「JR北海道737系電車」の版間の差分
IRishikawa521 (会話 | 投稿記録) m →モニタ装置 |
Mt.Asahidake (会話 | 投稿記録) 各種画像の追加 |
||
54行目: | 54行目: | ||
=== 車体構造 === |
=== 車体構造 === |
||
{{Double image aside|right|JR_Hokkaido_Serires_EC737_Side_face.jpg|230|JR_Hokkaido_Serires_EC737_Local_Tomakomai.jpg|230|前面形状|側面種別・行先表示器}} |
|||
全車運転台付きであることやワンマン運転用機器の搭載による重量増加に対応するため<ref name="mynavi20230420">{{Cite news|url=https://news.mynavi.jp/article/20230420-2658567/|title=新型車両737系、JR北海道が本格投入するアルミ車両 - 背景に軽量化|newspaper=マイナビニュース|date=2023-04-20|accessdate=2023-04-26}}</ref>、[[JR北海道735系電車|735系]]による試験の結果も踏まえて<ref name="mynavi20230420" />、[[アルミニウム合金|アルミニウム]][[ダブルスキン構造|ダブルスキン構体]]を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=78}}。車体幅は既存形式と同様の2,800 mm {{Efn|731系・735系と同一値。733系はこれより広い2,892 mm。}}であるが、車体長は一部駅の有効長との兼ね合いから既存形式より短い連結面間距離21,500 mm を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=79}} {{Efn|733系の場合、連結面間距離は先頭車 |
全車運転台付きであることやワンマン運転用機器の搭載による重量増加に対応するため<ref name="mynavi20230420">{{Cite news|url=https://news.mynavi.jp/article/20230420-2658567/|title=新型車両737系、JR北海道が本格投入するアルミ車両 - 背景に軽量化|newspaper=マイナビニュース|date=2023-04-20|accessdate=2023-04-26}}</ref>、[[JR北海道735系電車|735系]]による試験の結果も踏まえて<ref name="mynavi20230420" />、[[アルミニウム合金|アルミニウム]][[ダブルスキン構造|ダブルスキン構体]]を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=78}}。車体幅は既存形式と同様の2,800 mm {{Efn|731系・735系と同一値。733系はこれより広い2,892 mm。}}であるが、車体長は一部駅の有効長との兼ね合いから既存形式より短い連結面間距離21,500 mm を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=79}} {{Efn|733系の場合、連結面間距離は先頭車 |
||
21,670 mm、中間車21,300 mm。}}。<!-- 出典元で「既存形式より120 mm短い」となっているが、誤りと思われる。 --> |
21,670 mm、中間車21,300 mm。}}。<!-- 出典元で「既存形式より120 mm短い」となっているが、誤りと思われる。 --> |
||
73行目: | 74行目: | ||
==== 主回路機器 ==== |
==== 主回路機器 ==== |
||
[[File:JR Hokkaido Serires EC737 VVVF.jpg|thumb|right|230px|N-CI737形主変換装置]] |
|||
架線電圧の交流20,000 V をMc車の主変圧器(N-TM735-AN、走行風自冷式)により交流900 V に降圧した上で、主変換装置(N-CI737)の3レベルPWMコンバータに入力し、直流1,800 V 程度に変換された後、2レベルPWMインバータにより任意の電圧・周波数の三相交流に変換し、かご形三相誘導電動機を制御する{{Sfnp|芳賀|2023|pp=80-81}}。なお、主変換装置は小型化のため、ハイブリッドSiCモジュールを採用している{{Sfnp|芳賀|2023|pp=80-81}}。 |
