ペリクリュメノス
ペリクリュメノス(古希: Περικλύμενος, Periklymenos)は、ギリシア神話の人物である。ネーレウスの子、ポセイドーンの子、ペーネロペーの求婚者の一人が登場する。カール・ケレーニイによれば、ペリクリュメノスとは「広く名高い者」の意である。
ネーレウスの子
[編集]ピュロス王ネーレウスとクローリスの息子でアルゴナウタイの一人。 ペリクリュメノスの兄弟は12人であり、アポロドーロスによれば他にタウロス、アステリオス、ピュラーオーン、デーイマコス、エウリュビオス、エピラーオス、プラシオス、エウリュメネース、エウアゴラース、アラストール、ネストール。姉妹にペーローがある。ヒュギーヌスは、ペリクリュメノスを同じくアルゴー船に乗り込んだとされるエルギーノスの父としている。
ペリクリュメノスはポセイドーンからどんな動物や木にも姿を変える術を授かった。ヘーラクレースがピュロスを攻略したときには彼に立ち向かい、獅子、蛇、蟻、蠅、蜜蜂、鷲と変身して戦ったが、他の兄弟とともに殺された。別の初期の物語では殺されたのではなく、鷲になった姿で飛び立ったともいう。ネーレウスの子供たちのなかでは、このときゲレーニア人の地にいたネストールだけが生き残ったとされる。
ポセイドーンの子
[編集]ヒュギーヌスによれば、ポセイドーンとアステュパライアの息子でアンカイオスの兄弟とする。
「テーバイ攻めの七将」の戦いで、ペリクリュメノスはテーバイの守将として登場する。エウリーピデースの悲劇『フェニキアの女たち』では、ペリクリュメノスは七将の一人パルテノパイオスを城壁から石を投げつけて殺した。アポロドーロスでは、七将の一人アムピアラーオスが逃げ出したときに、これを追って背中を攻撃しようとした。そのとき、ゼウスが雷霆を投じて地面に裂け目ができ、そこにアムピアラーオスは馬車と御者ごと飲み込まれた。
ペーネロペーの求婚者
[編集]アポロドーロスによれば、イタケーの王オデュッセウスの妻ペーネロペーに言い寄った求婚者として、ザキュントスから来た44人のうちの一人にペリクリュメノスの名がある。彼らはトロイア戦争から帰還したオデュッセウスに射殺された。
参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波文庫)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』(松田治・青山照男訳、講談社学術文庫) (ISBN 4-06-159695-0)
- 『ギリシア悲劇 IV エウリピデス(下)』(岡道男ほか訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02014-4)
- ロバート・グレーヴス『ギリシア神話』(上・下、高杉一郎訳、紀伊國屋書店)
- カール・ケレーニイ『ギリシアの神話』(「神々の時代」・「英雄の時代」、高橋英夫訳、中央公論社)
- R・L・グリーン『ギリシア神話 テーバイ物語』(眞方陽子訳、ちくま文庫) (ISBN 4-480-02592-8)
- B.エヴスリン『ギリシア神話小事典』(小林稔訳、現代教養文庫) (ISBN 4-390-11000-4)