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下ネタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

下ネタ(しもネタ)は、笑いを誘う排泄性的な話題のこと。寄席における符牒のひとつであったが、テレビ業界で用いられるようになってから一般化した。「下がかった話」などともいう。現在ではもっぱら艶笑話について用いられ、必ずしも笑いを伴わない猥談や露骨に性的な話(エロネタ、エッチネタ)を指すこともある。下は人間の下半身と「下品」のダブル・ミーニング[要出典]ネタは「話のタネ」を意味する。

下ネタの二種類

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現在では、艶笑的な話題と、排泄に関わる汚らしさによって笑いを誘う話題を下ネタと総称されているが、本来の寄席用語では艶笑ものを「バレ(ネタ)」として区別しており、下ネタの原義は排泄物をめぐる笑話のことであったと言われている。落語においてはバレネタと下ネタ(狭義)の間には大きな扱いの差があり、バレネタはや通を体現するものとして必ずしも低く扱われないのに対し、排泄物をめぐる下ネタは下品で安易な笑いの取り方であるとしてあまり好まれない傾向にある。

以下、猥談を含んだ広義の下ネタについて述べる。落語における艶笑ものは、表現規制や戦中の禁演落語の問題とも関わる。この点については「禁演落語」の項目参照。

下ネタの社会的地位

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一般に下ネタは下品なものと見なされ、好き嫌いは大きく分かれる。

人間が生きていくうえで必要な事柄を利用して笑いを誘うだけにわかりやすく、多くの人に通じやすいのは事実であるが、通常の生活において隠されるべきもので、絶対的なプライバシーとして確保すべきものを公表するものでもあるため、これに対して不快感や嫌悪感を持つ人も多い。

また人間存在の根幹にかかわる性や排泄の問題は、文化生活習慣、年代、地域性差などによってそれぞれにタブーの違いがあり、場合によっては誤解を呼んだり、相手を侮蔑・侮辱するものとして文化的な摩擦の原因となる事ある。一例として芸人の江頭2:501997年トルコで行った全裸パフォーマンスにより現地の警察に逮捕された事件がある。

特に、性的な下ネタは現代社会では、しばしばセクシャル・ハラスメントとして問題視されることがある。

同様の理由から、下ネタが比較的寛容に受入れられる社会であっても、私的な場と公の場においてはその待遇が違うことが多い。例えば、いわゆる艶笑落語は排泄物を巡る下ネタよりも厚遇されているとはいえ、高座であまり大っぴらに語るべきものとは考えられておらず、少人数の内輪の会などで客席と親密な一体感を持ちながら演じられる。内容がきわどく、露骨になればなるほど、この傾向は強くなる。

下ネタと放送・芸能

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マスメディアの中でも特にテレビラジオは、不特定多数なおかつ膨大な数の大衆に向けて発信される性質を持っており、比較的少数の、また価値観や嗜好を共有する均質な人々の集合であった寄席の観客とは大きく性質を異にする。そのため同じ下ネタでも、寄席や演芸舞台という場では演じられても、テレビやラジオなどの放送媒体では自粛される場合がある。

また、特にテレビ番組においては、必ずしも下ネタで笑いを取って来なかったお笑いタレントバラエティ番組で下ネタをネタとして使用することが多くなると、「下ネタにしか頼れなくなった」という評価がつき、タレントとしての商品価値の低下に繋がっていくこともある。反対に、一種のゲテ物系の色物として劣情や下ネタに特化した笑いを専門的に狙うタレントもいる。他方、トーク術や番組の司会運営、しゃべくり芸などについて高く評価されていても、やはり下ネタが頻出するため、テレビ局や番組制作会社から数多くの仕事が来るものの、警戒されて生放送の仕事がほとんど回ってこない、さらには、収録された内容も大幅に編集されてしまうため、テレビでは舞台の場で見せる本領とは程遠いパフォーマンスしか発揮できないというお笑いタレントも存在する。

特に生放送番組では、放送時間に関わらず必然的に下ネタも規制無しで堂々と喋るため、それらの番組がTVerNHKプラスなどで堂々とアーカイブ配信される場合、それらの発言は無音音声のみでよく観られる)にするか、発言シーン動画ごとカットする措置を採ることが多い。

子供への影響や、食事中に視聴者に与える不快感に配慮し、きわどい下ネタは深夜番組衛星放送でしか行われない傾向にある。また例えば、女性器の俗称は、ゴールデンタイムの番組では自主規制音がかぶせられるほか、クイズ番組で下ネタを含む正答をすると不正解扱いとされることが多い。代表例は『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)で、排泄・性的表現を含む正答は強制的に不正解(勝ち残り系クイズでは退場)として扱われ、特に初期〜中期のレギュラー解答者所ジョージはこれにより司会の板東英二から減点を受けることが多かった[注 1]が、深夜番組ではカットされずそのまま放送されるなど、放送時間帯や視聴者層の違いにより扱いが異なる語句もある。また、視聴層の違いなどから、テレビと比較するとラジオの方が若干は寛容であるとされる。

