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無学籍者について
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時計台占拠について
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==不祥事==
==不祥事==

===時計台占拠===

熊野寮自治会は例年熊野寮祭の一環として百周年時計台記念館(以下「時計台」)に梯子をかけて屋上に登る企画(時計台占拠<ref>{{Cite web |url= https://kumano-ryo.jimdofree.com/声明文/時計台占拠声明文/ |title=時計台占拠声明文 |accessdate=2022-07-27}}</ref>)を実施しており、京都大学は熊野寮自治会に対して危険な企画を実施しないよう通告してきたが、2020年、同企画において多数の者が覆面等をして顔を隠し、職員の制止を振り切って時計台に梯子をかけて屋根上に侵入し、制止した職員に暴行するなどして職員が負傷した<ref name=“kokuji20211124”>{{Cite web|url=https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-11-24 |title=令和3年11月24日付告示第7号 |accessdate=2022-7-27|publisher=京都大学}}</ref>。

京都大学は2021年11月24日の告示において、時計台占拠の危険性と違法性を指摘した上で「京都大学は今後、このような企画を主導して実施した団体・個人のみならず、同企画に参加した者に対して学内処分を行うほか、時計台記念館に登ろうとする者については確認次第直ちに警察に通報するなどの法的措置を含め、厳正に対処する」と宣言した<ref name=“kokuji20211124”/>。

同年12月3日、熊野寮自治会関係者がサングラス、ヘルメット、フェイスマスクなどによって顔を完全に隠し着衣も一様に揃え身元が特定されないよう準備した上で、職員の制止を振り切り構内に梯子を持って突進して職員が負傷する事件が起き、京都大学は同年12月15日、「極めて悪質であり、本学として看過することはできない」、「本学は、このような企画を主催した熊野寮自治会並びに企画に参加し梯子を持って構内に突進した暴力的な行為に関与した者に対し、法的措置を含め厳正に対処する方針である」と告示し、熊野寮自治会に対して「自治会としての責務を果たす意思と能力がない」との判断を下した<ref name="bouryoku"/>。


===無学籍者の居住===
===無学籍者の居住===

2022年7月27日 (水) 14:13時点における版

京都大学熊野寮(きょうとだいがくくまのりょう)は、京都大学自治寮

概要

1965年4月5日に「京都大学に在籍する男子の正規学部生専用の寄宿舎」として設立された。現在では京都大学に籍を置く全ての学生に入寮資格が認められており[1]、400人以上の寮生が居住する[2]。居室は相部屋であり、基本的に1部屋を4人(一部2人部屋も存在)で共有する。1ヶ月あたりの維持費(いわゆる寮費)は4,300円であり[1]、これには寄宿料と水光熱費(一部大学負担)及び共益費が含まれる。

居住する学生によって自主的に運営される自治寮である[3]。運営主体である熊野寮自治会は京都大学によって「自治会としての責務を果たす意思と能力がない」と判断されている[4]#自治会と大学の関係参照)。入寮や退寮を選考する権利(入退寮選考権)は寮生が持っており、大学はこれらの手続きに関与していない[5]

構造・設備

熊野寮はA棟、B棟、C棟の3つの居住棟及び食堂からなる。各4階鉄筋コンクリート構造である[1]

建物

熊野寮は2期に分けて工事が行われ、1965年の3月にA棟が熊野寮の中で最初の棟として完成した。 翌年の1966年4月に二期目の工事が完了しB・C、食堂が完成した。

設備

食堂:144席 その他、玄関スペース・地下・中庭などの空間も広く活用されている。 共用シャワー(男女別)、共用キッチン、駐輪場、駐車場、音楽室など生活に必要な設備も用意されている。

所在地・アクセス

所在地

郵便番号:606-8393

住所:京都府京都市左京区丸太町通川端東入ル東竹屋町50 京都大学熊野寮

アクセス

最寄りの駅:京阪電鉄鴨東線 神宮丸太町駅(丸太町通を東に徒歩5分)

最寄りのバス停:熊野神社前(徒歩2分)

京都大学吉田キャンパスから:約1.7km(東大路通を南下、熊野神社前交差点を西進)

自治会と大学の関係

熊野寮は京都大学が設置し熊野寮自治会が主体となって運営している。しかし2021年12月15日より京都大学は同自治会に関して「自治会としての責務を果たす意思と能力がない」との立場をとっている[4]。それに対して同自治会は声明で「言いがかりをつけて熊野寮自治会の非公認化を示唆する記述であり、大学のガバナンス強化と学生の個別管理のために学生自治会を敵視する当局の立場性が表れている」と批判している[6]

