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「ファイトケミカル」の版間の差分

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フィトケミカルという言葉は存在せずファイトケミカルが正しい言葉であるが、無理やりフィトケミカルと言う誤った言葉をごり押しして広めようとしている人物がいるようである。
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'''フトケミカル'''({{lang-en-short|phytochemical}})は、[[植物]]中に存在する天然の[[化学物質]]であるとされる<ref name="lpi">{{cite web|url=http://lpi.oregonstate.edu/infocenter/phytochemicals.html|title= Phytochemicals|author=Micronutrient Information Center, Linus Pauling Instituteat Oregon State University|accessdate=2011-06-28}}</ref>。
'''ファイトケミカル'''({{lang-en-short|phytochemical}}~フィトケミカルではなくファイトケミカルが正しい発音)は、[[植物]]中に存在する天然の[[化学物質]]であるとされる<ref name="lpi">{{cite web|url=http://lpi.oregonstate.edu/infocenter/phytochemicals.html|title= Phytochemicals|author=Micronutrient Information Center, Linus Pauling Instituteat Oregon State University|accessdate=2011-06-28}}</ref>。


一般的に、「通常の身体機能維持には必要とされないが、[[健康]]によい影響を与えるかもしれない[[植物]]由来の[[化合物]]」を意味する用語として使用されている<ref name="lpi"/>。このため、'''植物栄養素'''(しょくぶつえいようそ、{{lang-en-short|phytonutrient}})とも呼ばれる。
一般的に、「通常の身体機能維持には必要とされないが、[[健康]]によい影響を与えるかもしれない[[植物]]由来の[[化合物]]」を意味する用語として使用されている<ref name="lpi"/>。このため、'''植物栄養素'''(しょくぶつえいようそ、{{lang-en-short|phytonutrient}})とも呼ばれる。


[[果物]]や[[野菜]]、[[マメ]]、[[全粒粉]]、[[ナッツ]]等を豊富に含む食事の健康へのよい効果を支持する証拠は十分に存在するが、この効果が植物由来の特定の栄養素あるいはフトケミカルに由来するかどうかについての証拠は限られている<ref name=lpi/><ref>{{cite web |year=2010 |publisher = Centers for Disease Control and Prevention, US Department of Health and Human Services |title=Fruits and Veggies, More Matters |url = http://www.fruitsandveggiesmatter.gov | accessdate = 2011-06-28}}</ref>。
[[果物]]や[[野菜]]、[[マメ]]、[[全粒粉]]、[[ナッツ]]等を豊富に含む食事の健康へのよい効果を支持する証拠は十分に存在するが、この効果が植物由来の特定の栄養素あるいは'''ァイトケミカル'''に由来するかどうかについての証拠は限られている<ref name=lpi/><ref>{{cite web |year=2010 |publisher = Centers for Disease Control and Prevention, US Department of Health and Human Services |title=Fruits and Veggies, More Matters |url = http://www.fruitsandveggiesmatter.gov | accessdate = 2011-06-28}}</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
トケミカルは数千年間に渡って薬として使用されてきた。[[ヒポクラテス]]は風邪への対処として[[ヤナギ]]の葉を処方している。現代に入り、ヤナギの樹皮から抗炎症作用を有する[[サリシン]]が単離され、[[アスピリン]]の開発へと繋った。
'''ァイトケミカル'''は数千年間に渡って薬として使用されてきた。[[ヒポクラテス]]は風邪への対処として[[ヤナギ]]の葉を処方している。現代に入り、ヤナギの樹皮から抗炎症作用を有する[[サリシン]]が単離され、[[アスピリン]]の開発へと繋った。


重要な抗がん剤である[[パクリタキセル]](タキソール)も[[セイヨウイチイ]]の木から発見されたフィトケミカルである。
重要な抗がん剤である[[パクリタキセル]](タキソール)も[[セイヨウイチイ]]の木から発見されたフィトケミカルである。


トケミカルは[[必須栄養素]]とは異なり、通常の[[代謝]]には必要ではなく、摂取しなくとも[[欠乏症]]が起こることはない。広義の意味では、植物由来の化合物や[[栄養素]]を指す。 
'''ァイトケミカル'''は[[必須栄養素]]とは異なり、通常の[[代謝]]には必要ではなく、摂取しなくとも[[欠乏症]]が起こることはない。広義の意味では、植物由来の化合物や[[栄養素]]を指す。 


