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[[Image:Metamorphic reaction EN.svg|thumb|300px|変成作用の概略の図。左は{{仮リンク|角閃岩相|en|amphibolite facies}}、右は{{仮リンク|緑色片岩相|en|greenschist facies}}。gtは[[柘榴石]]、hblは[[普通角閃石]]、plagは[[斜長石]]、chlは[[緑泥石]]、actは[[緑閃石]]、epは[[緑簾石]]の略である。これらの他に[[石英]]と[[カリ長石]]があるが、変成作用には関与しない。]]
'''変成作用'''(へんせいさよう、[[英語|英]]:'''metamorphism''')とは、広義には、初源的で一次的な[[岩石]]([[原岩]]という)が[[熱]]や[[圧力]]の影響、また[[水や空気との化学反応]]などの作用を受け、その岩石を形成する[[鉱物種]]の構成や、岩石の[[外見構造]]が変化することをいう。[[変成岩]]は、[[融解]]することなく、[[固体]]のまま形成される岩石をいうが、変成温度が高くなると一部が融解し、一部が[[マグマ]]が形成されることもある。構成する鉱物が融解する温度は[[鉱物種]]によって異なる。また、低温では、[[堆積岩]]が地下深部で[[熟成]]する[[続成作用]]と[[連続的]]である。他方では、地表での空気や水による[[変質作用]]や[[風化作用]]とも連続的である。このように、どこからどこまでを変成作用と呼ぶかは明確に定義するのが難解である。
'''変成作用'''(へんせいさよう、{{lang-en|metamorphism|links=no}})とは、既存の[[岩石]]([[原岩]])が当初と異なる[[温度]]や[[圧力]]のもとで、あるいは流体による化学反応に伴い、岩石の組織が変化する作用のことで{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=113}}、この作用によって[[変成岩]]が形成される{{Sfn|角替|2007|p=99}}。変成作用の大半は[[地殻]]の内部で起こる{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=113}}。


変成作用は、'''接触変成作用'''('''contact metamorphism''')<ref name="terms">[[文部省]]編 『[[学術用語集]] 地学編』 [[日本学術振興会]]、1984年、ISBN 4-8181-8401-2。([http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi オンライン学術用語集]{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }})</ref>と'''広域変成作用'''('''regional metamorphism''')<ref name="terms"/>とがある<ref>[[都城秋穂]]・[[久城育夫]] 『岩石学II - 岩石の性質と分類』 [[共立出版]]〈共立全書〉、1975年、110-112頁、ISBN 4-320-00205-9。</ref><ref>[[黒田吉益]]・[[諏訪兼位]] 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 共立出版、1983年、282-288頁、ISBN 4-320-04578-5。</ref>。
変成作用は、大きく'''広域変成作用'''({{lang-en|regional metamorphism|links=no}}<ref name="terms">[[文部省]]編 『[[学術用語集]] 地学編』 [[日本学術振興会]]、1984年、ISBN 4-8181-8401-2。([http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi オンライン学術用語集]{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }})</ref>と'''接触変成作用'''({{lang-en|contact metamorphism|links=no}}<ref name="terms"/>)に分けられる<ref>[[都城秋穂]]・[[久城育夫]] 『岩石学II - 岩石の性質と分類』 [[共立出版]]〈共立全書〉、1975年、110-112頁、ISBN 4-320-00205-9。</ref><ref>[[黒田吉益]]・[[諏訪兼位]] 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 共立出版、1983年、282-288頁、ISBN 4-320-04578-5。</ref>{{Sfn|角替|2007|p=100}}

== 広域変成作用 ==
'''広域変成作用'''({{en|regional metamorphism|links=no}})は、地球内部における広域な運動に伴い、既存の岩石が地下深部で受ける変成作用のことであり、[[広域変成岩]]を形成させる{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=114}}。広域変成作用は岩石を[[再結晶#地質学|再結晶]]させ、[[片麻岩]]となり片理面や片麻状構造、縞状構造ができる{{Sfn|榎並|2013|p=119}}。なお、高温低圧型変成岩では主に片麻状構造や縞状構造が形成される一方、低温高圧型変成岩では[[結晶片岩]]として片理面が形成されることが多い{{Sfn|榎並|2013|p=119}}。

