JR北海道マヤ35形客車
JR北海道マヤ35形客車 | |
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JR北海道マヤ35形(2018年4月) | |
基本情報 | |
運用者 | 北海道旅客鉄道 |
製造所 | 日立製作所 |
製造年 | 2017年 |
製造数 | 1 |
主要諸元 | |
軌間 | 1,067 mm |
最高運転速度 | 110 km/h |
設計最高速度 | 110 km/h |
車両定員 | 10名 |
自重 | 42.8 t |
車体長 | 21,300 mm |
全幅 | 2,900 mm |
全高 | 3,277 mm |
床面高さ | 1,140 mm(貫通路高さのみ1,270 mm) |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 |
軸梁式ボルスタレス台車 N-TR35 |
発電機 | デンヨーDCA-124LSI形 |
制動装置 | 自動空気ブレーキ |
備考 | 出典:[1] |
マヤ35形客車(マヤ35がたきゃくしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)の軌道検測用の事業用客車である。
概要
[編集]国鉄から継承したマヤ34形高速軌道検測車の後継として、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE491系電車(East i-E)をベースに開発・導入された。動力は持たず、他の気動車や機関車にけん引される客車であるが、将来自走できる電気検測車を組み込み総合検測車を構成することも計画されている[2][3][注 1]。日立製作所で製造された[5]。
形式は重量記号・用途記号は国鉄客車の車両形式に準じ、番号部分はマヤ34の次として「35」が付番された[2]。
導入の経緯
[編集]JR北海道発足以来軌道検測に用いられていたマヤ34形(マヤ34 2008)は経年[注 2]により老朽化が進みメンテナンスが困難になりつつあった[6][2]。
また、2011年(平成23年)の石勝線脱線火災事故以降、JR北海道社内で続発した事故・不祥事を受けて、JR北海道は国土交通省から2014年(平成26年)に「輸送の安全に関する事業改善命令および事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けているが、これを受け2015年(平成27年)3月20日に「安全投資と修繕に関する5年間の計画」を公表し、2017年(平成29年)度中の「軌道・電気総合検測車」の導入が計画されることとなった[JR北 2]。
当初は、2014年(平成26年)の試作車落成後に開発中止されたキハ285系気動車(2015年車籍抹消)の転用も検討されていたが、2016年(平成28年)には転用ではなく軌道検測車の新製とする方針が決まった[JR北 3]。
実車は2017年(平成28年)4月12日に正式に導入が発表され[JR北 4]、同年5月17日付で落成した[5]。導入費用は約14億円であり、国の支援が行われた[JR北 4]。
落成後は1年間にわたる試験ののち、2018年(平成30年)4月5日に報道陣に公開され[7]、同年4月10日から既存の気動車や機関車にけん引される形で検測を開始した[8]。
構造
[編集]車体
[編集]構造・断面をE491系と同一とした20 m 級(21,300 mm)のアルミニウムダブルスキン構造(A-train)車体で、溶接にはFSWを使用した[6][9]。床面高さは1,140 mmであるが、貫通路部分のみ併結するキハ40形気動車(後述)とあわせ1,270 mmとなっている[9]。
外観上の窓や扉は前後の妻引戸、1位側と4位側に点対称に設けた側開戸、測定室の落とし窓以外になく、落とし窓についてはポリカーボネートとなっている。後部標識灯は貫通路上部に装備される[9]。
外装は北海道新幹線用のH5系と同じ緑をベースにした塗装を採用し、紅葉をイメージしたオレンジと雪原をイメージした白のアクセントが入る[JR北 2]。
車内
[編集]前位側半分が測定室、後位側半分が電源室となっている[9]。
測定室
[編集]車端部よりの半分が電源装置や検測装置となっており、車体中央よりの半分がモニタや作業台を設けた測定室となっている。出入り台の扉のない側には床置き型の空調装置が設けられている[9]。
電源室
[編集]発電機と燃料タンク(750L)、ハロン消火設備を装備する。出入り台の扉のない側には動揺加速度検出器を設置する[9]。
主要機器
[編集]測定機器については速度は2 - 110km/hの範囲、外気温は-20℃ - 50℃の範囲で検測を行うことが可能である[4]。
台車
[編集]E491系をベースにJR北海道で使用している検修部品と極力共通化を図った検測装置付きの円筒積層ゴム支持ボルスタレス台車、N-TR35形台車を装備する[9]。検測方式は光学式および電磁式のレール変位検出器を用いた2台車非接触式となり[注 3]、従来困難だった積雪期の変位検測が可能となった[9]。車輪径は860 mmである[9]。