トケミカルの多くは[[果物]]や[[野菜]]の[[色素]]や[[辛味成分]]であり、[[抗酸化剤]]としても用いられ、体内では[[抗酸化物質]]として作用する。
'''ァイトケミカル'''の多くは[[果物]]や[[野菜]]の[[色素]]や[[辛味成分]]であり、[[抗酸化剤]]としても用いられ、体内では[[抗酸化物質]]として作用する。
例えば[[ルテイン]]はトウモロコシの黄色、[[リコピン]]はトマトの赤、[[カロテン]]はニンジンのオレンジ色、[[アントシアニン]]はブルーベリーの青のもとである。色素や抗酸化剤としての機能は[[共役系|共役]]した炭素&minus;炭素[[二重結合]]によるものである。
例えば[[ルテイン]]はトウモロコシの黄色、[[リコピン]]はトマトの赤、[[カロテン]]はニンジンのオレンジ色、[[アントシアニン]]はブルーベリーの青のもとである。色素や抗酸化剤としての機能は[[共役系|共役]]した炭素&minus;炭素[[二重結合]]によるものである。


トケミカルには抗発がん性 ([[:en:Anticarcinogen]]) を示すものも多くある。[[疫学]]的研究により、果物や野菜に含まれるフトケミカルはがんの危険性を減少させるという証拠が得られている。しかし、喫煙者が[[β-カロテン]]を多量に摂取した場合はがんのリスクが増すことが示されており、これはβ-カロテンの分解生成物が血漿中の[[ビタミンA]]を減少させ、喫煙によって誘発される肺の細胞の増殖を悪化させるためではないかと考えられている。
'''ァイトケミカル'''には抗発がん性 ([[:en:Anticarcinogen]]) を示すものも多くある。[[疫学]]的研究により、果物や野菜に含まれる'''ァイトケミカル'''はがんの危険性を減少させるという証拠が得られている。しかし、喫煙者が[[β-カロテン]]を多量に摂取した場合はがんのリスクが増すことが示されており、これはβ-カロテンの分解生成物が血漿中の[[ビタミンA]]を減少させ、喫煙によって誘発される肺の細胞の増殖を悪化させるためではないかと考えられている。


かつて[[アメリカ国立癌研究所]] (NCI) によって2000万ドルの予算でがんを予防するために、フトケミカルを特定して加工食品に加える目的で、[[デザイナーフーズ計画]] (designer foods project) が開始された<ref>{{cite news|url=http://www.nytimes.com/1991/02/19/science/fortified-foods-could-fight-off-cancer.html|title= Fortified Foods Could Fight Off Cancer|newspaper=The New York Times|date=1991-02-19|author= Brody, Jane E.|accessdate=2011-06-28}}</ref>。
かつて[[アメリカ国立癌研究所]] (NCI) によって2000万ドルの予算でがんを予防するために、'''ァイトケミカル'''を特定して加工食品に加える目的で、[[デザイナーフーズ計画]] (designer foods project) が開始された<ref>{{cite news|url=http://www.nytimes.com/1991/02/19/science/fortified-foods-could-fight-off-cancer.html|title= Fortified Foods Could Fight Off Cancer|newspaper=The New York Times|date=1991-02-19|author= Brody, Jane E.|accessdate=2011-06-28}}</ref>。
デザイナーフーズ計画では、がんに有効性のあると考えられる野菜類が40種類ほど公開された。その後、デザイナーフーズ計画はなくなった<ref>{{cite journal|author=Christine Theisen|url=http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/93/14/1049 |title=What Ever Happened To . . . Looking Back 10 Years|journal=JNCI Journal of the National Cancer Institute |volume=93|issue= 14|year=2001|pages=1049-1050|pmid= 11459863}}</ref>。
デザイナーフーズ計画では、がんに有効性のあると考えられる野菜類が40種類ほど公開された。その後、デザイナーフーズ計画はなくなった<ref>{{cite journal|author=Christine Theisen|url=http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/93/14/1049 |title=What Ever Happened To . . . Looking Back 10 Years|journal=JNCI Journal of the National Cancer Institute |volume=93|issue= 14|year=2001|pages=1049-1050|pmid= 11459863}}</ref>。