熊野寮自治会は京都大学副学長との間に確約を結んでおり、副学長の交代時には確約は次の副学長へ引き継がれている[7]。この確約の中では熊野寮自治会は熊野寮の「日常的運営」を担っている[8]こと、重大な事案に関し寮自治会と京都大学が団体交渉を行い、合意の上で決定するべきことや[9]、家宅捜索での人権侵害に対して大学が抗議を行うべきこと[10]、この確約を次期副学長に引き継ぐこと[11]が明記されている[12]

なお確約の文面は京都大学が契約の当事者であるかのように書かれているが、形式的には京都大学の代表権を持たない副学長個人との契約である[7]

警察による強制捜査

熊野寮の一部は、中核派全学連の関係先のひとつとされ[13]、警察による強制捜査が度々行われている。

1990年代前半までは毎月のように熊野寮に捜索が入ったが、近年は数年に一度のペースである[14]

近年の捜索の一部を以下に記す。

  • 2014年11月4日 同月2日に東京銀座で行われたデモ行進の際の公務執行妨害容疑での中核派系全学連の学生(京大生含む)の逮捕に伴って警視庁による捜索が行われた。
  • 2016年2月29日 中核派系全学連の学生らが京都大学のキャンパスで吉田南1号館を柵や立て看板などで封鎖し、授業や大学事務が行えない状態にした件の威力業務妨害容疑で、活動拠点の1つとして家宅捜索された。[15]
  • 2017年10月31日 同年8月9日のオープンキャンパスにて中核派系全学連活動家の男2人(うち一名京大生)が京都大学職員に暴行したとして公務執行妨害容疑で逮捕された時、関係先として家宅捜索された[16]
  • 2018年11月26日 17年10月に京大当局から「敷地内立ち入り禁止の通告」を出されていたにもかかわらず、18年4月から5月にかけて、ビラを配布する目的で講義室などに立ち入ったとされる3人が建造物侵入容疑で逮捕・刑事告訴された時、関係先として家宅捜索された。
  • 2021年6月24日 熊野寮に出入りしていた中核派系全学連の活動家が免状不実記載の疑いで逮捕された時、関係先として家宅捜索された[17]

副学長の論評

熊野寮に対して何度も捜査が行われることに関係して、2017年、京都大学の当時の副学長・川添信介は、入試説明会などの際に父兄から「熊野寮に入って大丈夫なのか?」などの質問や、熊野寮近隣住民から「警察が頻繁に捜索に入る学生寮をそのままにしておいていいのか?!」などの苦情があることについて、次のように書いた。[18]

すべての京大生諸君には、この恥ずべき事態が京大の評価を貶めていることをきちんと見据えて欲しいと願っています。また、熊野寮生の諸君には、大学に抗議する前に、警察による捜索が行われる原因は何なのか、寮の一部が犯罪捜査の対象とされるような現状にどう対処すればよいのか、自ら考えて欲しいと思います。そのためには大学は協力を惜しみません。 — 川添信介

警察の熊野寮への捜索の問題点

2014年の警察の熊野寮への捜索について京都大学法学部教授刑法学者の高山佳奈子は法手続き上の観点から適法性を疑問視している[19]。それによると、本件の立件に必要な証拠は現場(銀座)での警察やデモ参加者からの証言で十分であり、刑事訴訟法及び最高裁判例に反する必要性のない捜索に当たる可能性があり、「法治国家たるべき日本の国際的威信を地に落としかねない」。またこの捜査において本来事前に提示することが必要な捜査令状を寮生に呈示しなかった点も問題視している[20]

寮生に聞き取りを行った杉本恭子によると、捜索場所が2,3箇所であるのに対して50から150ほどの機動隊が無駄に投入され、寮内では警察による違法な写真撮影や令状を呈示しない捜査が行われる。またその結果押収されるのはビラ数枚ということもあるという[21]

不祥事

時計台占拠

熊野寮自治会は例年熊野寮祭の一環として百周年時計台記念館(以下「時計台」)に梯子をかけて屋上に登る企画(時計台占拠[22])を実施しており、京都大学は熊野寮自治会に対して危険な企画を実施しないよう通告してきたが、2020年、同企画において多数の者が覆面等をして顔を隠し、職員の制止を振り切って時計台に梯子をかけて屋根上に侵入し、制止した職員に暴行するなどして職員が負傷した[23]

京都大学は2021年11月24日の告示において、時計台占拠の危険性と違法性を指摘した上で「京都大学は今後、このような企画を主導して実施した団体・個人のみならず、同企画に参加した者に対して学内処分を行うほか、時計台記念館に登ろうとする者については確認次第直ちに警察に通報するなどの法的措置を含め、厳正に対処する」と宣言した[23]