架線電圧の交流20,000 V をMc車の主変圧器(N-TM735-AN、走行風自冷式)により交流900 V に降圧した上で、主変換装置(N-CI737)の3レベルPWMコンバータに入力し、直流1,800 V 程度に変換された後、2レベルPWMインバータにより任意の電圧・周波数の三相交流に変換し、かご形三相誘導電動機を制御する{{Sfnp|芳賀|2023|pp=80-81}}。なお、主変換装置は小型化のため、ハイブリッドSiCモジュールを採用している{{Sfnp|芳賀|2023|pp=80-81}}。 |
||
==== 台車 ==== |
==== 台車 ==== |
||
[[File:JR Hokkaido Serires EC737 Bogie (N-DT737).jpg|thumb|right|230px|N-DT737形台車]] |
|||
動台車(N-DT737形)をMc車、付随台車(N-TR737形)をTc車に配置する。いずれも低床化のため、車輪径を810 mm に縮小、台車枠側ばりを弓なりに湾曲させた軸梁式[[鉄道車両の台車史#ボルスタレス台車|ボルスタレス台車]](ヨーダンパ付き)で[[ホイールベース|軸距]]は2,100mmである{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。車軸軸受は密閉複式円錐ころ軸受を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。基礎ブレーキは踏面両抱き式の[[踏面ブレーキ|ユニットブレーキ]]として、低床化への対応とブレーキストローク調整作業の解消を狙っている{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。[[制輪子]]にはJR北海道車両の特徴である合金鋳鉄制輪子を用いた{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。動台車の駆動部はH100形気動車と同様の[[カルダン駆動方式|平行カルダン駆動]]([[WN駆動方式|WN接手]]{{Efn|733系は[[TD平行カルダン駆動方式]]。}})とした{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。 |
動台車(N-DT737形)をMc車、付随台車(N-TR737形)をTc車に配置する。いずれも低床化のため、車輪径を810 mm に縮小、台車枠側ばりを弓なりに湾曲させた軸梁式[[鉄道車両の台車史#ボルスタレス台車|ボルスタレス台車]](ヨーダンパ付き)で[[ホイールベース|軸距]]は2,100mmである{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。車軸軸受は密閉複式円錐ころ軸受を採用した{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。基礎ブレーキは踏面両抱き式の[[踏面ブレーキ|ユニットブレーキ]]として、低床化への対応とブレーキストローク調整作業の解消を狙っている{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。[[制輪子]]にはJR北海道車両の特徴である合金鋳鉄制輪子を用いた{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。動台車の駆動部はH100形気動車と同様の[[カルダン駆動方式|平行カルダン駆動]]([[WN駆動方式|WN接手]]{{Efn|733系は[[TD平行カルダン駆動方式]]。}})とした{{Sfnp|芳賀|2023|p=81}}。 |
||
104行目: | 107行目: | ||
=== 客室設備 === |
=== 客室設備 === |
||
[[File:JR Hokkaido Serires EC737 LCD Display.jpg|thumb|right|200px|運賃表示器]] |
|||
前述のように客用扉は片側2か所となっており、ドアボタンにより半自動扱いを行う片開きドアが車端部に設けられている{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。札幌圏で運用される電車には、側引戸上部にLEDスクロール式車内表示器を設置しているが、737系では運転台後部の運賃表示器に同様の内容を表示するため、省略している{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。 |
前述のように客用扉は片側2か所となっており、ドアボタンにより半自動扱いを行う片開きドアが車端部に設けられている{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。札幌圏で運用される電車には、側引戸上部にLEDスクロール式車内表示器を設置しているが、737系では運転台後部の運賃表示器に同様の内容を表示するため、省略している{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。 |
