「JR北海道の車両形式」の版間の差分
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2021年3月5日 (金) 06:12時点における版
JR北海道の車両形式(ジェイアールほっかいどうのしゃりょうけいしき)は、北海道旅客鉄道に在籍する、あるいは在籍した鉄道車両の一覧である。
概要
北海道の冬季における厳しい自然環境に対応するため、日本国有鉄道(国鉄)時代から独自の改造や専用形式の導入などが行われており、視認性確保のため多灯とされた前照灯、二重窓や固定窓の採用、客室のデッキあるいはエアーカーテンの設置、などの特徴がある。また、JR旅客6社で唯一直流型電車を所有していない。
耐寒・雪氷対策
耐寒性能については、2017年(平成29年)時点で、新規に設計する在来線車両については以下の通り車両・機器の設計仕様を定めている[1]。
- 動作保証温度(確実に動作する温度範囲):-35 ~ +40℃
- 性能保証温度(フル性能を発揮できる温度範囲):-20 ~ +40℃
また、以下の対策がなされている[1]。
- 窓へのポリカーボネート使用
- 従来から走行中の列車に付着した氷塊がトンネル内で落下し、バラストを跳ね上げたことにより、窓ガラスに当たるなどする現象が発生していたが、1999年(平成11年)12月に、走行中の特急列車に付着した氷塊がトンネル内で落下し、跳ね上げたバラストがトンネル側壁と車体でバウンドし、窓ガラスを破損、乗客が負傷する事故が発生した。これはJR化後の列車高速化も一因と考えられており、これを受け、110 km/h 以上で走行する車両については客室側窓のガラスを厚さ8 mm のポリカーボネート板で覆っている[1][2]。この処置はその後新規に開発された車両についても同様であり、2006年開発のキハ261系1000番台以降の車両では、ポリカーボネートと強化ガラスの複層ユニット窓が採用されている[1][3]。
- また、その他の窓も視認性に関わる運転席前面窓を除いてポリカーボネートが採用されており、採用後は類似の破損事故はほぼ皆無となっている[1]。
- ドア構造
- 現在定期運用を行う車両についてはデッキ・客室内への雪の吹込みと、戸袋内への雪侵入による開閉不良防止のため、片開きの引き戸(一部外開きプラグドア)を基本としている[1][4]。このため通勤・近郊型についても片開扉が採用されており、731系電車(1996年)では札幌圏のラッシュに対応すべく1,150mmの大開口片開扉が採用された。
- 加えて、風止ゴムの構造の工夫や、ドアの高気密化によりこれら吹込みや不良を防止している。
- 電車の床下機器カバー・台車・主電動機冷却の工夫
- 前述の着雪の落下予防や、入区時の融雪作業の省力化のため、床下機器への着雪を防止する必要があった。このため785系500番台(2002年)以降の電車については、床下機器カバーを採用し、床下機器の底面を極力そろえ、機器箱間も塞いでいる[1][2]。なお、気動車については熱源があることから床下機器カバーは採用されていない[2]。
- また、電車・電気式気動車の主電動機の冷却については雪の影響を受けないよう配慮がなされている。初の専用電車形式であった711系(1968年)以来、車体側面のルーバーから取り込んだ外気から雪切り室によって雪を分離したものを冷却風として送風する強制風冷式が採用されていたが、733系3000番台(2014年)以降の車両については全閉自己通風式主電動機を採用することで、雪切り室を廃止している[1]。このほか、動力伝達装置にもカバーを配置している[1]。
- ブレーキ装置
- 湿潤時等の摩擦係数が安定している鋳鉄制輪子を採用しており、苗穂工場開発・製造(製造はその後グループ会社の札幌工営に委託)の合金鋳鉄制輪子としている。また、高速車両については踏面両抱き式として高速域からのブレーキ力を確保している[1]。
現行車両
蒸気機関車
ディーゼル機関車
電車
気動車
- 特急形
- 一般形
- 通勤形
客車
貨車
廃止車両
蒸気機関車
電気機関車
ディーゼル機関車
電車
気動車
- 特急形
- キハ80系
- キハ183系
- ニセコエクスプレス(5000番台)
- クリスタルエクスプレス トマム & サホロ(5100番台)
- キハ285系(試作車のみ落成したが開発中止、詳細後述)
- 急行形
- 一般形
- 特殊車両
- デュアル・モード・ビークル(DMV形)
客車
- 特急形
- 一般形
- 50系50形・51形
- 旧形
- 雑形
- 事業用
貨車
- 有蓋車
- 無蓋車
- トラ70000形(トロッコ列車用)
- タンク車
- 操重車
- 長物車
- チ1000形(入換用特殊車両)
- チキ5500形
- チキ7000形
- チ50000形・チラ50000形(元青函トンネルレール敷設工事用・北海道ジェイ・アール商事所有)
- ホッパ車
- ホキ800形(バラスト輸送用)
- 検重車
- 控車
- 除雪車
- 車掌車
開発中止された車両
気動車
- 特急形
- キハ285系
- スピードアップと省エネルギー化を両立させる次世代特急車両として開発を進めていた特急形気動車。
- JR北海道と川崎重工業との共同開発による、振り子式車体傾斜システムと空気バネ式車体傾斜システムを組み合わせた「ハイブリッド車体傾斜システム」[5]、およびJR北海道と日立ニコトランスミッションとの共同開発による「鉄道車両用モーターアシスト式ハイブリッドシステム」[6]を搭載し、2011年4月から試験車の設計・製作に着手した。
