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== Engrishがおきる要因 ==
== Engrishがおきる要因 ==
日本語の場合、[[ら行|ラ行]]の子音は[[歯茎音|歯茎顫動音]]、つまり舌が[[前歯]]の裏側の[[硬口蓋]]に触れる。そのため、英語の {{lang|en|L}}のような音になる。主に巻き舌が多いアメリカンイングリッシュ(米語)が堪能でない日本人が英語を発音する時にRが発音できない。そして、主に白人の英語話者がLをエル(EL)、Rをアール(Ah-le)と誤って聞き取ってしまう。こうして、{{lang|en|English}} が {{lang|en|Engrish}} と誤記されることがある。演劇用語 「{{lang|en|break a leg}}」 (成功を祈る)が 「{{lang|en|break a reg}}」 になっていたり、「{{lang|en|get rid of}}」 と 「{{lang|en|get lid of}}」 を混同したりする宣伝ポスター、{{lang|en|rice}} ([[米]])と {{lang|en|lice}} ([[シラミ]])の区別がつかない(文脈から考えて混同することは稀ではあるが)のがその例である。また、英語を話す際に、日本語話者にとって不慣れな舌を回すRの発音を特に意識して発音しようとするケースが多いことも、Engrishと呼ばれるようになった要因の一つであると言える。
アジア系の言語の場合、[[ら行|ラ行]]の子音は[[歯茎音|歯茎顫動音]]、つまり舌が[[前歯]]の裏側の[[硬口蓋]]に触れる。そのため、英語の {{lang|en|L}}のような音になる。
主に巻き舌が多いアメリカンイングリッシュ(米語)が堪能でない日本人が英語を発音する時にRが発音できない。そして、主に白人の英語話者がLをエル(EL)、Rをアール(Ah-le)と誤って聞き取ってしまう。こうして、{{lang|en|English}} が {{lang|en|Engrish}} と誤記されることがある。演劇用語 「{{lang|en|break a leg}}」 (成功を祈る)が 「{{lang|en|break a reg}}」 になっていたり、「{{lang|en|get rid of}}」 と 「{{lang|en|get lid of}}」 を混同したりする宣伝ポスター、{{lang|en|rice}} ([[米]])と {{lang|en|lice}} ([[シラミ]])の区別がつかない(文脈から考えて混同することは稀ではあるが)のがその例である。また、英語を話す際に、日本語話者にとって不慣れな舌を回すRの発音を特に意識して発音しようとするケースが多いことも、Engrishと呼ばれるようになった要因の一つであると言える。


Engrish は、英語からの[[借用語]]を日本語風に発音すること、または英語からの借入語を多く備えた日本の方言を指すこともある。日本語には[[母音]]が 5つしかなく、子音連結はほとんどなく、{{lang|en|L}}/{{lang|en|R}} の他にも {{lang|en|[[B]]}}/{{lang|en|[[V]]}}, {{lang|en|Shi}}/{{lang|en|Si}}, {{lang|en|Th}}/{{lang|en|S}} の明確な区別は無いので、英語の借用語はしばしば英語圏の人にとっては異様なまたはユーモラスな発音になる。特に[[下ネタ]]に聞こえるような単語や文は Engrish の話題になりやすい。例えば、ギタリストの[[エリック・クラプトン]] ({{lang|en|Eric Clapton}}) は、日本語では Erikku Kuraputon になるが、英語で {{lang|en|crap}} とは「クソ」を意味するため、英語圏の人からは滑稽に聞こえる。他にも {{lang|en|I love you}} (あなたを愛している)が {{lang|en|I rub you}} (私は[[手淫|貴方を擦る]])、{{lang|en|election}} (選挙) が {{lang|en|erection}}(勃起)、{{lang|en|sit}}(座る)が {{lang|en|shit}}(クソ)、{{lang|en|earth}}(地球)が {{lang|en|ass}}(尻)に聞こえる。
Engrish は、英語からの[[借用語]]を日本語風に発音すること、または英語からの借入語を多く備えた日本の方言を指すこともある。日本語には[[母音]]が 5つしかなく、子音連結はほとんどなく、{{lang|en|L}}/{{lang|en|R}} の他にも {{lang|en|[[B]]}}/{{lang|en|[[V]]}}, {{lang|en|Shi}}/{{lang|en|Si}}, {{lang|en|Th}}/{{lang|en|S}} の明確な区別は無いので、英語の借用語はしばしば英語圏の人にとっては異様なまたはユーモラスな発音になる。特に[[下ネタ]]に聞こえるような単語や文は Engrish の話題になりやすい。例えば、ギタリストの[[エリック・クラプトン]] ({{lang|en|Eric Clapton}}) は、日本語では Erikku Kuraputon になるが、英語で {{lang|en|crap}} とは「クソ」を意味するため、英語圏の人からは滑稽に聞こえる。他にも {{lang|en|I love you}} (あなたを愛している)が {{lang|en|I rub you}} (私は[[手淫|貴方を擦る]])、{{lang|en|election}} (選挙) が {{lang|en|erection}}(勃起)、{{lang|en|sit}}(座る)が {{lang|en|shit}}(クソ)、{{lang|en|earth}}(地球)が {{lang|en|ass}}(尻)に聞こえる。
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=== 注釈 ===
=== 注釈 ===
 例えば韓国語では語頭のリウルは"L"であり、ラーメンは라면(ラーミョン)と綴る。ラーメンの表記をLaで始めるか、Raで始めるか、ヌードルとするか、の相違であろう。

