イーナコス
イーナコス Ἴναχος | |
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河神 | |
ヴィクトール・オノレ・ヤンセンス『父によって認知されるイオ』。牝牛の姿のイーオーに気づくイーナコスを描いている。17世紀、個人蔵 | |
住処 | イーナコス川 |
親 | オーケアノス、テーテュース |
兄弟 | ポタモイ(アルペイオス、エーリダノス、ストリューモーン、アケローオス、シモエイス、ペーネイオス、ラードーン、スカマンドロス)、オーケアニデス |
子供 | ポローネウス、アイギアレウス、イーオー、ミュケーネー、アルゴス |
イーナコス(古希: Ἴναχος, Īnachos)は、ギリシア神話の神である。アルゴリス地方を流れるイーナコス川の河神。長母音を省略してイナコスとも表記される。
ソポクレースは神話をもとに悲劇『イーナコス』を書いたが散逸した[1]。
神話
[編集]系譜伝承
[編集]オーケアノスとテーテュースの子で、姉妹の1柱メリアーとの間にポローネウス、アイギアレウスをもうけた[2]。しかしゼウスに愛されたイーオーや[3][4][5]、ミュケーナイの名の由来になったミュケーネー[6]、百眼の巨人アルゴスもまたイーナコスの子といわれる[7]。
ヒュギーヌスによれば、イーナコスはポローネウスの娘ニオベーの子アルゴスの子ピラントスの子トリオパースとオレーアスの子で、クサントスと兄弟であり、アルゲイアーとの間にイーオーをもうけたという[8]。しかし他所ではオーケアノスの子で、姉妹のアルゲイアーとの間に[9]ポローネウスをもうけたとも述べている[9][10][11]。
物語
[編集]神話によるとヘーラーとポセイドーンがアルゴリス地方の領有をめぐって争ったとき、イーナコスはこの地の他の河神ケーピーソス、アステリオーンとともにアルゴリスをヘーラーのものと判定した。ポセイドーンは怒って川を干上がらせたので、夏になるとこれらの川から水が消えてしまうとされる[12][13]。あるいはポセイドーンは怒ってこの地を洪水で沈めてしまったので、ヘーラーはポセイドーンに水を引かせるよう頼まなければならなかったともいう[14]。
またイーナコスはこの地の最初の王で、自分の名にちなんで川をイーナコス川と名付け、ヘーラーを祭祀したとも[15]、イーナコスはアイギュプトスからの植民者であったともいわれる[16]。
イーナコスをイーオーの父とする説では、イーナコスはキュルノスに命じてイーオーを探させたが、キュルノスは発見できなかったのでカーリア地方のケロネーソス地方に移住した[17]。またイーナコスはゼウスを糾弾しようとしたが、イーナコスはゼウスの送ったエリーニュスに苦しめられ、ハリアクモーン川に身を投げた。そのためハリアクモーン川はイーナコス川と呼ばれるようになったという[18]。
系譜
[編集]オーケアノス | テーテュース | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イーナコス | メリアー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ポローネウス | アイギアレウス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アーピス | ストリューモーン | ニオベー | ゼウス | アーソーポス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エウアドネー | アルゴス | イスメーネー | ペラスゴス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エクバソス | ペイラース | エピダウロス | クリアーソス | イーアソス | リュカーオーン | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アゲーノール | ゼウス | イーオー | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アルゴス | エパポス | メムピス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ポセイドーン | リビュエー | リューシアナッサ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ベーロス | アンキノエー | アゲーノール | テーレパッサ | ブーシーリス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アイギュプトス | ダナオス | ケーペウス | ピーネウス | カドモス | キリクス | ポイニクス | エウローペー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
脚注
[編集]- ^ 比較的多くの断片が残されている(『ギリシア悲劇全集11 ソポクレース断片』p.95-109)。
- ^ アポロドーロス、2巻1・1。
- ^ 悲劇詩人カストール(アポロドーロス、2巻1・3による引用)。
- ^ ヘロドトス、1巻1。
- ^ シケリアのディオドロス、5巻60・4。
- ^ パウサニアス、2巻16・4。
- ^ アスクレーピアデース(アポロドーロス、2巻1・3による引用)。
- ^ ヒュギーヌス、145話。
- ^ a b ヒュギーヌス、143話。
- ^ ヒュギーヌス、225話。
- ^ ヒュギーヌス、274話。
- ^ パウサニアス、2巻15・5。
- ^ アポロドーロス、2巻1・4。
- ^ パウサニアス、2巻22・4。
- ^ パウサニアス、2巻15・4。
- ^ エウセビオス。
- ^ シケリアのディオドロス、5巻60・4-60・5。
- ^ 『ギリシア・ローマ神話辞典』p.53b。