||
座席は全て[[鉄道車両の座席#ロングシート(縦座席)|ロングシート]]で各車両中央に[[車椅子]]や[[ベビーカー]]利用者・大型荷物用のフリースペースを備える。Tc車には加えて、連結面側に[[車椅子スペース]]と車椅子対応トイレを設置している{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。消費電力削減を狙い、車内照明は[[LED照明|LED]]化されている<ref name="JRH20220817pdf">{{Cite press release|和書|title= 737系通勤形交流電車が登場します|publisher=北海道旅客鉄道|date=2022-08-17|url= https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220817_KO_737.pdf |format=PDF|accessdate=2023-04-21|archiveurl= https://web.archive.org/web/20230320095447/https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220817_KO_737.pdf |archivedate=2023-04-20}}</ref>。 |
座席は全て[[鉄道車両の座席#ロングシート(縦座席)|ロングシート]]で各車両中央に[[車椅子]]や[[ベビーカー]]利用者・大型荷物用のフリースペースを備える。Tc車には加えて、連結面側に[[車椅子スペース]]と車椅子対応トイレを設置している{{Sfnp|芳賀|2023|p=80}}。消費電力削減を狙い、車内照明は[[LED照明|LED]]化されている<ref name="JRH20220817pdf">{{Cite press release|和書|title= 737系通勤形交流電車が登場します|publisher=北海道旅客鉄道|date=2022-08-17|url= https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220817_KO_737.pdf |format=PDF|accessdate=2023-04-21|archiveurl= https://web.archive.org/web/20230320095447/https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220817_KO_737.pdf |archivedate=2023-04-20}}</ref>。 |
||
<gallery> |
|||
JR Hokkaido Serires EC737 Inside.jpg|客室内全景 |
|||
JR Hokkaido Serires EC737 Inside of the seats 1.jpg|座席 |
|||
JR_Hokkaido_Serires_EC737_Free_space.jpg|フリースペース |
|||
JR_Hokkaido_Serires_EC737_Lavatory.jpg|便所 |
|||
</gallery> |
|||
=== 乗務員室 === |
=== 乗務員室 === |
||
[[File:JR_Hokkaido_Serires_EC737_Inside_of_the_front.jpg|thumb|right|200px|乗務員室まわり]] |
|||
半室仕様の貫通構造で、損傷防止と着雪・曇り防止を目的に助士席前面窓と貫通路窓は発熱ポリカーボネートとしている{{Sfnp|芳賀|2023|p=79}}。 |
半室仕様の貫通構造で、損傷防止と着雪・曇り防止を目的に助士席前面窓と貫通路窓は発熱ポリカーボネートとしている{{Sfnp|芳賀|2023|p=79}}。 |
||
127行目: | 138行目: | ||
屋根上に集電装置、床下に主変換装置や主変圧器など走行用機器を集中配置する。 |
屋根上に集電装置、床下に主変換装置や主変圧器など走行用機器を集中配置する。 |
||
<gallery> |
|||
JR_Hokkaido_Serires_EC737_Tc737-5.jpg|クハ737形0番台 |
|||
JR_Hokkaido_Serires_EC737_Mc737-5.jpg|クモハ737形0番台 |
|||
JR_Hokkaido_Serires_EC737_Current_collector.jpg|集電装置 |