- しかし、開発当時JR北海道管内で事故や不祥事が続発したため「現状としては、『安全対策』と『新幹線の開業準備』に限られた『人』『時間』『資金』等を優先的に投入する必要がある」と判断、「コストとメンテナンスの両面から過大な仕様であること」「速度向上よりも安全対策を優先すること」「従来形式での車両形式の統一によって、予備車共通化による全体両数の抑制と機器共通化によるメンテナンス性の向上が図られること」として、試作車落成直前の2014年9月10日に本形式の開発を中止し、今後は運用実績のある既存のキハ261系の生産を継続して老朽化した特急型気動車の置き換えを行う方針に転換することを発表した[7][8]。
- 同発表後、この時点で製作されていた現車(3両編成:キハ285-901+キハ284-901+キハ285-902)については同月26日に川崎重工業を出場し、苗穂工場まで甲種輸送された[9]。その後は苗穂工場内で試運転を行った後[10]、同年10月31日付で札幌運転所に新製配置され[11]、本線試運転も実施した[12]。
- その後、試作車については、マヤ34形の代替を兼ねて在来線用総合検測車への転用が検討されていた[8]が、検測車としての転用は断念することとなった[13](総合検測車はマヤ35形の新造で対応[14])。JR北海道は「今後の活用法について検討中」[13]としていたが、製造中のキハ261系に部品を転用するため、試作車は2015年3月31日付で車籍抹消(廃車)となり[15]、2017年3月に解体された[16]。
- キハ285系
脚注
- ^ a b c d e f g h i j 鬼頭智明・曽我賢一「JR北海道の在来線車両における冬季対策」『R&m:Rolling stock & machinery』第25巻第1号(通巻796号)、日本鉄道車両機械技術協会、2017年1月1日、pp.20-25,図1p、ISSN 0919-6471。
- ^ a b c 本間 吾理紗 (2011-02). "「未来へつなぐ」(2011年2月号) 『鉄道車両の寒冷地対策』" (PDF). 安全性向上のための取り組み 6.車内誌「THE JR Hokkaido」に掲載した安全への取り組み (Press release). 北海道旅客鉄道. 2015年7月25日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2017-10-02閲覧。
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の日付が不正です。 (説明) - ^ "IGP®(複合ユニット窓)" (Press release). 東邦シートフレーム. 2018年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月22日閲覧。
- ^ それ以外の扉構造としては711系試作車で4枚折り戸を採用した事例などがある。
- ^ "世界初の「ハイブリッド車体傾斜システム」の開発に成功!" (PDF) (Press release). 北海道旅客鉄道. 8 March 2006. 2014年11月28日閲覧。
- ^ "世界初の環境に優しい『モータ・アシスト式ハイブリッド車両』の開発に成功!" (PDF) (Press release). 北海道旅客鉄道. 23 October 2007. 2014年11月28日閲覧。
- ^ "新型特急車両の開発中止について" (PDF) (Press release). 北海道旅客鉄道. 10 September 2014. 2014年11月28日閲覧。
- ^ 鉄道ファン (雑誌) (2014年9月27日). “キハ285系3両が甲種輸送される”. railf.jp(鉄道ニュース) (交友社) 2016年5月3日閲覧。
- ^ 鉄道ファン (雑誌) (2014年10月9日). “キハ285系が苗穂工場で試運転”. railf.jp(鉄道ニュース) (交友社) 2016年5月3日閲覧。
- ^ 『鉄道ファン』2015年7月号、交友社、2015年、付録p.35
- ^ 鉄道ファン (雑誌) (2014年10月9日). “キハ285系が本線試運転”. railf.jp(鉄道ニュース) (交友社) 2016年5月3日閲覧。
- ^ a b “新型特急285系 未使用で廃車へ 開発に25億円 JR北海道”. 北海道新聞(どうしんウェブ) (北海道新聞社). (2016年4月26日). オリジナルの2016年4月26日時点におけるアーカイブ。 2016年5月3日閲覧。
- ^ “命令項目 2. 第一歩の改善” (PDF). 「事業改善命令・監督命令による措置を講ずるための計画」 平成29年度第2四半期実施状況の報告について. 北海道旅客鉄道. p. 44 (2017年9月29日). 2017年9月30日閲覧。
- ^ 『鉄道ファン』2016年7月号、交友社、2016年、付録p.37
- ^ “開発費25億円の夢、鉄くずに JR北海道、新型特急試作車を解体”. 北海道新聞(どうしんウェブ) (北海道新聞社). (2017年3月3日). オリジナルの2017年3月3日時点におけるアーカイブ。 2017年3月3日閲覧。