。
  • オープンである。移民、デジタルコミュニケーション、トレードなどの制限が少ない。報道の自由度が高い。

代表的な世界都市

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ニューヨーク(アメリカ)

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ロンドンとともに世界最高峰に位置づけられる都市[8][9][10][11]超大国アメリカ合衆国ならびに世界における経済・金融・文化・交通・メディア・娯楽・観光などの中心的な都市の一つである。ニューヨーク証券取引所は世界最大の証券取引所であり、世界経済に大きな影響力を持つ。中心街のマンハッタン国際連合の本部が所在するなど、数々の国際機関も集積しており首都ではないながらも絶大な政治的影響力がある。世界大手の通信社AP通信ニューヨーク・タイムズウォール・ストリート・ジャーナル、さらにアメリカ三大テレビ局の本社もあり、メディアに関してもグローバルな影響力を有する。メトロポリタン美術館など文化施設も多く、世界遺産自由の女神像はニューヨークならびに自由民主主義の象徴である。2016年の調査では、個人資産が10億ドル以上の大富豪が世界でもっとも多い都市である[12]

ロンドン(イギリス)

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ニューヨークとともに世界最高峰に位置づけられる都市[9][10][11][8]。世界における金融・文化・交通・教育・メディア・娯楽・観光などの中心的都市の一つである。世界最高の金融センターとされ[13]外国為替市場の取引額はイギリスが世界一であり[14]、その中心は首都ロンドンである。世界でもっとも外国人の訪れる都市の一つであり、ロンドン・ヒースロー空港は世界最大級のハブ空港である。ロンドンで2番目に大きいロンドン・ガトウィック空港も国際線の年間利用者数でニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港を上回る[15]。外国出身者の人口は2011年時点で約300万人であり[16]、多種多様な民族が混在して暮らしている。ロンドン塔ウェストミンスター宮殿など数々の世界遺産を有し、大英博物館など著名な文化施設も多い。特に文化的な交流の面で強く、王立国際問題研究所は世界的なシンクタンクであり、メディア大手のタイムズBBC英語が事実上の世界共通語であることからも国際的な影響力を有する。2016年の調査では、個人資産が3,000万ドル以上の超富裕層が世界でもっとも重要とする都市である[17]。一方で、2020年にイギリスがEUを離脱したことにより、世界都市としての地位の低下も懸念されている[18]

パリ(フランス)

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ロンドンと共に欧州地域を代表する世界都市。国連安保理常任理事国G7に加盟している国の首都であり、経済・芸術・文化・交通・メディア・娯楽・観光の中心地である。OECDユネスコなど国際機関の本部が多数集積しており、フランス通信社BNPパリバなどはグローバルな影響力を有する。A.T.カーニーの調査では情報交換の分野において世界最高の評価を受けている[9]パリ=シャルル・ド・ゴール空港は世界屈指のハブ空港であり、地下鉄のメトロなど交通・アクセス部門も充実している。ルーブル美術館フランス料理に代表される文化に恵まれた世界屈指の観光都市であり、エッフェル塔凱旋門など都市を象徴する世界的認知度の高いランドマークが多い。2024年にはオリンピックパラリンピックが開催されている。

東京(日本)

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アジアを代表する世界都市の一つ[19]。経済的な評価は相対的に低下傾向にあるものの[20][11]、政治や文化を含めた総合的な評価はアジアで最高位に位置づけられる[9][10][21]日本の政治や経済の本部機能が一極集積しており、ニューヨークを上回る世界最大の経済規模の都市圏を形成している[22]。アメリカの大手旅行誌に2年連続で「世界でもっとも魅力のある都市」に選出されるなど、観光面でも高い評価を得ている[23]。また、世界主要60都市の中で「もっとも安全な都市」との評価も受けている[24]。また東京は、北京に次いで大企業の本社が多い都市とされる[25]。東京は1980年代末から長らくニューヨーク、ロンドンと共に「三大金融センター」と位置付けられてきたが[26]、2023年の評価では世界20位にまで順位を落としている[27]。また、日本の森記念財団は、「女性の社会進出の不足」「少ない外国人居住者数」「歴史・伝統への接触機会の限界」に加え、航空機の国際線の便数や五つ星ホテルの客室数で見劣りする点が東京の課題との分析を示している[28]