なお、広域変成作用はさらに造山帯変成作用、海洋底変成作用、埋没変成作用に分類される{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=115}}。造山帯変成作用は、[[造山運動]]([[大陸プレート]]や[[島弧]]どうしの衝突、[[海洋プレート]]の沈み込みなど)による変成作用のことで、変成岩組織がよく確認される{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=115}}。海洋底変成作用は、[[中央海嶺]]や[[大洋底]]下において、[[地殻]]や[[上部マントル]]で発生する{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=116}}。ここでは原岩が[[マフィック岩]]・[[超マフィック岩]]であり、変成岩組織は見られない{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=116}}。埋没変成作用は厚い堆積岩層の下部で起こる、[[続成作用]]と造山帯変成作用の中間にあたる作用のことで、原岩の堆積構造や岩石組織が残ったり、不完全な再結晶作用だったりする{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=117}}。

== 接触変成作用 ==
[[File:Contact Metamorphism.png|thumb|中央の火成岩体に近づくにつれ高温で変成作用を受ける。]]
'''接触変成作用'''({{en|contact metamorphism|links=no}})は、[[マグマ]]の[[貫入]]に伴う周辺の加熱により原岩が再結晶される変成作用のことであり{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=117}}、[[接触変成岩]]を形成させる{{Sfn|榎並|2013|p=120}}。この岩石は一般に[[ホルンフェルス]]とよばれる{{Sfn|榎並|2013|p=122}}。

接触変成作用が起こる範囲は、マグマの貫入により形成された火成岩体の周囲であり{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=118}}、火成岩体から数キロメートル以内であることが多い{{Sfn|榎並|2013|p=120}}。また火成岩体に近いほど変成作用時の温度は高い{{Sfn|榎並|2013|p=120}}。ただし、広域変成作用のときよりも圧力は小さい傾向にある{{Sfn|榎並|2013|p=120}}。

== その他の変成作用 ==
[[File:Impactites from Monturaqui Impact Crater.jpg|thumb|チリの{{仮リンク|モントゥラキクレーター|en|Monturaqui crater}}で発見されたインパクタイト]]
'''衝撃変成作用'''({{en|impact metamorphism|links=no}})とは、[[隕石]]の落下時に起こる瞬間的な変成作用のことで、{{仮リンク|衝撃角礫岩|en|Impact breccia}}や{{仮リンク|インパクタイト|en|Impactite|preserve=1}}<!--日本語版がサブスタブなので仮リンクを使用-->などを形成する{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=119}}。

この他にも、岩石の割れ目に熱水やガスが入ることによる局所的な変成作用として'''熱水変成作用'''({{en|hydrothermal metamorphism|links=no}})、岩石の物理的破壊などに起因する'''動力変成作用'''({{en|dynamic metamorphism|links=no}})、変成作用中に化学物質の転移が行われた'''交代作用'''({{en|metasomatism|links=no}})などの変成作用が挙げられる{{Sfn|周藤・小山内|2002|pp=118-119}}。

== 温度・圧力 ==
[[File:Clockwise ptt path.png|thumb|温度-圧力図。変成作用における温度や圧力の変化の一例。]]
温度と圧力は変成作用にでおける物理的条件の主要例で、温度や圧力の変化により[[再結晶#地質学|再結晶]]が起こり、原岩の鉱物組成や組織が変化することで変成作用が進行する{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=119}}。特に高温であるほど変成作用の速度は上昇する{{Sfn|榎並|2013|p=117}}。高温時の再結晶作用は'''昇温期変成作用'''({{en|prograde metamorphism|links=no}})とよばれる{{Sfn|榎並|2013|p=117}}。しかし、温度上昇が停止し冷却が開始すると反応は終了し、変成岩の形成は完了する{{Sfn|榎並|2013|pp=117-118}}。この時を'''温度ピーク'''({{en|thermal peak|links=no}})とよぶ{{Sfn|榎並|2013|p=118}}。ただし、水が十分にある場合などではその後の温度低下中でも変成作用が起こり、'''後退変成作用'''({{en|retrograde metamorphism|links=no}})という{{Sfn|榎並|2013|p=118}}。これらの温度変化は、温度-圧力図の上で表示することができる{{Sfn|周藤・小山内|2002|p=137}}。

