コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「ハイジャック」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
ZairanTD (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集
Ganko080 (会話 | 投稿記録)
タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集
 
(56人の利用者による、間の128版が非表示)
1行目: 1行目:
{{otheruses||映画|ハイジャック (映画)|イギリスのテレビドラマ|ハイジャック (テレビドラマ)}}
{{テロリズム}}
{{テロリズム}}
'''ハイジャック'''({{lang-en|hijack}})または'''乗っ取り'''(のっとり)は、元来、乗物運送中の貨物強奪することで、1920年代のアメリカで密造酒を輸送するトラック船舶から積荷強奪する為を指した。現代、[[武器]]にる[[脅迫]]など暴力的手段を用いて[[交通]]手段([[航空機]]、[[鉄道]]、[[船舶]]、[[バス (交通関)|バス]]など)を占拠す行為を指す[[日]]では、特に航空機の占拠行為指してこの語を用いることが多い
'''ハイジャック'''({{lang-en|hijack}}、hijacking)は、不法に[[輸送機関]][[貨物]]の強奪や乗っ取りを行うことで、特に[[航空機]]に対す行為に用いられ、[[日本]]の[[法律用語]]では「'''航空機強取'''」や「'''航空不法奪取'''」と呼ばれる。以下、では航空機のハイジャック中心に扱う


ハイジャックの手段には、[[武器]]などによる[[脅迫]]や[[威嚇]]・詐術などがある。ハイジャックの目的には、逃亡や[[亡命]]、金品の強奪や[[身代金]]要求、なんらかの政治的意図の遂行などが挙げられる。また、[[心神喪失]]状態にあった者が起こした目的がはっきりしない事件もある。
[[セッションハイジャック]]など交通手段以外でも不正に何かを乗っ取ることをハイジャックと呼ばれる。また、「メディアジャック」など正式な手段で対象を占拠した場合もハイジャックと呼ばれる。


ハイジャックを防止するために様々な対策が複合的にとられている。ハイジャック対策は国や空港・航空会社によって差異はあるが、国際条約により加盟各国による協調体制が構築されている。凶器や危険物が航空機に持ち込まれないよう規制されており、空港では手荷物検査などが行われている。機上では[[スカイマーシャル|航空保安官]]が警乗し、ハイジャッカーの進入を阻止するよう操縦室のドアは強化されている。
== ハイジャックの目的 ==
ハイジャックの目的は様々で、政治的迫害による[[亡命]]、[[刑務所]]で服役している仲間([[政治犯]]や[[テロリスト]]など)の釈放、[[テロリズム]]、[[身代金]]の要求など目的意識の明確なものから、乗り物自体に対する異常な興味や精神的錯乱、テロに便乗した[[模倣犯]]といったものにまで及ぶ。


ハイジャックの発生件数は資料により異なる。旧[[東側諸国]]で発生した事件ははっきりわかっていないものもある{{sfn|稲坂|2006|pp=103–104}}。本項では、{{harvtxt|稲坂|2006}}<ref group="注釈" name=":1">同書では[[連邦航空局|アメリカ連邦航空局]] (Federal Aviation Administration; FAA) のレポートを主に参照して集計・分析を行なっている</ref>および「[[アビエーション・セーフティー・ネットワーク]]」 (Aviation Safety Network; ASN) <ref name=asn/>を主に参照する。ASNのデータベースによると、2017年末までに1,074件の航空機ハイジャック事件が起きている<ref name=asn/>。
[[1931年]]に初の飛行機ハイジャック事件が起きて以降、[[1940年代]]後半-[[1950年代]]後半はいわゆる[[東側諸国]]において[[西側諸国]]への[[亡命]]を目的としたハイジャックが多発した。[[1960年代]]後半-[[1980年代]]前半にかけては[[パレスチナ解放人民戦線]](PFLP)、[[日本赤軍]]や[[バーダー・マインホフ・グループ]]などの左派過激派によるハイジャックが頻繁に起きるようになった。また、[[アメリカ合衆国]]では犯罪者などが[[キューバ]]行きを要求する通称「キューバ急行」が多発していた。近年ではイスラム過激派による[[アメリカ同時多発テロ事件]]における同時ハイジャックのように、政治的要求をするのではなくテロ実行の手段としたハイジャックがある。


== 語義と語源 ==
== 「ハイジャック」の単語の由来 ==
「ハイジャック」とは、輸送中の貨物や輸送機関そのもののを強奪したり乗っ取ったりする行為を指す<ref name=britanica-ja/><ref name=britanica/><ref name=rhd_hijack/>。狭義では特に航空機に対して用いられる<ref name=britanica-ja/><ref name=britanica/>。航空機におけるハイジャックとは、乗客や乗員らが不法に航空機を奪取したりその運航を支配したりする行為であり、これらの未遂や加担行為も含まれる{{sfn|稲坂|2006|p=36}}{{sfn|安藤|2014|p=32}}。ハイジャックを行う手段としては、[[武器]]や[[暴力]]などによる[[脅迫]]、あるいは[[威嚇]]や詐術などが挙げられる{{sfn|稲坂|2006|p=36}}{{sfn|安藤|2014|pp=71–76}}。
{{出典の明記|date=2016年9月|section=1}}
ハイジャックの語源は様々に述べられている。有名なものは以下のとおり。
*追いはぎを意味する「highwayman」と密猟者を意味する「jacker」を組み合わせた単語である「hijacker」から転じたもの
*「Stick'em up high, Jack(手を高く上げろ)」という強盗の文句から成立した
*[[駅馬車]]強盗が駅馬車の御者を呼び止める時に「Hi, Jack!」(やい、おめぇ)と声をかけた事から
したがって、'''対象が船でも車でも、乗り物を乗っ取る行為はすべて'''「'''ハイジャック'''」である。日本においては「jack」を「乗っ取り」の意味として捉え「[[バスジャック]]」、放送電波への重畳を「[[電波ジャック]]」、番組への乱入を「番組ジャック」と呼ぶなど多数の「ジャック」を使った[[和製英語]]が生まれることになった。同様の造語は英語圏でも一部存在し、航空機乗っ取りを描いた「[[スカイジャック(小説)|スカイジャック]]」なる小説が実在するように、この後に「スカイジャック (skyjack)」という言葉も生まれている。また、自動車を狙った「[[カージャック]] (carjacking)」という言葉も用いられることがある。このほか一般的とまでは言えないが「シージャック」に相当するseajacking も見られる<ref>[http://articles.latimes.com/1985-10-11/entertainment/ca-17304_1]</ref>。


ハイジャックの元来の意味は、乗り物そのものや運送貨物を強奪することであり、特に[[アメリカ合衆国における禁酒法|禁酒法]]が施行されていた[[1920年代]]のアメリカ合衆国で、密造酒を輸送するトラックや船舶から積荷を強奪する行為を指した<ref name=britanica-ja/><ref name= japan_hijack/>。「hijack(ing)」の語源については、『[[オックスフォード英語辞典]]』では不詳としているが、以下のような説が挙げられている。
{{要出典|範囲=英語圏では、[[ジャック|ジャック (Jack)]] という名前が男性の一般的な略称であるため、[[ロサンゼルス国際空港]]のように、「Hi, Jack」(ハイ、ジャック)あるいは「Hey, Jack」(ヘイ、ジャック)と挨拶することは避け、不意の混乱を起こさないように呼びかけている場所もある。|date=2016年9月}}


* 強盗が運転手に「Hi, Jack!(よお、あんた)」と声をかけて[[拳銃]]を突きつけたことに由来するという説<ref name= japan_hijack/>。
== 主なハイジャック事件の一覧 ==
* 「公道に出没する追い剥ぎ」を意味する「[[ハイウェイマン]](highwayman)」と「携帯用照明で狩りをする人」を意味する「jacklighter」とを合成した「ハイジャッカー(hijacker)」という言葉が生まれ、その逆成とする説<ref name=rhd_hijacker/><ref name=rhd_hijack/>。近似するものとして「highway(公道)」と「jacker(強盗)」の合成とする説もある。
=== 1970年代以前 ===
* 強盗が被害者を脅す文句「Stick 'em up high, Jack.(手を高く上げろ)」に由来するという説<ref name=rhd_hijacker/>。
*[[1931年]][[2月21日]]
:[[ペルー]]でアメリカ合衆国籍(パンナム機)の[[郵便飛行機]]が、同国の反政府グループが宣伝ビラを撒く為にハイジャックされた。世界で最初の事例とされる。
*[[1948年]][[7月16日]]:[[キャセイ・パシフィック航空機ハイジャック事件]]
:[[マカオ]]から[[香港]]に向かう航空機がハイジャックされたが、犯行グループが誤って操縦士を射殺したため墜落し、首謀者以外全員が死亡。
*[[1950年]][[3月23日]]
:[[チェコ航空]]の[[ダグラス DC-3|DC-3]]がハイジャックされ[[西ドイツ]]に着陸。犯行グループ4人による亡命であったが、乗客2人も便乗して亡命。
*[[1958年]][[2月16日]]:[[滄浪号ハイジャック事件]]
:[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]][[スパイ|工作員]]による航空機拉致事件。
*[[1961年]][[5月1日]]
:アメリカ国内線の[[ナショナル航空]]337便([[コンベア440]])がハイジャックされ、キューバに向かうように要求。アメリカで最初に成功したハイジャックである。犯人は14年後に逮捕されたが、法の不遡及の原則により当時は未制定だったハイジャック罪ではなく誘拐罪などにより懲役20年が言い渡された。
*[[1968年]][[7月1日]]
:[[ノースウエスト航空]]の[[ボーイング727]]がハイジャックされ[[キューバ]]へ。着陸した空港が狭かったという事情で乗客は[[ダグラス DC-7|DC-7]]で帰国し、ハイジャック機は回送便として帰還した。
*[[1968年]][[7月23日]]:[[エル・アル航空426便ハイジャック事件]]
:[[ロンドン]]発[[ローマ]]経由[[テルアビブ]]行きの426便がローマを離陸した直後に[[パレスチナ解放人民戦線]]のテロリストにハイジャックされ、[[アルジェ]]に向った。
*[[1969年]][[8月29日]]:[[トランス・ワールド航空840便ハイジャック事件]]
:[[ローマ]]発[[アテネ]]行きの[[トランス・ワールド航空]]840便が[[パレスチナ解放人民戦線]]のテロリストにハイジャックされ、ハイジャックは成功した。
*[[1969年]][[10月31日]]
:[[トランス・ワールド航空]]の[[ボーイング707]]型機が[[アメリカ合衆国|アメリカ]]西海岸上空で、[[米国海兵隊|同国海兵隊員]]にハイジャックされた。[[ピストル]]を突きつけ、まずは[[コロラド州]][[デンバー国際空港|デンバー]]へ着陸。その後、大陸を横断して[[ジョン・F・ケネディ国際空港]]へ向かった。ここで[[アメリカ連邦捜査局]](FBI)が機内突入を試みるが、犯人の脅迫により中止。その後国際線の機長を要求し、[[大西洋]]を超えて[[レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港]]へ飛行。着陸後にようやく逮捕されたが、11,095キロを飛行し、ハイジャックの最長飛行記録となった。
*[[1969年]][[12月10日]]:[[大韓航空機YS-11ハイジャック事件]]
:[[大韓航空]]の[[YS-11]]型機が[[江陵市|江陵]]空港を離陸後ハイジャックされ、犯人が[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]に向かうように要求。その後北朝鮮に着陸し、乗客乗員11名と機体は抑留されたままである。


このように「ハイジャック」は英語由来の言葉であり、ハイジャック行為を指す動詞形を「hijack」、ハイジャックの名詞形を「hijacking」、ハイジャック犯を「hijacker」と呼ぶ<ref>{{Citation |title=hijack |contribution=Oxford Dictionary of English}}</ref>。特に航空機乗っ取りに対しては「aircraft hijacking」や「air(craft) piracy」と表現することがあるほか、「スカイジャック(skyjack、skyjacking」とも言う{{sfn|Evans|1969}}<ref name=rhd_airpiracy/><ref name=rhd_skyjack/>。日本の法律用語では「航空機強取」や「航空機不法奪取」と言う<ref name=hijacking-jk/>。
=== 1970年代 ===
*[[1970年]][[9月6日]]:[[PFLP旅客機同時ハイジャック事件]]
:[[トランス・ワールド航空]]の[[ボーイング707]]型機、スイス航空([[2001年]]破綻、[[スイスエアラインズ]]が引継いでいる)の[[ダグラス DC-8|DC-8]]型機、エルアル・[[イスラエル]]航空のボーイング707型機、[[パンアメリカン航空]]の[[ボーイング747]]型機の計4機の旅客機が同時にハイジャックされ、同乗していた私服[[警備員]]が犯人を銃撃戦の末取り押さえたエルアル航空機と、着陸できなかったパンアメリカン航空機以外の旅客機が[[ヨルダン]]の砂漠にある元[[イギリス]]軍の空軍基地跡地に強制着陸させられ、その直後には[[ブリティッシュ・エアウェイズ]]機もハイジャックされて同じ空軍基地に強制着陸させられた。その後、全ての乗客が解放された後に3機が同時爆破された。収監されている同志の釈放を狙って[[パレスチナ解放人民戦線]]が起こした事件であった。
*[[1971年]][[11月24日]]:[[D.B.クーパー事件]]
:ハイジャックでは珍しい身代金を要求。犯人は飛行中の旅客機から[[パラシュート]]で脱出し以後消息不明。
*[[1972年]][[5月8日]]: [[サベナ航空572便ハイジャック事件]]
:[[ブリュッセル]]発[[テルアビブ]]に向っていたサベナ機がハイジャックされイスラエルの特殊部隊が制圧に成功した。
*[[1973年]][[7月20日]]:[[ドバイ日航機ハイジャック事件]]
:「被占領地の息子たち」と自称する[[パレスチナゲリラ]]と[[日本赤軍]]の混成部隊が、[[アムステルダム]]発[[東京]]行きの[[日本航空]]の[[ボーイング747]]型機をハイジャックし、[[リビア]]の[[ベニナ空港]]に着陸。人質を解放後同機を爆破し、犯人はリビア政府の黙認の元逃亡した。
*[[1976年]][[6月27日]]:[[エンテベ空港奇襲作戦]]
:[[テルアビブ]]から[[パリ]]に向かった[[エールフランス航空]]139便がPFLPと[[バーダー・マインホフ]]の混成グループにハイジャックされ、[[リビア]]の[[ベンガジ]]を経由し、[[ユダヤ人]]以外の人質を釈放した後に[[ウガンダ]]の[[エンテベ]]に着陸。ウガンダの[[独裁者]]である[[イディ・アミン]][[大統領]]はPFLPを支持し、人質103名を空港ターミナル内に押し込めた。[[7月3日]]深夜、イスラエルの[[特殊部隊]]は人質を救出すべく救出作戦を決行。人質2名と強襲部隊指揮官のネタニヤフ中佐(後のイスラエル首相[[ベンヤミン・ネタニヤフ]]の兄)が死亡したものの、そのほとんどを助け出した。この電撃作戦は3社で映画化され(「[[エンテベの勝利]]」「[[特攻サンダーボルト作戦]]」「[[サンダーボルト救出作戦]]」)世界中で物議を醸した。
*[[1976年]][[8月23日]]:[[エジプト航空321便ハイジャック事件]]
*[[1977年]][[10月13日]]:[[ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件]]
:[[スペイン]]領[[マリョルカ島]][[パルマ・デ・マヨルカ|パルマ・デ・マリョルカ]]発[[フランクフルト・アム・マイン]]行きの[[ルフトハンザ航空]]181便([[ボーイング737]]型機)が[[黒い九月]]を名乗る[[ドイツ赤軍]](バーダー・マインホフ)とPFLPの混成グループにハイジャックされ、[[ソマリア]]の[[モガディシオ]]に着陸させられたが、[[10月17日]]、[[ミュンヘンオリンピック事件]]をきっかけに設立された[[西ドイツ]]の対テロ特殊部隊である[[GSG-9|第9国境警備群]] (GSG-9) が急襲し人質全員を解放した。