香港(中国)

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アジアを代表する世界都市の一つ[9][10][11][8]。経済面での評価においてはすでに世界トップクラスといえる[21][29][30]アジア太平洋地域における金融・交通・教育・メディアなどの中心的な役割を持つ。ロンドン、ニューヨークに次ぐ世界3位の金融センターとの評価を受けており[13]ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレーなど多くの世界的金融機関がアジア太平洋地域における統括拠点としている。香港国際空港は世界屈指のハブ空港である。23年連続で世界でもっとも経済や貿易の自由度が高い都市との評価を受けており[31]2016年の調査では、個人資産が10億ドル以上の大富豪がニューヨークに次いで、世界で2番目に多い都市である[12]。一方、2019年の中国共産党の自由弾圧により、香港には政治リスクがあり、投資の減少や資産の流出によりその地位が危ぶまれている[32]

シンガポール

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アジアを代表する世界都市の一つ[9][10][11][8]。外国為替市場の取引額で日本を上回るなど[14]、世界的な金融センターに成長している[13]富裕層人口が多く、中央値の世帯収入も高水準である[33]シンガポール国立大学南洋理工大学はアジア最高水準の大学との評価を受けるなど[34]、高水準の高等教育機関が所在する。シンガポール・チャンギ国際空港は2017年に世界最高の空港に選出されている[35]。世界有数のデスティネーションであり、マーライオンマリーナベイ・サンズは代表的なランドマークである。高等教育を受けた人材や英語話者が比較的多く、税制の効率性やビジネスのしやすさなどが高いことから[36]、多くの多国籍企業はアジア太平洋の地域統轄拠点としている。

特徴

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経済的特徴

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ニューヨーク証券取引所
  • ビジネス活動が盛んであり、都市の経済規模が大きい(東京は都市の経済規模が世界最大であり、2位のニューヨークも巨大な経済圏を形成している [22])。
  • 国際的に活動している法人本社部門とその活動を支える金融・保険・通信・証券・不動産・法務・会計・広告・コンサルティングなどの高次法人サービス、それにレストラン・出版・印刷、運輸・倉庫・専門店・ファッション・ホテル・観光・教育・芸術・医療・福祉・娯楽などの補助サービスが集積している。
  • 多国籍企業の本社など、世界経済に影響を及ぼす組織の中枢が所在する(2016年時点で世界の500大企業の中でもっとも本社数が多い都市は北京であり、2位は東京である[37])。
  • 証券取引所、銀行、保険会社などが集積し、高度に発達した金融センターを形成している(世界を代表する金融センターとしてロンドン、ニューヨーク、シンガポール、香港、東京が挙げられる[13])。
  • 労働人口における高学歴者の割合が高く、企業や市場にサービスを提供する専門サービス業や知的産業が発展している。
  • 学術研究やビジネス、文化人など各分野における著名人が拠点を置いており、実績ある人材が集積している。

政治的特徴

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ホワイトハウス
  • 中央政府など行政機関が所在し、グローバルな政治的影響力がある(主要国の首都であるワシントンD.C.、北京、東京、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマ、モスクワなどが代表的である)。
  • 大使館や領事館が所在しており、外交の舞台となり得る。
  • 主要なシンクタンクがある(ニューヨークの外交問題評議会、ロンドンの王立国際問題研究所、北京の中国社会科学院など)。
  • 国際機関や地域統合体の本部が所在する(たとえば、ニューヨークには国連本部があり、ブリュッセルには欧州連合の主要機関が置かれている)。
  • 行政区画の人口が通常数百万人規模の大都市であり、さらに都市圏の中枢として機能している場合が多い。
  • 都市が世界的な影響力を持つことから、通常世界政治ではあまり注目されない地方首長も各国から注目される場合が多い(たとえば、ニューヨーク市長東京都知事ロンドン市長といった上位世界都市の選挙の場合は、世界的なニュースとなる)。

