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* 『[[オデュッセイア]]/[[アルゴナウティカ]]』[[松平千秋]]・[[岡道男]]訳、[[講談社]](1982年)
* 『[[オデュッセイア]]/[[アルゴナウティカ]]』[[松平千秋]]・[[岡道男]]訳、[[講談社]](1982年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
* [[ピンダロス]]『祝勝歌集/断片選』[[内田次信]]訳、[[京都大学学術出版会]](2001年)
* [[ピンダロス]]『祝勝歌集/断片選』[[内田次信]]訳、[[京都大学学術出版会]](2001年)
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年)

2021年11月15日 (月) 11:10時点における版

エルギーノス古希: Ἐργῖνος, Ergīnos, : Erginus)はギリシア神話の人物である。長母音を省略してエルギノスとも表記される。主に、

の2人が知られている。以下に説明する。

ポセイドーンの子

このエルギーノスは、海神ポセイドーンの子で、アルゴナウタイの1人[1][2][3]ミーレートス出身[4][5]。一説によるとペリクリュメノスの子で、ボイオーティア地方のオルコメノスの出身[5]

アルゴー船の舵を取ったティーピュスが航海の途上で命を落としたとき、冒険に参加していたポセイドーンの子供たちアンカイオス、エルギーノス、ナウプリオスエウペーモスが新たな舵取り候補に名乗り出たが、アンカイオスが選ばれた[6]

クリュメノスの子

このエルギーノスは、ボイオーティア地方の都市オルコメノスの王クリュメノスの子で、ストラティオス、アローン、ヒュレオス、アゼウスと兄弟。プリクソスの子プレスボーンの孫にあたる[7]トロポーニオスアガメーデースの父[8]

クリュメノスがテーバイ人に殺されたとき、エルギーノスはテーバイと戦争して勝利し、莫大な賠償をテーバイに要求した。しかし後にテーバイは若き英雄ヘーラクレースによって解放された[9][10]アポロドーロスによると、エルギーノスはテーバイに毎年百頭の牝牛を貢ぐことを20年間続けるよう命じた。しかしヘーラクレースは賠償を受け取りに訪れたオルコメノスの使者の耳や鼻、手を切り落して縄で結びつけ、それを貢物だと言って追い返した。戻ってきた彼らを見たエルギーノスは怒り、テーバイに進軍したが、アテーナーから武器を授かったヘーラクレースはテーバイ軍を率いてエルギーノスを討ち、オルコメノス軍を大敗させた後、テーバイに課されていた賠償の2倍の貢物をオルコメノス人に強制した。なお、この戦いでヘーラクレースの父アムピトリュオーンが戦死した[9]

シケリアのディオドロスによると、戦争に勝利したエルギーノスはテーバイ人が反抗できないようにすべての武具を没収した[11]。ヘーラクレースがオルコメノスの使者に暴虐な仕打ちを加えた後[12]、エルギーノスがテーバイ王クレオーンにどう責任を取るのかを問い質すと、クレオーンはヘーラクレースを引き渡そうとした。しかしヘーラクレースは過去の戦争の戦利品として神殿に奉納されていた武具を持ち出し、オルコメノスと戦って自由を取り戻すことをテーバイ人に呼びかけた[11]。そして軍を率いてオルコメノスの大軍を隘路で打ち破り、町に火を放って破壊した[13]

パウサニアスはエルギーノスはヘーラクレースとの戦争で命を落とさなかったと伝えている。大敗を喫したエルギーノスはヘーラクレースと和睦した後、オルコメノスの富と名誉の回復に努めた。しかし年老いたとき後継ぎがいなかったので、子をもうける方法をデルポイ神託にうかがった。エルギーノスは届けられた神託が結婚を勧めていると解釈し、若い女性と結婚したところ、トロポーニオスとアガメーデースが生まれた[14]。ただし、パウサニアスはトロポーニオスの本当の父親はアポローン神であったと多くの人間が信じていたことを伝えている[15]

ピンダロスはアルゴナウタイのエルギーノスと同一視している[16]

系図

 
 
プリクソス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
プレスボーン
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
クリュメノス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エルギーノス
 
ストラティオス
 
アローン
 
ピュレオス
 
アゼウス
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
トロポーニオス
 
アガメーデース
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アクトール
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アレース
 
アステュオケー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アスカラポス
 
イアルメノス
 


脚注

  1. ^ アポロドーロス、1巻9・16。
  2. ^ ロドスのアポローニオス、1巻185行-187行。
  3. ^ ヒュギーヌス、14話。
  4. ^ ロドスのアポローニオス、1巻186行。
  5. ^ a b ヒュギーヌス、14話。
  6. ^ ロドスのアポローニオス、1巻894行-898行。
  7. ^ パウサニアス、9巻37・1。
  8. ^ パウサニアス、9巻37・4。
  9. ^ a b アポロドロス、2巻4・11。
  10. ^ パウサニアス、9巻37・1-37・2。
  11. ^ a b シケリアのディオドロス、4巻19・4。
  12. ^ シケリアのディオドロス、4巻19・3。
  13. ^ シケリアのディオドロス、4巻19・5。
  14. ^ パウサニアス、9巻37・3-37・4。
  15. ^ パウサニアス、9巻37・5。
  16. ^ ピンダロス『オリュンピア祝勝歌』第4歌19行-20行。

参考文献