=== 1980年代 ===
== 目的別の特徴 ==
ハイジャックの目的はさまざまであり、明確な目的が見出せるものとしては、逃亡・[[亡命]]目的のものや、金目当てのもの、政治的意図に基づく事件などがあげられる{{sfn|稲坂|2006|pp=40–51}}。それ以外では、[[心神喪失]]状態にあった者などが起こした事件や、冗談のつもりがハイジャックとされた例もある{{sfn|稲坂|2006|pp=42, 51–52}}。
*[[1981年]][[3月28日]]:[[ガルーダ航空206便ハイジャック事件]]
*[[1983年]][[5月5日]]:[[中国民航機韓国着陸事件]]
:[[瀋陽市|瀋陽]]発[[上海市|上海]]行き中国民航の[[ホーカー・シドレー トライデント|トライデントTr-2E]](B-296)が6名の武装グループにハイジャックされ、通信士と航法士が銃撃され負傷。[[大韓民国]][[江原道 (南)|江原道]][[春川市]]の[[在韓米軍|在韓アメリカ軍]]基地に緊急着陸。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]への亡命を求め投降。犯人らは後に[[ソウル特別市|ソウル]][[地方裁判所]]で懲役2年から6年の実刑判決を受けたが、[[1984年]][[8月13日]]に当時国交のあった[[中華民国]]([[台湾]])へ亡命した。当時外交関係がなかった中韓両国が事後処理で朝鮮戦争後初の直接交渉を行った。なお犯行グループは「[[反共義士]]」として報奨金を受け取ったが、首謀者は後に[[誘拐]][[殺人]][[事件]]を引き起こし2001年に死刑になった。
*[[1983年]][[7月25日]]
:[[中華人民共和国]]の[[中国民用航空局|中国民航]]の上海行き[[Il-18 (航空機)|Il-18]]が5人組にハイジャック、機内で爆弾を爆発させ、負傷者を出したが無事に着陸。犯行グループは翌月全員処刑された。公表されているものとしては中国で最初のハイジャック事件。
*[[1984年]][[12月4日]]:[[クウェート航空221便ハイジャック事件]]
*[[1985年]][[6月14日]]:[[トランスワールド航空847便テロ事件]]
:[[ギリシア]]の[[アテネ]]から[[イタリア]]の[[ローマ]]へ向かったトランス・ワールド航空847便([[ボーイング727]]型機)が、[[地中海]]上空を飛行中にイスラム過激派を名乗る2人組にハイジャックされ、アメリカ人乗客が1名射殺される。その後、アメリカ政府はこの事件の報復としてリビアの指導者である[[ムアンマル・アル=カッザーフィー]](カダフィ[[大佐]])の自宅を爆撃し、娘を含む親類や側近数名を殺害した。
*[[1985年]][[11月23日]]:[[エジプト航空648便ハイジャック事件]]
:[[アテネ]]発[[カイロ]]行きの[[エジプト航空]]648便(乗員・乗客計103人)が国際テロ組織「[[アブ・ニダル]]」にハイジャックされ、[[リビア]]に向かうよう要求。ハイジャックの目的は、中東問題に対する[[エジプト]]政府の姿勢に抗議するためであったが燃料が不足していたためハイジャック機は[[マルタ]]に緊急着陸した。着陸後主犯格の[[オマル・レザック]]は乗客3人を射殺した。事件発生から25時間後にエジプトの特殊部隊が強行突入し、犯人との銃撃戦の末、ハイジャック機を奪還したが、この銃撃戦で乗客56名が死亡した。犯人3人のうち2人は死亡、主犯格のレザックは重傷で発見された。レザックはマルタでの裁判で懲役25年の判決を言い渡されたが、服役7年後に恩赦が行われ釈放された。しかし[[アメリカ連邦捜査局]](FBI)は[[国際刑事警察機構]]の協力を得てレザックを[[ナイジェリア]]で拘束した。現在、レザックはアメリカで終身刑に服している。
*[[1986年]][[9月5日]]:[[パンアメリカン航空73便ハイジャック事件]]
[[パキスタン]]・[[カラチ]]の空港で、[[パンアメリカン航空]]73便がアブ・ニダルにハイジャックされ、同国軍部隊との銃撃戦などにより、乗客・乗員20人が死亡<ref>[http://www.giroj.or.jp/disclosure/risk/risk63-1.pdf#search='%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%A0%E6%A9%9F+%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF+%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%81' 表5.1 世界の航空機 ハイジャック・テロ]</ref><ref>[http://charindo.fc2web.com/namajii/abunidaru.html アブ・ニダル]</ref><ref>[http://www10.tok2.com/home/httpbbs/zzbbs/temp/world.htm 中東・イスラムとアメリカ半世紀の関係史]</ref>。
*[[1989年]][[12月16日]]:[[中国民航機ハイジャック事件]]
:[[北京市|北京]]発[[上海市|上海]]経由[[ニューヨーク]]行きとしての運行中の[[中国国際航空]]公司CA981便([[ボーイング747]]・乗員23名、乗客200名)が上海に向かう途中ハイジャックされ日本に着陸。犯人は政治犯と主張したが、[[中華人民共和国|中国]]に引き渡され刑事犯として懲役8年が確定。


ハイジャッカーの人数は1人から複数名と様々で、{{sfn|ゲロー|1997}}。中には乗客乗員18人のうち16人が共謀してハイジャックに関与した事件{{sfn|ゲロー|1997|p=13}}や、操縦士自らがハイジャッカーとなった事件{{sfn|ゲロー|1997|p=16}}<ref>{{Cite web |title=ASN Aircraft accident Douglas DC-3 registration unknown Miami International Airport, FL (MIA) |url=https://aviation-safety.net/database/record.php?id=19580413-1 |accessdate=2018-02-03 |date=2018-02-04}}</ref>もある。
=== 1990年代 ===
*[[1994年]][[6月8日]]
:[[中華人民共和国]]の[[福州]]発[[広州市|広州]]行きの[[中国南方航空]]機がハイジャックされ、その後同機は犯人の指示通りに[[台北市|台北]]の中正国際空港(現[[台湾桃園国際空港]])に着陸し犯人は投降後、公安当局に拘束された。[[亡命]]が目的と思われる。
*[[1994年]][[12月24日]]:[[エールフランス8969便ハイジャック事件]]
:[[アルジェリア]]で[[オルリー空港]]行きの[[エールフランス]]機が[[武装イスラム集団]]にハイジャックされ[[フランス国家憲兵隊治安介入部隊]]が人質を救出した。
*[[1996年]][[11月23日]]:[[エチオピア航空961便ハイジャック墜落事件]]
:ハイジャック犯が到達不可能な[[オーストラリア]]行きを要求し、途中の[[コモロ]]で燃料欠乏の為墜落。


おもな航空機ハイジャック事件は、[[航空機ハイジャック事件の一覧]]を参照。
=== 2000年代 ===
*[[2001年]][[9月11日]]:[[アメリカ同時多発テロ事件]]([[アメリカン航空11便テロ事件]]、[[ユナイテッド航空175便テロ事件]]、[[アメリカン航空77便テロ事件]]、[[ユナイテッド航空93便テロ事件]])
*[[2005年]][[9月12日]]、[[コロンビア]]で[[フロレンシア]]発[[ボゴタ]]行きの[[アイレス航空]]の[[プロペラ]][[旅客機]]が親子にハイジャックされ、[[空軍]][[基地]]に緊急着陸した。乗客と乗員は無事解放。
*[[2009年]][[4月20日]]、[[キャンジェット航空]]918便が、[[ジャマイカ]]の[[モンテゴ・ベイ]]で武装した男にハイジャックされた。
*[[2016年]][[3月30日]]、エジプト航空181便が一人のエジプト人にハイジャックされた。詳細は[[エジプト航空181便ハイジャック事件]]を参照。


== 日本におけるハイジャック ==
=== 逃亡・亡命目的のハイジャック ===
自国の生活に絶望した者が外国へ脱出する手段としてハイジャックを選んだケース{{sfn|稲坂|2006|pp=40–41}}。発生件数が最も多く、1931年から2005年にかけてのハイジャック総数のほぼ半数を占める{{sfn|稲坂|2006|pp=40–41}}。[[旧ソ連]]を中心とした[[東側諸国]]から[[西側諸国]]への亡命や、[[アメリカ合衆国]]から社会主義革命後の[[キューバ]]への逃避を図った事件が目立つ{{sfn|稲坂|2006|pp=40–48}}。移動の自由が制限されていた旧東欧・社会主義国では陸の国境警備が厳しく、海は時間がかかり危険であったため、どうせ命がけなら短時間で勝負できるハイジャックが選択されることが多かった{{sfn|稲坂|2006|p=43}}。一方、アメリカからキューバへ向かったハイジャックの場合、[[ベトナム戦争]]による国民の不安が背景にあったと見られる{{sfn|稲坂|2006|p=47}}。
日本においては、特に[[1970年]]3月31日の[[赤軍派]]による[[よど号ハイジャック事件]](よど号乗っ取り事件)が初のハイジャックとして有名である。これは運輸政務次官・山村新次郎が人質の身代わりになり、犯人グループが[[朝鮮民主主義人民共和国|北朝鮮]]への亡命に成功するなど、解決に際して非常に問題の多い事件であった。さらに、この時点ではハイジャック自体を処罰する法律は存在しておらず、この事件を受けて、[[航空機の強取等の処罰に関する法律]]、いわゆる「ハイジャック防止法」が成立し施行された。なお、日本航空のハイジャック事件は[[日本航空ハイジャック事件]]、全日空のハイジャック事件は[[全日本空輸ハイジャック事件]]もそれぞれ参照。


=== 日本国内で発生した主なハイジャック事件 ===
=== 金目当てのハイジャック ===
乗客の金品や積み荷の強奪を目的としたハイジャックや、搭乗者を[[人質]]にとり[[身代金]]を脅し取ることを目的としたハイジャック{{sfn|稲坂|2006|pp=41–42, 50–51}}。このタイプのハイジャックには、[[アメリカ陸軍特殊部隊群]]など[[特殊部隊]]の元隊員が起こした事件が目立つほか、金品や身代金を奪った犯人がパラシュートで飛び降りて逃亡する例が見られる{{sfn|稲坂|2006|pp=50–51}}。[[ヘリコプター]]により[[銀行強盗]]や[[脱獄|刑務所破り]]を行った事件も起きている{{sfn|稲坂|2006|p=51}}。
*[[1970年]][[8月19日]]:[[全日空アカシア便ハイジャック事件]]
:「ハイジャック防止法」が初めて適用された事件である。
*[[1977年]][[9月28日]]:[[ダッカ日航機ハイジャック事件]]
:日本赤軍が[[バングラデシュ]]の[[ダッカ]]でハイジャック事件を起こし、この時は日本政府に[[超法規的措置]]として、服役中のメンバー6人を釈放させている。このダッカ事件を契機に、[[警視庁]]や[[大阪府警察]]、一部の道県警察では、ハイジャック(他、一般の[[日本の警察官]]や[[機動隊]]では対応し切れない事件)に対応する[[特殊部隊]]として[[特殊急襲部隊|SAT]]を組織している。
*[[1995年]][[6月21日]]:[[全日空857便ハイジャック事件]]
:[[東京国際空港|羽田空港]]発[[函館空港]]行きの全日空のボーイング747SR型機が休職中の銀行員により占拠される事件が発生、翌日警視庁特殊部隊が突入し解決。
*[[1999年]][[7月23日]]:[[全日空61便ハイジャック事件]]
:航空機と運航システムに異常な興味を示した犯人が[[客室乗務員]]を脅し操縦席に乱入、機長を刺殺して操縦桿を握り、機体を急降下させた。日本で初めて人質が死亡したハイジャック事件となった。
::;ハイジャックを除く民間航空機に対して行われたテロ行為や破壊行為については、[[航空機テロ・破壊行為の一覧]]を参照のこと。


[[1971年]][[11月24日]]に発生した[[D.B.クーパー事件]]では、偽名を使った男がアメリカで旅客便をハイジャックして身代金を要求した{{sfn|ゲロー|1997|p=124}}。[[シアトル・タコマ国際空港]]に着陸後、犯人は乗客と一部乗員を解放し、引き換えに現金20万ドルを受け取った{{sfn|ゲロー|1997|p=124}}。その後犯人は旅客機を再び離陸させ、現金と共にパラシュートで飛び降りた{{sfn|ゲロー|1997|p=124}}。犯人は見つかっておらず[[未解決事件]]となっている<ref>{{Citation |last=Gray |first=Geoffrey |title=Unmasking D.B. Cooper |date=2007-10-21 |journal=New York magazine |issn=0028-7369 |url=http://nymag.com/news/features/39593/ |accessdate=2018-01-27}}</ref>。
== ハイジャック防止のための取り組み ==
[[1970年代]]初頭に過激派などによるハイジャックが頻繁に起きるようになり、各国はその対応に追われ、空港での[[セキュリティチェック]]の強化やハイジャックに対応した[[特殊部隊]]の創設などを行った。また、1978年、西ドイツの[[ボン]]で開催された第4回7カ国首脳会議では、「航空機ハイジャックに関する声明(ボン声明)」が採択された。


類似の事件では、[[1972年]][[4月7日]]、元[[アメリカ陸軍特殊部隊群|グリーンベレー]]隊員が[[ユナイテッド航空]]機をハイジャックして身代金50万ドルを得ることに成功。その後、自宅のある[[ユタ州]]上空でパラシュートによる脱出にも成功したが、2日後に自宅にいるところを逮捕されている<ref>「ベトナムの英雄に懲役45年」『朝日新聞』昭和47年(1972年)7月11日夕刊、3版、9面</ref>
[[1978年]]3月に新東京国際空港は日本発のハイジャック防止組織として[[成田国際空港]]に財団法人[[空港保安事業センター]]を開設した(なお、センターの本部は[[東京国際空港]]である)。


=== 政治的ハイジャック ===
[[1980年代]]-[[1990年代]]にはその勢いは一時的に収まったものの、[[アメリカ合衆国]]で[[2001年]][[9月11日]]、ハイジャックされた航空機による[[アメリカ同時多発テロ事件]]が発生したことから、ハイジャックの防止は再び世界的課題となる。
[[反政府]][[ゲリラ]]や[[テロ組織]]などの政治的意図や信念に基づいて実行されたハイジャック{{sfn|稲坂|2006|pp=41, 48–50}}{{sfn|Thomas|2008|pp=103–104}}。逃亡や金品強奪のためではなく、[[収監]]されている仲間の釈放要求や政治的アピールの手段としてハイジャックが利用された{{sfn|稲坂|2006|pp=41, 48–50}}{{sfn|Thomas|2008|pp=103–104}}。革命や社会改革を掲げつつ身代金も要求するといった複数の目的を伴う事件も起きている{{sfn|稲坂|2006|pp=50–51}}。また、宗教間対立に由来するハイジャック事件も政治的ハイジャックに分類される場合もある{{sfn|稲坂|2006|p=41}}。


政治的ハイジャックを行なった組織として、[[パレスチナ解放人民戦線]] (PFLP) や[[日本赤軍]]、南米の左翼ゲリラ、[[イスラム原理主義|イスラム原理主義組織]]などが挙げられる{{sfn|稲坂|2006|pp=41, 48–50}}{{sfn|Thomas|2008|pp=103–104}}。特に、PLFPは1970年前後に立て続けにハイジャックを行い、狙われた西側諸国の航空会社を震撼させた{{sfn|稲坂|2006|p=49}}。その過激さは他の解放組織からも強く批判されるほどだった{{sfn|稲坂|2006|p=49}}。2001年9月11日の[[アメリカ同時多発テロ事件]](以下、9.11事件)では、イスラム原理主義者が4機の旅客機をハイジャックし、乗客を道連れに[[自爆テロ]]攻撃を行なったことで約3000人もの命が奪われた{{sfn|稲坂|2006|pp=3–19, 49–50}}。
各国の空港で手荷物・身体検査・[[本人確認]]の徹底や[[乗客名簿]]の公安当局への提出、鋏付き[[ソーイングキット]]やミニ[[爪切り]]などあらゆる“刃が付いた・棒状鋼”の機内持ち込み禁止、果ては[[機内食]]の[[カトラリー]](スプーン・フォーク・ナイフ)がスチール製から[[樹脂]]製へ変更されるなど([[エコノミークラス]]のみ。[[ビジネスクラス]]や[[ファーストクラス]]では現在もステンレスを採用している航空会社もある。)、警備が大幅に強化されるようになった。