文化的特徴

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大英博物館
  • 都市の世界的な認知度が高い(たとえば、パリは「フランスのパリ」と国名を補足しなくてもそれが何かが自明であり、エッフェル塔凱旋門など有名なランドマークがある)。
  • 外国人の訪問者数が多い(2016年の統計によると、世界でもっとも外国人の訪問者数が多いのはバンコクであり、2位はロンドンである[38])。
  • 世界的に有名な学府や文化施設を擁する(ロンドンのロンドン大学大英博物館、ニューヨークのコロンビア大学やメトロポリタン美術館など)。
  • 世界的に有名で世界情勢に多大な影響力をもつ通信社やマスメディアが本拠を置く(ニューヨークのAP通信ニューヨーク・タイムズ、ロンドンのロイター通信BBC、パリのフランス通信など)。
  • チャイナタウンなど、都市の内部に複数の移民コミュニティーや異文化圏が存在することが多い。また、国際都市として大規模なビジネスを引きつけることから、その土地本来の文化とは別に異邦人文化も形成される傾向もある。
  • アートシーンをリードするさまざまな媒体や受け皿となる施設がある(ニューヨークのブロードウェイ(演劇・ミュージカル)、リンカーンセンター(オペラ、バレエ、音楽)、ソーホー(美術館)、七番街(ファッション)、マディソン街(広告)など)。
  • 幅広いスポーツコミュニティが存在し、メジャースポーツチームが本拠を置く(ニューヨークのヤンキースメッツ(プロ野球チーム)、東京のジャイアンツ(プロ野球チーム)、ロンドンのチェルシーアーセナル(プロサッカーチーム)など)。また、オリンピックワールドカップなどの国際スポーツイベントを開催可能な、あるいは過去に開催した実績のある施設が存在する。

社会基盤の特徴

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ドバイ国際空港
  • 公共交通機関や高速道路網が整備され、多種多様な交通手段をもつ。
  • 複数の航空会社がハブ空港としている大規模な国際空港がある(2015年において国際線の利用者数が世界でもっとも多い空港はドバイ国際空港である[15])。
  • 多国籍企業の運営には不可欠な、先端技術を用いた高速通信の都市基盤設備が整備されている(光ファイバーケーブル網、セリュラーネットワーク、インターネットアクセスなど)。
  • 住居コストが高い(2016年の調査報告によると、シンガポールが世界でもっとも生活コストのかかる都市である[39])。
  • コミュニティの崩壊、ホームレスの増大、交通渋滞、外国人労働者の大量流入などの社会問題も抱える傾向にある[40](たとえば、ドバイの人口の83%は外国出身者で占められている[41])。
  • 富豪、富裕層が多く、社会格差が大きい(2016年時点で、個人資産10億ドル以上の富裕層がもっとも多い都市はニューヨークであり、2位は香港である[12])。

対照的な概念

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世界都市と対照的な都市概念として、主に人口に基づいた都市規模の大きさを示すメガシティ(巨大都市)がある。国連の統計によると、2018年現在で世界最大の都市は東京である[42]東京都市圏は、世界で唯一人口3,500万人を超えている大都市圏であり[43]、経済規模も世界最大である[22]ニューヨークも人口2,000万人前後を抱える世界有数の都市圏を形成しており、東京とともに世界都市とメガシティの両性を強く兼ね備えた都市である。一方、同じく代表的な世界都市に挙げられるロンドンやパリは、都市圏人口において名古屋市とほぼ同水準であるなど[43]、世界トップクラスのメガシティとは言いがたい。サスキア・サッセンが「多くの世界都市はメガシティではない」と述べているように、たとえばチューリッヒジュネーヴは都市圏人口が100万人にも満たない非メガシティであるが、世界都市としては高い評価を得ている[9]