==分類と作用==
==分類と作用==
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トケミカルの分類、フトケミカルを含む一般的な植物
'''ァイトケミカル'''の分類、'''ァイトケミカル'''を含む一般的な植物
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! colspan="2" | 分類 !! 名称 !! 含まれる植物 !! 機能・効果
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==食物の加工法==
==食物の加工法==
多くのフトケミカルは、近代的な加工法・調理法を用いた場合には分解されるか失われてしまうと考えられている。このため工業的に加工された食物は生の物に比べて健康への恩恵(フトケミカルの含有量)が乏しいと信じられている。フトケミカルは現代社会における上記のような病気の予防や治療に役立つものであり、その欠乏は罹患率の上昇を招くとされる。
多くの'''ァイトケミカル'''は、近代的な加工法・調理法を用いた場合には分解されるか失われてしまうと考えられている。このため工業的に加工された食物は生の物に比べて健康への恩恵('''ァイトケミカル'''の含有量)が乏しいと信じられている。'''ァイトケミカル'''は現代社会における上記のような病気の予防や治療に役立つものであり、その欠乏は罹患率の上昇を招くとされる。


しかしながら、トマトに含まれる[[リコペン]]はスパゲッティソースや[[ケチャップ]]のような加工食品中では濃縮され、生のトマトよりも多く含まれることが知られている。
しかしながら、トマトに含まれる[[リコペン]]はスパゲッティソースや[[ケチャップ]]のような加工食品中では濃縮され、生のトマトよりも多く含まれることが知られている。


==高含有の野菜==
==高含有の野菜==
近年、フトケミカルを豊富に含む野菜が開発・販売されている。
近年、'''ァイトケミカル'''を豊富に含む野菜が開発・販売されている。


代表的なものとして、[[スルフォラファン]]を成熟[[ブロッコリー]]の7~20倍含む「[[ブロッコリースプラウト]]」(村上農園)、一般トマトの2~3倍の[[リコペン]]を含む「こくみトマト」(カゴメ)、2倍の[[カロテン]]を含むニンジン「ベータリッチ」(サカタのたね)などが挙げられる。
代表的なものとして、[[スルフォラファン]]を成熟[[ブロッコリー]]の7~20倍含む「[[ブロッコリースプラウト]]」(村上農園)、一般トマトの2~3倍の[[リコペン]]を含む「こくみトマト」(カゴメ)、2倍の[[カロテン]]を含むニンジン「ベータリッチ」(サカタのたね)などが挙げられる。

2017年2月21日 (火) 12:42時点における版

ファイトケミカル: phytochemical~フィトケミカルではなくファイトケミカルが正しい発音)は、植物中に存在する天然の化学物質であるとされる[1]

一般的に、「通常の身体機能維持には必要とされないが、健康によい影響を与えるかもしれない植物由来の化合物」を意味する用語として使用されている[1]。このため、植物栄養素(しょくぶつえいようそ、: phytonutrient)とも呼ばれる。

果物野菜マメ全粒粉ナッツ等を豊富に含む食事の健康へのよい効果を支持する証拠は十分に存在するが、この効果が植物由来の特定の栄養素あるいはファイトケミカルに由来するかどうかについての証拠は限られている[1][2]

概要

ファイトケミカルは数千年間に渡って薬として使用されてきた。ヒポクラテスは風邪への対処としてヤナギの葉を処方している。現代に入り、ヤナギの樹皮から抗炎症作用を有するサリシンが単離され、アスピリンの開発へと繋った。

重要な抗がん剤であるパクリタキセル(タキソール)もセイヨウイチイの木から発見されたフィトケミカルである。

ファイトケミカル必須栄養素とは異なり、通常の代謝には必要ではなく、摂取しなくとも欠乏症が起こることはない。広義の意味では、植物由来の化合物や栄養素を指す。 

ファイトケミカルの多くは果物野菜色素辛味成分であり、抗酸化剤としても用いられ、体内では抗酸化物質として作用する。 例えばルテインはトウモロコシの黄色、リコピンはトマトの赤、カロテンはニンジンのオレンジ色、アントシアニンはブルーベリーの青のもとである。色素や抗酸化剤としての機能は共役した炭素−炭素二重結合によるものである。