=== それ以外の事件 ===
[[2007年]]2月23日、[[アメリカ合衆国国土安全保障省]]は、[[ヒト]]一人の全身を透視出来る、大型全身[[X線]]スキャナを空港に試験導入(被検者は金属探知で異状ありとされた人物に限るという)。これにより危険物持込や薬物密輸阻止に資するとしているが、[[アメリカ自由人権協会]]は“搭乗予定者を裸に剥くも同然であり人権侵害”として、議会に完全実施の禁止措置を要請している。
ハイジャックの中には目的がはっきりしない事件もある{{sfn|稲坂|2006|pp=51–52}}。ハイジャック犯が[[精神障害]]や[[薬物依存症]]などのなんらかの理由で一時的な心神喪失にあったと見られ、犯人が罪に問われない場合もある{{sfn|稲坂|2006|p=52}}。目的がはっきりしないハイジャックは、日本が関係した事件が目立つ{{sfn|稲坂|2006|p=52}}。


これまで挙げたいずれにも該当しないケースとして、冗談のつもりの乗客の言動が冗談では済まされない事態に至った事件{{sfn|稲坂|2006|p=52}}で、機内で乗客が乗員に「爆弾が入っている」いう冗談が原因で航空機が緊急着陸したり、その乗客が連行される騒ぎになった事件が起きている{{sfn|稲坂|2006|p=52}}。
ハイジャックに対応する保安要員として、[[スカイマーシャル]]が搭乗する国もある。アメリカ([[連邦航空保安局]])やイスラエルにおいては、ハイジャックに際してはスカイマーシャルに犯人への対処を任せつつ、[[パイロット (航空)|パイロット]]は[[強化ドア]]に護られた[[コクピット]]に篭って、一刻も早く機体を緊急着陸させることとなっている。


== ハイジャック防止対策 ==
[[2010年]]1月、[[イギリス]]は[[ヒースロー空港]]を始めとする全ての空港に全身スキャナーを導入、搭乗者に搭乗前通過を義務付けている。
ハイジャックや航空テロを防止するため、様々な対策が複合的に講じられている{{sfn|工藤|2016|p=1}}。安全上の観点から詳細が公表されていないものもある{{sfn|稲坂|2006|pp=139–140, 152}}<ref name=mlit-kisha04-1/>。国や[[空港]]・[[航空会社]]によって対策の内容は異なる。ここでは[[国際民間航空機関]] (ICAO) で定められている対策を中心に述べる。


[[第二次世界大戦]]後、国際民間航空の発達や国際航空運送業務の運営に関して各国が協力することを目的に、[[国際連合]]の専門機関としてICAOが設置された<ref>{{Cite web|和書|title=国際民間航空機関(ICAO)|publisher=外務省 |url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page22_000755.html |accessdate=2018-02-19}}</ref>。ICAOによってハイジャック対策のための国際条約が作成され、航空保安に関する国際標準や勧告なども定められている{{sfn|川久保|2010|pp=30–31}}。ICAOの取り決めは、新たなリスクに対応する形で改定が重ねられてきた{{sfn|林|2014|p=4}}{{sfn|川久保|2010|pp=30–31}}。
航空機の奪取や航空機内での犯罪に関しては、各国とも重大な事案と認識されており、その対応に関して複数の国際条約が制定されている。

* [[航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約]](航空機内の犯罪防止条約 東京条約)
2001年に9.11事件が発生した後には、保安措置のより確実な履行が各国に求められ、ICAOによる監査も行われるようになった{{sfn|林|2014|p=4}}。9.11事件までのハイジャック対策は、ハイジャッカーが生存を前提に行動するという考えに立っていた。しかし、9.11事件では最初から自爆を意図してハイジャックが行われたことで、以降は対策の方針転換が図られた{{sfn|稲坂|2006|p=145}}。
* [[航空機の不法な奪取の防止に関する条約]](航空機不法奪取防止条約 ヘーグ条約)

* [[民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約]](民間航空不法行為防止条約 モントリオール条約)
=== 空港での保安検査 ===
* [[人質をとる行為に関する国際条約]](人質行為防止条約)
ハイジャックを意図する人物とその企てのための凶器が機内に入るのを防ぐため、空港では保安検査が行われる{{sfn|工藤|2016|pp=1–2}}。
* [[1971年9月23日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書]](空港不法行為防止議定書)

* [[国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約]](北京条約)
[[File:Flughafenkontrolle.jpg|thumb|空港における保安検査の例。]]
[[File:16-11-16-Glasgow Airport-RR2 7321.jpg|thumb|持ち込み可能な液体物の掲示例。]]
ハイジャックの凶器となりうる銃や刀剣類などは旅客機への持ち込みが禁止されている<ref name=mlit-koku-fr2>{{Cite web|和書|title=航空:機内持込・お預け手荷物における危険物について |publisher=国土交通省 |url=https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr2_000007.html |accessdate=2018-02-18}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=機内持込み・お預け手荷物における危険物の代表例 |publisher=国土交通省 |url=http://www.mlit.go.jp/common/001191459.pdf |accessdate=2018-02-18}}</ref><ref name=luggage-jk>{{Citation |author1=齊藤基雄 |author2=戸崎肇 |contribution=航空手荷物 |title=日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib |publisher=小学館 |url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000305244 |accessdate=2018-02-18}}</ref>。また、爆発物や発火または引火しやすいものなど航空機や搭乗者に危害を与えるおそれがある危険物は、機内への持ち込みが禁止・制限されている<ref name=mlit-koku-fr2/>ほか、液体物は持ち込める容量が制限されている<ref>{{Cite web|和書|author=航空局安全部空港安全・保安対策課航空保安対策室 |publisher=国土交通省 |title=量的制限の対象となる液体物のリスト |url=https://www.mlit.go.jp/common/001105372.pdf |accessdate=2018-02-18}}</ref><ref name=luggage-jk/>。

これら危険物などが機内に持ち込まれるのを防ぐため、搭乗前には、[[金属探知機]]やX線検査装置などを用いた[[手荷物検査]]が行われている{{sfn|林|2014|pp=4–5}}{{sfn|稲坂|2006|p=135}}。[[ペットボトル]]に危険物が入っていないかを液体物検査装置を用いて確認する場合もある{{sfn|林|2014|pp=4–5}}{{sfn|稲坂|2006|p=135}}。搭乗者が持ち込み禁止品を所持していないかを検査するため、[[全身スキャナー|ボディスキャナー]]を用いる空港もある{{sfn|林|2014|p=5}}<ref name=aviationwire>{{Citation |last=KOHASE |first=Yusuke |title=羽田と成田、ボディスキャナー導入 国際線で |work=Aviation Wire |date=2017-03-29 |url=http://www.aviationwire.jp/archives/115754 |accessdate=2018-02-18}}</ref>。ボディスキャナーには[[ミリ波]]を全身に照射するアクティブタイプと、人体が発するミリ波や[[テラヘルツ波|テラ波]]を検知するパッシブタイプがあり、プライバシー保護を考慮して加工された検査結果が係員に提示される<ref name=security_show>{{Cite web|和書|title=空港のセキュリティ事情 |work=SECURITY SHOW |publisher=Nikkei Inc. |url=https://messe.nikkei.co.jp/ss/i/column/asjapan/73317.html |accessdate=2018-02-17}}</ref><ref name=aviationwire/>。

貨物室へ収納される受託手荷物や貨物に対しても、危険物に対する禁止・制限措置が取られている<ref name=mlit-koku-fr2/><ref>{{Cite web|和書|title=航空貨物の危険物代表例 |publisher=国土交通省 |url=https://www.mlit.go.jp/common/001009916.pdf |accessdate=2018-02-18}}</ref>。受託手荷物や貨物は搭載前に、X線検査装置や爆発物検査装置などによって検査され、危険物等が機内に入るのを防いでいる{{sfn|稲坂|2006|pp=136, 148}}{{sfn|林|2014|p=5}}。

=== 旅客情報のプロファイリング ===
テロ活動自体を予防・阻止するため、各国ではテロリストへの資金供給の抑制策を講じたり、諜報活動を行なったりしている<ref>{{Citation |last=清水 |first=隆雄 |title=テロリズムとその対策―国際社会の取組み (特集 テロリズム対策) |journal=外国の立法 |issn=0433096X |publisher=国立国会図書館調査及び立法考査局 |year=2006 |number=228 |pages=5-23 |url=http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/228/022802.pdf |accessdate=2018-02-18}}</ref>

テロリストなどの移動情報を得るため、アメリカでは自動ターゲティングシステム (Automated Targeting System; 以下ATS) が稼働している。このシステムでは国境を越える人や貨物の情報を収集し、全米規模でテロリストなどの情報を分析している{{sfn|川久保|2010|pp=29–30}}。アメリカでは航空機の乗客名簿は政府に提出され、テロリスト・データベースと照合されたり、過去のテロ犯罪情報と符合されたりする{{sfn|川久保|2010|pp=29–30}}。その結果、安全に対するリスクが高いと判断された乗客は搭乗を拒否されたり特別な監視が行われたりする{{sfn|工藤|2016|pp=3–4}}。日本でも、他国から乗り入れる航空会社から乗客名簿の提供を受け、テロリストや不法入国者の入国を阻止する[[事前旅客情報システム]] (APIS) が運用されている{{sfn|稲坂|2006|p=136}}。

=== スカイマーシャル制度 ===
航空保安官は武装した警官あるいは警備員であり、[[スカイマーシャル]]とも呼ばれる{{sfn|稲坂|2006|p=135–136}}<ref>{{Cite web|和書|title=大辞林 第三版の解説 スカイマーシャル |work=コトバンク |url=https://kotobank.jp/word/スカイマーシャル-301635 |accessdate=2018-02-15}}</ref>。航空保安官は飛行中のハイジャックを防止することを任務とし、乗客を装い私服で旅客機に警乗する{{sfn|稲坂|2006|p=135–136}}<ref>{{Cite web|和書|title=連邦航空保安官24時! 本気でテロと戦う現場では何が起きているのか? |work=クーリエ・ジャポン |url=https://courrier.jp/news/archives/89253/ |accessdate=2018-02-15}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=スカイ・マーシャルの実施について |date=2004-12-10 |url=https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/121210_2/01.pdf |accessdate=2018-02-13}}</ref>。航空保安官の人数や装備・搭乗便名といった具体的内容は保安上の観点から公開されていない{{sfn|稲坂|2006|pp=139–140, 152}}<ref name=mlit-kisha04-1>{{Cite web|和書|title=国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部における「スカイ・マーシャルの実施について」の決定について |date=2004-12-10 |url=https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/12/121210_2_.html |accessdate=2018-02-13}}</ref>。アメリカやイスラエルの航空保安官は、拳銃を携帯していることが公表されている{{sfn|稲坂|2006|pp=126, 152}}。日本の場合は、航空保安官の正式名称も公開されていない{{sfn|稲坂|2006|pp=139–140}}。これはその「存在自体が抑止力」という考え方による{{sfn|稲坂|2006|pp=139–140}}。航空保安官は厳しい養成課程を修了することが求められる{{sfn|稲坂|2006|pp=126, 153–155}}。[[格闘技]]や拳銃の射撃といった狭い機内でハイジャッカーを制圧するための訓練を受ける{{sfn|稲坂|2006|pp=126, 153–155}}。

=== 操縦室ドアの強化 ===
[[旅客機のコックピット|旅客機の操縦室]]のドアには、侵入や攻撃を防ぐ対策が施されている。[[小火器]]による射撃や[[手榴弾]]の破片などに耐えられるように、防弾性のある素材が使用されている。また、[[力士]]級の大柄の男2人が体当たりしても突破できない強度を持つ{{sfn|稲坂|2006|pp=149–150, 156}}{{sfn|ICAO|2016|loc=§13-2}}。

運航中は常に施錠されており、各操縦士席から解錠・施錠操作が可能で、そして、扉の外に不審な人物がいないか、各操縦席から監視できるようになっている。また、機内で保安上の問題が発生した際に、目立たないよう操縦士に知らせる装置を備えている{{sfn|稲坂|2006|pp=149–150}}{{sfn|ICAO|2016|loc=§13-2}}。

かつては、離着陸時などは操縦室のドアを施錠していなかった{{sfn|稲坂|2006|p=149}}。緊急時には男性のひと蹴りで外すことができ、操縦室を通って脱出することも想定されていた{{sfn|稲坂|2006|p=149}}。しかし、9.11事件を受けて[[アメリカ合衆国運輸省|アメリカ運輸省]]は、ハイジャッカーが容易に操縦室に侵入できたことが惨事に至ったと結論づけ、操縦室への侵入防止を優先することになった{{sfn|稲坂|2006|p=149}}。

== 航空機ハイジャックの歴史 ==
=== 初期のハイジャック ===
記録に残る史上初の航空機ハイジャックは、[[1931年]][[2月21日]]に[[ペルー]]の[[アレキパ]]で発生したものとされている<ref name=guiness/>。空港に着陸した郵便輸送機が、革命派組織により包囲され、宣伝ビラを空から撒くために飛行するよう要求された<ref name=asn-19310221-0>{{ASN accident|id=19310221-0 |title=ASN Aircraft accident Ford Tri-Motor registration unknown Arequipa Airport (AQP) |accessdate=2017-12-12}}</ref>{{sfn|稲坂|2006|p=42}}。これを拒否したパイロットは革命派に拘束されたが、[[3月2日]]に解放された<ref name=asn-19310221-0/>。[[第二次世界大戦]]前に発生したハイジャック事件で確認されているのはこの1件のみとされる{{sfn|稲坂|2006|p=42}}。当時の航空機は旅客輸送としてはまだ大衆には縁遠く、類似の事件が起きることはなかった{{sfn|稲坂|2006|p=42}}。

戦後最初のハイジャックは、[[1947年]][[7月25日]]に発生したとされる{{sfn|稲坂|2006|p=42}}{{refnest|group="注釈"|name=|この事件は、{{harvtxt|ゲロー|1997}}およびASN (2018年2月時点)<ref name=asn/>には記載されていない。}}。[[ルーマニア人民共和国|ルーマニア]]の将校3人が、民間機を乗っ取り[[トルコ]]に亡命した{{sfn|稲坂|2006|p=42}}。ハイジャッカーに抵抗した機長は拳銃で撃たれて着陸後に死亡し、ハイジャックによる初めての犠牲者になった{{sfn|稲坂|2006|p=42}}。

[[1948年]][[7月17日]]、史上初めてハイジャックにより旅客機が墜落した{{sfn|ゲロー|1997|p=11}}([[キャセイ・パシフィック航空機ハイジャック事件]])。この事件では、[[マカオ]]から[[香港]]へ向かっていた旅客機が4人組に乗っ取られた{{sfn|ゲロー|1997|p=11}}。ハイジャック犯が操縦士を射殺したため旅客機が操縦不能となり墜落した<ref name=asn-19480717-0>{{ASN accident|id=19480717-0 |title=ASN Aircraft accident Consolidated PBY-5A Catalina VR-HDT Pearl River|accessdate=2017-12-11}}</ref>。乗客3人と乗員22人が死亡し、唯一の生存者はハイジャック犯の1人であった{{sfn|ゲロー|1997|p=11}}。この事件は、アジアで発生した最初の航空機ハイジャック事件でもある{{sfn|Thomas|2008|p=143}}。