|||
</gallery> |
|||
== 運用 == |
== 運用 == |
2023年5月21日 (日) 12:37時点における版
JR北海道737系電車 | |
---|---|
737系電車C-5編成 (2023年5月20日 苫小牧駅) | |
基本情報 | |
運用者 | 北海道旅客鉄道 |
製造所 | 日立製作所笠戸事業所 |
製造年 | 2022年 - |
製造数 | 26両(予定) |
運用開始 | 2023年5月20日 |
主要諸元 | |
編成 | 2両編成 (1M1T) |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 |
交流単相20,000V 50Hz (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 120 km/h |
設計最高速度 | 120 km/h |
車体長 | 21,500 mm(連結面間距離) |
車体幅 | 2,800 mm |
車体 | アルミニウム合金(A-train) |
備考 | 出典:芳賀 (2023) |
737系電車(737けいでんしゃ)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が2023年に導入した交流通勤形電車である。
概要
キハ143形気動車・721系電車(初期形)の老朽取替用として室蘭本線・函館本線に投入することを目的に導入され、同社の営業用電車としては初めてワンマン運転に対応する[1][2][3]。製造は日立製作所笠戸事業所が担当した[4][5]。
導入の経緯
JR北海道では2012年(平成24年)の札沼線桑園駅 - 北海道医療大学駅間電化に伴い余剰となった車両のうち、キハ143形10両(2両編成5ユニット)をワンマン化・保全工事の上、室蘭本線苫小牧駅 - 室蘭駅間に投入し、711系電車を置換えてのワンマン運転を開始した[1]。
しかし、キハ143形はもともと1980年(昭和55年)から1982年(昭和57年)にかけて製造された50系51形客車を客車列車の減少に伴う余剰対策、および札沼線輸送力強化の一環で気動車化したものであり、2023年(令和5年)時点で経年43年と老朽取替の時期を迎えていた。また、同時期にはJR化後最初期の1988年(昭和63年)に導入された721系電車の初期形も経年32年以上となり、同様に置換時期を迎えることとなった。本系列はこれらの置換用として13編成26両が投入される[1]。
車体
外観意匠
側面は「優しさが感じられ、親しみやすく明るく若々しいイメージ」として、「さくらいろ」をイメージした淡いピンク色の塗装とした[6][7]。前面の塗装は黒色をベースとし、視認性向上のため警戒色の黄色とJR北海道のコーポレートカラーであるライトグリーン(萌黄色)を配している[6][7]。
車体構造
全車運転台付きであることやワンマン運転用機器の搭載による重量増加に対応するため[7]、735系による試験の結果も踏まえて[7]、アルミニウムダブルスキン構体を採用した[6]。車体幅は既存形式と同様の2,800 mm [注釈 1]であるが、車体長は一部駅の有効長との兼ね合いから既存形式より短い連結面間距離21,500 mm を採用した[8] [注釈 2]。
先頭部は普通鋼製で、前面窓の上下に前照灯を、上に尾灯を配置し、アルミ構体とはボルト接合されている。ワンマン運転時の運転士の業務の関係から、高運転台ではなく、H100形気動車を踏襲した構造としているが、前面後退角の設定、ケージ構造の採用、クラッシャブルゾーン(合計415 mm)を採用して乗務員の安全性を確保している[8]。
側面客用扉は各車両とも片側2か所に片引き式、有効開口幅1,150mmのものを設けた[8]。床面高さは733系・735系と同様の1,050 mmであり[8]、乗降口のステップは省略した。
客室側面窓は731系以降の電車はすべて固定窓であったが、自然換気が可能なように、一部窓の上部を内倒れ窓としている[8]。
床下は着雪量減少のため機器や配管を覆う床下機器カバーや台車台枠下部ふさぎ板を採用している[8]。
主要機器
Mc車に走行用機器を集中配置した、Mc-Tcの2両1ユニット構造で、既存の電車形式と同様、加速度(0 - 60 km/h)2.2 km/h/s を確保している。最大で3編成6両まで連結可能であるが、既存形式とは営業での併結を考慮せず、救援時の併結を考慮するのみに留めている[9]。
また、従来車の3両1ユニットから2両1ユニットとなったことや低床化により床下スペースが比較的狭くなることから、機器の小型化にも力が入れられている。
動力・電源関係
主回路機器