 歴史的に英語圏であった、南アジア(インドやスリランカ)のラーメンはRaで表記されていることが多い。尚、語中や語末のリウルは"R"に近くなる。

== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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2019年3月28日 (木) 05:47時点における版

Engrishの一例 [注 1]

Engrish (英語発音: [ˈɪŋgɹɪʃ]) とは、アジア系言語話者の使用する、語表現やスペリングの誤用を伴った英語を揶揄するための俗語である。"Engrish"という造語は"English"の綴り字を変化させたものであり、主に白人など英語圏の人種がアジア人種の"L"の発音を"R"に誤って聞き取ったことから生まれた造語である。事実上、インターネット上にアップロードされている"Engrish"を含む看板の写真などは、日本のみならず中国や韓国、タイなどが関連したものであることが大半である。

概要

Engrish とは、アジア言語ではRの発音が無いことにかけたシャレである(英語= English の“l”を“r”としている)。日本語に限定した場合、Engrish英語圏の人にとっては、おおむねユーモラスな誤用だと受け止められている。Japlish または Janglish という造語も存在している。また、Engrish は、例えば外国風な装飾として用いるなど、広告の中で用いられる、英単語の故意に誤った、または不注意な使い方を指すこともある。

一般的には、和製英語とは別のものと考えられている。和製英語とは、日本で広く用いられるが英語圏では見られない、英語をベースにした造語である。逆に日本語を母語としない人の奇妙な日本語の発音を揶揄する Nihonglish なる言葉も存在する。

Engrishがおきる要因

アジア系の言語の場合、ラ行の子音は歯茎顫動音、つまり舌が前歯の裏側の硬口蓋に触れる。そのため、英語の Lのような音になる。

主に巻き舌が多いアメリカンイングリッシュ(米語)が堪能でない日本人が英語を発音する時にRが発音できない。そして、主に白人の英語話者がLをエル(EL)、Rをアール(Ah-le)と誤って聞き取ってしまう。こうして、EnglishEngrish と誤記されることがある。演劇用語 「break a leg」 (成功を祈る)が 「break a reg」 になっていたり、「get rid of」 と 「get lid of」 を混同したりする宣伝ポスター、rice)と liceシラミ)の区別がつかない(文脈から考えて混同することは稀ではあるが)のがその例である。また、英語を話す際に、日本語話者にとって不慣れな舌を回すRの発音を特に意識して発音しようとするケースが多いことも、Engrishと呼ばれるようになった要因の一つであると言える。