=== 逃亡・亡命ハイジャックの急増 ===
[[アメリカ合衆国]]で最初の航空機ハイジャックは1961年5月1日に発生した<ref name=britanica/>。{{仮リンク|フロリダ・キーズ・マラソン空港|en|Florida Keys Marathon Airport}}から[[キーウェスト国際空港]]へ向かっていた旅客機が乗っ取られ、[[カリブ海]]の小国[[キューバ]]へ向かうよう要求された<ref name=britanica/><ref name=asn-19610501-0>{{ASN accident|id=19610501-1 |title=ASN Aircraft accident Convair CV-440 registration unknown |accessdate=2017-12-12}}</ref>。当時キューバでは、[[ラテンアメリカ]]で最初の社会主義革命である[[キューバ革命]]が進行しており、アメリカとの国交断絶を経て社会主義宣言を行なっていた{{sfn|浅野|1989|p=45}}<ref>{{Citation |last=加茂 |first=雄三 |contribution=キューバ革命 |title=日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib |publisher=小学館 |url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000063721 |accessdate=2018-01-21}}</ref>。このような情勢下でアメリカで差別や貧困に苦しんでいたキューバ移民は、祖国に帰るためにハイジャックに走り{{sfn|浅野|1989|p=45}}、同様の事案が立て続けに発生したため、当時の大統領である[[ジョン・F・ケネディ]]がFBIと航空会社にハイジャックへの対策を求める事態となった<ref name="propublica">{{cite news|last=Gravel|first=Michael|title=History of the Federal Air Marshal Service|url=https://www.propublica.org/article/history-of-the-federal-air-marshal-service|Publish=propublica|date=November 13, 2008|access-date=December 30, 2022}}</ref>。

1968年から1973年頃までキューバへ向かうハイジャックがあまりにも多発したことで「'''特急キューバ行き'''」という新語が生まれるほどであり{{sfn|浅野|1989|p=45}}、1968年から1972年の4年間で75件ものキューバ行きを強要するハイジャック事件が発生した<ref name="propublica"></ref>。

キューバ革命は南米[[コロンビア]]の反政府左翼[[ゲリラ]]組織も刺激し、[[コロンビア革命軍]]や[[民族解放軍 (コロンビア)|民族解放軍]]の活動が活発化した{{sfn|稲坂|2006|p=109}}。1967年8月6日、[[バランキージャ]]から[[サンアンドレス島]]へ飛行中の旅客機がハイジャックされたのを契機に、コロンビアからもキューバ行きを要求するハイジャックが多発した{{sfn|ゲロー|1997|p=20}}{{sfn|稲坂|2006|pp=109–111}}。このため、コロンビアは米国、ロシアに次いで世界で3番目にハイジャックの多い国となった。

=== 政治的ハイジャックの衝撃 ===
1940年代から1950年代に発生したハイジャックの大半は逃亡や亡命目的であった{{sfn|ゲロー|1997|p=9}}。[[第三世界]]の国々で発生した数件を除いて、ほとんど平和的に解決していた{{sfn|ゲロー|1997|pp=9, 59}}。これまで西側諸国では死者を伴うハイジャックが起きていなかった{{sfn|ゲロー|1997|p=59}}。しかし1950年代に入ると武装集団やゲリラの影響が見られるハイジャックが発生し始めた{{sfn|ゲロー|1997|p=59}}。

政治的ハイジャックを世界に印象付けたのはパレスチナ・ゲリラが最初だった{{sfn|稲坂|2006|pp=48–49}}。1948年の[[イスラエル]]建国で[[パレスチナ人]]は故郷を追われ、周辺のアラブ諸国で難民として暮らしていた{{sfn|稲坂|2006|p=48}}。1967年に[[第三次中東戦争]]が勃発し、アラブ諸国の正規軍は短期間でイスラエルに敗れた{{sfn|稲坂|2006|p=48}}。パレスチナ難民は自力で故郷を取り戻すべくゲリラ戦を展開した{{sfn|稲坂|2006|p=48}}。1968年7月23日、[[マルクス・レーニン主義]]を掲げる[[パレスチナ解放人民戦線]] (PFLP) が、イスラエルの[[テルアビブ]]に向かっていた[[エル・アル航空]]の旅客機を乗っ取り[[アルジェ]]に着陸させた{{sfn|稲坂|2006|p=49}}([[エル・アル航空426便ハイジャック事件]])。パレスチナ・ゲリラは、イスラエルの権威を失墜させると同時にアメリカのイスラエル支援を非難し、パレスチナ難民の窮状を世界に訴える手段としてハイジャックを利用した{{sfn|稲坂|2006|p=49}}。この事件は、政治的ハイジャックが世界各地に飛び火するきっかけとなった{{sfn|稲坂|2006|p=49}}。

=== ハイジャック防止対策の始まり ===
航空機ハイジャックの発生件数は1968年から急増し<ref name=hijacking-jk/>、1969年と1970年には年間80件を超えるハイジャックが発生した{{sfn|稲坂|2006|pp=38–39}}。ハイジャックは航空会社にとって大きな脅威となり、世界各国で防止対策がとられた<ref name=hijacking-jk/>。

アメリカではハイジャックの罰則を定めた法案が1961年に施行され、同法では死刑が最高刑とされた{{sfn|稲坂|2006|p=47}}。さらに、世界に先駆けて1968年からアメリカではハイジャック防止を目的とした手荷物検査が開始された{{sfn|稲坂|2006|p=47}}。最も被害の多かった[[イースタン航空]]では、1969年10月から[[金属探知機]]と手荷物検査を組み合わせたハイジャック防止システムを導入し、[[トランス・ワールド航空]]や[[パンアメリカン航空]]もこれに続いた{{sfn|稲坂|2006|p=47}}。

1970年には、日本で最初のハイジャック事件となる「[[よど号ハイジャック事件]]」が発生した{{sfn|稲坂|2006|p=53}}。この事件を受けて同年に[[航空機の強取等の処罰に関する法律]](ハイジャック処罰法、航空機強取法)が成立し、日本でも搭乗前の手荷物検査が開始された{{sfn|稲坂|2006|p=135}}{{sfn|浅野|1989|p=42}}。1977年に[[日本赤軍]]による[[ダッカ日航機ハイジャック事件]]が発生した後には、防止対策が強化されて持ち込み手荷物の制限が行われている<ref name=hijacking-jk/>。

=== ハイジャック防止の国際条約 ===
国際協力体制の法的枠組みの構築も図られ、1960年代から1970年代にかけて国際民間航空機関 (International Civil Aviation Organization; ICAO) において航空機にまつわる犯罪を防止するための3つの国際条約が作られた{{sfn|浅野|1989|p=35}}<ref name=mofa-icao/>。この3条約とは、1963年の「[[航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約]]」(東京条約)、1970年の「[[航空機の不法な奪取の防止に関する条約]]」(ヘーグ条約)、1971年の「[[民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約]]」(モントリオール条約)である{{sfn|浅野|1989|p=35}}。

東京条約では、主に飛行中の航空機内で行われた犯罪や航空機の安全を害する行為に対する裁判管轄権や、これら犯罪等を取り締まるための機長の権限などが定められた{{sfn|浅野|1989|p=41}}。東京条約の制定当時はハイジャック発生件数はそれほど多くなく、同条約ではハイジャックは主たる規制対象とは捉えられていなかった{{sfn|浅野|1989|p=41}}。

しかし、同条約が発効した1969年にはハイジャックの発生件数が急増しており、同条約では対処しきれなくなっていた{{sfn|浅野|1989|p=41}}。そこで、1970年に作成されたヘーグ条約では、ハイジャックの防止を主たる目的とし、東京条約では不十分だった点が強化された{{sfn|浅野|1989|p=47}}。同条約では航空機の不法奪取等を犯罪と認め、ハイジャック犯に重い刑罰を科すことを締約国に義務付けたほか、犯人引き渡しに関する規定が定められた{{sfn|浅野|1989|p=41}}。

さらに、1971年に作成されたモントリオール条約では、ハイジャック以外の民間航空の安全に対する一定の不法行為を犯罪とし、その犯人の処罰及び引き渡し等について規定された{{sfn|浅野|1989|p=41}}<ref name=mofa-icao/>。同条約では、飛行中だけでなく、業務中の航空機や航空施設に対する破壊や安全を損なう行為についても重い刑罰を科すよう締約国に義務付けた{{sfn|浅野|1989|p=41}}。さらに、裁判権の広範囲な設定や犯人の引き渡しについても規定されている{{sfn|浅野|1989|p=41}}。ヘーグ条約やモントリオール条約では、締約国のいずれかにおいて犯人を処罰する体制を確立し、犯入に逃げ込み場を作らないという一種の世界主義的な考え方が導入されている{{sfn|浅野|1989|pp=35, 41}}。

これらの対策にもかかわらずキューバ行きのハイジャックに悩まされたアメリカは、1973年に、国交を断絶中のアメリカとキューバは航空機や船舶の不法奪取及びその他の犯罪に関する協定を結んだ{{sfn|浅野|1989|p=47}}。この協定は、ハイジャック犯人だけをキューバに引き渡し、機体と乗客は速やかに帰国させるというものであった{{sfn|浅野|1989|p=47}}。この協定は、不法奪取行為を防止する実効性を発揮したと評価されている{{sfn|浅野|1989|p=41}}。

その後1978年には、[[西ドイツ]]の[[ボン]]で開催された[[第4回先進国首脳会議]]において「航空機ハイジャックに関する声明」(ボン声明)が発せられ、国際テロ活動と闘うため参加国が共同して対抗措置をとる決意が表明された<ref name=mofa-bonn>{{Cite web|和書|title=4 ボン サミット - 航空機のハイジャックに関する声明 |publisher=[[外務省]] |url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/bonn78/j04_b.html |accessdate=2018-02-04}}</ref><ref name=mlit>{{Cite web|和書|title=4 日本航空(株)寄航の外国空港におけるハイジャック防止体制の強化 |publisher=[[国土交通省]] |url=https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa53/ind100307/004.html |accessdate=2018-02-04}}</ref>。この声明では、犯人の引渡しや訴追を拒絶する国あるいはハイジャック機を返還しない国に対して、航空機の運航を中止することが述べられた<ref name=mofa-bonn/><ref name=mlit/>。また、声明中で参加国以外への参加も呼びかけている<ref name=mlit/>。

=== 国際テロ対策条約 ===
その間、[[国際連合]]においても国際テロ事件を対象とした2件の条約が採択されている。

まず「[[国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約]]」(国家代表等犯罪防止処罰条約)が1973年に採択され1977年に発効した{{sfn|安藤|2014|p=35}}。この条約は、国家元首や外交官といった「国際的 に保護される者」の誘拐や殺害事件が増加したことを受けて、それらの行為を犯罪と定め、犯人の処罰や引き渡し等について規定している{{sfn|安藤|2014|pp=35–36, 109}}<ref name=mofa-terro/>。

続いて「[[人質をとる行為に関する国際条約]]」(人質行為防止条約)が1979年に採択され1983年に発効した{{sfn|安藤|2014|p=35}}。1970年代に[[ミュンヘンオリンピック事件]]や大使館占拠事件、{{仮リンク|OPEC本部襲撃事件|en|OPEC siege}}といった人質行為を伴うテロ事件が増加したことを受け、これらの人質をとる行為を防止するための条約である{{sfn|安藤|2014|p=35}}。国際的なテロリズムとして行われる人質を取る行為を犯罪と定め、その犯人の処罰や引渡し等が規定している{{sfn|安藤|2014|pp=35–36}}<ref name=mofa-terro/>。

1980年代に空港におけるテロ事件が増加したことを受けて、モントリオール条約を補足する議定書として「千九百七十一年九月二十三日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書」(空港不法暴力行為防止議定書)が作成され{{sfn|安藤|2014|p=38}}。この議定書は国際空港の安全を損なう一定の暴力行為を犯罪と定め、犯人の処罰のための措置が規定したもので、1988年に採択され翌年発効した{{sfn|安藤|2014|p=38}}。

この頃、[[プラスチック爆弾]]を用いた航空機爆破事件が相次いだ{{sfn|安藤|2014|pp=41–42}}。1987年には、[[大韓航空機爆破事件]]が発生し、[[ボーイング707]]が爆破され搭乗者全員の115人が死亡した<ref name=asn-19871129-0>{{ASN accident |id=19871129-0 |title=ASN Aircraft accident Boeing 707-3B5C HL7406 Tavoy, Myanmar (Andaman Sea) |accessdate=2017-12-15}}</ref>。1988年には、[[パンアメリカン航空103便爆破事件]]が発生し、[[パンアメリカン航空]]の[[ボーイング747]]が爆破され、搭乗者259人全員と地上で巻き込まれた11人が死亡した<ref name=asn-19881221-0>{{ASN accident |id=19881221-0 |title=ASN Aircraft accident Boeing 747-121A N739PA Lockerbie |accessdate=2017-12-15}}</ref>。1989年には[[UTA航空772便爆破事件]]が発生し、フランスの[[UTA]]の[[マクドネル・ダグラス DC-10|マクドネル・ダグラスDC-10]]が爆破され、搭乗者全員の170人が死亡した<ref name=asn-19890919-1>{{ASN accident |id=19890919-1 |title=ASN Aircraft accident McDonnell Douglas DC-10-30 N54629 Ténéré desert}}</ref>。これらの事件、特にパンアメリカン航空103便爆破事件を直接的な契機として、ICAOにより「[[可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約]]」(可塑性爆薬探知条約)が作成された{{sfn|安藤|2014|pp=41–42}}。この条約では、可塑性爆薬への探知剤の添加等の措置を締約国に義務づけている<ref name=mofa-bonn/>。

=== 史上最悪のハイジャック事件 ===
1970年代には390件に達したハイジャックの発生件数は、1980年代に284件、1990年代には263件と減少傾向を示していた{{sfn|稲坂|2006|p=40}}。

1990年代になると、組織的で大規模な[[テロリズム|テロ活動]]の背後にある資金源を断つ必要性が認識されるようになった{{sfn|安藤|2014|p=44}}。既存の条約では資金供与について明示的に扱われていないことを踏まえ、1999年、国連において[[テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約]]が採択された{{sfn|安藤|2014|p=44}}。この条約では、テロ行為の準備行為となる資金提供や収集自体を犯罪と定め、そうした行為を行なった者を訴追や処罰することでテロ行為を防止することを狙いとした{{sfn|安藤|2014|p=45}}。当初、この条約に対して署名や批准を行うことに消極的な国が少なくなかった{{sfn|安藤|2014|pp=44–45}}。しかし、2001年に9.11事件が発生し、[[ウサーマ・ビン・ラーディン]]が事件の実行犯たちへ資金提供を行なっていた疑いが強まり、テロ活動の資金源に対する関心が高まった{{sfn|安藤|2014|pp=44–45}}。

[[File:UA Flight 175 hits WTC south tower 9-11 edit.jpeg|thumb|ユナイテッド航空175便が世界貿易センタービル南棟に突入した瞬間]]
2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件(9.11事件)は、史上最大の犠牲者を出したハイジャック事件となった<ref name=britanica/>。[[テロリズム|テロリスト]]がアメリカで4機の旅客機を乗っ取り自爆攻撃を行なった事件である<ref name=britanica/>。

[[アメリカン航空11便テロ事件|アメリカン航空11便]]と[[ユナイテッド航空175便テロ事件|ユナイテッド航空175便]]は、ハイジャックされて[[ワールドトレードセンター (ニューヨーク)|ワールドトレードセンター]]のノースタワーとサウスタワーにそれぞれ突入した<ref name=asn-20010911-0>{{ASN accident |id=20010911-0 |title=ASN Aircraft accident Boeing 767-223ER N334AA New York, NY |accessdate=2017-12-15}}</ref><ref name=asn-20010911-1>{{ASN accident |id=20010911-1 |title=ASN Aircraft accident Boeing 767-222 N612UA New York, NY |accessdate=2017-12-15}}</ref>。航空機の衝突後にタワーは相次いで崩壊し、両機の搭乗者全員と地上で巻き込まれた犠牲者を合わせて約3,000人が死亡した<ref name=asn-20010911-0/><ref name=asn-20010911-1/>{{refnest|group="注釈"|name=wtc_note|なお、衝突と倒壊は短時間で発生しており、2機それぞれの犠牲者数を特定することは困難である<ref name=asn-20010911-0/><ref name=asn-20010911-1/>。}}。同じ頃ハイジャックされた[[アメリカン航空77便テロ事件|アメリカン航空77便]]は、[[アメリカ国防総省]]の[[ペンタゴン]]に突入した<ref name=asn-20010911-3>{{ASN accident |id=20010911-3 |title=ASN Aircraft accident Boeing 757-223 N644AA Washington, DC |accessdate=2017-12-15}}</ref>。衝突により爆発炎上し、搭乗者64人全員と地上の125人が死亡した<ref name=asn-20010911-3/>。[[ユナイテッド航空93便テロ事件|ユナイテッド航空93便]]も同様にハイジャックされ、機体の操縦を奪われたが、乗客たちの抵抗により犯人の意図した目標へ到達する前に墜落した<ref name=20010911-2>{{ASN accident |id=20010911-2 |title=ASN Aircraft accident Boeing 757-222 N591UA Shanksville, PA |accessdate=2017-12-15}}</ref>。同便では、搭乗者44人全員が死亡した<ref name=20010911-2/>。