1970-1990年代

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1970年代から1980年代の世界都市形成は、次第に金融主導型のそれに傾斜し、金融マネーのグローバリズムの所産という性格が、多分に強くなったと考えられる[44]。衛星通信やコンピュータ通信の飛躍的発展によって、世界の金融センターを結ぶ24時間取引や多国籍産業のグローバル・マネージメントが可能になったことも要因だと考えられる[45]。こうして国際情報を集積し、ボーダレス・マネーを動かして世界経済をコントロールする国際金融センターが現れ、世界的な都市ヒエラルキーの頂点に立った[45]。1990年ごろには、ロンドン・ニューヨーク・東京が「三大世界都市」と呼ばれ、グローバル経済と世界都市システムの頂点に姿を現していた[46]。ロンドンやニューヨークは国際金融と世界的な経済センターとしての位置を強化し、高次ビジネス・サービスに経済の重点を移したのである[47]。世界経済はますます金融に傾斜し、世界的な金融市場の拡大は国際金融と関連したビジネス・サービスの収益性を高めた[47]。ロンドンやニューヨークは、これらの国際的な金融、ビジネス・サービスと文化、人の移動、ものの輸送、デザイン、通信などの中心として生まれ変わることで「世界都市」と呼ばれるようになったのである[47]。一方、東京はロンドンやニューヨークとは経済構造が異なり、大都市圏としてみてみると金融やサービスはいうに及ばず、ハイテク、卸売業から都市型工業にいたるまで集積したフルセット型の産業構造であり、いわばオールマイティーな経済機能をもつ都市として世界都市形成を行った[48]。2001年に大ロンドン庁が公表した報告書「ロンドン・プラン」においても、ロンドン・ニューヨーク・東京の3都市を「本物の世界都市」と定義しており、世界都市としての三強時代が続いていた[49]

研究調査

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世界都市に関してもランキング指標が作成されている[50]

埴淵 (2018)では、代表的なランキング指標としてGaWC研究、グローバル都市指標、世界の都市総合力ランキングが挙げられている[50]

グローバル都市指標

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グローバル都市指標Global Cities Index)は、A.T.カーニーによる指標である[51]

アメリカの世界的な経営コンサルティング会社A.T.カーニーは2024年、第14回目となるグローバル都市指標のレポートを公表した[52]。2008年から開始されたこのランキングは、グローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンや世界都市研究で有名なGaWCディレクターのピーター・テイラーが同レポートで見解を示すなど、代表的な世界都市指標の一つになっている。2024年版では世界主要156都市を評価の対象としており、「ビジネス活動」(加重平均30%)、「人的資本」(同30%)、「情報流通」(同15%)、「文化的経験」(同15%)、「政治的関与」(同10%)の5つの分野、合計31の測定基準による総合評価によって順位を決めている。調査結果によると、ニューヨークが世界最高であり、ロンドン、パリ、東京が続いた。上位10都市は以下の通りである。

順位
都市
1 アメリカ合衆国の旗 ニューヨーク
2 イギリスの旗 ロンドン
3 フランスの旗 パリ
4 日本の旗 東京
5 シンガポールの旗 シンガポール
6 中華人民共和国の旗 北京
7 アメリカ合衆国の旗 ロサンゼルス
8 中華人民共和国の旗 上海
9 香港の旗 香港
10 アメリカ合衆国の旗 シカゴ

世界の都市総合力ランキング

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世界の都市総合力ランキング(GPCI, Global Power City Index)は、森記念財団都市戦略研究所(森ビル)による指標である[51]。2008年に発表を開始して以来、毎年そのランキングを更新している[10]。最高顧問にユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン元教授で「世界都市」を著したピーター・ホール、委員にグローバル都市研究の第一人者であるコロンビア大学教授のサスキア・サッセンなど世界的な有力者によって作成・監修されている。

最新の2022年版では、世界を代表する主要48都市を選定し、都市の力を表す6分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」)における70の指標に基づいて評価を行った[53]。総合順位の首位は11年連続でロンドンであった[54]。分野別では「経済」及び「研究・開発」でニューヨーク、「文化・交流」でロンドン、「居住」でパリ、「環境」でストックホルム、「交通・アクセス」で上海がそれぞれ首位になった[55]。総合順位の上位10都市は以下の通りである[56]