ブレーキ装置
[編集]ブレーキ方式は自動空気ブレーキとし、留置ブレーキ・保安ブレーキは装備しない[1]。ブレーキ装置は基礎ブレーキ装置には踏面片押し式ユニットブレーキを採用し、制輪子は合金鋳鉄制輪子である[1]。
電源装置
[編集]発電装置として防音型エンジン発電機(デンヨーDCA-124LSI形)を装備し、440 V 60 Hz 125 kVA を供給する。この電源装置は将来総合検測車となった際に3両分の装置向け電力を供給できるようになっている[9]。
空調・暖房装置
[編集]E491系と同一の床置き式空調装置AU405形を装備し、測定室内の冷房・換気に用いる。暖房は測定室内にシーズ線ヒータ(計1000W)を装備する[1]。
配置・運用
[編集]札幌運転所に所属し[5]、基本的に苗穂運転所所属の前方監視カメラと建築限界測定装置を設置した専用のキハ40形気動車(301・304)で挟んでJR北海道管内在来線の検測に用いられている[3][2]。この場合、本車の設計最高速度は110 km/h であるが、キハ40形の性能から95 km/h で走行する[2]。
検測は本線・副本線については特急列車運転線区は年4回、その他は年2回実施されている[3][4]。
また、道南いさりび鉄道・海峡線(五稜郭駅 - 新中小国信号場)を走行する場合、保安装置等の問題からマヤ35形単体の両端にJR貨物所属のEH800形電気機関車を連結して走行している[10]。
出典
[編集]注釈
[編集]書籍・雑誌等
[編集]- ^ a b c d 池田 (2018), p. 50.
- ^ a b c d e 池田 (2018), p. 48.
- ^ a b c 本間 (2021).
- ^ a b c 『j train』(85) (2022), pp. 35‐36.
- ^ a b c 『鉄道ファン』通巻687号 別冊付録 (2018).
- ^ a b “JR北海道 軌道検測車マヤ35形” (PDF). 一般社団法人 日本鉄道車輌工業会 (2018年10月16日). 2020年11月24日閲覧。
- ^ a b “マヤ35-1が公開される”. railf.jp (2018年4月6日). 2020年11月24日閲覧。
- ^ “マヤ35-1による検測開始”. 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース (2018年4月15日). 2020年11月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 池田 (2018), pp. 48–51.
- ^ a b “マヤ35-1が海峡線・道南いさりび鉄道線を検測”. railf.jp (2019年4月15日). 2021年11月27日閲覧。
JR北海道
[編集]- ^ 『JR北海道中期経営計画2026』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2017年4月12日。オリジナルの2024年4月13日時点におけるアーカイブ 。2024年4月13日閲覧。
- ^ a b 『安全投資と修繕に関する5年間の計画について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2015年3月20日。オリジナルの2015年4月2日時点におけるアーカイブ 。2015年4月2日閲覧。
- ^ “No.12 命令項目 2.第一歩の改善 (3)安全確保を最優先とする事業運営の実現 ①現場の業務実施体制の確立” (PDF). 「事業改善命令・監督命令による措置を講ずるための計画」 平成28年度第1四半期実施状況の報告について. 北海道旅客鉄道 (2016年6月30日). 2022年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月10日閲覧。
- ^ a b 『在来線用軌道検測車の老朽取り替えについて』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2017年4月12日 。2020年11月24日閲覧。
参考文献
[編集]- 編集部「別冊付録『JR旅客会社の車両配置表2018/JR車両のデータバンク2017-2018』」『鉄道ファン』第58巻第7号(通巻687号)、交友社、2018年7月1日。
- 池田, 篤 (2018-08-01). “JR北海道 マヤ35形軌道検測車”. 鉄道ファン (交友社) 58 (第8号(通巻688号)): pp.74-77.
- 本間, 吾理紗「新型軌道検測車「マヤ35形」の導入(「未来へつなぐ」)」(PDF)『THE JR Hokkaido』、北海道旅客鉄道、2021年4月、 オリジナルの2021年12月4日時点におけるアーカイブ、2021年12月4日閲覧。
- 「JR北海道 マヤ35形軌道検測車」『j train』第85号、イカロス出版、2022年4月1日、pp.33-36。