=== 9.11後の対策強化 ===
これまでのハイジャック事件では犯人と仲間が生き延びることを前提としていたが、9.11事件においてハイジャッカーは最初から自爆を目的としていた{{sfn|稲坂|2006|p=145}}。このことは、ハイジャック対策の考え方を根本から揺るがした{{sfn|稲坂|2006|p=145}}。

この事件を受けて、アメリカではテロ対策の大幅な強化が図られた{{sfn|稲坂|2006|p=142}}。まず同年10月には異例の速さで[[米国愛国者法]]が成立した{{sfn|稲坂|2006|p=142}}。この法律は電話の盗聴やインターネット通信記録の押収など規制当局の権限を大幅に拡大するものであり、経済の自由やプライバシーを侵害するという反対意見が出され議論となった{{sfn|稲坂|2006|pp=142–143}}。続いて11月には、{{仮リンク|航空および運輸安全法|en|Aviation and Transportation Security Act}}が発効した{{sfn|稲坂|2006|pp=145–146}}。この法律は、[[運輸保安庁]]の設置や空港における手荷物検査体制の強化、航空機の操縦室のドアの強化、航空保安官の警乗などについて定めている{{sfn|稲坂|2006|pp=145–146}}。

9.11事件の際にアメリカでは、[[アメリカ合衆国運輸省|運輸省]]管理下の[[アメリカ沿岸警備隊|沿岸警備隊]]、[[アメリカ合衆国財務省|財務省]]管轄の[[アメリカ合衆国シークレットサービス|シークレットサービス]]、[[アメリカ合衆国司法省|司法省]]所属の{{仮リンク|アメリカ合衆国国境警備隊|en|United States Border Patrol}}などの機関の連携がとれず批判の対象となったため、これら関係機関を統合した[[アメリカ合衆国国土安全保障省|国土安全保障省]]が新設された{{sfn|稲坂|2006|pp=143–144}}。2002年に行われた国土安全保障省の設立は、1947年の[[アメリカ国防総省]]設立以来の最大の組織改編とも言われる{{sfn|稲坂|2006|p=144}}。

ICAOにおいても航空保安の強化について議論され、2002年7月に新しい国際ルールが適用された{{sfn|川久保|2010|p=31}}。新しいルールには操縦室ドアを強化する安全基準や航空保安官の警乗、空港内の立ち入り規制などが含まれ、さらにこれらの国際標準を国内線にも適用することが求められるようになった{{sfn|川久保|2010|p=31}}{{sfn|稲坂|2006|pp=149–150}}。

2010年には、最近のテロ防止関連条約に共通に取り入れられている規定をモントリオール条約やヘーグ条約に導入するため、ICAOにより「[[国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約]]」(北京条約)および「航空機の不法な奪取の防止に関する条約の追加議定書」(北京議定書)が作成された<ref name=mofa-icao/>。

ASNの統計によると、軍用機やプライベート機を除くハイジャックの発生件数は、2003年以降は年間10件未満で推移している<ref>{{Cite web |title=Aviation Safety Network > Statistics > By period > airliner hijackings |url=https://aviation-safety.net/statistics/period/stats.php?cat=H2 |accessdate=2018-02-17}}</ref>。


== ハイジャックを扱った作品 ==
== ハイジャックを扱った作品 ==
=== 映画 ===
=== 映画 ===
{{see also|Category:ハイジャックを題材とした映画作品}}
*{{仮リンク|ハイジャック (映画)|label=ハイジャック|en|Skyjacked (film)}}(原題:Skyjacked、1972年)
*[[ハイジャック (映画)|ハイジャック]](1972年)
:[[ジョン・ギラーミン]]監督、出演は[[チャールトン・ヘストン]]、[[ジェームズ・ブローリン]]、[[イヴェット・ミミュー]]、音楽[[ペリー・ボトキン・ジュニア]]。妄想に駆られた者がアメリカ合衆国の国内線旅客機を乗っ取りモスクワに行けと要求するが、ソヴィエト連邦はその受け入れを拒否する。
*:[[ジョン・ギラーミン]]監督、出演は[[チャールトン・ヘストン]]、[[ジェームズ・ブローリン]]、[[イヴェット・ミミュー]]。妄想に駆られた者がアメリカ合衆国の国内線旅客機を乗っ取りモスクワに行けと要求するが、ソビエト連邦はその受け入れを拒否する。
*[[皇帝のいない八月]](1978年)
*[[デルタ・フォース (映画)|デルタ・フォース]](1986年)
:[[山本薩夫]]監督、出演は[[渡瀬恒彦]]、[[吉永小百合]]、[[高橋悦史]]、[[山本圭]]、音楽[[佐藤勝]]。[[クーデター]]を起こした元[[陸上自衛隊]]の藤崎隊が[[さくら (列車)|寝台特急さくら号]]を制圧し東京に行けと要求する。
*:[[メナヘム・ゴーラン]]監督
*[[パッセンジャー57]](1992年)
*[[パッセンジャー57]](1992年)
:[[ケビン・フックス]]監督。
*:[[ケビン・フックス]]監督。
*[[エグゼクティブ・デシジョン]](1996年)
*[[エグゼクティブ・デシジョン]](1996年)
:[[スチュアート・ベアード]]監督。
*:[[スチュアート・ベアード]]監督。
*[[エアフォース・ワン (映画)|エアフォース・ワン]](1997)
*[[エアフォース・ワン (映画)|エアフォース・ワン]](1997年)
:[[ウォルフガング・ペーターゼン]]監督。[[VC-25]]「[[エアフォースワン]]」をハイジャックしたテロリストとの闘いを描く。
*:[[ウォルフガング・ペーターゼン]]監督。[[VC-25]]「[[エアフォースワン]]」をハイジャックしたテロリストとの闘いを描く。
*[[コン・エアー]](1997年)
*[[コン・エアー]](1997年)
:[[サイモン・ウェスト]]監督。輸送機をハイジャックした凶悪犯と元陸軍突撃隊員との闘いを描く。
*:[[サイモン・ウェスト]]監督。輸送機をハイジャックした凶悪犯と元陸軍突撃隊員との闘いを描く。
*[[エア・レイジ]](2000年)
*[[エア・レイジ]](2000年)
:エド・レイモンド([[フレッド・オーレン・レイ]])監督。[[ボーイング747]]をハイジャックした[[テロリスト]]と[[特殊部隊]]の闘いを描く。劇中では何故か747の初号機のデモカラーが用いられていた。
*:エド・レイモンド([[フレッド・オーレン・レイ]])監督。[[ボーイング747]]をハイジャックした[[テロリスト]]と[[特殊部隊]]の闘いを描く。劇中では何故か747の初号機のデモカラーが用いられていた。
*[[ユナイテッド93]](2006年)
*[[ユナイテッド93]](2006年)
:[[ポール・グリーングラス]]監督。[[ユナイテッド航空93便テロ事件]]を扱った[[ノンフィクション]]の映画。
*:[[ポール・グリーングラス]]監督。[[ユナイテッド航空93便テロ事件]]を扱った[[ノンフィクション]]の映画。
*[[フライト・ゲーム]](2014年)
*[[フライト・ゲーム]](2014年)
:[[ジャウ・コレット=セラ]]監督。 航空保安官のビル・マークスと姿の見えないハイジャック犯との戦いを描く。
*:[[ジャウ・コレット=セラ]]監督。 航空保安官のビル・マークスと姿の見えないハイジャック犯との戦いを描く。


=== 漫画・アニメ ===
=== 漫画・アニメ ===
*[[ゴルゴ13]](1968年
*[[ゴルゴ13]](1968年 -
*:[[さいとう・たかを]]作。ゴルゴ13においても、7巻「AT PIN-HOLE!」19巻「ジェット・ストリーム」49巻「ガリンペイロ」118巻「未明の標的」134巻「高度7000メートル」などのエピソードでハイジャックが主題となっている(巻数は[[リイド社]]の[[SPコミックス]]を示す)。
*:[[さいとう・たかを]]作。7巻「AT PIN-HOLE!」19巻「ジェット・ストリーム」49巻「ガリンペイロ」118巻「未明の標的」134巻「高度7000メートル」などのエピソードでハイジャックが主題となっている(巻数は[[リイド社]]の[[SPコミックス]]を示す)。
*[[エロイカより愛をこめて]]
*[[エロイカより愛をこめて]](1976年 - )
*:[[青池保子]]作。NATO情報部将校「鉄のクラウス」から「ルビヤンカ・レポート」を奪取するため、KGBの「銀のオーロラ」がロンドン発ボン行きのルフトハンザ機をハイジャックする。
*:[[青池保子]]作。[[北大西洋条約機構|NATO]]情報部将校「鉄のクラウス」から「ルビヤンカ・レポート」を奪取するため、[[ソ連国家保安委員会|KGB]]の「銀のオーロラ」がロンドン発ボン行きのルフトハンザ機をハイジャックする。


===小説===
=== 小説 ===
*シャドー81
*シャドー81(1975年)
*:ルシアン・ネイハム作。ハイジャッカーは最新鋭の[[戦闘機]]を操るパイロットで、乗っ取った機内にはいない。対象の旅客機の背後につき、後方から[[空対空ミサイル]]というを突きつけて政府を脅迫する、変り種作品。
*:[[ルシアン・ネイハム]]作。ハイジャッカーは最新鋭の[[戦闘機]]を操るパイロットで、乗っ取った機内にはいない。対象の旅客機の背後につき、後方から[[空対空ミサイル]]というを突きつけて政府を脅迫する、変り種作品。


*テロ(2015年)
== ハイジャック派生の言葉一覧 ==
*:刑事事件[[弁護士]]でもある[[フェルディナント・フォン・シーラッハ]]の作品。7万人の観客がいるサッカースタジアムへ突入しようとするハイジャックされた旅客機を独断で撃墜した空軍パイロットの裁判を描く[[法廷もの]]。
*[[シージャック]]

*[[バスジャック]]
*[[カージャック]]
== ハイジャック派生の言葉 ==
* [[自動車]]の乗っ取りを「カージャック」 (carjacking)<ref>{{Cite |contribution=carjacking, n. |title=OED Online |date=January 2018 |publisher=Oxford University Press |url=http://www.oed.com/view/Entry/240714 |accessdate=2018-03-17}}</ref><ref>{{Citation |contribution=カージャック |title=情報・知識 imidas 2017 |url=https://japanknowledge.com/lib/display/?lid=50010Z-06-1-0014 |accessdate=2018-03-17}}</ref>、[[船舶]]の乗っ取りを「[[シージャック]]」(seajacking)<ref>{{Cite |contribution=seajack, v. |title=OED Online |date=January 2018 |publisher=Oxford University Press |url=http://www.oed.com/view/Entry/242031 |accessdate=2018-03-17}}</ref><ref>{{Citation |contribution=シージャック |title=情報・知識 imidas 2017 |url=https://japanknowledge.com/lib/display/?lid=50010Z-12-1-0050 |accessdate=2018-03-17}}</ref> と言うことがある。
*トレインジャック
** また、[[日本]]においてはハイジャックの概念が航空機への攻撃をきっかけに広まったことから、hijack→high-jack→高い場所にあるものの乗っ取りと勘違いされ「Jack」単体に乗っ取り・不法占拠の意味が付与された。このことにより「[[バスジャック]]」のほか、後述の多数の「○○ジャック」という[[和製英語]]が生まれた。
*[[核ジャック]]
* [[コンピュータネットワーク]]通信において[[セッション (コンピュータ)|セッション]]IDを取得することで、第三者が不正になりすまして通信を行うことを「[[セッションハイジャック|セッション・ハイジャック]]」と言う<ref>{{Citation |title=安全なウェヴサイトの作り方 (改訂第7版) |author=情報処理推進機構 セキュリティセンター |date=2015-03 |url=https://www.ipa.go.jp/files/000017316.pdf |accessdate=2018-03-17}}</ref><ref>{{Citation |author1=Burgers, Willem |author2=Verdult, Roel |author3=Van Eekelen, Marko |title=Prevent session hijacking by binding the session to the cryptographic network credentials |booktitle=Nordic Conference on Secure IT Systems |pages=33–50 |year=2013}}</ref>。
*[[電波ジャック]]

*メディアジャック(テレビ-、サイトジャック)
=== 日本における用法 ===
:[[宣伝]][[広告]]としても用いられる。
* 犯罪としての乗っ取り行為
** [[バスジャック]] - [[バス (交通機関)|バス]]を奪取する行為<ref>{{Cite web|和書|title=「バスジャック」という言い方は? | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 |work=NHK放送文化研究所 |url=https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/174.html |accessdate=2018-03-17}}</ref>。
** トレインジャック - 運行中の[[鉄道]]を奪取する行為。
** [[核ジャック]] - [[核兵器]]やその原料となる[[ウラン]]や[[プルトニウム]]といった核物質([[放射性物質]])を奪取する行為。
** [[電波ジャック]] - [[電気通信]]における正規の伝送路を乗っ取り、正規の受信者に向けて独自の内容を送信すること。
* その他の比喩的用法 - いずれも合法的な行為を指す。
** メディアジャック - 広告主が単独の、あるいは複数の[[メディア (媒体)|メディア]]の広告枠を買い占め、短期集中して大量に広告を行うこと<ref>{{Cite web|和書|title=メディアジャック |work=imidas 現代人のカタカナ語辞典 |url=https://imidas.jp/katakana/detail/Z-34-4-0297.html |accessdate=2021-01-13}}</ref>。
** 「電波ジャック」 - 上記犯罪と異なり、1人または1組の出演者が宣伝等のために、短期間に複数の放送番組・放送局へ出演すること。または、ある1つの題材を、複数の放送局が一斉に、あるいはほぼ同時に番組内で取り上げること。上記犯罪との区別のため、「番組ジャック」「テレビジャック」「ラジオジャック」と呼び替えられる場合がある。{{See also|電波ジャック#語の転用}}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{reflist}}
{{Reflist|group="注釈"|30em}}


=== 出典 ===
== ハイジャック派生の言葉一覧 ==
{{Reflist|2|refs=
=== 犯罪・不正行為 ===
<ref name=asn>{{Cite web
*[[シージャック]] - 運行中の船舶を略取する行為。
|title=Aviation Safety Network > ASN Aviation Safety Database
*[[バスジャック]] - 運行中のバスを乗っ取る行為。
|url=https://aviation-safety.net/database/
*[[カージャック]] - 運行中の自動車を奪取する行為。
|accessdate=2018-01-06 |date=2018-01-07}}</ref>
*トレインジャック - 運行中の鉄道を奪取する行為。
*[[核ジャック]] - 核兵器や核兵器の原料となるウランやプルトニウムといった核物質(放射性物質)を奪取する行為。
*[[電波ジャック]] - [[電気通信]]における正規の伝送路を乗っ取り、正規の受信者に向けて独自の内容を送信することをいう。
*[[セッションハイジャック]] - コンピュータネットワーク通信におけるセッションを、通信当事者以外が乗っ取る攻撃手法


<ref name=britanica>{{Citation
=== 正規の方法で行われるジャック ===
|contribution=Hijacking
*メディアジャック(テレビ-、サイトジャック)
|title=Britannica Academic
:[[宣伝]][[広告]]としても用いられる。
|date=2017
|url=http://academic.eb.com/levels/collegiate/article/hijacking/40425
|accessdate=2017-12-11}}</ref>