ファイトケミカルには抗発がん性 (en:Anticarcinogen) を示すものも多くある。疫学的研究により、果物や野菜に含まれるファイトケミカルはがんの危険性を減少させるという証拠が得られている。しかし、喫煙者がβ-カロテンを多量に摂取した場合はがんのリスクが増すことが示されており、これはβ-カロテンの分解生成物が血漿中のビタミンAを減少させ、喫煙によって誘発される肺の細胞の増殖を悪化させるためではないかと考えられている。

かつてアメリカ国立癌研究所 (NCI) によって2000万ドルの予算でがんを予防するために、ファイトケミカルを特定して加工食品に加える目的で、デザイナーフーズ計画 (designer foods project) が開始された[3]。 デザイナーフーズ計画では、がんに有効性のあると考えられる野菜類が40種類ほど公開された。その後、デザイナーフーズ計画はなくなった[4]

分類と作用

ファイトケミカルの分類、ファイトケミカルを含む一般的な植物

分類 名称 含まれる植物 機能・効果
ポリフェノール フラボノイド(色素) アントシアニン ブドウ黒米ブルーベリー 抗酸化作用
イソフラボン 大豆など 更年期障害改善・骨粗鬆症予防
フェニルプロパノイド セサミノール ゴマなど 抗酸化作用・動脈硬化予防
シゲトン類 クルクミン ウコンなど 抗酸化作用・抗炎症作用・肝機能改善
有機硫黄化合物 イソチオシアネート スルフォラファン ブロッコリースプラウトなど 抗酸化作用・解毒作用・がん予防
システインスルホキシド メチルシステインスルホキシド ニンニクなど 解毒作用・免疫力向上
スルフィン アリシン ニンニクなど 抗酸化作用・動脈硬化予防
テルペノイド 非栄養系カロテノイド類(色素) ルテイン ホウレンソウなど 抗酸化作用
リコペン トマトスイカなど 抗酸化作用
モノテルペン(香気成分) リモネン 柑橘類 抗酸化作用・抗アレルギー作用
ステロイド フィトステロール 植物油 コレステロール減少
糖関連化合物 多糖 β-グルカン キノコ 免疫力向上
配糖体 サポニン 類・穀物ハーブ
長鎖アルキルフェノール誘導体(辛味成分) カプサイシン トウガラシ 体熱生産作用
ギンゲロール ショウガ 体熱生産作用

食物の加工法

多くのファイトケミカルは、近代的な加工法・調理法を用いた場合には分解されるか失われてしまうと考えられている。このため工業的に加工された食物は生の物に比べて健康への恩恵(ファイトケミカルの含有量)が乏しいと信じられている。ファイトケミカルは現代社会における上記のような病気の予防や治療に役立つものであり、その欠乏は罹患率の上昇を招くとされる。

しかしながら、トマトに含まれるリコペンはスパゲッティソースやケチャップのような加工食品中では濃縮され、生のトマトよりも多く含まれることが知られている。

高含有の野菜

近年、ファイトケミカルを豊富に含む野菜が開発・販売されている。

代表的なものとして、スルフォラファンを成熟ブロッコリーの7~20倍含む「ブロッコリースプラウト」(村上農園)、一般トマトの2~3倍のリコペンを含む「こくみトマト」(カゴメ)、2倍のカロテンを含むニンジン「ベータリッチ」(サカタのたね)などが挙げられる。

脚注

  1. ^ a b c Micronutrient Information Center, Linus Pauling Instituteat Oregon State University. “Phytochemicals”. 2011年6月28日閲覧。
  2. ^ Fruits and Veggies, More Matters”. Centers for Disease Control and Prevention, US Department of Health and Human Services (2010年). 2011年6月28日閲覧。
  3. ^ Brody, Jane E. (1991年2月19日). “Fortified Foods Could Fight Off Cancer”. The New York Times. http://www.nytimes.com/1991/02/19/science/fortified-foods-could-fight-off-cancer.html 2011年6月28日閲覧。 
  4. ^ Christine Theisen (2001). “What Ever Happened To . . . Looking Back 10 Years”. JNCI Journal of the National Cancer Institute 93 (14): 1049-1050. PMID 11459863. http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/93/14/1049. 

関連項目

外部リンク