ただし、ラジオ番組でも専ら夜間の番組(概ね19時〜翌日4時(前日28時)台まで)で主に行われ、1970年代に『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティである笑福亭鶴光が積極的に採り入れたのがその走りといえる。全日帯番組でも消極的ではあるが、実施している番組もあるにはあり、例として、CBCラジオ1993年改編から始めたワイド番組における2番目の番組である『つボイノリオの聞けば聞くほど』が代表格。熊本放送の1クール遅れた同年秋改編開始、同一時間帯に放送されている番組である『とんでるワイド 大田黒浩一のきょうも元気!』はコーナーである「お笑い丼」(11時台)で主に実施され、下ネタを「よかばい話」に言い替えている。女性パーソナリティが担当するアシスタントの意向で、実施されないこともある。それも祝日や長期休暇などの小学生以下における子供が聴きやすい環境におかれている場合は、下ネタそのものが一切行われていない傾向にある。低年齢層向けのものについては、完全に下ネタを避ける傾向は見られる。

放送文化よりも歴史の長い落語の中には、「実の母と関係する話」(『故郷へ錦』)や「会話の流れで小便を飲ませる話」(『禁酒番屋』)のような際どい話があり、これらが寄席において公演された時代もあったが、テレビやラジオでこの種の下ネタを含むものが演じられることはあまりない。ただし、落語等古典芸能では「内容の一部に不適切なものがあるが、作品を尊重して」などの前置きがあり、放送される例もある。

演芸文化における下ネタに対する許容度で関東関西を比較すると、かつては、芸に様式や粋を追求する傾向が強い関東では下ネタは避けられ、一方で「どんな手段を使ってでもお客様を笑わせてこそ、芸人はナンボ」という風潮が根強い関西の者が、お笑い芸人・客いずれも下ネタに対する許容度が高いと言われていた。ただし、1970年代に「お化け番組」の名をほしいままにしたTBSの『8時だョ!全員集合』におけるザ・ドリフターズ加藤茶の「ちょっとだけよ」など)や日本テレビの『笑点』での林家こん平(「肥溜め」など)や三遊亭小遊三(「半ケツ」「坐薬」など)などは例外だった。だが、吉本興業の全国展開で関西系、吉本系のお笑いタレントがお笑い市場において大きく幅を利かせている近年[いつ?]では関東では下ネタの許容も徐々に多くなり、ビートたけし志村けんをはじめとして、最近[いつ?]ではさまぁ〜ず星野源ナイツの様に下ネタを芸風の一部とする関東系タレントも登場している。それでも、関東では下ネタに対する反発は関西の芸能人が想像しているよりも根強いものがあり、番組出演者の間でちょっとしたトラブルになってしまうケース(例:『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン』における松本明子に対する四文字事件)や、TPOや視聴者層を考慮しないタレントの下ネタの連発から、関東の視聴者を中心に放送局へと抗議が集中するケースも見られる。もっとも、きわどい下ネタを頻発してもラジオスターとして聴取率の高さで関東でも生き残った笑福亭鶴光、谷村新司福山雅治という例もあるものの、関東では一般聴衆からの好き嫌いの差は極端に激しく、決して関西ほどに万人受けしているというわけではない。

また、初代林家三平の弟子や孫弟子などといった、『(初代)三平一門』の流れを汲む落語家・お笑い芸人、萩本欽一のいわゆる『欽ちゃんファミリー』に属するタレントなど、関東の芸能タレントには現在でも一門の不文律などという形で下ネタをタブーとしている者が珍しくない。これについてはそれぞれ師匠格のお笑い芸人の芸の好みによるものであったかもしれないが、テレビへの出演が芸能文化の事実上の頂点となっている現代にあっては、一門のタレントたちの芸について、安易な下ネタに依存させないことで鍛え上げ、芸の幅を広げる結果に繋がっているとも言える。その一方で、このような事情で下ネタができないタレントは特定のお笑いタレントとの組み合わせが難しいなどの支障が見られることもあり、テレビ局にとっては番組制作上の難題になることも珍しくない。

演劇

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古代ギリシャのギリシャ喜劇では下ネタが極めてあからさまである。しかし、やはりそれなりに下らないものとの判断があったらしい。例えば、アリストパネスの『』の冒頭は、奴隷が「荷物が重くてウンコが漏れる、とか言っていいか?」から始まり、それに対して主人公が「そういうのは聞き飽きたからやめろ」と返している。では、アリストパネスはそういうのは使わないかと言えば、実は結構よく使っており、この作品中でも主人公がびびって服のまま脱糞をするシーンがちゃんと出てくる。

また、当時の喜劇では役者やコロス(合唱隊)が股間に陰茎の作り物をぶら下げて登場するのが普通であり、上記作家の作品『女の平和』はそう言ったエロネタにあふれており、この飾りがたいそう活躍したものと思われる。しかし、他方で同作家の『鳥』では合唱隊が「そのようなものをつけずに出てくることが出来て」という下りがあり、これもそれなりにレベルの低いものと見なされていたことが想像される。

脚注

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注釈

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  1. ^ 同じ日本テレビ系で放送されていた番組対抗特番『スーパークイズスペシャル』では、世界のアナウンサー早押しクイズで『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』チームとして出ていた山城新伍は下ネタを含んだ回答を言って、当時の司会者でもある逸見政孝に突っ込まれることがあった。

関連項目

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