<ref name=britanica-ja>{{Citation
|contribution=ハイジャック
|title=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
|url=http://japan.eb.com/rg/article-08996600
|accessdate=2018-01-04}}</ref>


<ref name=hijacking-jk>{{Citation
==外部リンク==
|last=池田
*[http://www.aomori-airport.jp/03_airport/w-day24.html 青森空港HP 我が国航空機に係るハイジャック等一覧表]
|first=文雄
|contribution=ハイジャック
|title=日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000182227
|accessdate=2017-12-12}}</ref>

<ref name=rhd_hijacker>{{Citation
|contribution=hi・jack・er
|title=小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081020000
|accessdate=2018-01-14}}</ref>

<ref name=rhd_hijack>{{Citation
|contribution=hi・jack
|title=小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081019000
|accessdate=2018-01-14}}</ref>

<ref name=rhd_skyjack>{{Citation
|contribution=sky・jack
|title=小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH161331000
|accessdate=2018-01-14}}</ref>

<ref name=rhd_airpiracy>{{Citation
|contribution=áir pìracy
|title=小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH003757000
|accessdate=2018-01-21}}</ref>

<ref name= japan_hijack>{{Citation
|contribution=ハイ‐ジャック
|title=日本国語大辞典 / JapanKnowledge Lib
|publisher=小学館
|url=http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081019000
|accessdate=2018-01-14}}</ref>

<ref name=guiness>{{Cite web
|title=First hijack of an aircraft
|work=Guinness World Records
|url=http://www.guinnessworldrecords.com/world-records/first-hijack-of-an-aircraft/
|accessdate=2017-12-10}}</ref>

<ref name=mofa-icao>{{Cite web|和書
|title=国際民間航空機関(ICAO)が作成する条約
|publisher=外務省
|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/icao/jyoyaku.html
|accessdate=2017-12-16
}}</ref>

<ref name=mofa-terro>{{Cite web|和書
|title=テロ防止関連諸条約について
|publisher=外務省
|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/terro/kyoryoku_04.html
|accessdate=2018-02-08
}}</ref>

}}

== 参考文献 ==
*{{Citation
|last=浅野
|first=裕司
|title=航空テロリズム規制の諸条約と航空会社の賠償責任について
|journal=東洋法学
|issn=05640245
|publisher=東洋大学
|year=1989
|volume=33
|number=1
|pages=33-85
|url=https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001338861615744
|accessdate=2017-12-16
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=安藤 |first=貴世
|title=国際テロリズムに対する法的規制の構造-テロリズム防止関連諸条約における裁判管轄権の検討-
|publisher=日本大学
|year=2014
|url=https://ci.nii.ac.jp/naid/500000919614
|doi=10.15006/32665B7083
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=稲坂 |first=硬一
|title=ハイジャックとの戦い : 安全運航をめざして
|publisher=交通研究協会(発売:成山堂書店)
|year=2006
|series=交通ブックス
|number=305
|isbn=4425777417
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=川久保 |first=文紀
|title=空港における「移動性」の統治と「リスク管理」としての戦争 : ターゲットガバナンスとリスクガバナンスを素材として
|journal=中央学院大学法学論叢
|issn=09164022
|publisher=中央学院大学法学部
|year=2010
|volume=23
|number=2
|pages=90-73
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=川原 |first=英一
|title=航空保安の国際ルール強化に向けた最近の動向--2001年9.11同時多発テロ事件後
|journal=外務省調査月報
|issn=04473523
|publisher=外務省国際情報局調査室
|year=2002
|volume=2002
|number=2
|pages=63-92
|url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/pub/geppo/pdfs/02_2_3.pdf
|accessdate=2018-02-10
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=工藤 |first=聡一
|title=航空旅客情報のプロファイリングとプライバシー
|journal=電気通信普及財団 研究調査助成報告書
|year=2016
|number=31
|url=https://www.taf.or.jp/files/items/577/File/007.pdf
|accessdate=2018-02-18
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=ゲロー |first=デイビッド
|others=清水保俊(訳)
|title=航空テロ : 1930年から現在までの「航空犯罪」記録集 : ハイジャック、破壊工作、撃墜など民間機を襲った事件の記録と検証
|publisher=イカロス出版
|year=1997
|isbn=4871491277
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=林 |first=高正
|title=みんなで支える航空保安
|journal=セイフティ・エンジニアリング
|year=2014
|volume=41
|number=4
|pages=4–9
|url=http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/se177_open.pdf
|accessdate=2018-02-10
|ref=harv}}
*{{Citation
|title=Aircraft Hijacking: Its Cause and Cure
|last=Evans |first=Alona E
|journal=American Journal of International Law
|volume=63
|number=4
|pages=695–710
|year=1969
|publisher=Cambridge University Press
|ref=harv}}
*{{Citation
|author=ICAO
|contribution=Operation of aircraft, Part I – International Commercial Air Transport – Aeroplanes,
|title=Annex 6 to the Convention on International Civil Aviation
|edition=Tenth
|year=2016
|url=https://www.universiteitleiden.nl/binaries/content/assets/rechtsgeleerdheid/instituut-voor-publiekrecht/lucht--en-ruimterecht/international-air-law-moot-court/annex-6_part-i.pdf
|accessdate=2018-02-13
|ref=harv}}
*{{Citation
|title=Current Developments in Air and Space Law
|editor-last=Singh |editor-first=Ranbir
|editor2-last=Rao |editor2-first=Srikrishna Deva
|editor3-last=Kaul |editor3-first=Sanat
|isbn=9788192363844
|year=2012
|publisher=National Law University Press |url=http://nludelhi.ac.in/download/publication/2015/Current%20Developments%20in%20Air%20and%20Space%20Law.pdf
|accessdate=2018-02-13
|ref=harv}}
*{{Citation
|last=Thomas |first=Andrew R.
|title=Aviation Security Management [3 volumes]
|series=Praeger Security International
|year=2008
|isbn=9780313346583
|publisher=ABC-CLIO
|language=English
|ref=harv}}
*{{Citation
|author1=US Dept of Transportation
|author2=Federal Aviation Admin
|author3=United States of America
|title=Aircraft Hijackings and Other Criminal Acts Against Civil Aviation Statistical and Narrative Reports
|year=1983
|language=English
|type=PDF
|url=https://www.ncjrs.gov/App/Publications/abstract.aspx?ID=91941
|accessdate=2018-01-07
|ref=harv}}


{{航空事故}}
{{航空事故}}
{{Portal bar|航空|災害|テロリズム}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:はいしやつく}}
{{DEFAULTSORT:はいしやつく}}
[[Category:航空]]
[[Category:航空]]
[[Category:ハイジャック|*]]
[[Category:ハイジャック|*]]
[[Category:人質事件|*はい]]
[[Category:人質事件|*はいしやつく]]
[[Category:英語の語句]]
[[Category:英語の語句]]

2024年11月22日 (金) 05:36時点における最新版

ハイジャック英語: hijack、hijacking)は、不法に輸送機関貨物の強奪や乗っ取りを行うことで、特に航空機に対する行為に用いられ、日本法律用語では「航空機強取」や「航空機不法奪取」と呼ばれる。以下、本項では航空機のハイジャックを中心に扱う。

ハイジャックの手段には、武器などによる脅迫威嚇・詐術などがある。ハイジャックの目的には、逃亡や亡命、金品の強奪や身代金要求、なんらかの政治的意図の遂行などが挙げられる。また、心神喪失状態にあった者が起こした目的がはっきりしない事件もある。

ハイジャックを防止するために様々な対策が複合的にとられている。ハイジャック対策は国や空港・航空会社によって差異はあるが、国際条約により加盟各国による協調体制が構築されている。凶器や危険物が航空機に持ち込まれないよう規制されており、空港では手荷物検査などが行われている。機上では航空保安官が警乗し、ハイジャッカーの進入を阻止するよう操縦室のドアは強化されている。

ハイジャックの発生件数は資料により異なる。旧東側諸国で発生した事件ははっきりわかっていないものもある[1]。本項では、稲坂 (2006)[注釈 1]および「アビエーション・セーフティー・ネットワーク」 (Aviation Safety Network; ASN) [2]を主に参照する。ASNのデータベースによると、2017年末までに1,074件の航空機ハイジャック事件が起きている[2]

語義と語源

[編集]

「ハイジャック」とは、輸送中の貨物や輸送機関そのもののを強奪したり乗っ取ったりする行為を指す[3][4][5]。狭義では特に航空機に対して用いられる[3][4]。航空機におけるハイジャックとは、乗客や乗員らが不法に航空機を奪取したりその運航を支配したりする行為であり、これらの未遂や加担行為も含まれる[6][7]。ハイジャックを行う手段としては、武器暴力などによる脅迫、あるいは威嚇や詐術などが挙げられる[6][8]

ハイジャックの元来の意味は、乗り物そのものや運送貨物を強奪することであり、特に禁酒法が施行されていた1920年代のアメリカ合衆国で、密造酒を輸送するトラックや船舶から積荷を強奪する行為を指した[3][9]。「hijack(ing)」の語源については、『オックスフォード英語辞典』では不詳としているが、以下のような説が挙げられている。

  • 強盗が運転手に「Hi, Jack!(よお、あんた)」と声をかけて拳銃を突きつけたことに由来するという説[9]
  • 「公道に出没する追い剥ぎ」を意味する「ハイウェイマン(highwayman)」と「携帯用照明で狩りをする人」を意味する「jacklighter」とを合成した「ハイジャッカー(hijacker)」という言葉が生まれ、その逆成とする説[10][5]。近似するものとして「highway(公道)」と「jacker(強盗)」の合成とする説もある。
  • 強盗が被害者を脅す文句「Stick 'em up high, Jack.(手を高く上げろ)」に由来するという説[10]

このように「ハイジャック」は英語由来の言葉であり、ハイジャック行為を指す動詞形を「hijack」、ハイジャックの名詞形を「hijacking」、ハイジャック犯を「hijacker」と呼ぶ[11]。特に航空機乗っ取りに対しては「aircraft hijacking」や「air(craft) piracy」と表現することがあるほか、「スカイジャック(skyjack、skyjacking」とも言う[12][13][14]。日本の法律用語では「航空機強取」や「航空機不法奪取」と言う[15]

目的別の特徴

[編集]

ハイジャックの目的はさまざまであり、明確な目的が見出せるものとしては、逃亡・亡命目的のものや、金目当てのもの、政治的意図に基づく事件などがあげられる[16]。それ以外では、心神喪失状態にあった者などが起こした事件や、冗談のつもりがハイジャックとされた例もある[17]

ハイジャッカーの人数は1人から複数名と様々で、[18]。中には乗客乗員18人のうち16人が共謀してハイジャックに関与した事件[19]や、操縦士自らがハイジャッカーとなった事件[20][21]もある。

おもな航空機ハイジャック事件は、航空機ハイジャック事件の一覧を参照。

逃亡・亡命目的のハイジャック

[編集]

自国の生活に絶望した者が外国へ脱出する手段としてハイジャックを選んだケース[22]。発生件数が最も多く、1931年から2005年にかけてのハイジャック総数のほぼ半数を占める[22]旧ソ連を中心とした東側諸国から西側諸国への亡命や、アメリカ合衆国から社会主義革命後のキューバへの逃避を図った事件が目立つ[23]。移動の自由が制限されていた旧東欧・社会主義国では陸の国境警備が厳しく、海は時間がかかり危険であったため、どうせ命がけなら短時間で勝負できるハイジャックが選択されることが多かった[24]。一方、アメリカからキューバへ向かったハイジャックの場合、ベトナム戦争による国民の不安が背景にあったと見られる[25]

金目当てのハイジャック

[編集]

乗客の金品や積み荷の強奪を目的としたハイジャックや、搭乗者を人質にとり身代金を脅し取ることを目的としたハイジャック[26]。このタイプのハイジャックには、アメリカ陸軍特殊部隊群など特殊部隊の元隊員が起こした事件が目立つほか、金品や身代金を奪った犯人がパラシュートで飛び降りて逃亡する例が見られる[27]ヘリコプターにより銀行強盗刑務所破りを行った事件も起きている[28]

1971年11月24日に発生したD.B.クーパー事件では、偽名を使った男がアメリカで旅客便をハイジャックして身代金を要求した[29]シアトル・タコマ国際空港に着陸後、犯人は乗客と一部乗員を解放し、引き換えに現金20万ドルを受け取った[29]。その後犯人は旅客機を再び離陸させ、現金と共にパラシュートで飛び降りた[29]。犯人は見つかっておらず未解決事件となっている[30]

類似の事件では、1972年4月7日、元グリーンベレー隊員がユナイテッド航空機をハイジャックして身代金50万ドルを得ることに成功。その後、自宅のあるユタ州上空でパラシュートによる脱出にも成功したが、2日後に自宅にいるところを逮捕されている[31]

政治的ハイジャック

[編集]

反政府ゲリラテロ組織などの政治的意図や信念に基づいて実行されたハイジャック[32][33]。逃亡や金品強奪のためではなく、収監されている仲間の釈放要求や政治的アピールの手段としてハイジャックが利用された[32][33]。革命や社会改革を掲げつつ身代金も要求するといった複数の目的を伴う事件も起きている[27]。また、宗教間対立に由来するハイジャック事件も政治的ハイジャックに分類される場合もある[34]

政治的ハイジャックを行なった組織として、パレスチナ解放人民戦線 (PFLP) や日本赤軍、南米の左翼ゲリラ、イスラム原理主義組織などが挙げられる[32][33]。特に、PLFPは1970年前後に立て続けにハイジャックを行い、狙われた西側諸国の航空会社を震撼させた[35]。その過激さは他の解放組織からも強く批判されるほどだった[35]。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件(以下、9.11事件)では、イスラム原理主義者が4機の旅客機をハイジャックし、乗客を道連れに自爆テロ攻撃を行なったことで約3000人もの命が奪われた[36]

それ以外の事件

[編集]

ハイジャックの中には目的がはっきりしない事件もある[37]。ハイジャック犯が精神障害薬物依存症などのなんらかの理由で一時的な心神喪失にあったと見られ、犯人が罪に問われない場合もある[38]。目的がはっきりしないハイジャックは、日本が関係した事件が目立つ[38]

これまで挙げたいずれにも該当しないケースとして、冗談のつもりの乗客の言動が冗談では済まされない事態に至った事件[38]で、機内で乗客が乗員に「爆弾が入っている」いう冗談が原因で航空機が緊急着陸したり、その乗客が連行される騒ぎになった事件が起きている[38]

ハイジャック防止対策

[編集]

ハイジャックや航空テロを防止するため、様々な対策が複合的に講じられている[39]。安全上の観点から詳細が公表されていないものもある[40][41]。国や空港航空会社によって対策の内容は異なる。ここでは国際民間航空機関 (ICAO) で定められている対策を中心に述べる。

第二次世界大戦後、国際民間航空の発達や国際航空運送業務の運営に関して各国が協力することを目的に、国際連合の専門機関としてICAOが設置された[42]。ICAOによってハイジャック対策のための国際条約が作成され、航空保安に関する国際標準や勧告なども定められている[43]。ICAOの取り決めは、新たなリスクに対応する形で改定が重ねられてきた[44][43]

2001年に9.11事件が発生した後には、保安措置のより確実な履行が各国に求められ、ICAOによる監査も行われるようになった[44]。9.11事件までのハイジャック対策は、ハイジャッカーが生存を前提に行動するという考えに立っていた。しかし、9.11事件では最初から自爆を意図してハイジャックが行われたことで、以降は対策の方針転換が図られた[45]

空港での保安検査

[編集]

ハイジャックを意図する人物とその企てのための凶器が機内に入るのを防ぐため、空港では保安検査が行われる[46]

空港における保安検査の例。
持ち込み可能な液体物の掲示例。

ハイジャックの凶器となりうる銃や刀剣類などは旅客機への持ち込みが禁止されている[47][48][49]。また、爆発物や発火または引火しやすいものなど航空機や搭乗者に危害を与えるおそれがある危険物は、機内への持ち込みが禁止・制限されている[47]ほか、液体物は持ち込める容量が制限されている[50][49]