同年12月3日、熊野寮自治会関係者がサングラス、ヘルメット、フェイスマスクなどによって顔を完全に隠し着衣も一様に揃え身元が特定されないよう準備した上で、職員の制止を振り切り構内に梯子を持って突進して職員が負傷する事件が起き、京都大学は同年12月15日、「極めて悪質であり、本学として看過することはできない」、「本学は、このような企画を主催した熊野寮自治会並びに企画に参加し梯子を持って構内に突進した暴力的な行為に関与した者に対し、法的措置を含め厳正に対処する方針である」と告示し、熊野寮自治会に対して「自治会としての責務を果たす意思と能力がない」との判断を下した[4]

無学籍者の居住

熊野寮自治会は熊野寮の入退寮選考権を持っており[5]、入退寮者の情報を京大新聞上で公表している[24]。しかし、京都大学がその情報を過去に遡って精査したところ、「京大新聞上で入寮者や退寮者として氏名が挙がっていた者の中に京都大学の在籍歴が見当たらない者が多数いる」等の疑義が生じた[25]

京都大学は熊野寮を「京都大学の学籍を有する者のための福利厚生施設」としており[26]、熊野寮自治会に対して上記の疑義について原因調査等求めた[27]ところ、熊野寮自治会は声明を出して無学籍者が多数居住する事実を次のように認めた[28]:

熊野寮には多種多様な方が住んでいます。これまでにも幼児と同居しつつ学びを継続する人、精神疾患や身体の不調等で一時的に学籍喪失に追い込まれた人、院試浪人や就職浪人、博士課程満期退学者、京大当局による一方的な放学処分者など、やむを得ない事情を抱えて熊野寮での居住を継続している無学籍者は多数おります。

また、熊野寮自治会は京都大学の基本理念の一つである「開かれた大学」の理念を引用したうえで、『熊野寮を閉鎖的な寮とするのではなく、開放的な空間として創り上げてき』た、『熊野寮の存在意義を「学籍を有する者」に限定する発想は、京都大学を学内的な利害に基づく独善的な存在に貶めるもの』と主張している[29]

登場作品 (番組)

テレビ番組

脚注

  1. ^ a b c 杉本(2020) p.184
  2. ^ 杉本(2020) p.185
  3. ^ 杉本(2020) p.158
  4. ^ a b c 熊野寮自治会関係者による暴力的な行為について”. 京都大学. 2021年12月29日閲覧。
  5. ^ a b 杉本(2020) pp.158-159。自主入退寮権と呼ばれる。
  6. ^ 「熊野寮自治会関係者による暴力的な行為について」に対する反論声明”. 熊野寮自治会. 2022年2月16日閲覧。
  7. ^ a b 「大学当局との確約・団体交渉」『熊野寮入寮パンフ』”. 熊野寮自治会. 2022年2月16日閲覧。
  8. ^ 「大学当局との確約・団体交渉」の基本確約第1条を参照。
  9. ^ 同基本確約第3条
  10. ^ 同確約第5条
  11. ^ 同確約第8条
  12. ^ しかし新任副学長にも民法上契約の自由があるから、本人の意に反して強制的に引き継がせることはできない。
  13. ^ 住まい・食と購買”. 京都大学. 2022年1月4日閲覧。
  14. ^ 杉山 (2020) pp.193-194
  15. ^ 京大バリケード封鎖、授業妨害でメンバーら逮捕 「熊野寮」を捜索”. 産経新聞. 2022年1月4日閲覧。
  16. ^ 京大生の中核派系全学連幹部を逮捕 職員に暴行、職務妨害疑い 京都府警、拠点の「熊野寮」捜索”. 産経新聞. 2022年1月4日閲覧。
  17. ^ 京都府警、京大「熊野寮」家宅捜索 免許不正事件で中核派の関係先”. 産経新聞. 2022年1月4日閲覧。
  18. ^ 熊野寮の捜索”. 京都大学. 2022年1月4日閲覧。
  19. ^ 高山 (2015)
  20. ^ 高山 (2015) p.35
  21. ^ 杉本 (2020) p.194
  22. ^ 時計台占拠声明文”. 2022年7月27日閲覧。
  23. ^ a b 令和3年11月24日付告示第7号”. 京都大学. 2022年7月27日閲覧。
  24. ^ 厚生課に対する反論文”. 2022年7月27日閲覧。
  25. ^ 厚生課からの「熊野寮入退寮者名簿について」2”. 2022年7月27日閲覧。
  26. ^ 第三小委員会からの要請”. 2022年7月27日閲覧。
  27. ^ 厚生課からの「熊野寮入退寮者名簿について」1”. 2022年7月27日閲覧。
  28. ^ 大学当局による寮自治への介入に対する声明”. 2022年7月27日閲覧。
  29. ^ 熊野寮における無学籍者の居住について”. 京都大学. 2022年7月27日閲覧。

参考・関連文献

関連項目

外部リンク