架線電圧の交流20,000 V をMc車の主変圧器(N-TM735-AN、走行風自冷式)により交流900 V に降圧した上で、主変換装置(N-CI737)の3レベルPWMコンバータに入力し、直流1,800 V 程度に変換された後、2レベルPWMインバータにより任意の電圧・周波数の三相交流に変換し、かご形三相誘導電動機を制御する[10]。なお、主変換装置は小型化のため、ハイブリッドSiCモジュールを採用している[10]。
台車
動台車(N-DT737形)をMc車、付随台車(N-TR737形)をTc車に配置する。いずれも低床化のため、車輪径を810 mm に縮小、台車枠側ばりを弓なりに湾曲させた軸梁式ボルスタレス台車(ヨーダンパ付き)で軸距は2,100mmである[11]。車軸軸受は密閉複式円錐ころ軸受を採用した[11]。基礎ブレーキは踏面両抱き式のユニットブレーキとして、低床化への対応とブレーキストローク調整作業の解消を狙っている[11]。制輪子にはJR北海道車両の特徴である合金鋳鉄制輪子を用いた[11]。動台車の駆動部はH100形気動車と同様の平行カルダン駆動(WN接手[注釈 3])とした[11]。
主電動機
主電動機は1時間定格出力190kWのN-MT737形かご形三相誘導電動機を採用した。この主電動機は、2014年(平成26年)の733系3000番台以降導入のJR北海道の電車と同様、全閉自己通風式であるため、雪切室は設けられていない[11]。
制動装置の制御
ブレーキ系統としては常用ブレーキ・非常ブレーキ・直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキの4つを有する[12]。
電気指令式空気ブレーキ方式を採用しており、常用ブレーキでは全段で速度0 km/hまでの全電気ブレーキ制御を実施し、回生ブレーキ力不足もしくは回生失効時には補助的に空気ブレーキによる補足を実施する。また、Tc車は遅れ込め制御を行う[12]。
また、付随台車の車輪と制輪子が冬季に凍結・固着することにより生じるブレーキ不緩解を防止するため、一定の条件を満たした状態で運転台のスイッチを扱うと[注釈 4]、付随台車のブレーキ圧力が開放される機能を持つ[12]。
その他機器
空調装置
屋根上に集中形空調装置(N-AU733A、冷房能力30000 kcal/h、暖房能力20kW)を搭載する[11]。
モニタ装置
車両中央情報制御装置による、主要機器・サービス機器の状態表示、性能試験を行うことが可能である[12]。
基幹伝送はアークネット、機器間の伝送はRS485(一部RS422・イーサネット)により実施する[12]。
内装
インテリアデザイン
エクステリア同様「優しさが感じされるデザイン」が志向され、乗降ドア周辺は淡いピンク色、座席は紫地に北海道内に咲く花をイメージしたドットをちりばめている[8]。
客室設備
前述のように客用扉は片側2か所となっており、ドアボタンにより半自動扱いを行う片開きドアが車端部に設けられている[13]。札幌圏で運用される電車には、側引戸上部にLEDスクロール式車内表示器を設置しているが、737系では運転台後部の運賃表示器に同様の内容を表示するため、省略している[13]。
座席は全てロングシートで各車両中央に車椅子やベビーカー利用者・大型荷物用のフリースペースを備える。Tc車には加えて、連結面側に車椅子スペースと車椅子対応トイレを設置している[13]。消費電力削減を狙い、車内照明はLED化されている[3]。
-
客室内全景
-
座席
-
フリースペース
-
便所
乗務員室
半室仕様の貫通構造で、損傷防止と着雪・曇り防止を目的に助士席前面窓と貫通路窓は発熱ポリカーボネートとしている[8]。
同様にワンマン運転を実施するH100形気動車の運転台構造、機器配置、主幹制御器(左手操作ワンハンドル式[注釈 5])を踏襲しているが、モニタ装置などは既存電車形式と共通化している[8]。
編成・形式
以下、方面を示す場合、札幌駅在姿を基準とする。また、以下に示す諸元は新製時点でのものである[14]。
編成番号がユニット単位で付番されており、記号「C[注釈 6]」を冠し「C-xx(車両番号)」と表される[6]。
クハ737形0番台(Tc)
小樽方の先頭となる制御普通車(定員133名、うち着席44名)。自重34.8t。
補助電源装置や電動空気圧縮機を床下に搭載するほか、客室内車端部に車いす対応便所・車いすスペースが設置されている。
クモハ737形0番台(Mc)
旭川・室蘭方の先頭となる制御電動普通車(定員136名、うち着席49名)。自重41.9t。
屋根上に集電装置、床下に主変換装置や主変圧器など走行用機器を集中配置する。
-
クハ737形0番台
-
クモハ737形0番台
-
集電装置
運用
全車札幌運転所に配置され、2023年(令和5年)5月20日時刻修正から室蘭本線室蘭駅 - 東室蘭駅 - 苫小牧駅間を基本に運用されている[16]。この送り込みも兼ねて千歳線経由で札幌駅まで乗り入れる運用も1日1往復設定されている[7][16]。