これら危険物などが機内に持ち込まれるのを防ぐため、搭乗前には、金属探知機やX線検査装置などを用いた手荷物検査が行われている[51][52]ペットボトルに危険物が入っていないかを液体物検査装置を用いて確認する場合もある[51][52]。搭乗者が持ち込み禁止品を所持していないかを検査するため、ボディスキャナーを用いる空港もある[53][54]。ボディスキャナーにはミリ波を全身に照射するアクティブタイプと、人体が発するミリ波やテラ波を検知するパッシブタイプがあり、プライバシー保護を考慮して加工された検査結果が係員に提示される[55][54]

貨物室へ収納される受託手荷物や貨物に対しても、危険物に対する禁止・制限措置が取られている[47][56]。受託手荷物や貨物は搭載前に、X線検査装置や爆発物検査装置などによって検査され、危険物等が機内に入るのを防いでいる[57][53]

旅客情報のプロファイリング

[編集]

テロ活動自体を予防・阻止するため、各国ではテロリストへの資金供給の抑制策を講じたり、諜報活動を行なったりしている[58]

テロリストなどの移動情報を得るため、アメリカでは自動ターゲティングシステム (Automated Targeting System; 以下ATS) が稼働している。このシステムでは国境を越える人や貨物の情報を収集し、全米規模でテロリストなどの情報を分析している[59]。アメリカでは航空機の乗客名簿は政府に提出され、テロリスト・データベースと照合されたり、過去のテロ犯罪情報と符合されたりする[59]。その結果、安全に対するリスクが高いと判断された乗客は搭乗を拒否されたり特別な監視が行われたりする[60]。日本でも、他国から乗り入れる航空会社から乗客名簿の提供を受け、テロリストや不法入国者の入国を阻止する事前旅客情報システム (APIS) が運用されている[61]

スカイマーシャル制度

[編集]

航空保安官は武装した警官あるいは警備員であり、スカイマーシャルとも呼ばれる[62][63]。航空保安官は飛行中のハイジャックを防止することを任務とし、乗客を装い私服で旅客機に警乗する[62][64][65]。航空保安官の人数や装備・搭乗便名といった具体的内容は保安上の観点から公開されていない[40][41]。アメリカやイスラエルの航空保安官は、拳銃を携帯していることが公表されている[66]。日本の場合は、航空保安官の正式名称も公開されていない[67]。これはその「存在自体が抑止力」という考え方による[67]。航空保安官は厳しい養成課程を修了することが求められる[68]格闘技や拳銃の射撃といった狭い機内でハイジャッカーを制圧するための訓練を受ける[68]

操縦室ドアの強化

[編集]

旅客機の操縦室のドアには、侵入や攻撃を防ぐ対策が施されている。小火器による射撃や手榴弾の破片などに耐えられるように、防弾性のある素材が使用されている。また、力士級の大柄の男2人が体当たりしても突破できない強度を持つ[69][70]

運航中は常に施錠されており、各操縦士席から解錠・施錠操作が可能で、そして、扉の外に不審な人物がいないか、各操縦席から監視できるようになっている。また、機内で保安上の問題が発生した際に、目立たないよう操縦士に知らせる装置を備えている[71][70]

かつては、離着陸時などは操縦室のドアを施錠していなかった[72]。緊急時には男性のひと蹴りで外すことができ、操縦室を通って脱出することも想定されていた[72]。しかし、9.11事件を受けてアメリカ運輸省は、ハイジャッカーが容易に操縦室に侵入できたことが惨事に至ったと結論づけ、操縦室への侵入防止を優先することになった[72]

航空機ハイジャックの歴史

[編集]

初期のハイジャック

[編集]

記録に残る史上初の航空機ハイジャックは、1931年2月21日ペルーアレキパで発生したものとされている[73]。空港に着陸した郵便輸送機が、革命派組織により包囲され、宣伝ビラを空から撒くために飛行するよう要求された[74][75]。これを拒否したパイロットは革命派に拘束されたが、3月2日に解放された[74]第二次世界大戦前に発生したハイジャック事件で確認されているのはこの1件のみとされる[75]。当時の航空機は旅客輸送としてはまだ大衆には縁遠く、類似の事件が起きることはなかった[75]

戦後最初のハイジャックは、1947年7月25日に発生したとされる[75][注釈 2]ルーマニアの将校3人が、民間機を乗っ取りトルコに亡命した[75]。ハイジャッカーに抵抗した機長は拳銃で撃たれて着陸後に死亡し、ハイジャックによる初めての犠牲者になった[75]

1948年7月17日、史上初めてハイジャックにより旅客機が墜落した[76]キャセイ・パシフィック航空機ハイジャック事件)。この事件では、マカオから香港へ向かっていた旅客機が4人組に乗っ取られた[76]。ハイジャック犯が操縦士を射殺したため旅客機が操縦不能となり墜落した[77]。乗客3人と乗員22人が死亡し、唯一の生存者はハイジャック犯の1人であった[76]。この事件は、アジアで発生した最初の航空機ハイジャック事件でもある[78]

逃亡・亡命ハイジャックの急増

[編集]

アメリカ合衆国で最初の航空機ハイジャックは1961年5月1日に発生した[4]フロリダ・キーズ・マラソン空港英語版からキーウェスト国際空港へ向かっていた旅客機が乗っ取られ、カリブ海の小国キューバへ向かうよう要求された[4][79]。当時キューバでは、ラテンアメリカで最初の社会主義革命であるキューバ革命が進行しており、アメリカとの国交断絶を経て社会主義宣言を行なっていた[80][81]。このような情勢下でアメリカで差別や貧困に苦しんでいたキューバ移民は、祖国に帰るためにハイジャックに走り[80]、同様の事案が立て続けに発生したため、当時の大統領であるジョン・F・ケネディがFBIと航空会社にハイジャックへの対策を求める事態となった[82]

1968年から1973年頃までキューバへ向かうハイジャックがあまりにも多発したことで「特急キューバ行き」という新語が生まれるほどであり[80]、1968年から1972年の4年間で75件ものキューバ行きを強要するハイジャック事件が発生した[82]

キューバ革命は南米コロンビアの反政府左翼ゲリラ組織も刺激し、コロンビア革命軍民族解放軍の活動が活発化した[83]。1967年8月6日、バランキージャからサンアンドレス島へ飛行中の旅客機がハイジャックされたのを契機に、コロンビアからもキューバ行きを要求するハイジャックが多発した[84][85]。このため、コロンビアは米国、ロシアに次いで世界で3番目にハイジャックの多い国となった。

政治的ハイジャックの衝撃

[編集]

1940年代から1950年代に発生したハイジャックの大半は逃亡や亡命目的であった[86]第三世界の国々で発生した数件を除いて、ほとんど平和的に解決していた[87]。これまで西側諸国では死者を伴うハイジャックが起きていなかった[88]。しかし1950年代に入ると武装集団やゲリラの影響が見られるハイジャックが発生し始めた[88]

政治的ハイジャックを世界に印象付けたのはパレスチナ・ゲリラが最初だった[89]。1948年のイスラエル建国でパレスチナ人は故郷を追われ、周辺のアラブ諸国で難民として暮らしていた[90]。1967年に第三次中東戦争が勃発し、アラブ諸国の正規軍は短期間でイスラエルに敗れた[90]。パレスチナ難民は自力で故郷を取り戻すべくゲリラ戦を展開した[90]。1968年7月23日、マルクス・レーニン主義を掲げるパレスチナ解放人民戦線 (PFLP) が、イスラエルのテルアビブに向かっていたエル・アル航空の旅客機を乗っ取りアルジェに着陸させた[35]エル・アル航空426便ハイジャック事件)。パレスチナ・ゲリラは、イスラエルの権威を失墜させると同時にアメリカのイスラエル支援を非難し、パレスチナ難民の窮状を世界に訴える手段としてハイジャックを利用した[35]。この事件は、政治的ハイジャックが世界各地に飛び火するきっかけとなった[35]

ハイジャック防止対策の始まり

[編集]

航空機ハイジャックの発生件数は1968年から急増し[15]、1969年と1970年には年間80件を超えるハイジャックが発生した[91]。ハイジャックは航空会社にとって大きな脅威となり、世界各国で防止対策がとられた[15]

アメリカではハイジャックの罰則を定めた法案が1961年に施行され、同法では死刑が最高刑とされた[25]。さらに、世界に先駆けて1968年からアメリカではハイジャック防止を目的とした手荷物検査が開始された[25]。最も被害の多かったイースタン航空では、1969年10月から金属探知機と手荷物検査を組み合わせたハイジャック防止システムを導入し、トランス・ワールド航空パンアメリカン航空もこれに続いた[25]

1970年には、日本で最初のハイジャック事件となる「よど号ハイジャック事件」が発生した[92]。この事件を受けて同年に航空機の強取等の処罰に関する法律(ハイジャック処罰法、航空機強取法)が成立し、日本でも搭乗前の手荷物検査が開始された[52][93]。1977年に日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件が発生した後には、防止対策が強化されて持ち込み手荷物の制限が行われている[15]

ハイジャック防止の国際条約

[編集]

国際協力体制の法的枠組みの構築も図られ、1960年代から1970年代にかけて国際民間航空機関 (International Civil Aviation Organization; ICAO) において航空機にまつわる犯罪を防止するための3つの国際条約が作られた[94][95]。この3条約とは、1963年の「航空機内で行われた犯罪その他ある種の行為に関する条約」(東京条約)、1970年の「航空機の不法な奪取の防止に関する条約」(ヘーグ条約)、1971年の「民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(モントリオール条約)である[94]

東京条約では、主に飛行中の航空機内で行われた犯罪や航空機の安全を害する行為に対する裁判管轄権や、これら犯罪等を取り締まるための機長の権限などが定められた[96]。東京条約の制定当時はハイジャック発生件数はそれほど多くなく、同条約ではハイジャックは主たる規制対象とは捉えられていなかった[96]

しかし、同条約が発効した1969年にはハイジャックの発生件数が急増しており、同条約では対処しきれなくなっていた[96]。そこで、1970年に作成されたヘーグ条約では、ハイジャックの防止を主たる目的とし、東京条約では不十分だった点が強化された[97]。同条約では航空機の不法奪取等を犯罪と認め、ハイジャック犯に重い刑罰を科すことを締約国に義務付けたほか、犯人引き渡しに関する規定が定められた[96]

さらに、1971年に作成されたモントリオール条約では、ハイジャック以外の民間航空の安全に対する一定の不法行為を犯罪とし、その犯人の処罰及び引き渡し等について規定された[96][95]。同条約では、飛行中だけでなく、業務中の航空機や航空施設に対する破壊や安全を損なう行為についても重い刑罰を科すよう締約国に義務付けた[96]。さらに、裁判権の広範囲な設定や犯人の引き渡しについても規定されている[96]。ヘーグ条約やモントリオール条約では、締約国のいずれかにおいて犯人を処罰する体制を確立し、犯入に逃げ込み場を作らないという一種の世界主義的な考え方が導入されている[98]

これらの対策にもかかわらずキューバ行きのハイジャックに悩まされたアメリカは、1973年に、国交を断絶中のアメリカとキューバは航空機や船舶の不法奪取及びその他の犯罪に関する協定を結んだ[97]。この協定は、ハイジャック犯人だけをキューバに引き渡し、機体と乗客は速やかに帰国させるというものであった[97]。この協定は、不法奪取行為を防止する実効性を発揮したと評価されている[96]

その後1978年には、西ドイツボンで開催された第4回先進国首脳会議において「航空機ハイジャックに関する声明」(ボン声明)が発せられ、国際テロ活動と闘うため参加国が共同して対抗措置をとる決意が表明された[99][100]。この声明では、犯人の引渡しや訴追を拒絶する国あるいはハイジャック機を返還しない国に対して、航空機の運航を中止することが述べられた[99][100]。また、声明中で参加国以外への参加も呼びかけている[100]

国際テロ対策条約

[編集]

その間、国際連合においても国際テロ事件を対象とした2件の条約が採択されている。

まず「国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約」(国家代表等犯罪防止処罰条約)が1973年に採択され1977年に発効した[101]。この条約は、国家元首や外交官といった「国際的 に保護される者」の誘拐や殺害事件が増加したことを受けて、それらの行為を犯罪と定め、犯人の処罰や引き渡し等について規定している[102][103]

続いて「人質をとる行為に関する国際条約」(人質行為防止条約)が1979年に採択され1983年に発効した[101]。1970年代にミュンヘンオリンピック事件や大使館占拠事件、OPEC本部襲撃事件英語版といった人質行為を伴うテロ事件が増加したことを受け、これらの人質をとる行為を防止するための条約である[101]。国際的なテロリズムとして行われる人質を取る行為を犯罪と定め、その犯人の処罰や引渡し等が規定している[104][103]

1980年代に空港におけるテロ事件が増加したことを受けて、モントリオール条約を補足する議定書として「千九百七十一年九月二十三日にモントリオールで作成された民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約を補足する国際民間航空に使用される空港における不法な暴力行為の防止に関する議定書」(空港不法暴力行為防止議定書)が作成され[105]。この議定書は国際空港の安全を損なう一定の暴力行為を犯罪と定め、犯人の処罰のための措置が規定したもので、1988年に採択され翌年発効した[105]

この頃、プラスチック爆弾を用いた航空機爆破事件が相次いだ[106]。1987年には、大韓航空機爆破事件が発生し、ボーイング707が爆破され搭乗者全員の115人が死亡した[107]。1988年には、パンアメリカン航空103便爆破事件が発生し、パンアメリカン航空ボーイング747が爆破され、搭乗者259人全員と地上で巻き込まれた11人が死亡した[108]。1989年にはUTA航空772便爆破事件が発生し、フランスのUTAマクドネル・ダグラスDC-10が爆破され、搭乗者全員の170人が死亡した[109]。これらの事件、特にパンアメリカン航空103便爆破事件を直接的な契機として、ICAOにより「可塑性爆薬の探知のための識別措置に関する条約」(可塑性爆薬探知条約)が作成された[106]。この条約では、可塑性爆薬への探知剤の添加等の措置を締約国に義務づけている[99]

史上最悪のハイジャック事件

[編集]

1970年代には390件に達したハイジャックの発生件数は、1980年代に284件、1990年代には263件と減少傾向を示していた[110]

1990年代になると、組織的で大規模なテロ活動の背後にある資金源を断つ必要性が認識されるようになった[111]。既存の条約では資金供与について明示的に扱われていないことを踏まえ、1999年、国連においてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約が採択された[111]。この条約では、テロ行為の準備行為となる資金提供や収集自体を犯罪と定め、そうした行為を行なった者を訴追や処罰することでテロ行為を防止することを狙いとした[112]。当初、この条約に対して署名や批准を行うことに消極的な国が少なくなかった[113]。しかし、2001年に9.11事件が発生し、ウサーマ・ビン・ラーディンが事件の実行犯たちへ資金提供を行なっていた疑いが強まり、テロ活動の資金源に対する関心が高まった[113]

ユナイテッド航空175便が世界貿易センタービル南棟に突入した瞬間

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件(9.11事件)は、史上最大の犠牲者を出したハイジャック事件となった[4]テロリストがアメリカで4機の旅客機を乗っ取り自爆攻撃を行なった事件である[4]

アメリカン航空11便ユナイテッド航空175便は、ハイジャックされてワールドトレードセンターのノースタワーとサウスタワーにそれぞれ突入した[114][115]。航空機の衝突後にタワーは相次いで崩壊し、両機の搭乗者全員と地上で巻き込まれた犠牲者を合わせて約3,000人が死亡した[114][115][注釈 3]。同じ頃ハイジャックされたアメリカン航空77便は、アメリカ国防総省ペンタゴンに突入した[116]。衝突により爆発炎上し、搭乗者64人全員と地上の125人が死亡した[116]ユナイテッド航空93便も同様にハイジャックされ、機体の操縦を奪われたが、乗客たちの抵抗により犯人の意図した目標へ到達する前に墜落した[117]。同便では、搭乗者44人全員が死亡した[117]