Engrish は、英語からの借用語を日本語風に発音すること、または英語からの借入語を多く備えた日本の方言を指すこともある。日本語には母音が 5つしかなく、子音連結はほとんどなく、L/R の他にも B/V, Shi/Si, Th/S の明確な区別は無いので、英語の借用語はしばしば英語圏の人にとっては異様なまたはユーモラスな発音になる。特に下ネタに聞こえるような単語や文は Engrish の話題になりやすい。例えば、ギタリストのエリック・クラプトン (Eric Clapton) は、日本語では Erikku Kuraputon になるが、英語で crap とは「クソ」を意味するため、英語圏の人からは滑稽に聞こえる。他にも I love you (あなたを愛している)が I rub you (私は貴方を擦る)、election (選挙) が erection(勃起)、sit(座る)が shit(クソ)、earth(地球)が ass(尻)に聞こえる。

日本語を使う人は、日常会話で 600 を超える英語からの輸入語を用いるが、それらはしばしば省略形になっている。例えば、 handkerchief は「ハンカチ」に、professional wrestling は「プロレス」になっている。McDonald's は、藤田田日本マクドナルドを創業する際に「マクドナルド」[注 2]表記を採用・定着しているが、さらに省略されて「マック」または「マクド」になる。sandwichは略されて「サンド」(砂)になっている。発音の変化がより異国風でよりユーモラスであればあるほど、より Engrish であると考えられている。

注意すべきことは、申し分ない英語からの借用語ですら、英語圏の人にとっては異質に聞こえることがあるという点である。たとえば写真を撮るときに、英語では[i:]を発音する時のように笑顔を作れという意味で使われる cheese を、アクセントの位置を誤って「チー」と発音する。こうした発音の変化は、言語学的な理由によるものであり、話者の知性とは無関係である。

Engrish は、「to make speed up find up out document」 のように、かつては家庭用電器製品のマニュアルに頻出したが、今ではそれほど多くなくなっている。BabelfishGoogle 翻訳の様に機械翻訳が出力した訳文を、確認せずにそのまま用いることが、下手な翻訳が生まれる発生源になっている。

Engrishの例

  • Crap your hands!:「拍手しろ (Clap your hands!)」という意味を表そうとしているが、これでは「クソをしろ」という意味になってしまう(ただし crap「クソをする」は自動詞なので、文法的にも誤り)。J-POPの歌詞、エルモ(セサミストリートのキャラクター)のぬいぐるみのパッケージ、Tシャツなど、至る所に見られる。"It's too rate." "Lest in peace." "Reisure & Lest" など、LR の取り違えによる Engrish は、数え切れない程ある。
  • Please take advantage of the maid.:日本のホテルなどで見られた掲示。「メイドをご利用下さい」という意味を表そうとしているが、take advantange of は、目的語が人の場合「~につけこむ」を意味し、さらにそれが女性だと「~を誘惑する、かどわかす」という意味になりうる。珍妙な英語を集めた Anguished English という本にも、同様の例が収録されている。
  • WEAK COOL: 1990年代まで阪急電鉄鉄道車両の窓に貼られていた「弱冷車」のステッカーに見られた Engrish。漢字をそのまま英単語に置き換えたもので、「弱い涼しい」となり意味をなさない。正しくは mildly airconditioned など。
  • Please turn the card inside out:日本のあるホテルのレストランで「食事が終わったらカードを裏返してください」という意味を意図して使われたもの。turn ... inside out は、たとえば手袋セーターの内側を外に出すような場合に使う。カードには inside(内部)がないため、turn ... inside out することはできない。カードを裏返す場合は turn over が正しい表現。
  • Please refrain from barking, to avoid nuisances to neighbors.:「犬の鳴き声は近隣の方への迷惑となりますのでご注意ください」という掲示に添えられていた英文。「隣人たちへの迷惑を避けるため、吠えるのは控えてください」という意味になる。イヌに読まれることを意図しているように見える。
  • Because you are dangerous, you must not enter.:名古屋城の掲示にあった英語。「危険ですのではいらないでください」という意味を意図しているが、これでは「あなたは危険人物だからはいってはいけない」という意味になってしまう。DANGER! Do not enter. のようにすべきだろう。