このほか、函館本線での運用も計画されているが、具体的な運行時期や区間は2023年(令和5年)4月時点では未定である[12][7]。
沿革
- 2019年(平成31年)4月:同月公表された「JR北海道グループ中期経営計画2023」において、2両・ワンマン対応の普通列車用交流電車の導入に言及[17]。
- 2022年(令和4年)
- 8月:形式名「737系」と仕様を発表[2]。
- 11月:最初の2編成(C-1・2編成)が日立製作所笠戸事業所から納入[5]。
- 2023年(令和5年)5月20日:同日の時刻修正から室蘭本線室蘭駅 - 東室蘭駅 - 苫小牧駅間、送り込みを兼ね千歳線・室蘭本線札幌駅 - 苫小牧間で営業開始[7][16]。
車歴表
特記ない限りは2023年(令和5年)4月1日時点の情報を示す[4]。
- 製造…日立:日立製作所笠戸事業所
- 配置…札幌:札幌運転所
編成番号 | クモハ737 (Mc) |
クハ737 (Tc) |
製造 | 新製日 | 配置 | 新製 出典 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
C-1 | 1 | 1 | 日立 | 2022年12月13日 | 札幌 | [4] | |
C-2 | 2 | 2 | 2022年12月14日 | ||||
C-3 | 3 | 3 | 2023年 | 3月 9日||||
C-4 | 4 | 4 | |||||
C-5 | 5 | 5 | 2023年 | 3月11日||||
C-6 | 6 | 6 | |||||
C-7 | 7 | 7 |
脚注
注釈
- ^ 731系・735系と同一値。733系はこれより広い2,892 mm。
- ^ 733系の場合、連結面間距離は先頭車 21,670 mm、中間車21,300 mm。
- ^ 733系はTD平行カルダン駆動方式。
- ^ 車両が停止し、ブレーキが「B7」段に投入されていること。
- ^ 既存電車形式も同様
- ^ 既存形式のユニット名(735系=A、733系=B)との連続性のほか、「Conductor-less(車掌省略)」「Change」「Carbon-neutral」「Community-Connect(地域接続)」の意味が込められている[15]。
出典
- ^ a b c 芳賀 (2023), p. 77.
- ^ a b “JR北海道、新型「737系」通勤形交流電車製造へ キハ143形などを置換 2023年春デビュー”. 鉄道チャンネル. (2022年8月17日) 2023年4月26日閲覧。
- ^ a b 『737系通勤形交流電車が登場します』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2022年8月17日。オリジナルの2023年4月20日時点におけるアーカイブ 。2023年4月21日閲覧。
- ^ a b c RF(747)別冊付録 (2023).
- ^ a b “JR北海道737系が甲種輸送される”. 鉄道ファン (交友社). (2022年11月29日). オリジナルの2023年3月19日時点におけるアーカイブ。 2023年4月24日閲覧。
- ^ a b c d 芳賀 (2023), p. 78.
- ^ a b c d e f g h i 芳賀 (2023), p. 79.
- ^ 芳賀 (2023), pp. 79, 82.
- ^ a b 芳賀 (2023), pp. 80–81.
- ^ a b c d e f g 芳賀 (2023), p. 81.
- ^ a b c d e f 芳賀 (2023), p. 82.
- ^ a b c 芳賀 (2023), p. 80.
- ^ 芳賀 (2023), p. 78,81.
- ^ 芳賀 (2023).
- ^ a b c 『5月20日(土) 新型737系電車を室蘭線に投入します』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2023年4月13日。オリジナルの2023年4月14日時点におけるアーカイブ 。2023年4月21日閲覧。
- ^ 『JR北海道グループ中期経営計画2023』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2019年4月9日 。2023年5月20日閲覧。
参考文献
- 芳賀, 歩「新車ガイド2 JR北海道 737系通勤形交流電車」『鉄道ファン』第63巻第7号(通巻747号)、交友社、2023年7月1日、77-82頁。
- 編集部「別冊付録『JR旅客会社の車両配置表2023/JR車両のデータバンク2022-2023』」『鉄道ファン』第63巻第7号(通巻747号)、交友社、2023年7月1日。