9.11後の対策強化

[編集]

これまでのハイジャック事件では犯人と仲間が生き延びることを前提としていたが、9.11事件においてハイジャッカーは最初から自爆を目的としていた[45]。このことは、ハイジャック対策の考え方を根本から揺るがした[45]

この事件を受けて、アメリカではテロ対策の大幅な強化が図られた[118]。まず同年10月には異例の速さで米国愛国者法が成立した[118]。この法律は電話の盗聴やインターネット通信記録の押収など規制当局の権限を大幅に拡大するものであり、経済の自由やプライバシーを侵害するという反対意見が出され議論となった[119]。続いて11月には、航空および運輸安全法英語版が発効した[120]。この法律は、運輸保安庁の設置や空港における手荷物検査体制の強化、航空機の操縦室のドアの強化、航空保安官の警乗などについて定めている[120]

9.11事件の際にアメリカでは、運輸省管理下の沿岸警備隊財務省管轄のシークレットサービス司法省所属のアメリカ合衆国国境警備隊英語版などの機関の連携がとれず批判の対象となったため、これら関係機関を統合した国土安全保障省が新設された[121]。2002年に行われた国土安全保障省の設立は、1947年のアメリカ国防総省設立以来の最大の組織改編とも言われる[122]

ICAOにおいても航空保安の強化について議論され、2002年7月に新しい国際ルールが適用された[123]。新しいルールには操縦室ドアを強化する安全基準や航空保安官の警乗、空港内の立ち入り規制などが含まれ、さらにこれらの国際標準を国内線にも適用することが求められるようになった[123][71]

2010年には、最近のテロ防止関連条約に共通に取り入れられている規定をモントリオール条約やヘーグ条約に導入するため、ICAOにより「国際民間航空についての不法な行為の防止に関する条約」(北京条約)および「航空機の不法な奪取の防止に関する条約の追加議定書」(北京議定書)が作成された[95]

ASNの統計によると、軍用機やプライベート機を除くハイジャックの発生件数は、2003年以降は年間10件未満で推移している[124]

ハイジャックを扱った作品

[編集]

映画

[編集]

漫画・アニメ

[編集]
  • ゴルゴ13(1968年 - )
    さいとう・たかを作。7巻「AT PIN-HOLE!」、19巻「ジェット・ストリーム」、49巻「ガリンペイロ」、118巻「未明の標的」、134巻「高度7000メートル」などのエピソードでハイジャックが主題となっている(巻数はリイド社SPコミックスを示す)。
  • エロイカより愛をこめて(1976年 - )
    青池保子作。NATO情報部将校「鉄のクラウス」から「ルビヤンカ・レポート」を奪取するため、KGBの「銀のオーロラ」がロンドン発ボン行きのルフトハンザ機をハイジャックする。

小説

[編集]
  • シャドー81(1975年)
    ルシアン・ネイハム作。ハイジャッカーは最新鋭の戦闘機を操るパイロットで、乗っ取った機内にはいない。対象の旅客機の背後につき、後方から空対空ミサイルという「銃」を突きつけて政府を脅迫する、変り種作品。

ハイジャック派生の言葉

[編集]

日本における用法

[編集]
  • 犯罪としての乗っ取り行為
  • その他の比喩的用法 - いずれも合法的な行為を指す。
    • メディアジャック - 広告主が単独の、あるいは複数のメディアの広告枠を買い占め、短期集中して大量に広告を行うこと[132]
    • 「電波ジャック」 - 上記犯罪と異なり、1人または1組の出演者が宣伝等のために、短期間に複数の放送番組・放送局へ出演すること。または、ある1つの題材を、複数の放送局が一斉に、あるいはほぼ同時に番組内で取り上げること。上記犯罪との区別のため、「番組ジャック」「テレビジャック」「ラジオジャック」と呼び替えられる場合がある。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 同書ではアメリカ連邦航空局 (Federal Aviation Administration; FAA) のレポートを主に参照して集計・分析を行なっている
  2. ^ この事件は、ゲロー (1997)およびASN (2018年2月時点)[2]には記載されていない。
  3. ^ なお、衝突と倒壊は短時間で発生しており、2機それぞれの犠牲者数を特定することは困難である[114][115]

出典

[編集]
  1. ^ 稲坂 2006, pp. 103–104.
  2. ^ a b c Aviation Safety Network > ASN Aviation Safety Database” (2018年1月7日). 2018年1月6日閲覧。
  3. ^ a b c “ハイジャック”, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典, http://japan.eb.com/rg/article-08996600 2018年1月4日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f “Hijacking”, Britannica Academic, (2017), http://academic.eb.com/levels/collegiate/article/hijacking/40425 2017年12月11日閲覧。 
  5. ^ a b “hi・jack”, 小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081019000 2018年1月14日閲覧。 
  6. ^ a b 稲坂 2006, p. 36.
  7. ^ 安藤 2014, p. 32.
  8. ^ 安藤 2014, pp. 71–76.
  9. ^ a b “ハイ‐ジャック”, 日本国語大辞典 / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081019000 2018年1月14日閲覧。 
  10. ^ a b “hi・jack・er”, 小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH081020000 2018年1月14日閲覧。 
  11. ^ “Oxford Dictionary of English”, hijack 
  12. ^ Evans 1969.
  13. ^ “áir pìracy”, 小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH003757000 2018年1月21日閲覧。 
  14. ^ “sky・jack”, 小学館ランダムハウス英語大辞典 / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=40010RH161331000 2018年1月14日閲覧。 
  15. ^ a b c d 池田, 文雄, “ハイジャック”, 日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000182227 2017年12月12日閲覧。 
  16. ^ 稲坂 2006, pp. 40–51.
  17. ^ 稲坂 2006, pp. 42, 51–52.
  18. ^ ゲロー 1997.
  19. ^ ゲロー 1997, p. 13.
  20. ^ ゲロー 1997, p. 16.
  21. ^ ASN Aircraft accident Douglas DC-3 registration unknown Miami International Airport, FL (MIA)” (2018年2月4日). 2018年2月3日閲覧。
  22. ^ a b 稲坂 2006, pp. 40–41.
  23. ^ 稲坂 2006, pp. 40–48.
  24. ^ 稲坂 2006, p. 43.
  25. ^ a b c d 稲坂 2006, p. 47.
  26. ^ 稲坂 2006, pp. 41–42, 50–51.
  27. ^ a b 稲坂 2006, pp. 50–51.
  28. ^ 稲坂 2006, p. 51.
  29. ^ a b c ゲロー 1997, p. 124.
  30. ^ Gray, Geoffrey (2007-10-21), “Unmasking D.B. Cooper”, New York magazine, ISSN 0028-7369, http://nymag.com/news/features/39593/ 2018年1月27日閲覧。 
  31. ^ 「ベトナムの英雄に懲役45年」『朝日新聞』昭和47年(1972年)7月11日夕刊、3版、9面
  32. ^ a b c 稲坂 2006, pp. 41, 48–50.
  33. ^ a b c Thomas 2008, pp. 103–104.
  34. ^ 稲坂 2006, p. 41.
  35. ^ a b c d e 稲坂 2006, p. 49.
  36. ^ 稲坂 2006, pp. 3–19, 49–50.
  37. ^ 稲坂 2006, pp. 51–52.
  38. ^ a b c d 稲坂 2006, p. 52.
  39. ^ 工藤 2016, p. 1.
  40. ^ a b 稲坂 2006, pp. 139–140, 152.
  41. ^ a b 国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部における「スカイ・マーシャルの実施について」の決定について” (2004年12月10日). 2018年2月13日閲覧。
  42. ^ 国際民間航空機関(ICAO)”. 外務省. 2018年2月19日閲覧。
  43. ^ a b 川久保 2010, pp. 30–31.
  44. ^ a b 林 2014, p. 4.
  45. ^ a b c 稲坂 2006, p. 145.
  46. ^ 工藤 2016, pp. 1–2.
  47. ^ a b c 航空:機内持込・お預け手荷物における危険物について”. 国土交通省. 2018年2月18日閲覧。
  48. ^ 機内持込み・お預け手荷物における危険物の代表例”. 国土交通省. 2018年2月18日閲覧。
  49. ^ a b 齊藤基雄; 戸崎肇, “航空手荷物”, 日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000305244 2018年2月18日閲覧。 
  50. ^ 航空局安全部空港安全・保安対策課航空保安対策室. “量的制限の対象となる液体物のリスト”. 国土交通省. 2018年2月18日閲覧。
  51. ^ a b 林 2014, pp. 4–5.
  52. ^ a b c 稲坂 2006, p. 135.
  53. ^ a b 林 2014, p. 5.
  54. ^ a b KOHASE, Yusuke (2017-03-29), “羽田と成田、ボディスキャナー導入 国際線で”, Aviation Wire, http://www.aviationwire.jp/archives/115754 2018年2月18日閲覧。 
  55. ^ 空港のセキュリティ事情”. SECURITY SHOW. Nikkei Inc.. 2018年2月17日閲覧。
  56. ^ 航空貨物の危険物代表例”. 国土交通省. 2018年2月18日閲覧。
  57. ^ 稲坂 2006, pp. 136, 148.
  58. ^ 清水, 隆雄 (2006), “テロリズムとその対策―国際社会の取組み (特集 テロリズム対策)”, 外国の立法 (国立国会図書館調査及び立法考査局) (228): 5-23, ISSN 0433096X, http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/228/022802.pdf 2018年2月18日閲覧。 
  59. ^ a b 川久保 2010, pp. 29–30.
  60. ^ 工藤 2016, pp. 3–4.
  61. ^ 稲坂 2006, p. 136.
  62. ^ a b 稲坂 2006, p. 135–136.
  63. ^ 大辞林 第三版の解説 スカイマーシャル”. コトバンク. 2018年2月15日閲覧。
  64. ^ 連邦航空保安官24時! 本気でテロと戦う現場では何が起きているのか?”. クーリエ・ジャポン. 2018年2月15日閲覧。
  65. ^ スカイ・マーシャルの実施について” (2004年12月10日). 2018年2月13日閲覧。
  66. ^ 稲坂 2006, pp. 126, 152.
  67. ^ a b 稲坂 2006, pp. 139–140.
  68. ^ a b 稲坂 2006, pp. 126, 153–155.
  69. ^ 稲坂 2006, pp. 149–150, 156.
  70. ^ a b ICAO 2016, §13-2.
  71. ^ a b 稲坂 2006, pp. 149–150.
  72. ^ a b c 稲坂 2006, p. 149.
  73. ^ First hijack of an aircraft”. Guinness World Records. 2017年12月10日閲覧。
  74. ^ a b ASN Aircraft accident Ford Tri-Motor registration unknown Arequipa Airport (AQP)の事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月12日閲覧。
  75. ^ a b c d e f 稲坂 2006, p. 42.
  76. ^ a b c ゲロー 1997, p. 11.
  77. ^ ASN Aircraft accident Consolidated PBY-5A Catalina VR-HDT Pearl Riverの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月11日閲覧。
  78. ^ Thomas 2008, p. 143.
  79. ^ ASN Aircraft accident Convair CV-440 registration unknownの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月12日閲覧。
  80. ^ a b c 浅野 1989, p. 45.
  81. ^ 加茂, 雄三, “キューバ革命”, 日本大百科全書(ニッポニカ) / JapanKnowledge Lib, 小学館, http://japanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000063721 2018年1月21日閲覧。 
  82. ^ a b Gravel, Michael (November 13, 2008). “History of the Federal Air Marshal Service”. https://www.propublica.org/article/history-of-the-federal-air-marshal-service December 30, 2022閲覧。 
  83. ^ 稲坂 2006, p. 109.
  84. ^ ゲロー 1997, p. 20.
  85. ^ 稲坂 2006, pp. 109–111.
  86. ^ ゲロー 1997, p. 9.
  87. ^ ゲロー 1997, pp. 9, 59.
  88. ^ a b ゲロー 1997, p. 59.
  89. ^ 稲坂 2006, pp. 48–49.
  90. ^ a b c 稲坂 2006, p. 48.
  91. ^ 稲坂 2006, pp. 38–39.
  92. ^ 稲坂 2006, p. 53.
  93. ^ 浅野 1989, p. 42.
  94. ^ a b 浅野 1989, p. 35.
  95. ^ a b c 国際民間航空機関(ICAO)が作成する条約”. 外務省. 2017年12月16日閲覧。
  96. ^ a b c d e f g h 浅野 1989, p. 41.
  97. ^ a b c 浅野 1989, p. 47.
  98. ^ 浅野 1989, pp. 35, 41.
  99. ^ a b c 4 ボン サミット - 航空機のハイジャックに関する声明”. 外務省. 2018年2月4日閲覧。
  100. ^ a b c 4 日本航空(株)寄航の外国空港におけるハイジャック防止体制の強化”. 国土交通省. 2018年2月4日閲覧。
  101. ^ a b c 安藤 2014, p. 35.
  102. ^ 安藤 2014, pp. 35–36, 109.
  103. ^ a b テロ防止関連諸条約について”. 外務省. 2018年2月8日閲覧。
  104. ^ 安藤 2014, pp. 35–36.
  105. ^ a b 安藤 2014, p. 38.
  106. ^ a b 安藤 2014, pp. 41–42.
  107. ^ ASN Aircraft accident Boeing 707-3B5C HL7406 Tavoy, Myanmar (Andaman Sea)の事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  108. ^ ASN Aircraft accident Boeing 747-121A N739PA Lockerbieの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  109. ^ ASN Aircraft accident McDonnell Douglas DC-10-30 N54629 Ténéré desertの事故詳細 - Aviation Safety Network
  110. ^ 稲坂 2006, p. 40.
  111. ^ a b 安藤 2014, p. 44.
  112. ^ 安藤 2014, p. 45.
  113. ^ a b 安藤 2014, pp. 44–45.
  114. ^ a b c ASN Aircraft accident Boeing 767-223ER N334AA New York, NYの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  115. ^ a b c ASN Aircraft accident Boeing 767-222 N612UA New York, NYの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  116. ^ a b ASN Aircraft accident Boeing 757-223 N644AA Washington, DCの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  117. ^ a b ASN Aircraft accident Boeing 757-222 N591UA Shanksville, PAの事故詳細 - Aviation Safety Network. 2017年12月15日閲覧。
  118. ^ a b 稲坂 2006, p. 142.
  119. ^ 稲坂 2006, pp. 142–143.
  120. ^ a b 稲坂 2006, pp. 145–146.
  121. ^ 稲坂 2006, pp. 143–144.
  122. ^ 稲坂 2006, p. 144.
  123. ^ a b 川久保 2010, p. 31.
  124. ^ Aviation Safety Network > Statistics > By period > airliner hijackings”. 2018年2月17日閲覧。
  125. ^ “carjacking, n.”, OED Online, Oxford University Press, (January 2018), http://www.oed.com/view/Entry/240714 2018年3月17日閲覧。 
  126. ^ “カージャック”, 情報・知識 imidas 2017, https://japanknowledge.com/lib/display/?lid=50010Z-06-1-0014 2018年3月17日閲覧。 
  127. ^ “seajack, v.”, OED Online, Oxford University Press, (January 2018), http://www.oed.com/view/Entry/242031 2018年3月17日閲覧。 
  128. ^ “シージャック”, 情報・知識 imidas 2017, https://japanknowledge.com/lib/display/?lid=50010Z-12-1-0050 2018年3月17日閲覧。 
  129. ^ 情報処理推進機構 セキュリティセンター (2015-03), 安全なウェヴサイトの作り方 (改訂第7版), https://www.ipa.go.jp/files/000017316.pdf 2018年3月17日閲覧。 
  130. ^ Burgers, Willem; Verdult, Roel; Van Eekelen, Marko (2013), Prevent session hijacking by binding the session to the cryptographic network credentials, pp. 33–50 
  131. ^ 「バスジャック」という言い方は?”. NHK放送文化研究所. 2018年3月17日閲覧。
  132. ^ メディアジャック”. imidas 現代人のカタカナ語辞典. 2021年1月13日閲覧。

参考文献

[編集]