なお、変成岩の形成時の温度や圧力の推定のときは、[[多形鉱物]]や[[地質温度計]]を用いるとよい{{Sfn|角替|2007|p=101}}。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=周藤賢治|coauthors=小山内康人|year=2002|title=記載岩石学 : 岩石学のための情報収集マニュアル|series=岩石学概論|publisher=共立出版|isbn=4-320-04639-0|ref={{Sfnref|周藤・小山内|2002}}}}
* {{Cite book|和書|author=角替敏昭|year=2007|title=地球進化学|chapter=変成岩|pages=99-104|editor=指田勝男・久田健一郎・角替敏昭・八木勇治・小室光世・興野純(編)|series=地球学シリーズ|publisher=古今書院|isbn=978-4-7722-5204-1|ref={{Sfnref|角替|2007}}}}
* {{Cite book|和書|author=榎並正樹|authorlink=榎並正樹|year=2013|title=岩石学|series=現代地球科学入門シリーズ|publisher=共立出版|isbn=978-4-320-04724-2|ref={{Sfnref|榎並|2013}}}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* {{仮リンク|圧力-温度-時間経路|en|Pressure-temperature-time path}}
* [[岩石]]
* {{仮リンク|変成相|en|Metamorphic facies}}
* [[鉱物]]

* [[変成岩]]
* [[火成岩]]
* [[堆積岩]]
* [[堆積]]
* [[風化]]
* [[続成作用]]
* [[火成作用]]
* [[融解作用]]
* [[変質作用]]
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2019年1月11日 (金) 21:39時点における版

変成作用の概略の図。左は角閃岩相英語版、右は緑色片岩相英語版。gtは柘榴石、hblは普通角閃石、plagは斜長石、chlは緑泥石、actは緑閃石、epは緑簾石の略である。これらの他に石英カリ長石があるが、変成作用には関与しない。

変成作用(へんせいさよう、英語: metamorphism)とは、既存の岩石原岩)が当初と異なる温度圧力のもとで、あるいは流体による化学反応に伴い、岩石の組織が変化する作用のことで[1]、この作用によって変成岩が形成される[2]。変成作用の大半は地殻の内部で起こる[1]

変成作用は、大きく広域変成作用(英語: regional metamorphism[3])と接触変成作用(英語: contact metamorphism[3])に分けられる[4][5][6]

広域変成作用

広域変成作用regional metamorphism)は、地球内部における広域な運動に伴い、既存の岩石が地下深部で受ける変成作用のことであり、広域変成岩を形成させる[7]。広域変成作用は岩石を再結晶させ、片麻岩となり片理面や片麻状構造、縞状構造ができる[8]。なお、高温低圧型変成岩では主に片麻状構造や縞状構造が形成される一方、低温高圧型変成岩では結晶片岩として片理面が形成されることが多い[8]

なお、広域変成作用はさらに造山帯変成作用、海洋底変成作用、埋没変成作用に分類される[9]。造山帯変成作用は、造山運動大陸プレート島弧どうしの衝突、海洋プレートの沈み込みなど)による変成作用のことで、変成岩組織がよく確認される[9]。海洋底変成作用は、中央海嶺大洋底下において、地殻上部マントルで発生する[10]。ここでは原岩がマフィック岩超マフィック岩であり、変成岩組織は見られない[10]。埋没変成作用は厚い堆積岩層の下部で起こる、続成作用と造山帯変成作用の中間にあたる作用のことで、原岩の堆積構造や岩石組織が残ったり、不完全な再結晶作用だったりする[11]

接触変成作用

中央の火成岩体に近づくにつれ高温で変成作用を受ける。

接触変成作用contact metamorphism)は、マグマ貫入に伴う周辺の加熱により原岩が再結晶される変成作用のことであり[11]接触変成岩を形成させる[12]。この岩石は一般にホルンフェルスとよばれる[13]