Engrish 文化

ファッションとして英語が使用される例。タイヤカバーにデザインとして英語の文章が使われているが、これも間違ったユーモラスな英語の文章になってしまっている。

Engrish は、特に日本の大衆文化の中で顕著に用いられている。これは、おそらく英語を格好良いものと思う日本人が多く、英語を使用したがる人が多いが、日本人の英語力は教育によりある程度あるが中途半端であるためと思われる。日本のマーケティング企業が、日本人の英語好きを利用し、一見格好良い英語を使用するため、英語を母語とする人から見ると極めておかしな、または説明がつかないほど異様な、英語の表現が書かれた膨大な数の広告、製品、被服を生み出す結果となるのだと思われる。こうした新しい英語表現は、れっきとした意味のある用語として使用されるというよりも単にファッションとして用いられる。

いくつかのテレビゲームは、Engrish を生み出した。例えば 「Time over」 、『ゼロウィング』の 「All your base are belong to us」 、『メタルギア』の 「I feel asleep」 と 「The truck have started to move」 が挙げられる。ゲームの技術が進歩しゲームの主な購買層が拡大したことでゲーム開発へ投じられる予算が増えるにつれ、プロの翻訳家を雇うことによりこの種の下手な翻訳はほとんど根絶されてきた。それでも、2002年の『スーパーマリオサンシャイン』の 「Shine get!」 のように、いくつかの日本語版のゲームでは Engrish を見つけることができる。

Titan という会社が製造したコンピュータ用の冷却ファンに書かれた 「Going faster is the system job」 なども、Engrish である。

また、Engrish はアメリカのコメディ・セントラルで放映されているアニメ『サウスパーク』でも何度か取り上げられている。その一例を挙げれば、シーズン8の第1話 「Good Times With Weapons」 で、登場人物たちが突然日本アニメのような画風になり、「let's fighting love」という Engrish と日本語がごちゃまぜの荒唐無稽な日本語の歌が流れる。番組の終わりの歌も同様である。(歌っているのは原作者のトレイ・パーカー本人である。彼はコロラド大学在籍当時に日本語を専攻しており、日本在住経験を持つ)。

Engrish は時として、面白くする効果や、異国の雰囲気を出すためにわざと使われる。漢字や、ギリシア文字偽キリル文字アルファベットが、西洋ラテン文字社会において(大抵は間違った使い方で)そういった目的で使われるのと同じである。これに似た用法で、「Mötley Crüe」(モトリー・クルー音楽バンド) や 『Hägar the Hørrible』英語版 (ヘガー・ザ・ ホリブル、アメリカの漫画)、もしくは「Häagen-Dazs」(ハーゲンダッツアイスクリームブランド) のように、普通の英語の句にウムラウトアクセント符号Ø誤字を加えて、エキゾチックな外見にすることがある。

その他の用語

Engrish の対極の概念に Nihonglish (ニホングリッシュ)がある。これは、英語を母語とする話し手の発音の下手な、あるいは間違った文法の日本語を言う。典型例としては、「こんにちは」 (Konnichiwa) を普通のアメリカ人が発音すると、konni を「こんに」ではなく「こに(ー)」と言ってしまうために「こにーちわ(こにちわ)」になってしまうなど。このような例は、日本の英語学習者の会話において英語が使用されるのと同様に、日本に語学留学している英語圏からの学生たちの英語会話中で観察することが出来る。

外国語を話そうとして恥をかく英語圏の人を指して、embarazado と呼ぶことがある。これは、スペイン語で「妊娠した」(-zado は男性形のため、正確には女性形で embarazada)という意味だが、英語の embarrassed (「当惑した」「恥をかいた」の意)に似ているため、英語圏の人間がスペイン語を話そうとしてよく間違う言葉である。「男が妊娠して当惑」「妊娠などという言い間違いをして恥ずかしい」というジョークも含めて呼ばれている。

おおむね二か国語が使える集団における英語の特有な使い方 (Spanglish, Yinglish, Franglais) は、より中立的な意味合いの名前を持っており、大体において英語の技量がその社会の一般の人々の平均以上であるような人について用いる。

脚注

注釈

 例えば韓国語では語頭のリウルは"L"であり、ラーメンは라면(ラーミョン)と綴る。ラーメンの表記をLaで始めるか、Raで始めるか、ヌードルとするか、の相違であろう。

 歴史的に英語圏であった、南アジア(インドやスリランカ)のラーメンはRaで表記されていることが多い。尚、語中や語末のリウルは"R"に近くなる。

関連項目

外部リンク


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