順位
都市
1 イギリスの旗 ロンドン
2 アメリカ合衆国の旗 ニューヨーク
3 日本の旗 東京
4 フランスの旗 パリ
5 シンガポールの旗 シンガポール
6 オランダの旗 アムステルダム
7 大韓民国の旗 ソウル
8 ドイツの旗 ベルリン
9 オーストラリアの旗 メルボルン
10 中華人民共和国の旗 上海

JLL

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アメリカの総合不動産大手のJLL(ジョーンズ・ラング・ラサール)は2017年、The Business of Cities(ザ・ビジネス・オブ・シティーズ)と共著で世界都市ランキングを発表した[57][8]。世界300以上の最先端の都市比較インデックスの中から網羅性、安定性、認知度に基づき選出された44の都市比較インデックスを7項目(企業のプレゼンス、ゲートウェイ機能、市場規模インフラ基盤、人材、専門性とイノベーションソフトパワー) において分析し、都市の現状や発展のレベルなどを総合的に評価した[58]。世界でもっともグローバル化が進み、競争力のある経済があり、企業資本、有能な人材が集中している都市を「確立された世界都市」(Established World Cities)として最上層のヒエラルキーに位置づけた[59]。ロンドン(1位)、ニューヨーク(2位)、パリ(3位)、シンガポール(4位)、東京(5位)、香港(6位)が上位6都市となっており、これに今回新たにソウル(7位)が加わり、世界最高水準のグローバル都市「ビッグ7」を形成している[58]。特にロンドンとニューヨークが世界のグローバル都市を牽引し、企業の存在感、人材を惹きつける魅力、投資総額、文化や価値観で主導的な地位を維持している[58]。また、ロサンゼルスを筆頭に「ビッグ7」に続く第2グループの10都市も特定した[8]。2017年版において「確立された世界都市」に特定された17都市は以下の通りである。

格付け 都市
トップグループ
第2グループ

GaWC

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GaWCGlobalization and World City Research Network、グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク)[注釈 1]は、イギリスのラフバラー大学に研究拠点を置くグループである[60]ピーター・テイラーなどがこのグループの中心となり[51]、世界都市システム研究をリードしてきた[60]。世界都市の評価基準はビジネス分野にほぼ特化しており、会計、広告、法律、経営コンサルタント、金融など特定の高度サービス企業のオフィスの立地、充実度、都市間におけるグローバルな連結性などである[61]

1998年に最初の格付けを行い、最高峰の世界都市としてロンドン、ニューヨーク、パリ及び東京を選定した[62]。2008年以降2年ごとに公表しており、いずれも最高峰のアルファ++に格付けされた都市はロンドンとニューヨークの2都市のみである[11]。最新の2020年版においてアルファ++とアルファ+に格付けされた都市は以下の通りである[63]

格付け 都市
アルファ ++
アルファ +

グローバルシティズ・イニシアチブ

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ブルッキングス研究所は2016年、独自の定義により世界都市を7つのカテゴリに分けて評価した研究を発表した[64]。その中でも裕福かつ巨大な大都市圏を形成し、金融と大企業の本社機能のハブでもあり、国際的な資本と才能の集まる結節点になっている先進国の都市をグローバルジャイアントと定義した。グローバルジャイアントとして評価されている都市は以下の通りである。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c 加茂利男『世界都市』 27頁 有斐閣
  2. ^ 市川宏雄. “東京の未来戦略”. 2021年3月17日閲覧。
  3. ^ 加茂利男『世界都市』 12頁 有斐閣
  4. ^ a b c d 加茂利男『世界都市』 16頁 有斐閣
  5. ^ 加茂利男『世界都市』 17-18頁 有斐閣
  6. ^ 加茂利男『世界都市』 17頁 有斐閣
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参考文献

[編集]
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  • 埴淵知哉 著「世界都市ランキング」、経済地理学会 編 編『キーワードで読む経済地理学』原書房、2018年、491-494頁。ISBN 978-4-562-09211-6 
  • 森記念財団都市戦略研究所 編 (2022年12月). “Global Power City Index 2022”. 2022年12月15日閲覧。

関連項目

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