接触変成作用が起こる範囲は、マグマの貫入により形成された火成岩体の周囲であり[14]、火成岩体から数キロメートル以内であることが多い[12]。また火成岩体に近いほど変成作用時の温度は高い[12]。ただし、広域変成作用のときよりも圧力は小さい傾向にある[12]

その他の変成作用

チリのモントゥラキクレーター英語版で発見されたインパクタイト

衝撃変成作用impact metamorphism)とは、隕石の落下時に起こる瞬間的な変成作用のことで、衝撃角礫岩英語版インパクタイト英語版などを形成する[15]

この他にも、岩石の割れ目に熱水やガスが入ることによる局所的な変成作用として熱水変成作用hydrothermal metamorphism)、岩石の物理的破壊などに起因する動力変成作用dynamic metamorphism)、変成作用中に化学物質の転移が行われた交代作用metasomatism)などの変成作用が挙げられる[16]

温度・圧力

温度-圧力図。変成作用における温度や圧力の変化の一例。

温度と圧力は変成作用にでおける物理的条件の主要例で、温度や圧力の変化により再結晶が起こり、原岩の鉱物組成や組織が変化することで変成作用が進行する[15]。特に高温であるほど変成作用の速度は上昇する[17]。高温時の再結晶作用は昇温期変成作用prograde metamorphism)とよばれる[17]。しかし、温度上昇が停止し冷却が開始すると反応は終了し、変成岩の形成は完了する[18]。この時を温度ピークthermal peak)とよぶ[19]。ただし、水が十分にある場合などではその後の温度低下中でも変成作用が起こり、後退変成作用retrograde metamorphism)という[19]。これらの温度変化は、温度-圧力図の上で表示することができる[20]

なお、変成岩の形成時の温度や圧力の推定のときは、多形鉱物地質温度計を用いるとよい[21]

脚注

  1. ^ a b 周藤・小山内 2002, p. 113.
  2. ^ 角替 2007, p. 99.
  3. ^ a b 文部省編 『学術用語集 地学編』 日本学術振興会、1984年、ISBN 4-8181-8401-2。(オンライン学術用語集[リンク切れ]
  4. ^ 都城秋穂久城育夫 『岩石学II - 岩石の性質と分類』 共立出版〈共立全書〉、1975年、110-112頁、ISBN 4-320-00205-9
  5. ^ 黒田吉益諏訪兼位 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 共立出版、1983年、282-288頁、ISBN 4-320-04578-5
  6. ^ 角替 2007, p. 100.
  7. ^ 周藤・小山内 2002, p. 114.
  8. ^ a b 榎並 2013, p. 119.
  9. ^ a b 周藤・小山内 2002, p. 115.
  10. ^ a b 周藤・小山内 2002, p. 116.
  11. ^ a b 周藤・小山内 2002, p. 117.
  12. ^ a b c d 榎並 2013, p. 120.
  13. ^ 榎並 2013, p. 122.
  14. ^ 周藤・小山内 2002, p. 118.
  15. ^ a b 周藤・小山内 2002, p. 119.
  16. ^ 周藤・小山内 2002, pp. 118–119.
  17. ^ a b 榎並 2013, p. 117.
  18. ^ 榎並 2013, pp. 117–118.
  19. ^ a b 榎並 2013, p. 118.
  20. ^ 周藤・小山内 2002, p. 137.
  21. ^ 角替 2007, p. 101.

参考文献

  • 周藤賢治、小山内康人『記載岩石学 : 岩石学のための情報収集マニュアル』共立出版〈岩石学概論〉、2002年。ISBN 4-320-04639-0 
  • 角替敏昭 著「変成岩」、指田勝男・久田健一郎・角替敏昭・八木勇治・小室光世・興野純(編) 編『地球進化学』古今書院〈地球学シリーズ〉、2007年、99-104頁。ISBN 978-4-7722-5204-1 
  • 榎並正樹『岩石学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2013年。ISBN 978-4-320-04724-2 

関連項目